高知といえば思い浮かべる人も多いのではないでしょうか、カツオのたたき。一本釣りと瞬間冷凍による鮮度保持、そして伝統的な藁焼きにこだわって作られるカツオのたたきが非常に美味だと聞きつけました。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった明神水産株式会社 代表取締役の明神正一氏に、取材陣が伺いました。
伝説の漁師が太鼓判を押す! 伝統の一本釣りカツオを藁で焼いた「藁焼き鰹たたき2節セット」
2022/07/07
明神水産株式会社 代表取締役 明神正一氏
―明神社長は、漁師歴50余年の間に、10回以上も水揚げ日本一となられた伝説の船頭。カツオの一本釣りには並々ならぬ想いをお持ちではないでしょうか?
明神 いえいえ、一本釣りは昔ながらの漁法ですね。テレビなどでご覧になったことがありますか? 返しの無いつり針で引っ掛けて、高く跳ね上げると魚が外れるので、そのまままた海に針を投げ込む動作の繰り返しです。群れをぐるっと網で囲んで捕える巻き網に比べて効率は悪いんですが、将来のために乱獲・誤獲を防ぐとか、海洋環境を守るとかの点で自然に優しい漁法ではないでしょうか。魚体が傷つきにくいし、冷凍ムラも起きない。うちは1973年に父が創業して以来、一本釣り一筋です。
短い時間でいかにたくさん釣り上げることができるか。
ベテランは2秒に1匹のスピードとも。
―一本釣りのカツオは、そのまま船上で冷凍して鮮度を保つんですね。
明神 ブライン凍結といって、マイナス20℃に冷やした高濃度の塩水に漬けて生きたまま瞬間冷凍し、マイナス50℃で芯まで凍らせます。水分が結晶化する温度をあっという間に通過するので、細胞組織の破壊が食い止められます。解凍したときはほぼ釣り立ての状態でドリップも出ないんですよ。一本釣りの場合は1本ずつ凍結槽に投入するので温度が保たれますが、巻き網の場合は1度に大量の魚を投入するため、凍結槽の温度が上がってしまうこともあるようです。
生きたまま瞬間冷凍し鮮度を保つ。
―カツオ漁にシーズンはありますか?
明神 漁場はカツオの回遊域全体なので、南西諸島から三陸沖あたりまで、カツオの群れを追いかけて航海します。2月頃に出航し、2~5日間隔で水揚げをしながら、11月頃まで移動しながらずっと漁をしているんですよ。春は「のぼりガツオ」「初ガツオ」といって、身が引き締まりあっさりとした味、秋の「戻りガツオ」「トロカツオ」は脂が乗ってもっちりした口当たり……獲れる時季によって味わいが変わることはよく知られていますね。
―刺身でも食べられるカツオを、高知では「土佐づくり」、たたきにして食べるんですよね。
明神 昔の高知の漁師は、船の上で……もちろん藁は使いませんが……表面を炙って食べていたそうです。今はもちろん水揚げしてから焼きますが、炭焼きやガスバーナーなどいろいろある中で、うちはやっぱり昔ながらの藁焼きです。800~900℃という高温の炎が包み込んで一気に焼き上げるので、中は凍ったまま鮮度を保てるし、藁独特の香ばしい香りも良いと思います。
表面を強火で炙ることでうまみと香ばしさが増す。
―すべて藁焼きというのは技術や設備などの点で大変な部分がありますか?
明神 藁は一瞬で燃え尽きてしまうので、常に補充しながら焼き続けます。先述の通り、カツオは季節によって水分や脂の量、肉質が違うし、気温や湿度によっても火の状態が変わりますから、時々の条件で焼き方を変え、その日その日の最上をめがけています。
藁焼きに欠かせない藁を大量に調達するのが難しくなってきたので、農業の会社を作って、とうとう藁も自前で生産するようになりました。
オリジナルで作った藁焼き設備。自前の藁で焼き上げる。
―水産会社が農業を!?
明神 藁確保のために始めた農業ですが、おいしい米や、グループ会社の飲食店で提供する野菜や、カツオの薬味のミョウガも作るようになりました。高知県内に増えつつある耕作放棄地の開拓、若手農業従事者の発掘にもつながっています。米を作って藁ができ、カツオを焼いた藁灰を肥料に野菜を作るという、環境に良いサイクルもできつつあります。気が付けばSDGsの活動になってたという感じです(笑)
―漁から加工まで、伝統とカツオ、そして自然環境を大切にされていることがよく伝わります。いただく側も、敬意を払っておいしくいただかなくては。おすすめの食べ方は?
明神 土佐流は塩なんです。こんなことを言うと笑われちゃうんですが、実は私、漁師ながら魚が苦手であまり食べなかったんです。しかし、藁で炙ったカツオを土佐の粗塩で食べたらなんとも美味で、一瞬にして虜になりました。シンプルで、カツオのうまみを最も感じられる食べ方ではないでしょうか。
シンプルに味わうなら粗塩で。薬味も不要。
―土佐づくりといえば、たっぷりの薬味にポン酢というイメージがありました。
明神 もちろん、商品にはオリジナルで作ったゆず風味のポン酢だれも同梱していますから、食べ方はお好みで。高知はゆずも特産品。同じ土地のもの同志、よく合います。薬味としてはほかにミョウガ、ネギ、生姜、大葉などでしょうかね。食べ方アレンジのチラシも参考にしてみてください。
好みの薬味をたっぷりどうぞ。
たれとおろししょうが、おろしにんにくがセットになっていて、準備がなくとも楽しめる。
―水産業に農業、飲食業、そしてECサイトと事業を拡大中の明神グループ。今後の展望は?
明神 私は漁師で終わるつもりで経営側に回るなんて思ってもいませんでしたから、あまり大きなことは言えないんですが(笑)。いろいろな魚をお取り寄せして食べてみると、身内の欲目が多少あったとしても、うちの商品はかなりおいしいと思うのです。藁焼きや刺身の単品だけでなく、丼料理など商品展開を広げていきたいですね。
それから、「自然とうまくやっていく。」をキャッチコピーとしているからには、カツオの生きる海洋環境も、高知の自然も農業も、持続可能な取り組みを続けていきたいと思っています。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「藁焼き鰹たたき2節セット」
価格:¥5,616(税込)
店名:明神水産公式オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.myojinsuisan.com/SHOP/WT-1.html
オンラインショップ:https://www.myojinsuisan.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
明神正一氏(明神水産株式会社 代表取締役)
1948年高知県幡多郡黒潮町(旧佐賀町)に6人兄弟の末っ子として生まれる。18歳で漁師となり、1977年より2019年11月、70歳で漁師を引退するまで漁労長(船頭)を務める。2019年12月31日、71歳で現職に就任。誰よりもカツオに詳しく、美味しい商品をお届けするために尽力している。
<文・撮影/植松由紀子 MC/津田菜波 画像協力/明神水産>