花粉症対策や体調が優れないとき、満員電車に乗るときなど、コロナ禍が明けてもマスクを着用する機会はたくさんありますよね。今回編集長アッキーが注目したのは、京都・丹後地方で約200年にわたって丹後ちりめんの伝統を支えてきた老舗・吉村商店が手掛ける、シルク100%のマスクです。着物に使われる生地と同じ上質な素材でできているので、特別な日にもぴったり。そんなプレミアムな商品の誕生秘話を代表取締役社長の吉村隆介氏に取材陣が伺ってきました。
着物姿にもよく似合う!シルク100%の丹後ちりめんを使った「プレミアムシルクマスク」
2024/11/14
株式会社吉村商店 代表取締役社長の吉村隆介氏
―創業は1830年。社長は何代目にあたるのでしょうか?
吉村 私で7代目となります。明確な創業年はわかっていないのですが、2代目が生家の庭に建てた石碑に「天保元年(1830年)に吉村家に婿入りして商売を盛り上げたから、子孫たちも頑張れ」というような文言が刻まれているんです。そのことから、当時すでに商売をしていただろうということで、1830年を創業の年としています。株式会社にしたのは1920年ですので、設立から数えると104年目になります。
―丹後ちりめん一筋でやってこられたのですね。
吉村 そうですね。創業当初は丹後ちりめんを京都で売って、そのお金で買ったお雛さんなどの人形を丹後で売るというような商売をしていたと聞いています。以来、200年近く、丹後ちりめんのメーカーおよび産地問屋として、弊社では数百種類の白生地を取り扱っています。
でも、丹後ちりめんも和装業界もこの何十年、斜陽産業と言われる厳しい状況が続いています。私が生まれた1974年は丹後ちりめんの全盛期で、丹後全体で年間1000万反もの白生地を作っていたんですよ。しかし、今年の見込みは約10万反。この50年の間に、100分の1の規模にまで縮小してしまっているというのが現状です。
京都府北部・丹後地方で
300年以上にわたって織り継がれてきた「丹後ちりめん」。
シボと呼ばれる生地の表面の凹凸が、独特な表情を浮かび上がらせる。
―そんな厳しい状況のなか、家業を継がれる決心をされたきっかけは?
吉村 私が家業を継いだのは41歳のときで、それまでは大学を卒業してからずっと東京で働いていました。中学生の頃から父には「継がなくていい」と言われていて、兄や姉も外に出て働いていたんです。転機となったのは、40歳のとき。勤めていた会社の取締役にお酒の席で「吉村お前、どこの出身で、家業は何をやっているんだ」と尋ねられたんです。
家業や丹後ちりめんのことを話したらすごく興味を持ってくださって、東京から丹後まで見学に来られることになって。生地を見てもらったり、工場を案内したりした帰り道、上司から「サラリーマンをやっている場合じゃないだろう」と言われたことをきっかけに、会社を継ぐことを決心しました。
―丹後ちりめんを使ったシルク100%のマスクづくりは、コロナ禍を機に始めたそうですね。
吉村 はい。うちは着物の生地の卸問屋ですけれど、昔から母が、余ったハギレを使ってカバンや眼鏡ケースなど、色々なものをつくってはいたんです。コロナ禍でマスクが不足したときも、マスクをつくって近所や親戚に配ったりしていて。当時、売上がドーンと落ちて困っていたのですが、新聞に出ていたアマビエの記事を見た妻から「こんなん遊びで作ってみたら」と言われ、試しにアマビエをデザインした生地をつくってみたんです。デザイナーさんが考案してくれたのが、可愛らしくて丹後もイメージできるようないいデザインだったので、母にその生地を渡してマスクとマスクケースをつくってもらったのが始まりです。
疫病退散の願いを込めたアマビエシルクマスク&マスクケース。
織りの技術を駆使して、濃淡を表現したデザインにも注目!
―「プレミアムシルクマスク」はいつ頃できた商品なんですか?
吉村 2021年から販売しています。学生インフルエンサーとコラボして商品をつくり、SNSで拡散しようという京丹後市の取り組みから生まれた商品で、生地選びやパッケージデザインまで、インフルエンサーの方々のさまざまな意見を取り入れながらつくっていきました。
プロジェクト始動時には不織布のマスクじゃないと飛沫は防げないと言われ始めていたので、弊社としてはマスクではなくマスクケースに変更しようと考えていたんです。でも、彼女たちが言うには「やっぱりマスクじゃないとダメだ」と。
もともと生地のテストはしていて、花粉であれば98%以上防げるというデータが出ていましたので、コロナ禍が収束したあと花粉等の対策として使ってもらえるかもしれない。それに、不織布マスクだと肌がかぶれてしまうという人もおられましたので、インナーマスクとして使っていただくこともできる。そう考え、当初の予定通りシルク100%のマスクづくりを進めていきました。
最高級シルク100%の丹後ちりめんを使った
「星空ネイビー プレミアムシルクマスク」。
濃紺の生地に織り込まれた銀糸がキラキラと光って見え、
まるで満天の星が輝く夜空のよう!
―上品なラメ感と丹後ちりめんならではの光沢感がある生地が素敵ですね。
吉村 着物に使われるちりめん生地って、“さやがた”や“七宝”のように、地味な和柄が多いんですよ。学生さんは華やかで可愛らしい生地が好きだろうと思っていたので、どうかなと思ったんですけど、彼女たちが倉庫からキャッキャ、キャッキャ言いながら抱えてきた反物の一つが、この銀⽷が織り込まれた生地でした。二重構造になっていて、内側にはシルク100%の生地を使用しているので肌触りも抜群ですよ。
シルクは肌との親和性の高いたんぱく質でできているので
肌にやさしく、着け心地も快適。「着物と同じ生地ですので、
シルクのなかでもとくに良い糸を使っているんです」と吉村社長。
―着物の生地を使用しているだけあって、和装にとてもよく映えそうです!
吉村 実際にお客様からも、和装のときに重宝しているというお声を頂戴しています。やっぱり成人式や卒業式、結婚式など特別な日に着物をお召しになっても、マスクが不織布だと少しもったいないですよね。同じ白でも素材が丹後ちりめんになるだけで、かなり印象は変わりますよ。
「星空ネイビー」のほか、
白銀の雪景色に覆われた冬の丹後をイメージした「銀雪ホワイト」や
淡いピンクが上品な「さくらピンク」の3色を展開。
―シルク製だとお手入れが難しいのでは?
吉村 私も、シルクはアイロンをかけちゃダメとか、そういうイメージを持っていたのですが、実は全然大丈夫で。自分でも何度も使っていますが、普通に洗濯機で洗ってアイロンをかけています。当て布をせず、高温でかけても何の問題もありません。どちらかというと耳にかけるゴムのほうが先に弱くなってくるので、新しいものに入れ替えてもらえば長くお使いいただけます。
パッケージもスタイリッシュで、ギフトにもぴったり。
丹後ちりめんのシボをイメージした素材感も◎!
―最後に今後の展望をお聞かせください。
吉村 白生地メーカーですので、やはり少しでも着物を着ていただきたいという思いがあります。成人式や卒業式以降にも着物に親しんでもらえるような取り組みができればな、というのがひとつ。それに加えて、和装以外の分野、たとえば洋装や内装資材などにも少しずつチャレンジしていけたらいいなと思っています。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「星空ネイビー プレミアムシルクマスク」
価格:¥3,500(税込)
店名:吉村商店
電話:075-221-1156(10:00~16:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://marutan.base.ec/items/42124700
オンラインショップ:https://marutan.base.ec/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
吉村隆介(株式会社吉村商店 代表取締役社長)
1974年京都府生まれ。物流会社に約19年間勤務した後、41歳で株式会社吉村商店に入社(代表取締役就任)。創業194年目の着物の白生地メーカーの七代目。和装文化の復興、絹織物の可能性を求めて日々取り組んでいる。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/木村彩織 画像協力/吉村商店>