「冷蔵庫にいつも入っているわけではないけれど、これがあると嬉しくなる」というものって、何ですか?アッキーにはいくつかありますが、そのひとつが「イカの塩辛」です。ご飯にのせてもおいしいし、もちろん酒のあてにも最高です。
今回、アッキーが気になったのは、函館にある水産加工製造の会社、株式会社布目の「社長のいか塩辛」。4代目社長の堀内雅氏に、人気の理由や、商品づくりのこだわりについて、取材陣がお聞きしました。
社長が特別な手土産にしていたものを、商品化。 株式会社布目の「社長のいか塩辛 極」がすごい!
2022/06/30
株式会社布目代表取締役社長 堀内雅氏
―昨年、創業80周年を迎えられたそうですね。
堀内 はい。創業者の布目賢治という方は、もともと富山出身でしたが、水産関係の会社をやっていた親戚を頼って、函館の入船町にやってきたそうです。昔は「北前船」といって、日本海から北海道に物資を運ぶ船が活躍していたんです。その関係で、北陸の人が北海道に移住することが多かったのです。
その布目氏が1941年に独立して「布目賢治商店」を立ち上げました。
冷蔵庫施設を導入したことで、1969年に「布目水産食品冷蔵株式会社」と社名変更し、さらに1992年に「株式会社布目」となり、会社のロゴマークも一新しました。
「海流が交わる場所」「無限大」の2つの意味が込められたロゴマーク。
―会社のロゴマークは印象的ですが、どんな意味があるのですか?
堀内 函館は、対馬海流、リマン海流、日本海流、千島海流という4つの海流が合わさるところで、寒流と暖流がぶつかるため、好漁場になっています。弊社のロゴマークには、「海流が交わる場所」という意味が込められています。
さらに、「将来まで限りなく進む」という無限大の意味もあるんです。
本物志向の人に人気の「社長のいか塩辛 極」。
―2021年に社長に就任されたそうですね。
堀内 はい、私で4代目となります。
出身は函館で、以前は25年間銀行に勤めていました。転勤が多くて、東京や北陸など2年半に1回くらいのペースで転勤していました。実は父親も転勤族だったので、数えてみたら47歳までに19回も引っ越ししているんですよ。おかげで、環境に順応する力は高いかもしれません。
ご縁があって、2004年に布目に入社しました。函館に住んで18年になりますが、野菜も、海の幸も豊富で、安くてものすごくおいしい。交通の便もいいですし、北海道内では1番雪が少ないし、夏も涼しくて過ごしやすい。あちこち住んだなかでも、函館は1番住みやすい街だと思います。
―異業種への転職で、ご苦労はありましたか。
堀内 通常は、銀行からくると経理とか総務とかを担当することが多いですよね。
でも、私が入社した当時は、ちょうど会社がISOの取得を目指していた時期で、その担当にさせられたのです。私には全く知識のない分野でしたので、毎日出社してから工場に入り、製造の流れを把握すると同時に、衛生管理についても1年間無我夢中で勉強しました。
2013年には、国際的な食品安全マネジメント認証のFSSC 22000を、営業所を含めた全部門で取得することができました。
経営者でこういう経歴がある人は、あまりいないかもしれませんね。昨今では、こうした衛生管理への取り組みがますます必要不可欠になっていますから、いい経験をさせていただいたと思っています。
―開業当初から引き継がれている企業理念はありますか?
堀内 「ハイテースト&ハイライフ」です。
私は、うちの会社の特徴は「馬鹿正直」というこのひと言に尽きると思っています。どんな状況でも、「高品質でいいものをつくろう、品質は落とさない」という意識でやってきました。
いくらいい商品でも、売れなければすぐ次に切り替えていくという店も多いと思いますが、うちは辛抱強く作り続けて、時間をかけてヒットするというパターンです。馬鹿正直にやっていると、やがて芽が出るということはやっぱりあるんですよ。原料も、従来のものからずっと変えないで、同じものを使い続けています。
「ショップチャンネル」で紹介している松前漬けは、20年間全く同じ商品で、変わらずに売れ続けています。1日の売り上げが年間でトップだそうで、リピーター率も80%以上と非常に高いのです。
それをきちんと維持していくということが大切だと思っています。
原料から製造方法までこだわり尽くした、「社長のいか塩辛 極」。
日本酒に合う濃厚な味わい。
―「社長のいか塩辛 極」は、イカの塩辛にしては値段が高めですが、ヒット商品だそうですね。
堀内 当社の看板商品である通常の「社長のいか塩辛」は今から25年くらい前に先代の社長がつくったのですが、全国的にとても売れている商品です。国産の新鮮な真イカ(スルメイカ)と沖縄のシママース塩を使い、熟練した技術で作り上げています。
じつはもともとこの商品は、社長が得意先回りをする際の手土産として、特別に製造していたものなのです。保管場所も決まっていて、「社長の塩辛」と皆が呼んでいました。
当時はイカがたくさん獲れていたので、冷凍ではなく生イカで作っていました。それが「おいしい」「もう1度食べたい」と評判になりまして。「なぜ市販しないの」と言われて、「じゃあ作ろうか」ということで、商品化が始まったんです。
だから、ネーミングもそのまま「社長のいか塩辛」となりました(笑)。おじさんのイラストも、社長のイメージで描いてもらいました。
そして今から約5年前、従来の「社長のいか塩辛」を更に厳選した原材料を使い、どこにもない塩辛を作ろうということで開発したのが、「社長のいか塩辛 極」です。
それ以前は、塩辛でひと瓶1,200円以上する商品なんてありえなかったのです。でも、「いいものを作れば絶対売れる」と信じ、こだわり尽くした商品にしました。
イカは、鮮度がよくいちばん大きいものを使っています。わた(内臓)を取り除き、足は使わず胴肉と耳の部分だけで、開いたイカの生ゴロ(肝臓)を使い手間暇もコストもかかるので、一般的にはなかなかできないことです。塩も、選りすぐった沖縄の塩を使っています。
おかげさまで本物志向の方などに受け入れていただき、順調に売り上げを伸ばしています。
「社長のいか塩辛 極」は化粧箱入りで、贈り物にもぴったり。
―パッケージも、中身に似合って立派ですね。
堀内 イカの塩辛で、化粧箱に1個だけ入っているものなんて、なかなかないですよね。
しかもビンの形にもこだわっていて楕円形なので、普通のビンの何倍もコストがかかっています。
中身に自信があるから、外側もその価値に見合ったものにしなくてはいけないと思ったのです。
いつも社員に言っていることなんですが、食べたことのない人に手に取ってもらうためには、まずは見た目が大切だよと。
手土産に持っていくのに便利なように、手提げ袋にもこだわって、1個入りと2個入りではサイズを変えています。
名前の通り黄金色に輝いている、「本数の子 黄金松前」。
―「本数の子 黄金松前」も、大きい数の子が入っていて贅沢な松前漬けですね。
堀内 北海道・道南産の昆布とスルメを使用し、数の子をふんだんに加えています。バラ子を含めると、全体の量の60%が数の子なんですよ。メインになる数の子は、ドイツ産の一本羽です。毎年、仕入れ担当者が現地に出向いて、質のいい数の子を選んでいます。
スルメは、国産スルメイカの耳と胴体部分を乾燥させ、水分を飛ばすことで旨味を凝縮しています。昆布は、函館市の南茅部地区で採れる白口浜昆布。肉厚でダシが澄んでいて、深い味わいの最高級昆布です。
数の子、昆布、スルメがしっかりタレを吸い込んで旨味がアップし、数の子がきれいな黄金色になるので「黄金松前(こがねまつまえ)」という名前にしています。
黄金松前の攪拌は、機械化できない作業。手作業でていねいに行う。
―製造工程は、手作業の部分もあるのでしょうか?
堀内 現在、ほかの商品はだいたい機械化できていて、攪拌も充填も全部機械でできます。でも「本数の子 黄金松前」だけは、機械で作業すると数の子が折れてしまうので、手作業でないとできません。
数の子の塩抜きから攪拌、包装まで、工場の職員がひとつずつ折れないように手で入れて、重さを調整して、仕上げています。
お酒の肴にもおいしいですが、お茶漬けにしたり混ぜご飯にするのもおすすめですよ。
2013年に完成した新社屋。たくさんの人の工場見学を受け入れている。
―2013年に新築された工場は、「見せる工場」がコンセプトだそうですね。
堀内 取引先のお店や商社などの方に見ていただくことはもちろん、地元の小学校などを中心に、社会科見学の受け入れも積極的に実施しています。(現在はコロナ禍のため、一時休止中)。2019年は、年間で2,053名の方に工場見学に来ていただきました。
海産物の製造について知識を深めてもらいたいという目的もありますが、この業種に対しての「臭い・汚い・キツい」というイメージを変えたいという目的もあるのです。年々、人材確保が厳しくなっているので、状況改善につながればと願っています。
さらに、工場を総平屋の建物にしたことで、作業動線が短くなり、原料の受け入れから熟成、製造、充填、梱包、出荷までがひとつの流れでできるようになりました。作業効率がアップすると同時に、生産管理や衛生管理もしやすくなっています。
―現在、水産物は原料の調達が難しいそうですね。
堀内 おっしゃる通りです。うちで扱っている原料の6割近くは海外からのものですが、情勢不安により価格が上がり、入手が困難になってきました。
うちはもともと、北海道産の原料へのこだわりがあるのですが、3年ほど前からスルメイカが獲れなくなってきたという問題もあります。価格は、最盛期の4倍にもなってしまいました。
これを何とか解消しないと、水産加工業者がどんどん廃業していくことになります。
うちも原料の調達には大変苦労していますが、「高品質」だけは崩さないようにしたいと、1番大きくて鮮度のいいものを限定して使っています。
安い商品を作ったら赤字になってしまうので、利益の出るものを作らなければなりません。でも、ただ利益のために高いものを作ったって、消費者の人は納得しませんよね。
高いお金を出しても食べたいくらいおいしい、値段に見合う品質のものを売ったら理解してもらえるはずと信じて、頑張っています。
とはいえ今、いちばん強いのは量販店やコンビニさんなので、どうしても価格が抑制されてしまいます。製造費が高くなるのに、売値は上げられないという状況なのです。
お客様に価値を見出してもらい、理解してもらって、買っていただくよう努力するしかありません。
―今後のビジョンをお聞かせください。
堀内 繰り返しになりますが、「高品質を維持し、付加価値を高めた商品をつくる」ということにつきます。
付加価値を高めた商品は、価格は高くなりますが、一定以上の需要があります。これまでの取り組みで、お客様に受け入れていただけるという自信もあります。
原料不足、原料費の高騰というなかでも、いい食材を使ってきちんとしたいいものを作る。それがお客様に認知されて、継続して買っていただけるようになるというのが、会社の目指すところです。
厳しい状況ではありますが、これからも、このスタイルを貫いていこうと思っています。
―本日は貴重なお話をありがとうございました!
「社長のいか塩辛 極」(200gビン入り)
価格:¥1,296(税込、送料別)
店名:布目
電話:0800-800-2226(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://nunome.shop/?product=%e7%a4%be%e9%95%b7%e3%81%ae%e3%82%a4%e3%82%ab%e5%a1%a9%e8%be%9b%e6%a5%b5
オンラインショップ:https://nunome.shop/
「本数の子 黄金松前」(400g化粧箱)
価格:¥2,160(税込、送料別) ※2022年5月時点
店名:布目
電話:0800-800-2226(10:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://nunome.shop/?product=%e6%9c%ac%e6%95%b0%e3%81%ae%e5%ad%90%e9%bb%84%e9%87%91%e6%9d%be%e5%89%8d-%ef%bc%94%ef%bc%90%ef%bc%90%ef%bd%87
オンラインショップ:https://nunome.shop/
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堀内雅氏(株式会社布目 代表取締役社長)
1956年10月9日生まれ 法政大学法学部卒
1980年4月北陸銀行へ入行
2004年4月株式会社布目へ入社
2009年3月専務取締役
2021年6月代表取締役社長
<文・撮影/臼井美伸(ペンギン企画室) MC/吉田茉代 画像協力/布目>