出身地の地名を社名に掲げ、横浜を中心に展開するさつまあげ専門店。防腐剤や保存料無添加、手作りの温かさや、食べる人を大切にする姿勢が、優しい味わいに表れています。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社能登屋 代表取締役社長の北出貴祥氏に、取材陣が伺いました。
昔ながらの石臼製法を守って作る練り製品。できたてのおいしさは格別「さつまあげセット“語(かたらい)”」
2022/06/27
株式会社能登屋 代表取締役社長 北出貴祥氏
―「能登屋」の社名は創業者のお生まれにゆかりがあるとか?
北出 能登半島で生まれた祖父が、おそらく集団就職のような形で横浜に移り住んだようです。かまぼこ店で仕事を覚え、1937年9月15日に「大口かまぼこ」の名で創業。1955年に、創業地ではなく出身地名を冠した現社名に変更しました。祖父は几帳面な人で、創業時から細かくメモした手帳が残っています。創業日のことは「客は店先に山の様にあり、(中略)魚少ナク利はうすけれど なみだの出るほど嬉しく有難く……(原文まま)」とありますね。
創業者の手帳。その想いは3代目までしっかり受け継がれている。
―その後を父上が継がれ、3兄弟の長男である北出社長も当然……。
北出 いえいえ、継ぐ気はまったくありませんでした(笑)。父への反発心があったかもしれませんね。大学では物理学を専攻しました。ところがあるとき、台湾人の友人が「繋いでいくべき大切なものがあるのは幸せだよ」というような意見をくれて、幼いころから見てきた工場の様子や従業員のがんばりが頭に浮かびました。今では、「食べるものは命を育てるもの」という父の考えをそのまま引き継ぎ、できるだけ安心安全な商品を、祖父の頃からのレシピや製法を大切に作り続けています。
魚をおいしく食べる加工技術である練り製品を通して、日本人の食生活に貢献したいと入社を決意。
―魚肉をペーストにするのは今でも石臼を使われているそうですね。
北出 すり身になった商品を仕入れる方法もありますが、やっぱり生の魚の味わいを大切にしたい。石臼にかけてやさしく空気を含ませることで、なめらかで弾力のあるすり身になります。国産の天然塩を必要最低限に、あとはでんぷんなどを加えて完成です。人工甘味料や保存料といった余計なものは加えません。
石臼(すり鉢)は能登屋の味を保つのに欠かせない。
―ベースのすり身に様々な食材を組み合わせて、多くの商品ができているのですね。
北出 「語」は、さつま揚・ねぎ揚・えび巻・えだまめ・野菜揚・きんぴら揚・五目揚の7種類を2個ずつ詰め合わせたものです。定番品も能登屋自慢の商品もお楽しみいただけます。
箱を開けると、大きさも形も表情も様々なさつまあげたちが並び、期待感が高まる。
―それぞれ形や大きさ、具のボリュームなどが異なりますね。
北出 合わせる食材によって、味わい、食感、成形など、すり身とのバランスが非常に難しいのです。素材によっては豆腐を加えたり形を工夫したり。エビをそのまま使ったえび巻は、手作業でないとうまくいかないので、1本1本エビにすり身を巻き付けて作っているんですよ。
(上段)左からきんぴら揚・野菜揚・五目揚
(下段)左からさつま揚・えび巻・えだまめ・ねぎ揚。
―おすすめの食べ方を教えてください。
北出 私は、なにもせずそのまま食べるのが1番気に入っています。良質な植物油で揚げてあるので、冷たいまま召し上がっても油っこさは感じないのではないでしょうか。大根おろしやしょうが醤油をおすすめしています。温める場合、オーブントースターやグリルでさっとあぶると香ばしさが出ますし、鍋料理や煮ものでは、魚のうまみがジュワっと出て、汁までおいしくなります。
そのまま大根おろし&しょうが醤油で食べるもよし、温めるもよし。
―シンプルながら魚のうまみを感じられる基本のすり身は、どんな食材にも合いそうで、可能性は無限ですね。
北出 実はスイーツの流行に乗じた「ねりトッツォ」や、おつまみの定番をまねた「アスパラベーコン」などの変わり種を、店舗販売のみ、期間限定で出したりもしているんですよ。アイデアは、なるべく現場のスタッフに出してもらって、若い世代にも喜んでもらえる商品づくりと、社員のモチベーションアップにつながれば、と思っています。
―すり身の可能性だけでなく、能登屋さんやさつまあげ業界の可能性も無限ですね!
北出 練り製品という日本の伝統食を、後進に伝えなければと思う気持ちはありますね。おかげ様で、「こんなにうまい練り製品は初めて食べたよ」なんて、わざわざお電話をいただくこともあるほどで、商品には自信を持てます。若い方々にも手に取っていただきながら、この技術を繋いでいきたいと思っています。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「さつまあげセット“語(かたらい)”」
価格:¥2,819(税込)
会社名:さつまあげ、魚肉練り製品の横浜能登屋オンラインショップ
電話:045-431-1236(9:00~17:00)
定休日:木曜 ※インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品ページ:http://www.notoyanet.com/shopdetail/002000000003/002/O/page1/price/
オンラインショップ:http://www.notoyanet.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
北出貴祥氏(株式会社能登屋 代表取締役社長)
1964年神奈川県生まれ。東海大学理学部卒業後、コープかながわに入社し、3年間の修行期間を経て1989年(株)能登屋へ入社。2013年に同社代表取締役社長に就任。2015年横浜髙島屋店や新横浜フードメゾン店等に出店。現在は通信販売も含め、横浜を中心に7店舗を展開。2022年度より大口通商店街協同組合の理事長として地元商店街の活性化にも注力している。
<文・撮影/植松由紀子 画像協力/能登屋>