肌の保湿にこだわるアッキーこと坂口明子編集長が今年見つけたとっておき化粧水が「トゥルースリッチミスト」。多種類の美容成分をたっぷりとバランスよく組み合わせ、冬の乾燥からお肌を守り抜きます。ミストタイプなのでいつでも手軽に使えるのもうれしい点。本物を追求して商品開発を行い、新しい働き方も目指す企業の姿勢にも共感できます。起業に至るまでの経緯、商品の開発秘話をピースオブシャイン株式会社代表取締役社長 沼辺大地氏に取材スタッフがうかがいました。

ピースオブシャイン株式会社 代表取締役社長 沼辺大地氏

―創業9年目の若い会社ですね。

沼辺　2016年、私が37歳のときに創業しました。私は大学卒業後、化粧品会社に就職し、エリアマネジャーとして担当地域で取引先の代理店に向けた営業活動をしていました。会社が決めたマニュアル通りに「この製品はこのようないい点があります」とセールストークまで練習してお話していました。しかし、仕事をしているうちに、自分が化粧品のことをよく分かっていないのに「この製品は本当にいいですよ」とおすすめすることに疑問を感じ始めました。
そこで、化粧品を創る勉強をしたいと思い、化粧品を製造する企業に転職しました。専門分野の試験があったので約半年間、集中的に化学などを勉強し、履歴書を送ってある企業に合格しました。そこは化粧品各社から委託されて製造するOEM企業で、私は最初の2年間は研究開発の仕事をして、その後の1年間は製造現場、またその後1年間は品質管理の現場を経験して化粧品製造の一通りを学びました。

ピースオブシャイン社の製品。

―化粧品の製造から販売までを経験なさったことになりますね。

沼辺　そのときに感じたのは、しかたのないことですが、発注するメーカーさんの多くが売上優先で、言い方に語弊があるかもしれませんが、本当の美容効果よりも売れればいいという考えをもっているということでした。たとえば同じセラミドという化粧品の原料でも高い原料と安い原料では単価には雲泥の差があり、美容成分の質・効果が違います。同じ成分名なのでどちらを入れるかとなると、どの企業も当然のように単価が安い方を選択します。それが自分の中では引っかかっていて、「こうしたらもっと良い商品にできるのに」などと思うことが多く、その頃から「自分の理想となる製品を創る」と構想を練っていて、仕事の合間に理想と思える美容液の処方を組んでみたりしていました。

創業以来、毎年だいたい1商品のペースで新製品が開発されている。

―起業が実現したのはどのような経緯ですか。

沼辺　その後、私は外資系の化粧品会社で働き、百貨店でブランドビジネスを学びましたが、その職場で知り合ったのが妻の亜利紗（現・ピースオブシャイン副社長）です。以前から漠然と自分で化粧品会社を作りたいという思いはあったものの、なかなか事情が許さない時期、妻から「大地ならやれるよ」と励まされたこともきっかけになり起業を決意しました。私には子どもが2人いますが当時は下の子どもが生まれたばかりで、資金も限られていました。で、何を創るかを考えたとき、失敗してもいいから本当にいいと思える商品にしようと思いました。起業が失敗しても子どもたちも両親の背中を見て育つだろうから、恥じることはないと考え、まっとうな商品を開発しようと思ったのです。

最初のブレイク商品、まつ毛美容液「ディープグローセラム」。

―すばらしいお話ですね。最初のヒット商品はまつ毛美容液だとか。

沼辺　うちの奥さんは化粧品会社に勤めていたということもありますが、とにかく美容が大好きで（笑）、いろんな化粧品を使っているんですね。旦那の会社の商品であっても、自分のお金を出してでも買いたいと思えるもの、それが本当にいいものじゃないかと思い、妻が心から欲しいと感じ、今まで使ってきた中でNO1と思える製品を創ることをコンセプトにしました。
当時、出産したばかりの妻はホルモンバランスが崩れ、もともと長かったまつ毛が抜け落ちてしまっていました。その頃のまつ毛美容液には副作用の可能性があるものもありましたが、妻は授乳中だったので市販のまつげ美容液は使えません。私は妻のために副作用の不安がなく、妊婦さんや授乳中でも安心して使えて効果が期待できる製品を目指して研究開発しました。

―起業の苦労はありましたか。

沼辺　化粧品の製造や販売には、原材料の会社、製造工場、容器や化粧箱などの会社、システム関連の会社、撮影やデザインの会社、物流倉庫など、多くの会社の協力が必要です。インターネットで調べて40社ぐらいに直接交渉に行ったのですが、当社には実績も後ろ盾もなかったのでほとんど相手にされませんでしたね。ただ、その中で3社だけは親身になって対応してくださって助かりました。その会社さんとは根本のところで通じ合うものがあり、今でもおつき合いさせていただいています。創業当時は自宅マンションの一室を事務所にして、研究開発から商品の営業、お客様対応、経理などすべて私1人でしていましたが、苦労と感じたことはないです。実績も後ろ盾がなくても信念と志は高かったので、根拠ない自信と家族や周りのサポートのおかげで乗り越えることができました。

右が美容液「トゥルースドロップ」、左がビタミンC美容液「ビタドロップ」。

―まつ毛美容液はどのようにヒットしましたか。その後の製品開発は？

沼辺　買ったお客様がインスタグラムなどで紹介してくださって広まり、広告費を使わなくても売上が大きくなっていきました。妻もインスタグラムをしていますが使ったビフォー＆アフターをアップしていて、画像で実際にまつ毛が生える過程が分かるので反響がありました。妻のインスタグラムは今もあり、自分が使っていいと思った化粧品を他社様の製品も含めて紹介しています。（ＡＲＩＳＡインスタグラムのアカウントは＠saarariii）。
次に研究開発したのがエイジングケア美容液「トゥルースドロップ」です。美容液は強豪のライバル商品がたくさんあるので、最初はまったく売れませんでした。しかし、使ったお客様が口コミで徐々に広めてくださり、あるときから急激に売上が伸びました。インフルエンサーと呼ばれる人に依頼したわけでもないのに本当にありがたいことです。この美容液は58種類の美容成分を約80％配合しています。美容成分の質や量だけでなく、微調整を幾度も繰り返しながら黄金比のバランスを考えて創りました。スタッフの協力を得たりお客様にモニターになっていただいたりして総試作回数で考えると600回以上試作したと思います。こだわりというか、妥協ができない性格なのですね（笑）。実はこの美容液は先ほど述べた、研究職時代に仕事の合間に構想していた、理想の美容液の処方が基本になっています。販売や営業、研究開発、製造、品質管理と今までやってきた仕事が全部活きて創ることができた商品で、本当にいい商品ならばお客様に必ず思いは伝わり、購入につながることが分かりました。

―その後は毎年、商品を開発していますね。

沼辺　化粧水やクレンジング、クリームなどを発売し、2023年にはビタミンC美容液「ビタドロップ」という美容液を開発しました。これはシミ、くすみにアプローチする美容液で、2種類のビタミンC誘導体をバランスよく配合していて低刺激で安全性にも配慮しています。現在、「トゥルースドロップ」と「ビタドロップ」が当社の人気商品の2トップで、リピート率も特に高いです。
当社の化粧品は、効果もしっかり出て安全性も担保でき、毎日使うものなので低刺激な製品を目指しています。また、私が処方を組むので研究開発費が抑えられ、高品質な商品をお手頃価格で提供できます。商品力に関しては他社様には真似できないと自負しています。
当社は「売る」ことよりも「本物の商品力」に注力して何もかも備えた欲張りな化粧品創りをする会社ですので、業界の中で異質な存在かもしれません。

―お客様に支持されていることがその証拠ですね。

沼辺　女性は肌がきれいになると明るくなって心に余裕ができて、人にも優しくなれ、幸せになることができます。当社の化粧品を使っていただいてニキビが消えて恋人ができましたとか、結婚しましたと聞くとうれしいですね。化粧品にはそんな幸せを作る力があると思います。だからこそ、その場しのぎの化粧品ではない本当にいい化粧品を創らなくてはいけないと思っています。

「トゥルースリッチミスト」は顔に吹きかけた後、ハンドプレスしてなじませる。メイクの上からスプレーしても。

―新発売の「トゥルースリッチミスト」はどんな商品でしょう。

沼辺　2024年8月に発売開始しました。保湿感がある化粧水というとどうしてもベタつきがある製品になりがちです。そこで使ったときはさらっとしていて、使った方が「本当に保湿されているの？」と思うけれど、時間が経っても肌内部からの潤いが感じられる、化粧水の域を超えるような化粧水を創りたいと思って考えました。敏感肌の方にも使えるように低刺激性も重視しています。また、粒子が細かいミストにしているので使いやすいし化粧直しにも使えます。
成分表示を見ていただけたら分かると思いますが、最も多く含まれているのが乳酸桿菌/加水分解コラーゲン発酵液エキスで、18種類の遊離アミノ酸やペプチドなどがたっぷり含まれていて肌内部から潤います。さらに最近人気の美白効果が言われているグルタチオンも配合しています。あとは数種のセラミドをバランスよく配合し保湿性を高めています。それにペプチドの効果をより高めてサポートするナイアシンアミドやビタミンC誘導体も入れ、翌朝のもちもち感につなげています。
香料、アルコール、シリコン系、強力な防腐剤などは加えていないので敏感肌の方にも使っていただけます。

「トゥルースリッチミスト」の全成分表示。多種の美容成分が配合されている。

―社長自らが処方しているので、成分については淀みなくお答えくださいますね。今後の御社の展望をお聞かせください。

沼辺　定期購買が100回、200回となるお客様も多くいらっしゃいますが、変わらずにご愛用してくださっているお客様、誰も相手にしてもらえなかったときでも協力してくださった取引先の皆様、ピースオブシャイン愛を持って働いてくださるスタッフたち、そしてピースオブシャインのファン第一号で公私ともに最大のサポーターである妻、そんな皆様方のおかげで今があります。私はただ社長という役職に就いているだけだと思っています。ほかにはない化粧品会社だと高い評価をしてくださる方々も多く、私自身が過大評価されることもしばしばありますが、色々な方々の支えによって成長できている会社となります。信頼してくださっているお客様、支えてくださる周りの方々のためにも、これからも本当にいいものを創り続け、より多くの方に知っていただけたらと思っています。また、できればご愛用してくださるお客様にお礼を直接お伝えできる場、交流できる機会を作れればと考えています。
商品の種類を増やすことや、今はオンライン販売が中心ですが実店舗を作ることも視野に入れて体制を整えたいと思っています。ですが、当社はお客様だけでなくスタッフも幸せになることを目指しています。そのためには現在のＥＣサイト中心の販売方法の方がスタッフはリモートワークしやすく子育てなどと両立しやすいため調整が必要だと考えています 。
私自身、仕事より家族を大事にしたい、家庭が犠牲になるぐらいなら仕事がなくてもいいと思っているほどなので、働きやすい環境を整えることを優先しています。

―本物志向の商品だけでなく、働き方についても新感覚を持つ会社と感銘しました。本日はありがとうございました。

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

＜Guest’s profile＞

沼辺大地（ピースオブシャイン株式会社 代表取締役社長）
1979年東京都墨田区生まれ。営業・研究・製造・品質管理・統括製造販売責任者・講師・取締役などを経験し、2016年ピースオブシャインを起業。経営者兼研究開発者として自身で処方から研究開発する。皮膚生理学に沿った本物の美容効果を体感できる製品創りを研究開発の根幹と考えている。
インスタグラムアカウント（＠daiiichiii.n） 会社公式アカウント（＠peaceofshine）

＜文・撮影／今津朋子　MC／田中香花　画像協力／ピースオブシャイン＞