簡単に作り付け風家具が手に入る!日本のオーダーメイド技術でつくった飾り棚「Bee Rack」
2024/12/09
今回、編集長アッキーこと坂口明子が注目したのは、蜂の巣型をした飾り棚「Bee Rack」。新築マンションや介護施設などの内装を長年担ってきた株式会社筑紫工業の製品とあって、しっかりした作りと高級感があります。また、組み合わせることで、どんな家にもマッチし、使い方も無限大になるアイデア商品。開発の裏側を取材陣が伺ってきました。
株式会社筑紫工業 代表取締役 新内一秋氏
―新内一秋代表が二代目だとお伺いしました。
新内 はい。弊社は、福岡にて1973年(昭和48年)に父が創業し築いてきた、木製建具・造作材の製作および施工メーカーです。私は福岡で生まれ育ち、熊本の大学を卒業後、大手印刷会社に就職して技術系のサラリーマンとして7年半ほど勤めました。その後、先に入社していた弟(現専務)と一緒に父のたすきをつなぎ、現在に至っています。
マンションや学校などの施設、店舗などの新築内装を50年以上担ってきた。
―印刷会社でのご経験が活かされたことはありますか?
新内 私どもは室内のドアや家具、インテリア製品といったものを建築現場で施工しているのですが、今、マンション関係はオレフィンという印刷シートを使うことが多いです。この木目を印刷したシートは、前職の会社で作っていたりします。そういった意味で、技術の情報交換や人脈といったものは、今でも役に立っていると思います。
―御社のヒット商品「Reドアー」「Re-mado」もその技術を使ったものですか?
新内 そうですね。これはリフォーム用の建材で、既存のドアや窓枠を新品のようにカバーできるというものになります。寸法や色などを専用サイトで入力してご注文いただき、簡単に取り付けていただける商品です。同様のものは大手メーカーさんにもあるのですが、そちらは基本的に同じものを大量に作っています。私たちのものは完全オーダーメイドなので、コンセプトが違います。その注文システムなどを含めて、特許も取得しています。
「Reドアー」は、既存のドア枠に化粧フレームをかぶせてドアを取り替えるオリジナル工法。
この工法により、短時間でお部屋のテイストチェンジが可能に。
―どういったきっかけでこの商品はできたのでしょうか?
新内 弊社は主に新築の内装工事に携わってきたのですが、改修工事のご要望もあり、私たちの技術で何かできることはないかなと考えたところ、ドアの枠を外さずに上から被せるようなことができないかと思いました。それが「Reドアー」というもので、傷ついて古くなったドア枠を化粧板でカバーし、新品のドアに取り替えることができるというものです。
これを窓枠に応用したのが「Re-mado」です。窓枠というのは、外にアルミサッシがあって、室内に木製の枠があります。古いものだとペンキを塗ってあったり、今はシートが貼られていたりします。この窓枠というのは、なかなか取り替えるのが困難です。取り替えるとなると周囲の壁を壊さないといけなくなってしまうんです。ですから、例えば賃貸マンションなどで入退時の現状復帰の際、クロスなどは貼り替えるのですが、窓枠は見てみぬふりをするしかない。そういったお話があって、じゃあこれも化粧板で上からカバーできないかと考えました。
「Re-mado」なら、大規模な工事の必要なく窓枠の修繕ができると好評。
専用サイトから寸法などを入力すれば簡単にピッタリサイズのリフォーム材が手に入る。
―お客様のご要望から生まれた商品なのですね。
新内 私たちは建設会社や工務店さんから受注をいただいているので、施主さんの意向を直接聞くことはできませんが、できるだけ聞き取って、住む方がどういう風に使われるのか、建築用語で言うところの「納まり」をしっかり考えてから図面にして提案します。そういった「ものづくり」を大切にしています。
いわゆる作り付けの家具とかドアなどの木製品を作っていますが、既製品は一切扱っておりません。マンションやオフィス用の100とか200個といったものも含め、全て受注生産のオーダーメイドを行っています。
―そういった「ものづくり」の精神が、御社のモットーですか?
新内 「誠意と技術 豊かな発想 思いやりの心で使う人の身になったものづくり」というのが創業者の言葉で、まさに我が社の仕事に対する考え方のバックボーンになっています。誠意だけではダメで、やっぱり技術が必要ですし、逆に技術だけでもダメで、相手を思う真心があって初めていいものができる。技術を高めるには、その人の持てる人間性とかそういうものを高めていかなくては身につかないですし、技術をうまく使うことはできません。「つくる」だけでなく「つくりあげる」というのが我が社の基本姿勢です。
オーダーメイドでつくりあげる作り付け家具の施工例。規格化されている製品とは異なるオンリーワンの製品。
「お客様が喜んでくださっている姿を思い描きつつ、安全性や機能美は当然の事ながら、
丈夫でかつ使う人の身になった優しいものづくりに取り組んでいます」。
―代表ご就任以来、ご苦労されたことはありますか?
新内 それはもう苦労の連続でした。代表を交代した2000年(平成12年)から2006年(平成18年)くらいというのは、福岡県のみならず全国の都市圏が建設ラッシュでした。ほとんど建設バブルといった状態で、実態に即していないという感覚はありましたが、当時は忙しくて寝る間も惜しんで仕事をしていた記憶があります。
ただ、2006年(平成18年)に耐震偽装問題というのがありました。それで鉄筋コンクリートの建物の建設が全国で一度ストップになったんです。そこから構造計算のシステムが出来て建築許可が下りるようになるまで、1年ほどかかりました。私たちも建築会社から受注していますから、その間は工事ができませんでした。
それで2008年(平成20年)くらいにようやく動き始めたという時に、今度はあのリーマンショックが発生しました。建設に資金が流れなくなり、弊社のような中小企業も影響を受けました。2年間で、売上が三分の一になってしまいました。
それでもじっとしていても仕方ありませんので、なんとかBtoB以外の自分たち独自のものを自分たちの手で生み出せないかと考えるようになりました。それが先ほどもお話しした「Reドアー」「Re-mado」に繋がります。
―今回ご紹介いただくハニカムラック「Bee Rack」もその流れで開発されたものですか?
新内 はい。その流れの中で2020年にできたのが「Bee Rack」という商品です。BtoCの商品ということで、一般のお客様にも買っていただけるものを作り、ネットショップ「zizai工房」を立ち上げました。直接発信できるような商品をつくって直接お届けしたいという思いです。
この六角形のハニカム構造というのは、建築の中でもいろいろな構造材になっています。軽量でかつ強度がある構造ですね。ドアの中なども実はこういった構造になっています。これをヒントに、弊社の設備や技術を使ってできるものを製作しました。
作り付け家具をつくってきた筑紫工業ならではの発想。
パーツを組み合わせることで自由にディスプレイをレイアウトすることができる。
幅、奥行きのサイズは7種類、色も5種類と豊富なのが魅力。
―初めて一般向けの商品を販売していかがですか?
新内 販売にはやはり慣れていないので、次々に課題が出てきて発見がいっぱいありました。一番は価格設定です。全国に発送するとなると送料が必要になりますよね。1個販売だと運送料込みになると価格的な魅力が損なわれるな、と。3個セットや5個セットなど色々とシミュレーションして、魅力のある価格設定には苦労しました。結果的には3個セットに落ち着きました。
3個組だと自分好みの形にできますし、組み合わせによってまた全然違う印象にもなります。一度お買い上げいただくとリピートしてくださる方が多いのですが、6個くらいだとまたいろんな表情が出てきてちょうどいいのかなと思います。また、奥行きが違うものを組み合わせるのも面白いと思います。
アイデア次第で使用用途は無限に広がる。
花や雑貨、調度品を飾ったり、フィギュアや釣り道具などのコレクションの保管にも◎。
おしゃれな「飾る収納」としても重宝しそう。
―購入者からはどんなお声がありますか?
新内 京都のお土産屋さんが購入されて、非常に喜ばれて写真を送ってくださったことがありました。ちょうど参道に面したウィンドウに置いてくださって、そこにお菓子だとかの商品をディスプレイされていました。外から見えるようになって、ディスプレイにご満足されたのだと思います。わざわざお手紙とお写真を送ってくださいました。やはり喜んでいただいた声が直接聞けるのは嬉しいですね。
―今後の展望を教えてください。
新内 私どもは福岡でインテリア建材を作るメーカーとして50年以上やらせていただいています。それをこれからは全国の方に発信できればと思っています。現在のゼネコンとのお仕事における「ものづくり」をベースに、新しく取り組んでいる独自の商品のネット受注も広げていくつもりです。お客様の生の声を聞いたものを作り、それを商品化して全国に発信していきたいですね。
また、一般ユーザー向けのリノベーションの元請として注文を受けることも始めました。というのも、今、どうしても住宅は高額になっています。東京はもちろん、福岡でも5000万、6000万、1億円と、なかなか一般の人が買えるものではなくなってしまっている。ある意味、社会問題でもあります。だから、リノベーションという手法を使って自分たちで夢を叶えましょう、というのが提案です。不動産仲介とリノベーションをセットにしてお客様に提供しているのですが、そういう仕事をどんどん増やしていきたいと考えています。
―リノベーションで豊かな暮らしを実現できたら嬉しいです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
「ビーラック 360-180サイズ 3個セット」(幅36、高さ31.2、奥行18cm)
※サイズは、全7種 色は、全5種あり
価格:¥15,510(税込)※送料込
店名:zizai工房
電話:092-952-5468(9:00~17:00 土・日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/zizaikoubou/ha360-180-2/
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/zizaikoubou/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
新内一秋(株式会社筑紫工業 代表取締役)
1960年福岡県福岡市生まれ。熊本大学工学部を卒業後、大手印刷会社の技術系サラリーマンとして勤務したのち、1990年に株式会社筑紫工業に入社。2003年に同社代表取締役に就任。
<文/尾崎真佐子 MC/菊地美咲 画像協力/筑紫工業>