茶葉を炒って作るほうじ茶は、香りが魅力のお茶です。名古屋の茶舗「妙香園」のほうじ茶は、特にその香りの高さで、地元をはじめ、全国の人々を魅了しています。
妙香園の創業は大正5年。当時から今と同様、茶匠が全国のお茶の産地をまわって茶葉を選りすぐり、茶葉をブレンドして販売していました。現在は産地限定のお茶が人気で主流となりつつありますが、田中良知社長は「元々茶舗は、季節や年によって変わる茶葉をブレンドし、安定したおいしい味をお客様にお届けするのが仕事でした。妙香園は創業以来、ブレンドにこだわり、その技を秘伝として代々守り続けています」と言います。
妙香園の「ほうじ茶」 部屋中に広がる香ばしさと まろやかな口あたり
2021/04/19
絶妙な火加減と時間で焙じたほうじ茶の茶葉。季節や気温、湿度により、その都度調節している
このように茶葉とブレンドにこだわり、煎茶、玉露、抹茶…などあらゆるお茶を扱っていますが、ほうじ茶が看板商品として一躍脚光を浴びたのは、店先で茶葉を炒ってほうじ茶を作りはじめたことがきっかけでした。最初は名古屋の松坂屋本店のすぐそば。戦後、デパートに買い物に来る目が利くご婦人方が、茶葉を炒るなんとも言えない香ばしさに誘われほうじ茶を買い求めました。その後、栄駅の地下街に出店した折には、駅の地下街全体に良い香りが充満し、多くの人々に妙香園のほうじ茶が知れわたりました。そして、平成18年には、名古屋市優秀土産品審査委員会で、その年唯一の名古屋市長推奨品となり、名実ともに名古屋のお土産の代名詞となったのです。
オレンジ色に澄んでいるお茶が黄金色に輝くかのように見える
淹れたお茶の色は黄金(こがね)色にも見えるオレンジ色。通常のほうじ茶より、薄く美しい色が特徴です。これは、強火で短く仕上げる浅煎りにしているため。茶葉に自信があるからできるこの短時間の浅煎りで、渋みや苦味が少なく、香ばしさと甘味が引き立つほうじ茶ができあがります。
おいしい淹れ方を伺うと、田中社長が丁寧に教えてくれました。「茶葉の量は、2人から4人で飲むなら、カレースプーンに山盛り1杯です。お湯は300〜600mlの沸かしたての熱湯。二煎目をおいしく飲むため、人数に合わせて一煎目で使いきる量のお湯を注ぎます。注いだら蓋をして、ゆらしたりせず静かに待つこと30秒。それぞれのお茶碗に「回し注ぎ」していきます。4つのお茶碗なら、1番目、2番目、3番目、4番目、そして4番目、3番目…と戻っていき、最後の1滴まで注ぎます。同じ濃さに淹れるのが最大のコツ。茶葉を入れすぎたなと思ったら少なめに往復し、薄すぎたら、少量ずつ淹れて5往復はすれば良い加減になります」
コーヒーと同様、焙煎するほうじ茶にはチョコレートも意外と合う
淹れるそばから部屋中に漂う香りで幸福感に包まれる…。食後のお茶として、また、心も体もリラックスしたい時に淹れるお茶として、妙香園のほうじ茶をおうちの定番にしてみませんか?