今回、編集長アッキーが気になったのは、氷温熟成「眠り豚はるな」を販売する山梨の岩野精肉店。お肉愛にあふれる株式会社岩野の代表取締役専務・岩野博司氏に、取材陣がおいしさの秘密をうかがいました。
氷温熟成のブランド豚 とろける食感の「眠り豚はるな」 タレいらずのおいしさ「愛しのはるな餃子」
2022/06/03
株式会社岩野 代表取締役専務の岩野博司氏
―創業の経緯を教えてください。
岩野 創業は1951年。祖父が養豚業から始めて、時代や文化の変化とともに卸や小売業に移行していきました。生産者からエンドユーザーまで見届けるという今の商いは、私が大学卒業後に10年間勤めた食品メーカー時代に培った経験が元にあります。弊社では「品質の安定」「供給量の安定」という2つの安定を軸にしています。「いつ購入してもおいしい」「いつお店を訪れても商品がある」というのは、弊社の商品の評価につながると考えています。
豚肉と野菜蒸し(からしマヨネーズ添え)。
お湯にサッと通すだけで氷温熟成で最大限まで引き出された旨みが広がります。
豚しゃぶサラダ(ごまドレッシング)。
とろける食感でペロリとたいらげてしまいます。
―生産者のもとにも足を運ばれてらっしゃいますよね。
岩野 生産現場を見てきた経験は、日本で1番といえるほど自信があります! 私たちは生き物の命を扱うということをなりわいにしていますから、必然的に生きている姿を見ないと安心できないんです。消費者が見えない部分だからこそ、中間業者である私たちが見る必要があると思っています。実際に自分の目で見ることで、“見る目”も養われるんですよ。ある生産者さんに教えてもらったのが「パッと見て、自分が食べたいか食べたくないかを判断基準にしなさい」ということ。“おいしそうに見えるものはおいしい”という感覚も、私が大事にしていることです。
野菜の肉巻き(トウバンジャン添え)にしてもジューシー。
―御社で人気の「眠り豚はるな」について教えてください。
岩野 山梨県は食肉に関しては生産者が少なく、供給に生産が追い付いていないという現状があります。そんな中、25年前に父が開拓したのが群馬県の豚肉生産者からの仕入れルートです。生産の低さを穴埋めできる原料肉があるのは強みになりますし、何より本当においしいお肉なんです。でも、笛吹市のように地産地消の傾向が強い地では、あまり注目してもらえません。もっとこのお肉のおいしさを伝えたい、身近に感じてほしいと感じていたときに出会ったのが、お肉のおいしさを最大限に引き出すことのできる“氷温熟成”。全ての工程を自社で行い、誕生したのが弊社のオンリーブランド「眠り豚はるな」です。榛名山の麓で育った豚が冬眠しているというイメージが、名前の由来になっています。
冷凍野菜不使用。
国産野菜にこだわり、季節や作柄に応じて産地直送キャベツ、玉ねぎなどを使用。
水餃子に。具だくさんの餡とモッチモチの皮のバランスが絶妙。
―氷温熟成とは、どのような技術なのでしょうか?
岩野 お肉が凍らないマイナス5℃~0℃の温度帯でお肉を寝かせると、寒さというストレスによってうま味成分が発生します。自然の摂理を生かしつつ、素材本来のおいしさを生かした技術です。最もおいしく仕上がる5日間という期間で熟成しますが、氷点下で寝かせるため細菌が増えないというのもメリット。鮮度にこだわる父を説得するのに時間はかかりましたが、“ひと味違う”という感覚は父も共感してくれ、商品化の決め手となりました。
冷凍のままで軽くゆでてから焼きます。
焼き餃子はタレなしでおいしい。
―眠り豚はるなを使った「愛しのはるな餃子」も人気ですね。
岩野 時代の流れを見ても、精肉だけを流通させるのには無理があります。けれど、大好きな豚肉を多くの人に届けたい、もっと身近に感じてもらいたい! そんな思いから誕生した商品です。
―こちらはどんなこだわりがあるのでしょうか?
岩野 原料のお肉は100%、眠り豚はるなを使用。肩肉に背脂をバランス良く配合し、食感とうま味を出すため中挽きにしています。食感や色味が悪くなる冷凍の原料商材は使わず、野菜は全て国産の生野菜。厚みのある皮を使用しているので、もっちりとした食感も特徴です。
―素材のうま味がしっかり感じられるから、タレがいらないんですね。オススメの食べ方はありますか?
岩野 焼き餃子はもちろん、ボリュームがあるので水餃子にしてもおいしいです。鍋に湯を沸かして沸騰したら餃子を入れ、餃子が乳白色になったらゆであがり。簡単で5分ほどで出来上がるので、ふだん料理をしない方にもオススメですね。スライスしたショウガやミョウガをトッピングし、お酢をちょっと垂らして食べると小籠包のような感覚で食べられます。
―商品開発の他に、お客さま向けのイベントも企画されていますが?
岩野 弊社のスローガンは、「目指すはお客さまの喜び・感動・笑顔」をつくること。私たちが提供したお肉は、何かしら調理過程を経てお客さまの口に入りますよね。でも、提供したお肉がお客さまのテーブルシーンでどう変化し、どう彩るのかイメージできないと商品開発につながらないと思うんです。地域の皆さまへの感謝の気持ちを込めてスタートした「100人バーベキュー」は実際にお客さまがお肉を食べる姿を見ることができますし、私たちスタッフの“栄養”にもなっているんです。他にも、お客さまに競りを体験していただく「ミートオークション」や、はるな豚を使った子ども向けのソーセージ教室なども開催しています。私たちが子どもの頃と違っていろいろな流通形態のある時代だからこそ、時代に合った専門店の在り方を発信していきたいと思っています。
―生産者への愛、家畜への愛、地元のお客さまへの愛が感じられます。
岩野 僕たちは生産者とエンドユーザーの中間にいる役割なので、どちらかに偏りすぎてはいけません。しかし、身近であり日常であるエンドユーザーに対し、生産者は何もしなければ非日常になってしまう関係です。「岩野のためだったら」と思ってもらうためにも、生産者さんとのコミュニケーションも大事にしていきたいですね。
―今後の展望や夢を教えてください!
岩野 弊社には、普遍的な価値観が2つあります。1つは、私たちの商品とサービスでお客さまを幸せにすること。もう1つは今ある商品、もしくはそれ以上の商品やサービスを未来永続的に提供し続けることです。そのために自らが主体的に変化し、変わらないもののために変わろうという意欲は今後も大切にしていきたいと思っています。今は精肉中心ですが、加工も含めてその先の商品の供給ができる取り組み、お肉以外の食への転換も頭に入れながら時代に合った専門店として変化していきたいですね。
―心意気が伝わるお話をありがとうございました!
「氷温熟成眠り豚はるな-しゃぶしゃぶ用お試しセット」
価格:¥1,400(税込)
店名:岩野精肉店
電話:055-262-2732 (9:00~17:00 水日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://iwano1129.com/?pid=99575602
オンラインショップ:https://iwano1129.com/
「愛しのはるな餃子」
価格:¥1,080(税込)
店名:岩野精肉店
電話:055-262-2732 (9:00~17:00 水日祝を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://iwano1129.com/?pid=152435762
オンラインショップ:https://iwano1129.com/
<Guest’s profile>
岩野博司氏(株式会社岩野 代表取締役専務)
1973年山梨県生まれ。専修大学卒業後、伊藤ハム株式会社入社。10年間、国産豚、国産牛の生産・仕入れ分野に従事する。2005年株式会社岩野入社。2013年には小売店舗の再構築を図り、専門店としての機能以外に地域コミュニティの役割としてキッズキッチン、各種教室、100人BBQ、ミートオークションなど多彩なイベントを開催。2021年より代表取締役専務。
<取材/垣内栄 撮影/坂口明子 画像協力/岩野>