天然香木の豊かな香りが広がる「好文木」大阪・堺の老舗が100年以上つくり続ける名香

2024/10/24

お部屋で過ごす時間を、より豊かなものにしてくれるアイテムを探していた編集長・アッキー。そこで出合ったのが、天然の香料からつくられたお線香「好文木」。発祥の地である大阪府堺市で300年以上にわたって線香づくりを続けてきた、株式会社梅栄堂16代目の中田信浩氏に、ものづくりへのこだわりや線香への想いを伺ってきました。

株式会社梅栄堂 代表取締役社長の中田信浩氏

ー創業は1657年だとか。御社の歴史をお聞かせください。

中田 もともとは幕府の認定を受けて糸割符貿易を行う商人でした。その後転業して薬種問屋を営んでいた頃に、堺出身の武将・小西行長の父(※兄という説も)が線香の製造方法を朝鮮半島から堺に持ち帰ってきたんです。薬種が線香の原料となるということで、薬種問屋から線香屋に転業。以来、370年近くこの地で線香づくりを続けてきました。日本で残っているなかでは、うちのお線香の銘柄が一番古いと思います。

ー長い歴史のなかで困難もあったのではないでしょうか。

中田 堺は線香発祥の地ですので、戦前は線香屋が70軒くらいあったんですよ。でも1945年の大空襲で町のほとんどが焼けてしまって、今では10軒ほどになってしまいました。うちも何もかも焼失してしまって。それでも薬種を調合するレシピは残っていたので、それをもとに何とか乗り越え、これまでやって参りました。

門外不出の製法で、天然香料をいかした気品ある香づくりを続ける老舗。
本社併設のショールームほか、大阪・難波に実店舗「古香堂」を構える。

ーそういった危機を乗り越えながら、ずっと変わらず受け継いでいることはありますか?

中田 もともと線香は天然香料というか、漢方に使う生薬でつくっていましたが、今は香水系のお線香が主流で。主原料となる椨(たぶ)の木の粉に香料となるオイルを混ぜるだけなので、簡単につくれますしかし、私どもは15,6種類ほどの漢方薬を混ぜ合わせて香りを出す昔ながらの製法を今もずっと守り続けています。香水系もつくっています、それは全体の1割くらい。あとはぜんぶ漢方薬系です。その分、値は張ります。今一番安価な線香で一束10円くらいですが、最高級品だと一束15万くらいします。

100年以上の歴史を誇る、日本を代表する名香「好文木」。国内のみならず、世界23ヵ国以上にファンを持つ。

ーそれだけ手間がかかるということでしょうか?

中田 そうですね。それに原料となる香木や漢方薬は、世界中から香港とシンガポールに集まります。全部海外から仕入れているので為替のこともありますし、自然のものなので不作があったり、貴重な香木もあったりしますので、その辺も大変です

ー数ある商品のなかでも「好文木」は、100年以上つくり続けているロングセラー商品だそうですね。

中田 はい、5代前からつくりはじめた商品です。ベースはずっと同じですが、時代の変化にあわせて少しずつ香りを変えて、改良しながらつくっています。使用しているのは、白檀や桂皮、龍脳をはじめとする天然香料。良質な原料を選りすぐって仕入れるために、いつも香木の聞き比べをして感覚を研ぎ澄ますようにしています。値段がどんどん上がってきていて、白檀なんかは20倍30倍にもなますが、それでも変わらず同じ品質の原料を使っているということもこだわりのひとつです。

好文木の名は、中国の故事によって「文を好む平和の花」として讃え、命名された梅の美称に由来。

ーそういったところに、多くの方にご愛用いただける理由があるんですね。

中田 安価な香水系の線香が世の中に多く出回るなかで、品質の良い香木系のお線香を焚くとやっぱり非常に喜ばれます。海外の方にもご好評いただいています。これまでは韓国の方が多かったのですが、最近はヨーロッパやアメリカの方が一番多いですね。

ー好文木のほかにも、コーヒーやはちみつといったユニークな香りもラインナップされていますね。

中田 この業界は30年ほど前がピークで、今はその4割くらいに落ち込んでいるんです。これまで主軸としてきた仏事用線香の需要が減ってきていますので、ずっと同じものだけをつくっていてはどんどん先細りする一方です。だから、お部屋で焚いていただけるようなアロマ系商品にシフトしていかないといけないと思って、いろいろなことに挑戦しています。その甲斐あってか、近ごろは20代の方も結構買いに来てくださいます

白檀、桂皮、龍脳、丁子、大茴香をはじめとする天然香料をブレンド。くどさのない、甘く上品な残り香も心地よい。

ー今後の展望をお聞かせください。

中田 最近は海外も含めて、いろいろな分野の展示会に出店するようにもしています。東京などの大きな展示会だと、たくさんのバイヤーさんが来られます。そで手塚プロダクションさんに声を掛けていただいて、鉄腕アトムやブラック・ジャックをイメージしたお香をつくったり。ビームスさんとのコラボでは、オリジナル調合の別注版・好文木を開発したり。今後もそういった取り組みを積極的に行って、お線香=仏事ではなく、お部屋で焚いて香りを楽しむものだということを、もっと広めていければいいなと思っています。

―貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

「好文木 短寸大型」
価格:¥2,750(税込)
店名:お香・お線香の梅栄堂オンラインショップ古香堂
電話:0120-946-296(10:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kokoudo.jp/?pid=111927383
オンラインショップ:https://www.kokoudo.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
中田信浩(株式会社梅栄堂 代表取締役社長)

1962年 大阪府堺市生まれ
1985年 中央大学商学部卒業。同年 株式会社伊藤ハム入社
1987年 株式会社 梅栄堂 入社
2001年 社長就任。

<文・撮影/野村枝里奈 MC/山口優花 画像協力/梅栄堂>

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