ユニークな文房具が話題になっている文具メーカーを、編集長アッキーが発見。ものづくりの町・大阪で、80年以上にわたって文房具を作ってきたべロス株式会社です。誰もが一度はお世話になったお馴染みの文具の製造はもちろん、新商品の開発にも取り組んでいます。ヒット商品の開発秘話をお伺いするため、編集部が向かいました。
文具の展示会で「グランプリ」を受賞!大阪の老舗文具メーカー・べロスの「アイデアを盛り込んだ創作文具」
2024/11/22
べロス株式会社 代表取締役社長の山路浩太郎氏
―御社の歴史について教えてください。
山路 弊社は昭和12年(1937年)創業で、祖父が立ち上げた会社です。そもそもは和歌山のみかん農家の出身ですが、昔は子どもが多ければいわゆる丁稚奉公に出ることになっていましたから、祖父も大阪・舟場の文具問屋で働き、その後独立したようです。
初めは大和製作所という社名で、鉛筆削りを製造していました。それまで2枚刃だった鉛筆削りの刃を日本で初めて1枚刃にしたのが弊社だという話は聞いたことがあります。その後、鉛筆削りは電動のものが出てきたため、このままではダメだということで、画鋲やマグネット類に主軸を移しました。昭和26年(1951年)に法人化し、べロス文具工業に、昭和46年(1971年)にべロス株式会社となりました。
誰もが必ず使ったことのある、画鋲やマグネット、
ゼムクリップやWクリップなどを長年製造してきた。
―山路社長のご就任の経緯は?
山路 私は学校を卒業後、信用金庫に勤めていました。13〜14年勤めた頃だったと思いますが、たまたま親戚の家で、父(現会長)が「同級生はもう定年退職して悠々自適な生活をしているのに、自分はまだ社長として働いている」と話しているのをそばで聞いていたんですね。それが入社のきっかけでした。入社後は10年ほど営業を担当しました。基本的に、この業界はルート営業で、決まった得意先に商品を紹介するというのが一般的な営業方法でした。ただ、今は子どもも減っていますし、文具の需要が減ってきていて、新しい業種にもどんどん出ていかないと企業として成り立たなくなってきています。なので、他業種への新規の取引先などの開拓にも力を入れています。2019年に社長になり、現在6年目です。
―商品の特長を教えてください。
山路 「アイデアを盛り込んだ創作文具」が、べロスのコンセプトです。ただ単にものを造るだけではなくて、ひと工夫したものですね。アイデアを盛り込んで商品として出すことが基本の考え方です。今回ご紹介している「にゃんこしおり」も、普通のしおりの機能だけではなくて、尻尾を引っ掛けてしおりの役目をするというものです。猫がぶら〜んと垂れ下がっている、そういうちょっとした可愛らしさをイメージした商品です。さらに、定規になる機能性もプラスしています。そういったひと工夫を入れるということを、常に気にしながら商品を作っています。
本やノートにしっぽでぶらさがるにゃんこに癒される!
アンダーラインを引いたりと定規として使えるのも意外に便利。
―「ぶらさがりにゃんこ」の開発経緯を教えてください。
山路 その前に、去年、「バードルーラー」というものを造りました。これが、大阪の日本文紙MESSE大賞2023でグランプリを受賞したんです。展示会での投票で1位になったもので、皆さんに受け入れられた商品だなと実感しました。
社内で企画を出しあったり、デザイナーさんからもご意見いただくのですが、この鳥のデザインがなかなか良かったんです。切れ目が入っているので、ペン立てに挟んだりして飾れるんですね。定規って普通、引き出しに入れてしまい込んでしまうと思うんですが、これなら綺麗な鳥なので、インテリアとして眺めて楽しんでもらおうというのが狙いです。いざ使う時も、すぐに取り出せます。
バードルーラー。デザインに高級感があり、色も素敵。
しかも定規や分度器になっているのがユニーク。右がオウム、左がオオハシ。
オウムのバードルーラーを本棚のボックスに挿してみたところ。
インテリアとしても楽しめる高級感があり、使うときもさっと出せる。
山路 そうしたところ、顧客様から「サイズを小さくして欲しい」というご要望が出てきました。「筆箱に入るくらいのものはできませんか」というようなご意見が結構ありました。それで、当初はこれを小さくして定規として販売しようかと思ったのですが、小さく薄くしてしまったら、値打ちがなくなってしまったんです。鳥の定規の時にはアクリルでできていて、色も鮮やか、サイズ感も大きくて高級感があったのが台無しになってしまった気がしました。
そこで一旦これは取りやめて、鳥型ではなく、別のものでできないかと考え始めた時に、犬にしようか、猿にしようかと考えましたが、やはり一般的に受け入れられる動物ということで、猫が採用されました。開発については、ペラペラでもなく分厚くもなくという、薄さを決めるのが難しかったです。
鳥型から猫型になり、しおりとなった。
種類は4種類で、柄だけでなく表情も微妙に違っているのがこだわり。
―こういった開発は常にされているのですか?
山路 毎年春と秋に大きな展示会があるので、どのメーカーもそこに合わせて新商品を開発しています。特に、こういったかわいい商品は、早いものは3ヶ月おきに流行が変わっていくので、次から次へ新しいものを作っていかないといけないという面もあります。
ただ、弊社は磁石やピンといった商品を幹としているので、枝葉の部分として今回のような遊び心のあるものも作っています。しっかりした軸があるからこそできることだと思っています。
―他にもおすすめ商品があれば、教えてください。
山路 先ほどの鳥のシリーズはオウムとオオハシの2種類ですが、続編としてフクロウ型のバードルーペを造りました。拡大鏡になっているので、年配の方へのプレゼントにも最適です。もちろん定規にもなります。また、売上金の一部は「日本野鳥の会」に寄付されることになっていて、社会貢献にもなります。
「幸運を呼ぶ」ともいわれるフクロウ型。
やはり切り込みがあるので、筆立てなどにかけることが可能。
拡大鏡としても使いやすい。読書好きな方へのプレゼントにも喜ばれそう。
山路 また、面白いものとしては、だるまの形をしたクリップがあります。受験シーズンには、受験コーナーにおいてもらっています。商品台紙の裏側が絵馬になっていて、メッセージが書けるので、応援メッセージを書いてプレゼントすることもできます。
―今後の展望についても、お聞かせください。
山路 やはりこの業界自体は小さくなってきています。文具売り場に行かれるとわかると思いますが、縮小の傾向です。ですから、文具業界だけでなく別の業界へも進出していきたいというのが今の希望です。そうでないと、今後100年、200年と生き延びることはできないのではないかという焦りはあります。メーカーがどんなにいいものを作ってもお客様が認めてくれなかったらダメです。「良いものが売れるんじゃなくて、売れたものが良い商品」という認識が強くなっている気がします。
そこで、少しずつではありますが、文具に一番近い部分で、日用品に広げていきたいと思っています。弊社はマグネットが強いですが、収納にも使えるマグネットはすでに売上トップテンに入ってきています。ちなみに、マグネットフックがくるくる回るようにしたのは弊社が初です。長年やってきて、使いづらい、落ちてくる、角度が良くないとかといったお客様の声が集まって、改善されてきた結果です。
これからも、ライバル会社もたくさんありますが、負けるわけにはいきません。開発、改善を続けて、商品の幅を広げていきたいと考えています。
―確かな技術と自由な発想力から生まれる新商品を楽しみにしています!本日は、ありがとうございました。
「ぶらさがりにゃんこしおり定規」
サイズ:140×53mm
種類:ミケ・グレ・クロ・トラ
価格:各¥308(税込)※送料別
店名:べロス フエルモール店(運営:ナカバヤシ株式会社)
電話:0800-600-0672(10:00〜17:00 土・日・祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.fueru-mall.jp/velos/products/18589
オンラインショップ:https://www.fueru-mall.jp/velos
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
山路浩太郎(ベロス株式会社 代表取締役)
1974年大阪府生まれ。学校卒業後、大阪の信用金庫に就職。2011年5月にベロス入社。2019年8月より同社 代表取締役に就任。毎年12月に開催される奈良マラソンを走るのが楽しみ。
<文・撮影/尾崎真佐子 MC/木村彩織 画像協力/べロス>