明治創業の老舗の味を家庭で手軽に楽しめるセットが、20年来の人気とか。日本料理の肝であるだしの味を大切にしながら、環境変化に対応した取り組みも始めていました。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社歌行燈 代表取締役社長の横井健祐氏に、取材陣が伺いました。
日本料理の老舗が誇るだしの旨みを堪能「だしのもと」「蛤うどんすき 宴」
2022/09/15
株式会社歌行燈 代表取締役社長の横井健祐氏
―創業から140年以上。ここまでのあゆみをお聞かせください。
横井 初代 横井周二郎が、三重県桑名市にうどん店「志満や」を創業したのが1877年です。明治の文豪泉鏡花の小説「歌行燈」に出てくるうどん屋のモデルになったことから、屋号、そして社名になりました。
桑名から、愛知へ東海へ関東へと、地域やニーズにお応えする形で様々な業態ができ、「風流うどんそば料理 歌行燈」「風流日本料理 歌行燈」「うどん・そば・寿司・丼 やじろべえ」「讃岐釜あげうどん 四代目横井製麺所」「風流うどんそば料理 ゑべっさん」など、日本料理、麺料理の店を展開しています。
―140年はどのような道のりでしたか?
横井 1972年、2号店を名古屋に出し、1977年には関東初進出。コロナ禍で閉店しましたが、1992年タイに、2007年中国にと、海外進出も果たしました。記憶に残っているのは東京出店でしょうか。関西風のだしが受け入れられなくて、葛藤の末に関東風なアレンジを加えて受け入れられるようになりました。
―明治時代創業の家業で、5代目となられますか?
横井 生まれたときは店舗兼自宅でしたし、現在も本店の隣に実家がありますので、だしの香りに包まれて育ちました。「家業を継ぐんだろう」という期待は、父というより、親戚からの方が大きかったように思います。それをプレッシャーに感じる時期もありましたが、大人になるにつれ、その期待の本質を理解できるようになりました。継ぐと決めたからには、お店はお客様のためにあり、会社は社員のものであるという意識を忘れることなく、時代に即した挑戦もどんどんしていこうと思っています。
―どのような挑戦を?
横井 140年の歴史ある会社ではありますが、変えていけないことはないと思っているんです。うどん屋では通常使わない食材を使ったり斬新な食べ方を提案したりしても良いのではないかと。メニューにしても店づくりにしても、前例がないというのは理由にならない、タブーはなし、という心意気でいます。歌行燈としてあるべき姿と歌行燈らしさは違う。らしさを大切にしながらどんどん姿を変えたいですね。
―「歌行燈らしさ」とは?
横井 やはりだしではないでしょうか。うちは毎日全店厨房でだしを取っています。うどん屋としても日本料理やとしても基本はだし。そこだけは譲れません。
―そのこだわりのだしを商品化したものが「だしのもと」ですか?
横井 店ではカツオ100%でだしを引いていますが、家庭で様々に使いやすいようにムロアジ、サバ、カツオの節や煮干し、昆布、干ししいたけをブレンドしています。1回分ずつのパックになっているので手軽で、さらに薄く味がついていて味が決まりやすいのも特徴です。
お湯にパックを入れて煮だすだけで
1パックあたり400mlほどのだしが取れる。
―使い方のおすすめは?
横井 麺類のつゆとしてはもちろん、茶碗蒸しにおでん、お吸い物や煮ものに使っていただけます。そういえばうちの母は、ハヤシライスやロールキャベツのような洋食にも使っていましたね。トマトとの相性も良いようですし、だしを取った後、中身だけを乾燥させてふりかけにしているというお声もあります。
自家製麺つゆも手軽にできる。
―「蛤うどんすき」はそのだしと、桑名特産の蛤を味わう鍋料理ですね。
横井 かれこれ20年ほど前からある商品です。こちらのだしは、店で使っているのとまったく同じ。桑名の特産品であるハマグリに、エビや鶏団子、野菜に薬味までセットにして、鍋さえあれば楽しめる商品です。
準備するのは鍋のみという手軽さ。
2~3人がたっぷり食べられる。
―桑名の特産品、ハマグリがたっぷりですね。
横井 最初にハマグリを水で洗い、火にかける前の出汁に入れてから強めの火でさっと煮て召し上がることをおすすめします。ハマグリの滋味が溶け出して、ぐんとうまみが増します。ただ、食の安全という観点から、夏季は配送を控えますのでそれ以外の季節にお楽しみください。桑名の蛤が1番おいしくなるのは5月から夏にかけてですので、鍋の時期とは反対になってしまいますが……。蛤はポン酢でも美味しいですが、私はいつもだしを濃いめに割り、そのまま出汁の味で蛤を食べます。蛤の塩分が強いのでそれで味は十分です。
木曽三川の淡水と伊勢湾の海水とが
混ざり合う漁場で育つ桑名のハマグリは、
身が大きくクリーミーで濃厚な味わい。
―締めのうどんもセットに。
横井 うどん屋ですから。国産小麦100%の手延べうどんで、ゆでて締めてありますが、お手元に届いても伸びてないと思います。具材の旨みが出ただしで煮込んでも大丈夫。太さ、肌感など、だしを楽しめる麺にしたいとこだわったものです。
煮込んでだしのうまみをたっぷり吸いながらも
程よい歯ごたえが残る。
―老舗ならではの商品だと恐れ入りました。今後の展望は?
横井 コロナ禍で店舗の縮小を余儀なくされ、改めて経営理念「企業の発展を通して地域貢献をする」を実現するにはどうするべきかを考える日々が続きました。そんな頃、地元の漁師さんが、気候変動の影響などで、通常獲れるはずのない魚が獲れて困っていることを知りました。食べればおいしいのに、知名度が低いためにニーズがない「未利用魚」と呼ばれます。そこで、うちの店で適正な価格で買い取り、美味しく調理してお客様に提供することにしました。漁師さんにはお金が入り、お客様には新しい味わいを楽しんでもらえて、それがSDGsやフードロス問題解決につながれば上々ですよね。
2022年冬には「オオニベ」という魚をメニュー化。今は「ウツボ」と格闘しています。
―140年大切にしているだしの味を守りながら、時代に即した取り組みにも挑戦中。すばらしいお話をありがとうございました!
「だしのもと」(パックタイプ/8.5g×25袋)
価格:¥1,480(税込)
店名:歌行燈
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/utaandon/d-9/
オンラインショップ:http://utaandon.jp/shopping.php
※2023年春に商品リニューアル予定
「蛤うどんすき 宴」
(約2人前/活はまぐり×10個・有頭海老・つくね・いかボール・餅巾着・蒲鉾・季節野菜・手のべうどん・自家製だしつゆ※夏季配送不可)
価格:¥5,778(税込)
店名:歌行燈
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/utaandon/c/0000000108/
オンラインショップ:http://utaandon.jp/shopping.php
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
横井健祐(株式会社歌行燈 代表取締役社長)
1979年三重県桑名市生まれ。大学卒業後アメリカへ語学留学、インターンとして現地の大手ホテルで1年間就労。2017年に5代目代表取締役社長に就任。
趣味はNFL(アメリカンフットボール)、Mr.Children、映画鑑賞。
<文・撮影/植松由紀子 画像協力/歌行燈>