
既製品にはないハンドメイドの喜びを伝えたい。手芸センター「ドリーム」の今どき編み物キット
2025/03/25
手芸センター「ドリーム」は、岡山県に本店がある大型ハンドメイド専門店です。現在は、日本各地に約100店舗のチェーン店があり、入園入学グッズなどでお世話になった方も多いはず。今回、編集長アッキーが見つけたのは、今ヒット中のオリジナル編み物キット。今どき主婦向けのセンスの良さが光ります。安価な既製品も多い中、手作りする喜びとは何か、株式会社ドリーム 代表取締役社長の小野兼資氏に取材班がお話を伺いました。

株式会社ドリーム 代表取締役社長 小野兼資氏
−御社の沿革を教えてください。
小野 創業は1911年で、初代が、熨斗(のし)や贈答品を扱う「小野だるま堂」という店を開業したのが始まりです。すでに110年以上が経っていて、私は4代目になります。時代に合わせて展開していき、私が子どもの頃には、糸・針・布地など手芸用品の問屋業を四国で広く営んでいました。当時は瀬戸大橋もなく、大阪や東京のメーカーが四国に問屋を求めていたのです。ただ、私が大学を出て戻った時には、ホームセンターやスーパーといった問屋を介さない小売業が台頭し、問屋不要論も出ていました。さらに今となっては、メーカーが直接小売をするような業態もあります。そんな流れの中で、中間ではなく、小売かメーカーとして生き残るしかないのではないか、と考えていました。

周年の記念のロゴ。問屋業を経て、手芸用品専門店「ドリーム」を営むように。
―小野株式会社は香川県の会社ですが、手芸専門店「ドリーム」1号店は岡山ですね?
小野 その当時、「小売をやりたい」と言ったら、社長だった父と専務の叔父から、大反対に遭ったんです。「手芸の小売業なんて成り立つのか」と言われましたし、問屋である「小野」が小売をやるとなると、お取り引き先の競合になってしまいます。「今までの基盤や信用を壊すつもりか」と、大きな反発がありました。そういう意味でも、岡山なら小売店を出しても影響しないだろうということになりました。郊外の300坪の土地に100坪の店舗を作ることにしました。しかし、父はとても倹約を大切にした人物ですから、24、5歳の息子が自分で稼いでもいないお金を使うのかと、厳しかったです。私は、絶対に失敗はできないと、まさに背水の陣で臨むことになりました。高松から転勤してくれる人もいませんでしたから、名前も「ドリーム」に変え、ベンチャースピリッツで一から立ち上げました。
―小売業を始められて、いかがだったのでしょう?
小野 自分の性格には合っていたと思います。問屋だと直接売ることはできませんから、いわば待ちの姿勢です。でも、自分で店をやれば、自分で考えなければいけない。お店に何をどう並べて、チラシに何を載せるかなど、全部自己責任です。私にはその方が合っていたと思います。

現在の岡山本店内。販促品の選定やディスプレーなど、オリジナリティがあふれる。
―「ドリーム」の店舗の魅力とは?
小野 市場には今、安くていい既製品がたくさんあります。そういう中で、手作りしようという意欲を持っていただくには、ハンドメイドの楽しさ、素晴らしさをどうお伝えするかが鍵になります。自分で作るこだわり、作ること自体が楽しい、というところをお伝えすることに力点を置いています。店舗には作品例を多く展示して、風合いや色を確かめていただいたり、相談できるスタッフがいて問題を解決できたりするようにしています。教室やデモも充実させています。最近人気なのは、伸びるニット素材で洋服を作る教室です。きっちり作らなくても出来上がる生地で、30分くらいでフィットし過ぎず着心地の良いトレーナーやパンツができると好評です。


「毎日が楽しくなる服づくり教室」では、気軽に洋裁を体験することができる。誰でも簡単に着心地の良いものができると好評。
―ご自身も、よく売り場にいらっしゃるとか?
小野 先代が他界する12年前まで店舗に立っていました。今もオープン時などは必ず行って陣頭指揮を取ります。お客様に「近くにできてありがたいわ、楽しいわ、毎日くるわ」とおっしゃっていただくと嬉しいですし、もっとこういうサービスが欲しいなどのご要望やクレームをいただくこともありがたいと思っています。10年以上前からオーダーのサービスを受けていますが、これもお客様の声から始まりました。好みの布地を組み合わせていただければ、縫製スタッフが入園入学用のレッスンバッグに仕立てます。

豊富な布地から好きに組み合わせ、防災頭巾カバーやレッスンバッグなどのオーダーが可能。
小野 お店に来た方は、何か思うことがあったとしても、普通はそのまま黙ってお帰りになってしまいます。でも、お声をいただければ、「今ないサービス」を作ることもできます。どうやってその声を吸い上げるかが小売業のキモだと思います。言いやすい店、要望が言えるお店でありたいと思います。もちろん、年に2回のアンケートも行っています。
―今回ご紹介いただく、ジュエリーヤーンについて教えてください。
小野 こちらは、「ドリームプレミアム」という弊社のプライベートブランドの商品になります。人気ブランドのようなエレガントで高級感のあるバッグがハンドメイドでできるという糸で、キットもあります。耐久性もあり、実際に物を入れて使える実用性を兼ねたものになっています。編み物をしたことのある人はもちろん、初心者でも3時間くらいで作れると思います。20代から50代のヤングミセスからミセスに幅広くヒットしています。

ジュエリーヤーンで作るバッグのキット。キラキラと光る糸は見た目より柔らかく、編み心地も軽い印象。
出来上がりはまるで高級バッグなので、ワクワクしながら編み進められそう。お値段も、6,900円とお得感あり。

カラーバリエーションも豊富で、自分好みのオンリーワンなバッグや小物などを作ることが可能。組み合わせても楽しそう。
―今、編み物はブームでもあるそうですね。
小野 久しぶりに編み物ブームがきていて、毛糸がよく売れています。糸を触ったり手を動かしたり、編むことで心が落ち着くのかもしれません。初心者の方は目が揃わないことを気にされますが、揃っていないところこそが既製品にはない手作りの味になります。それが風合いというものです。それに、既製品だと「それいくら?」と値段を聞かれたりしますが、手作りだと値段ではなくて、「すごいわね」「これが手作りできるのね」などと褒められたりしますよね。ハンドメイドは時間や思いで作られているということなのだと思います。

ジュエリーヤーンの作品例。色や形、持ち手なども自由に組み合わせることができ、世界で一つだけの作品に。
周りからも注目されること間違いなし。
―今後のビジョンをお聞かせください。
小野 手作り人口は減ってきています。かつては、セーターもエプロンもカーテンも、みなさん作っていましたが、今は安価でいい既製品があります。その中で、我々が提案するのは「丁寧な生活」です。それはどこかにこだわること。例えばトレーナーを買ってきたらワッペンをつけてみる。そうすればオンリーワンになります。子どもや自分のものにもひと手間工夫すれば人とかぶらないし、少しやってみるとどんどん手作りが楽しくなります。入園入学でバッグを作ったら、子どもはきっと大事に使ってくれます。どんどん買っては捨てるということをしなくなり、1つを長く大切にしてくれるかもしれません。それも一つの教育だし、SDGsにも繋がります。手作りの温かみを体感してもらう。そういうことに接してもらえる機会になれたら、と思っています。

ネット通販のサイトにも、ワッペンやリボンなどが豊富に取り揃えられている。
既製品に手を加えるだけのちょこっと手作りから始めてみても。
―今の時代だからこそのハンドメイドの意味がわかったように思います。本日は、貴重なお話しをありがとうございました。


「ジュエリーヤーンのバッグキット」
価格:¥6,900(税込)※送料別途
店名:手芸センタードリーム公式通販サイト
電話:087-813-8560(9:00~17:00 土曜・日曜・祝日・年末年始を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://craft-dream.com/shopdetail/000000020512
オンラインショップ: https://craft-dream.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小野 兼資(株式会社ドリーム 代表取締役社長)
1986年(昭和61年)3月、明治大学経営学部を卒業後、1989年(平成元年)4月、小野株式会社に入社。従来の卸売事業と併行して「手芸センタードリーム」の小売店舗展開を開始する。1994年(平成6年)7月、取締役本部長に就任。2002年(平成14年)7月、代表取締役に就任。2005年(平成17年)8月、関連会社である株式会社ドリームを設立し、代表取締役社長に就任。公職として四国ニュービジネス協議会の会長を務める。
<文・撮影/尾崎真佐子 MC/藤井ちあき 画像協力/ドリーム>