今回、編集長アッキーが気になったのは、「ふるーつ大福」が人気の岐阜のお店「養老軒」。おいしさの秘密について、有限会社養老軒の代表取締役社長の渡辺幸子氏に取材陣がうかがいました。
ふわふわのお餅に果物がぎっしり! 洋菓子のような「ふるーつ大福」 岐阜ならではの「栗きんとん大福」
2022/05/31
有限会社養老軒 代表取締役社長の渡辺幸子氏
―創業の経緯を教えてください。
渡辺 設立したのは夫の父です。義父には兄弟が6人おり、若い時に、それぞれが地元で「何か人のために商売をやろう」と花屋、呉服屋、酒屋……を始めて、義父は菓子屋をスタートしました。それが、養老軒の始まりです。
―歴史のあるお店で大切にされていることはございますか。
渡辺 私が嫁いできたのが40年前で、当時は夫と夫の姉だけで営んでました。それから本当に人に恵まれて、少しずつ少しずつ成長してきた会社ですから、人との繋がりは一番大事にしています。スタッフとの絆も強みです。たとえば私がインフルエンザにかかった時、何もお願いしなくても、私の代わりに朝早くからスタッフが出社して、お菓子を作ってくれるなど、いつも助けられています。そんな絆があるので、たとえばクレームをいただいたお客様にどんな気持ちで対応したらいいのかといったことも、みんなでよく考えます。怒っていたお客様が、対応によってファンになってくださったこともあり、人は心で繋がってることをいつも感じます。
―スタッフ同士の良い関係がお客様にも伝わるのですね。
渡辺 そうだと思います。「お客様への思いを大福の中に詰めてね」という話を工場のスタッフにもしています。機械のように何も考えずに作ったりすると、商品に思いのなさが出てしまうので、接客だけじゃなく、作る側の丁寧さもお客様に絶対伝わると思っています。
―ご主人ではなく渡辺社長がお継ぎになられたのはなぜでしょうか。
渡辺 一度、夫が跡を継ぎ、5年前に私に代わりました。夫は良き理解者でもあり、アドバイスをもらえる関係です。夫は根っからの職人で、うちのお菓子が今まで守られてきたのは、彼の一徹さにあると私は思っています。
―「ふるーつ大福」を作られた経緯を教えてください。
渡辺 29年前に私が考えて、ちょっと冒険して作り始めた商品です。和菓子は品のないことはやったらダメという世界で、お客様は待つものであり、売りに行くものではないと教えられました。商品も伝統的なもの、保守的なものがメインです。でもサラリーマン家庭で育った私には、その考えに違和感があって、「もっとケーキみたいなものが作りたい」と思い、自分で作り始めたのがきっかけです。そのうち女性スタッフが「面白そうね」と手伝ってくれるようになり、10個から20個、20個から30個、30個から100個とたくさん作れるようになりました。
―当初は本当に斬新で新しいアイデアだったんですね。
渡辺 今では「ふるーつ大福」は当たり前ですが、初めて売った時に「気持ちが悪い」という言葉をたくさんいただきました。ですから、今のこの「ふるーつ大福」が世の中に溢れているのは、私にとってはすごくうれしいことです。本当においしいものはちゃんと支持されていくことが証明できました。
―今では「ふるーつ大福」が会社の看板商品ですね。
渡辺 定番の「ふるーつ大福」から、夏のマンゴー、メロン、桃といった生の果物を使ったものを合わせると大体売上の7割ぐらいを占めています。11月から5月いっぱいまでの販売となりますが、ふるーつ大福だけで1日に4,000個~6,000個くらい作っています。
ふわふわで真っ白なお餅の中に、
苺・バナナ・栗・つぶあん・ホイップクリームが入った、洋菓子のような大福。
―通年で販売されない理由は、フルーツの旬の関係ですか。
渡辺 今は農家さんの技術が進んできて、11月ぐらいから5月いっぱいまではおいしいイチゴが獲れるので、その時期に合わせています。イチゴは愛知県、ぶどうは長野県といった形で、おいしいものを信頼できるJAさんなどから仕入れています。「ふるーつ大福」に限って言えば、バナナと栗とイチゴが入っているので、この3つが合わさった時にいい状態のものが大切です。甘いだけでも駄目ですし、酸味と甘味がいい感じになるよう選んで使っています。
―イチゴ、バナナ、栗という組み合わせは、どうやって決まったのでしょうか。
渡辺 最初はいろんな果物で試行錯誤したのですが、味もさることながら、大福として包めるかという課題もありました。きちんと形になるまで、けっこう時間がかかりましたが、形的にこの3つが入れ方によっては丸くなるっていうことに途中で気が付いて、その組み合わせがベストになりました。生地の固さも難しく、30分離れていたらベチャっとなっていたり、次の日に食べたら固くなっていたり……。中身と生地とバランスよく作れるまでに半年以上かかりました。
その時期に1番おいしい素材を厳選して使用。
―生地だけ食べても、やわらかくておいしいですよね。
渡辺 私はよく「マシュマロのような」という表現をしますが、お餅だけ口に残るわけじゃなくて、果物だけ残るわけじゃなくて、一緒に噛んで飲み込んでいけるっていう固さに生地は仕上がっています。企業秘密で言えないことも多いのですが、卵白でふんわり感を出し、粉をオリジナルで作ってもらい、あのやわらかさを出しました。赤ちゃんのほっぺみたいにふわふわです。
―クリームがたっぷり入ってるのも珍しいですね。
渡辺 「ショートケーキみたいな大福が作りたい」というのが、最初のきっかけとなった気持ちだったので、「洋菓子みたい」とか「ケーキみたいだね」と言われるのが嬉しいです。
―餡にもこだわっていらっしゃいますね。
渡辺 2〜3年前まで夫が炊いていて、今は10年ぐらい修行したスタッフが引き継いで炊いています。夫がやってきたのは、とにかくそこから離れずに丁寧に丁寧に炊くことでした。温度や季節、豆が取れる時期によって仕上がり具合が変わってくるので、何度も何度も灰汁を取って、きれいな色に炊き上げています。本当に手を抜かずに丁寧にやってる仕事ですね。
北海小豆を丁寧に手間隙かけて炊き上げる餡。
―職人さんの腕はすごいですね。栗きんとんの大福もロングセラー商品です。
渡辺 はい。30年くらいになります。栗きんとんは岐阜を代表する食べ物で、栗と砂糖で炊き上げた、こだわりの栗きんとんと小豆が入っています。
柔らかく、こしもある独特な感触の餅生地の中に栗きんとんとつぶ餡が入っています。
―こちらは岐阜のお土産にもピッタリですね。最後に、今後の展望を教えてください。
渡辺 大阪にも出店予定がありますが、大阪の方にもむちゃくちゃ笑って食べてもらいたいという思いがあります。大福は大きい福と書くので、幸せをお届けする気持ちで、もう少し規模も大きくして、全国の皆さんへお届けしたいと思っています。
―おいしい大福を笑顔でいただきます!ありがとうございました。
「ふるーつ大福」(10個入り)
▶価格:¥3,585(税込)
▶店名:養老軒
▶電話:0574-53-6291(9:00~17:00 土日祝を除く)
▶定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ:https://www.yoroken.com/item/105/
▶オンラインショップ:https://shop.yoroken.com/
「栗きんとん大福」(10個入り)
▶価格 ¥2,851(税込)
▶店名 養老軒
▶電話 0574-53-6291(9:00~17:00 土日祝を除く)
▶定休日 インターネットでのご注文は24時間365日受付
▶商品ページ https://shop.yoroken.com/products/detail/18
▶オンラインショップ https://shop.yoroken.com/
<Guest‘s profile>
渡辺幸子氏(有限会社養老軒 代表取締役社長)
1964年生まれ【58歳】。
川辺町で生まれ育ち、地元の高校を卒業したのち、養老軒に19歳で嫁ぎ今に至る。
<取材/垣内栄 MC/中田紗也夏 画像協力/養老軒>