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「コーヒーは多様性の象徴」 伝統を守りながら広がり続ける、大和屋が提案する珈琲の世界

2022/06/13

コーヒーといえば「ブレンド」か「アメリカン」の2択だった時代は今や昔。現在では「スペシャルティコーヒー」という概念が広がり、産地や農園にこだわり、焙煎にこだわり、抽出にこだわるなど、コーヒーの世界は次々と進化を続けています。今回、アッキーが気になったのは、群馬県高崎市に本店を構える大和屋のコーヒー豆。HPからも落ち着いた「和」の雰囲気が漂い、年齢を問わず受け入れてもらえそうな懐の深さ、安らぎを感じます。
コーヒー鑑定士でもある代表取締役の平湯聡氏に、大和屋のコーヒーの魅力や、コーヒーに対する熱い想いを、取材陣がお聞きしました。

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株式会社大和屋 代表取締役の平湯聡氏

―会社の沿革について教えてください。

平湯 私の父である平湯正信(現会長)が、1980年に創業しました。
父は生まれ故郷の長崎から上京し、東京の大手コーヒー会社に入社しました。
転勤族で全国あちこちに移り住む生活をしていましたが、29歳の時に群馬県高崎市に移り、そして結婚を機に一念発起。脱サラして小さな骨董屋を始めたんです。もともと日本文化や骨董品に興味があって、転勤のたびにあちこちの骨董品屋さんを訪ね、多種多様なアンティーク品を取り揃えていました。
収集した骨董品を売るかたわら、自分でコーヒーを焙煎して、知り合いの喫茶店に卸したり、店に来るお客さまに振舞ったりしていたところ、「おいしい」と評判になったのです。
それからコーヒー豆を売る店に変わっていきました。当時は純喫茶が全盛期で、「コーヒーは外で飲むもの」というイメージが色濃い時代でした。豆を買って帰って自宅で淹れる人はまだ少なかった。コーヒー豆を売る店というのは、その当時では県内でも唯一。全国でも先駆的で珍しかったようです。

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木炭焙煎が醸し出す芳醇な香りは、飲んだ後も余韻として残る。

―大和屋のコーヒーの特徴はどんなところでしょう?

平湯 一番の特徴は、木炭を使ってコーヒーを焙煎するところです。一般的にはガスを熱源として使うところが多いのですが、うちでは創業当時から炭火焼きの焙煎にこだわっています。
もともと、日本人には炭焼きの嗜好性があります。肉でも魚でも、ガスより炭で焼いたほうがおいしく感じますよね。
「コーヒーは西洋から来たものだけれど、日本の風土に合う、日本人の味覚に合うコーヒーをつくりたい」というのが先代の考えでした。そのため、店舗の内装や、商品のパッケージデザインは民芸調を意識していますし、表記も「コーヒー」ではなく「珈琲」という漢字にしています。
『漢字で書く「珈琲」を、いかに形にしていくか』というのが会社としてのポリシーの1つです。コーヒーを取り巻くあらゆることを、日本に合ったものとしていかに表現し提案できるかを日々考えて、今の大和屋に至っています。
そんなお店づくりに共感してくださる方を中心に、関東や北陸を中心に「のれん分け」という形でお店が増えていき、現在全国に直営店とグループ店を併せて45店舗あります。

―最近は、炭火焼きコーヒーは少ないですよね。

平湯 そうですね。最近はどちらかというと少数派ですね。
創業当時は、「炭焼きコーヒー」の認知度も高く、深煎りの濃いコーヒーが流行っていて、喫茶店でもブームになっていました。
それに「炭焼き」ってガス焙煎と比べると、難易度も高く熟練の技なしでは安定した味づくりは出来ません。
それでも「炭焼き」にこだわっているのは、飲み比べるとガス焙煎とは明確に違う。同じ豆を使っても香りが豊かで、味わいが深くなるんです。
日本人に合う「珈琲」を追求してきた結果、それが大和屋の強みであり、個性。ひとつの財産になっているのだと思っています。

―お店には、やきものをたくさん取り揃えているのも特徴的ですね。

平湯 そうなんです。先代が、コーヒーカップやコーヒーミルなど、趣味でコレクションしていたアンティークをお店に並べていたところ、お客さんの目に留まって、「譲ってほしい」という問い合わせが相次いだのがきっかけです。次第にアンティークのものだけでなく、益子焼や笠間焼、信楽焼などの産地を訪れやきものを仕入れて販売するようになりました。
やきものとひと口に言っても、北海道から沖縄まで日本各地で作られており、数多くの産地があります。その土地ならではの作風のものも多く、白っぽいシンプルでスタイリッシュなものもあれば、黒くぽってりとしたもの、かわいい花柄のものもあれば、渋めのものも……。
好みのコーヒーを選んでいただくのと同じように、コーヒーを飲むカップもお気に入りを選んで、好きなカップでコーヒーを飲むことで、コーヒーの楽しみ方はもっと広がるはず。
コーヒー豆だけでなく、商品としてコーヒーカップまで扱っているのも大和屋独自の取り組みですし、強みと感じています。大和屋の「和の珈琲」を、「和のやきもの」で愉しんでいただきたい、という提案でもあります。

―日本には数少ない、コーヒー鑑定士の資格をお持ちだそうですね。

平湯 ブラジルで武者修行していた際に取得した「ブラジル・サントス市商工会認定コーヒー鑑定士」を持っています。その名の通り「コーヒーを鑑定する資格」です。経験と知識、味覚・嗅覚を駆使してコーヒーを評価します。講義と試験が現地の公用語のポルトガル語で行われるため、この資格をとるために、まずはポルトガル語を覚えなければならなかったので、言葉の習得が大変でしたね。スーパーに行って、生活必需品の単語を覚えることから始めました(笑)。
今回、飲んでいただいた「エルサルバドル エルトパシオ農園」は「コーヒー鑑定士が選んだ珈琲」ということで紹介しているシリーズの商品です。
現在、コーヒー業界は「サードウェーブ」という新しい波の中にあります。
以前は「ブラジル産のコーヒー」などと、ひとくくりに扱われていたのが、今ではブラジルの中でもどの農園なのか、どんな品種なのか、どういうふうに作られたのかを明確にしていこうという動きがあるのです。
簡単に言うと、1杯のコーヒーを通して、各農園(農園主)の個性と想いをダイレクトに味わい、大切にしようというのがサードウェーブの考え方です。
コーヒーの味は、栽培されている環境、品種によっても違ってきます。それぞれの秀でた部分、味わいとしての風味、個性を味わうためには、焙煎を浅煎りにする必要があります。
これから新しい世代の人たちにも、「コーヒーにはこんな世界もあるんだよ」ということを知ってもらい、コーヒーの楽しみ方を広げていっていただきたいという思いがあります。「コーヒー鑑定士シリーズ」はそのひとつです。

―「エルサルバドル エルトパシオ農園」は、浅煎りだけれど酸っぱくなくて、さわやかな風味でした。

平湯 実味を感じ、明るいさわやかな印象かなと思います。
実は、大和屋とエルトパシオ農園とのお付き合いは、13年前にさかのぼります。2009年に「カップオブエクセレンス」(各生産国で年に1回開催されるコーヒー品評会)でエルトパシオ農園が見事1位を獲得し、そのロットを大和屋が単独落札したのがきっかけです。
昨年、その農園のオーナーから「とっておきのコーヒーができたよ」と連絡があり、送られてきたサンプルを飲んでみたら、「これはおいしい!これは良いね!!」と社内でも絶賛の声を受けて、販売を即決しました。まさに、これまでの縁があっての賜物と言えるでしょう。

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「エルトパシオ農園」のあるエルサルバドルは、中米にあり、
日本の四国ほどの大きさではあるものの、
高品質なコーヒーの生産地として有名。

―「鑑定士シリーズ」の商品はパッケージの絵も素敵ですね。

平湯 ありがとうございます。
今までのパッケージは、和風の書体が大きくあしらわれ、それが大和屋らしくもありました。新しいシリーズを始めるにあたって、新たなニーズに向けて紹介できればと考えました。そのため、パッケージのイメージを一新しイラストをメインにしようと考えました。
実は……私が絵を描いています。実際に自分が責任をもって仕入れたコーヒーなので(笑)。色合いや色の組み合わせなどで、そのコーヒーを表現しているつもりです。
たとえば今回の「エルサルバドル」は、奥行きのあるベリー感、カシスにも似た果実味を強く感じます。そういった果実味を、紫がかった色合いで表現してみました。
また、多層的で複雑なフレーバーをまといながらも、きれいな後味で終わる印象だったので、その味わいの特徴を、グラデーションで表現してみました。

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コーヒーの味をイメージして、平湯氏が描いた絵をパッケージに。
華やかさ、爽やかさ、奥行きなどの味わいの印象を、色合いで表現している。

―「ドリップパック」も便利ですね。

平湯 こちらの理想としては、コーヒー豆をお買い求めになって、ミルで挽いて楽しんでいただきたい。それが一番おいしい方法ですから。
でも、お客様にもいろいろご都合がありますよね。忙しくて時間がないとか、ミルを持っていないとか。そういった方にもコーヒーに親しんでもらうために、豆以外にも手軽にコーヒーを楽しめる商品として、ドリップパックなどを扱っています。
お湯を注げばコーヒーが淹れられるドリップパックは、贈り物としても人気があります。先様がコーヒー好きと知っていても、「どうやってコーヒーを淹れているか?」など、贈り手側からでは分からないこともありますからね。
そういった意味でも、想いを伝える贈り物としても大変重宝されています。

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手軽に本格コーヒーを楽しめる「ドリップパック」。

―「カフェオレベース」もおいしくいただきました。開発のきっかけは?

平湯 ブラックコーヒーは苦手……というお客様にも、大和屋のコーヒーを楽しんでもらいたいという想いから開発しました。優しい味わいのあるブラジル産のコーヒー100%にこだわったのもそのためです。去年から販売を始めましたが、ご好評いただいております。
実はパッケージにはストーリーがあって、テーマは「ウシの喫茶店」なんです。
あるとき、ちびっこがウシの世界に迷い込んでしまい、歩いているとそこに1軒の喫茶店がある。ウシのマスターが、「ブラックのコーヒーは飲めないだろうから、コーヒー牛乳でも飲む?」と言って、子どもと目を合わせている、というストーリーです。
とくにファミリー層に人気で、お客さまからは「牛乳が苦手なうちの子が、牛乳にこれを足したらゴクゴク飲んでくれる」とコメントいただいています。

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「カフェオレベース」は希釈用の飲料で、
牛乳と1:4で割ってカフェオレがかんたんにできあがる。
ブラジル産の豆100%使用し、ナッツのような香りとコクが感じられる。

―オウンドメディア「deepresso」も楽しく拝見しました。

平湯 ありがとうございます!
コーヒーって知れば知るほど奥が深いんですよ。
でも、その魅力を伝えようと思っても「なんだか難しそう」となってしまうし、とっつきにくい印象を持たれがちです。そんなコーヒーを大和屋ならではの切り口で分かりやすく紹介できれば、という思いで立ち上げたメディアです。
紙媒体だとなかなか伝えきれなかった部分もありましたし、見ていただける方にも限りがありました。「deepresso」は、雑誌のような感覚で気軽に読んでもらえたら幸いです。
産地やコーヒーの味、選び方、おいしい淹れ方など、まだまだ知らないコーヒーの世界を、分かりやすく丁寧に、もっともっと発信していきたいと思っています。

―長く通っていらっしゃるお客様も多いでしょうね。

平湯 昔からお店に通ってくださっているお客さまからは、「大和屋の珈琲じゃなきゃだめなのよ」「炭火は味わいが違うよね」「1度飲むとほかのコーヒーが物足りなく感じてしまう」などのお声をいただきます。違いをわかっていただけているのがうれしいですね。
創業からブレンドを飲んでくださる方もいれば、ずっと深煎りの「トラジャ」じゃなきゃだめという人も。ありがたく思っております。
「お店の雰囲気が落ち着く」「お店に来るとホッとする」というお声もよく聞きます。高崎のお店は木造の古民家風の建物なので、ノスタルジックな雰囲気を楽しんでもらえているのかもしれません。足を運んでいただけるきっかけになっているのかなと思います。
しかし自分だけの目線でやっていると、お客様とのギャップが生まれてしまう可能性もあります。たとえば、オリジナルでコーヒーのお菓子を開発しようとした場合、コーヒーの専門店だから、コーヒーの味わいを強く、濃くしたいと思いがちですが、お客様からすると、「そこまでコーヒーの味は強くしなくてもいい」と思っているかもしれず、ギャップが生まれることもあります。
なので、常連のお客様にお願いして試作品を飲んでいただくこともあるし、子育て世代のスタッフに「飲んでみてコメントもらえるかな?」とお願いすることもあります。
今までの大和屋を支持いただいているお客様を大事にしながら、また新しく「コーヒー鑑定士シリーズ」や「カフェオレベース」など新しい世代を取り込む試みも積極的に行い、両輪で進めていければと思っています。

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「高崎本店」は古民家風のたたずまい。
入り口前のテラスでは、大和屋のコーヒーを使用した
コーヒー味のソフトクリームも楽しめる。

―今後の展望をお聞かせください。

平湯 せっかくいい豆を買っていただいても、そのあとは「どうやって抽出するか?」(=ドリップ)の問題がつきまといます。淹れ方次第で味が変わってしまいます。これまで抽出についてはお客様任せにしてきましたが、これからは、しっかりと抽出方法まで提案できるようにしていかなければと思っています。
そのためには、豆を売るだけでなくカフェスペースも必要かもしれません。ここでおいしいコーヒーを召し上がっていただき、おいしい淹れ方も知っていただき、豆を買って帰って家で楽しんでもらう、という流れをつくっていきたいですね。
コーヒーのあるライフスタイルを提案することで、お客様ひとりひとりが充実した生活を送るお手伝いができればと思っています。

―最後に、社長にとってコーヒーとは。

平湯 そうですね、「多様性」が凝縮された飲み物かなと思います。
私はコーヒーに携わるようになってから、ブラジル、グアテマラなどのコーヒー農園に住み込んでコーヒーの武者修行という経験をして、産地でコーヒーを収穫して、コーヒーを作る苦労や大変さも知りました。人の手で育てられて、収穫され、さまざまなプロセスを経て豆になり、海を渡って日本までやってきます。そこから焙煎されて、お店に並べられて、挽いて、抽出されて、ようやく一杯のコーヒーができあがるんだなと。実際に生産地にいたからこそ、コーヒー豆が一杯のコーヒーになるまで、本当に多くの人たちの手を介してできあがることを実感します。
また、世界にはいろいろ産地があり、気候も違えば栽培の仕方もいろいろある。コーヒーにもいろいろな品種が存在する。コーヒーの器具も、ペーパーがあってネルドリップがあり、サイフォンやエスプレッソもある。それぞれの器具によって抽出方法が異なります。さらに、お菓子との組み合わせでフードペアリングの側面があったり、音楽や本、文化的な側面もあったり、ものすごく懐が深いものだなとつくづく感じます。
これだけいろいろな顔を持っていて、語ることがある飲み物って、ほかにはないのではないでしょうか。
そういうコーヒーの世界の奥深さ、楽しさを、これからも伝えていきたいです。

―お話を伺って、私ももっとコーヒーを楽しもうと思いました。本日はありがとうございました!

珈琲_商品1

「エルサルバドル エルトパシオ農園」(中煎り 200g入り)
※現在このコーヒー豆は販売終了していますが、 「コーヒー鑑定士シリーズ 」 としてシーズンごとに様々な種類の珈琲を販売しております。
▶価格 ¥1,771(税込、送料別)
▶会社名 大和屋珈琲
▶電話 0120-13-6911(平日 10:00~18:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
(月曜日と木曜日に珈琲豆を焙煎し、翌日発送)
▶商品ページ https://www.yamato-ya.jp/yamatoyacoffee32news/11427/
▶オンラインショップ https://shopyamatoya.com/

珈琲_商品2

「カフェオレベース」(500㎖)
▶価格 ¥743(税込、送料別)
▶会社名 大和屋珈琲
▶電話 0120-13-6911(平日 10:00~18:00)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
(月曜日と木曜日に珈琲豆を焙煎し、翌日発送)
▶商品ページ https://shopyamatoya.com/7869/
▶オンラインショップ https://shopyamatoya.com/

<Guest’s profile>
平湯聡氏(株式会社大和屋 代表取締役)

1980年 群馬県生まれ。大学卒業後、ブラジル・グアテマラとコーヒーの生産国に渡り、現地のコーヒー農園に住み込みコーヒーの武者修行。ブラジルにてコーヒー鑑定士の資格を取得。コーヒー専門商社にて研修した後、株式会社大和屋へ入社。新店舗出店や、商品開発など様々な業務を経て、2020年に代表取締役に就任。好きなコーヒーは、思い入れのあるグアテマラ。趣味はアウトドアで、キャンプで子どもと一緒に焚火をするのが夢。

<文・撮影/臼井美伸(ペンギン企画室) MC/栗原里奈 画像協力/大和屋>

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