今回、編集長アッキーの目に留まったのは、創業75年、「かりんとうの本当のおいしさを伝えたい」と真摯にかりんとうの製造を続ける「東京カリント」。”本当のおいしさ”を作るためのこだわりについて、東京カリント株式会社代表取締役社長の西村光示氏に取材陣がお話を伺いました。
”つくりたて“を当日出荷! 東京カリントの「揚げたてかりんとう」、人気の3品を食べ比べできる「レギュラーセット」
2022/06/21
東京カリント株式会社代表取締役社長 西村光示氏
―創業のきっかけについて教えてください。
西村 私の家はもともと近江商人で、百貨店を営んでいました。戦後、ものがなくなり、商売も仕切り直しだということで祖父・西村久次郎が、京都で個人企業西村商店を立ち上げたのが始まりです。
―当初から、かりんとうを作っていたのですか?
西村 戦後、人々は甘いものを求めている。そう考えた祖父は最初、かりんとうや甘納豆、あられを仕入れて販売し始めたんですね。やがて、あられ部門とかりんとう部門を分社化。西村商事は、かりんとう部門として「東京カリント」を設立し、自社で製造を開始。現在に至ります。
―御社のモットーは「伝えていきたい菓子がある」と伺いました。かりんとうは日本の伝統的なお菓子なのでしょうか。
西村 かりんとうの起源については諸説ありますが、奈良時代に遣唐使が持ち帰った唐菓子が現在のかりんとうの原型だと言われています。その後、京都を中心に高級菓子として発展しましたが、当時、砂糖は大変な貴重品だったため、それを口にできるのは上流階級に限られていたんですね。庶民が口にできるようになったのは江戸時代のことです。それでも白く精製された砂糖は上菓子のみに使われ、庶民の口に入る駄菓子類に使われたのは精製度の低い黒砂糖。そうした流れの中で、1875(明治8)年に浅草仲見世の飯田屋が、地粉をこねて棒状にしたものに黒砂糖をつけた菓子を売り出したところ大評判となり、下町一帯に広まった。それが「黒かりんとう」の始まりです。
かりんとうに1100年以上もの歴史があったとは!
―かりんとうは駄菓子の代表格。戦後、平和を取り戻した人々は、その懐かしい味を求めていたのでしょうね。
西村 祖父が弊社を立ち上げた頃は、かりんとうを製造する会社が全国で数百社もあったそうです。ただ、当時は「甘ければOK」という空気があって、粗悪なものも多かったと聞いています。そうした中、祖父は「このままでは、かりんとうがすたれてしまう」との危機感を抱いて、おいしいかりんとう作りにこだわったのです。
―久次郎さんは「伝えていきたい菓子がある」として、かりんとう作りの伝統だけでなく「おいしさ」も守り続けたのですね。
西村 はい。祖父が考える「おいしいかりんとう」とは、食感がやわらかく品のいい甘みを持つかりんとう。かりんとうの生地は小麦粉に砂糖とイーストを加えて作ります。イーストが砂糖を栄養にしてガスを発生し、生地をふくらませるのですが、砂糖は溶けにくいのでどうしてもふくらみにばらつきが出てしまい、それが食感の悪さにもつながってしまう。そこで祖父は、砂糖の代わりに生地に溶けやすい蜂蜜を使ったんですね。すると、生地がまんべんなくふくらみ、食感もやわらかになりました。しかし、当時、蜂蜜はとても高級だったのでかりんとうの値段が高価になりすぎ、最初は菓子業界でもまったく見向きもされなかったそうです。それでも、「おいしい」という評判が徐々に広まり、結果的に爆発的大ヒットに。それが、今でも弊社の売上高ナンバー1の「蜂蜜かりんとう」です。
東京カリント、定番人気の3商品。
蜂蜜入りかりんとう「蜂蜜かりんとう<白蜂>」「蜂蜜かりんとう<黒蜂>」に、
5種類の野菜の粉末が入った「野菜かりんとう」
ビートグラニュ糖と三温糖を炊き込んだコクと深みのある白蜜を絡め、
ビートグラニュ糖をふりかけて仕上げた「蜂蜜かりんとう<白蜂>」は、ソフトな食感。
まろやかでコクのある黒蜜をからめた「蜂蜜かりんとう<黒蜂>」
「野菜かりんとう」はさつまいも、かぼちゃ、にんじん、ほうれん草、たまねぎの味が楽しめる。
ポリポリ食べやすく、子どもたちにも大人気!
―蜂蜜を使うほかに、おいしいかりんとう作りのために、どのようなことにこだわっていらっしゃるのでしょう。
西村 「大釜三度揚げ」です。おいしいかりんとうの揚げ方を模索していた祖父が、ある日、天ぷら屋さんに行った時のこと。天ぷら屋さんではネタのおいしさを引き出すために、ネタによって揚げ油の温度や揚げ方を変えていることを知ったんですね。そのことにヒントを得て、祖父は油の温度を変えながら3回揚げるという製法を考案。それによって、味わいがよく、ソフトな食感のかりんとうが誕生したというわけです。この「揚げ」の工程がかりんとうの肝で、とくに1回めの釜に入れる瞬間が大事。私はそれを「かりんとうがうまれる瞬間」と言っています。そこから2回め、3回めと揚げることで生地を育てていき、最後に蜜をかけて味を決める。蜜がけは、大事なわが子、すなわちかりんとうを世に送り出すために衣装を着せてあげる、といったところでしょうか。
大切な「揚げ」。切った生地を大釜の米油で3回揚げる「大釜三度揚げ」が東京カリントのこだわりのひとつ。
1つめの釜でふわっとふくらませ、2つめの釜で中まで火を通し、3つめの釜でカラッと仕上げる(三度揚げ)
黒蜜作り。黒糖はカルシウム、カリウム、鉄分を含んだ天然のアルカリ性食品!
―”かりんとう愛”あふれる西村社長の、イチオシ商品は?
西村 全商品、と言いたいところですが(笑)、ここはひとつ「揚げたてかりんとう」を。野菜や果物と同じように、かりんとうにも食べ頃があります。基本的にはやはり、揚げたてがいちばんおいしい。かりんとうの種類にもよりますが、当社の場合、細いタイプは揚げたてが1番、というものが多いですね。生地がまだほくほくしているところに蜜がとろけた状態で、そのおいしさは何とも言えません。まずは定期的に開催している即売会(現在は感染拡大防止のため休止中)で、その日の午前中に揚げたものを午後に販売する、ということからスタートしました。ただ、小売店に輸送するとなると少し時間がかかる。そこで、太いかりんとうの出番です。実は、太いものは作った直後より、少し時間をおいたほうがおいしいタイプが多いんです。なぜなら、揚げた直後は蜜の中の水分が生地に入っていくので、生地が少し湿っているんですね。その水分が、時間とともに生地から蒸発して蜜に戻ります。すると、蜜の部分はしっとりして、生地の部分はサクサクしている。この、揚げたてのおいしさをみなさんにお届けしたいという思いを追求した結果、現在の「揚げたてかりんとう」ができあがりました。
工場直送、限定された店舗のみでの販売。
オンラインショップは予約注文限定(毎週月曜日16時注文締切※)というスペシャルな「揚げたてかりんとう」
※予定が変更になる場合があります。最新のスケジュールはオンラインショップで確認を。
―「揚げたてかりんとう」は週に一度の販売、しかもオンラインショップでは予約制。スペシャル感があって、いいですね。
西村 弊社がこだわる、かりんとうの「本当のおいしさ」を知っていただけるはずです。ぜひ、味わってみてください。
―2021年10月15日に、「最大のかりんとう」でギネス世界記録を樹立されましたね。あらためて、おめでとうございます!
西村 ありがとうございます。ギネス世界記録™への挑戦は、創立70周年記念として立ち上げたプロジェクトでした。製作に向けて前年9月から弊社のかりんとう製造に携わるさまざまな部門の熟練した職人たちが研究を重ね、重さ6.380kg・長さ1,052mmの「蜂蜜かりんとう 黒蜂」が完成し、見事、「最大のかりんとう」として認定していただきました。ちなみに、揚げるのには数時間かかり、しかもかりんとうが重いので扱いが非常にむずかしかった。職人たちの努力と根気の賜物です。
―それにしても、なぜ70周年の記念プロジェクトとしてギネス世界記録に挑戦されたのですか?
西村 70年、かりんとう作りを続けてこられたのは、消費者のみなさんはもちろん、お取り引きさせていただいている企業様、原材料や包材、資材などを納めていただいている仕入先の企業様、そして、弊社のかりんとう製造の伝統を守り繋いでくれたOB・OG社員、そして現社員、すべての方々のおかげです。そのことに対する感謝の意をどうやって表したらいいか、そして今後も、多くの方々にかりんとうの本当のおいしさをお伝えしていくために何をしたらよいのか社内で考え、ディスカッションした結果、「かりんとうでギネス世界記録に挑戦できるのは我々しかいない」ということになったのです。大きなかりんとうを作るための器具を新たに作ったり、生地の切断や揚げの工程の工夫など製造現場の人間が経験と知識と技術を結集して臨んだのはもちろん、直接製造には携わらない社員たちも見えないところで支え合っていましたね。日頃の感謝を込め、そして、さらに新しいおいしいかりんとうを作っていきたいという気持ちを込め、まさに一致団結しての挑戦でした。
東京カリント70周年 ギネス世界記録認定「世界最大のかりんとう」お披露目記者発表会
―最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
西村 弊社は、かりんとうのおいしさにこだわるのはもちろんのこと、お客様に安心してかりんとうを召し上がっていただくために、アレルゲン管理や成分分析、経時・保存試験なども徹底して行なっています。おいしさの部分で言えば工場の品質管理体制も大切で、FSSC22000(国際食品安全イニシアチブによって承認される「食品安全システム認証」)を群馬工場、川越工場ともに取得。また、お客様に製品の安全性情報をご提供するべくトレーサビリティシステムも構築しました。とはいえ、いずれも目標は達成していません。まだまだ努力をして成長し続けなくては。それが大きな課題です。さらに、かりんとうの魅力を世界じゅうの人たちに知っていただきたい。かりんとうという日本の菓子文化を伝えたい。長い道のりになると思いますが、がんばっていきたいと思っています。
―海外の人たちがかりんとうを食べている姿を想像するだけで、ワクワクします。貴重なお話、ありがとうございました。
「レギュラーセット」 3種(蜂蜜かりんとう<白蜂>100g、蜂蜜かりんとう<黒蜂>100g、野菜かりんとう100g)×2袋
価格:¥1,188(税込)
店名:蔵屋久兵衛
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.tokyokarinto.co.jp/view/item/000000000078
オンラインショップ:https://shop.tokyokarinto.co.jp
「揚げたてかりんとう」(144g×3袋)
価格:¥1,080(税込)
店名:蔵屋久兵衛
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.tokyokarinto.co.jp/view/item/000000000066
オンラインショップ:https://shop.tokyokarinto.co.jp
<Guest’s profile>
西村光示氏(東京カリント株式会社 代表取締役社長)
1971年、京都府生まれ。慶應義塾大学卒業後、旧 株式会社菱食(現 三菱食品株式会社)に入社。同社退社後、1998年に東京カリント株式会社に入社。2014年に同社の5代目代表取締役社長に就任。2021年10月の巨大かりんとうの製作ではプロジェクトの総合プロデューサーとして指揮を執った。
<文・撮影/鈴木裕子 MC/津田菜波 画像協力/東京カリント>