出身地である岐阜県多治見市に拠点を置き、世界を飛び回るエネルギッシュなパティシエ。個性豊かで斬新な生ケーキとは真逆ともいえるシンプルな焼き菓子がスペシャリテというので驚きです。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社オー・デリス・ドゥ・シバタ代表取締役の柴田武氏に、取材陣が伺いました。
世界で活躍するパティシエのスペシャリテ。シンプルすぎる極上の焼き菓子「ヴィジタンティーヌ」
2022/09/02
株式会社オー・デリス・ドゥ・シバタ 代表取締役の柴田武氏
―フランス菓子との出会いを教えてください。
柴田 子どものころから料理に興味があり、テレビで見たフランスの料理や風景にぐっと引き込まれました。神戸の一流レストランでフランス菓子の基礎からサービスまでを学んで渡仏。パリの「ホテル・リッツ・エスコフィエ」や「シェ・ミラベル」で経験を積み、出身地である岐阜県多治見市にパティスリー「chez Shibata(シェ・シバタ)」をオープンしたのが24歳のときです。
1995年にオープンした「シェ・シバタ 多治見」。
―商品や店づくりへの想いをお聞かせください。
柴田 人と違うこと、人がやらないことをやりたいと常に思っています。特に生ケーキは、味もビジュアルも突出したもので勝負しようと、色鮮やかで目を引くフォルム、斬新な素材の組み合わせに挑戦してきました。そうはいってもベースにはこれまで身に付けたフランスの伝統や技術があり、自分の感性や日本人としての繊細な仕事を大切にしています。
素材へのこだわり、繊細な味わい、美しさなど柴田シェフならではのオリジナリティあふれる生ケーキ。
―名古屋出店の後、東京でなく海外進出をされたのは?
柴田 商品同様、生き方も人と違うことをしたいな、と。地方出身のパティシエは最終東京に着地しがちじゃないですか。仕事で中国の上海と行き来していたときに、市場としての面白さや伸びしろに目が留まりました。上海という土地のポテンシャルを信じて、日本で初めてオーナーパティシエとして海外出店をしました。それから香港やタイにも「シェ・シバタ」を展開しています。
海外進出1号店となった「シェ・シバタ 上海」。
―「異端な菓子屋」と評されるほどの柴田シェフ。スペシャリテがとてもシンプルで驚きました。
柴田 フランス時代、小遣いをためては万単位のお菓子の本を買ったものです。その中にレシピを見つけて、どうしてか、執着してしまったのです。材料を見るとフィナンシェとほぼ同じ。けれど、「ヴィジタンティーヌ」の名からして知名度は低く、見た目は地味。シンプルだからこそ個性が出せるし、これをスペシャリテにする店はそうないんじゃないかとも感じました。
しっかりついた焼き目とバターの照りが美しいヴィジタンティーヌ。
―「シバタのヴィジタンティーヌ」たるこだわりを教えてください。
柴田 材料はバター、アーモンドプードル、薄力粉、グラニュー糖、卵白ととてもシンプルなので1つ1つ吟味して選んでいます。例えばアーモンドは、スペインのマルコナ種が有名ですが、油脂分が多く、ビターな香りが強くて日本人には合わないと感じ、カリフォルニア産とイタリア・シシリア産をブレンドしています。バターは発酵バターとフレッシュバターのみです。製法のポイントは2つあって、1つめはバターです。通常ではあり得ないほど焦がします。生地に混ぜるとどうしても弱まりますが、焦がしバターの香りが肝となるので、焦げ臭が出る直前までギリギリ黒く焦がして、存在感を出します。次に焼成。これも通常の焼き菓子では考えられないほど高温で、短時間で焼き上げます。表面を先に焼き固めて中をふんわりしっとり焼き上げ、バターの香りを閉じ込めるイメージです。レシピが完成して最初の5~6年はほかの誰にも任せられなくて、全部自分で焼いていました。
高温で表面を焼き固めて中をしっとり香り高く仕上げる。
中はしっとり。黒色の斑点が焦がしバターの粒。
―柴田シェフ渾身の1品ともいえるヴィジタンティーヌ。お客様の反応は?
柴田 発売当初は、見た目がハデじゃないし材料もシンプルで、なかなか認知度は上がりませんでした。売り場を広げたり、試食をしてもらったりするうちにリピーターが増え、口コミで広がり、今では手土産の定番としてお使いいただけるまでになりました。連休になると遠方から来店されたり、大切な相手へのこだわりの手土産に選んでいただいたりしています。
発売当初からレシピも原材料も不変。
東海地域でこだわり手土産の定番に。
―ど派手な生ケーキから見た目お地味なスペシャリテまで「シバタイズム」をたっぷり感じます。今後の展開は?
柴田 多店舗展開をするつもりはなく、国内での出店はここまでだと思っています。コロナ禍で少し滞っていた海外事業の軌道修正をしつつ、商品開発にさらに磨きをかけ、シバタにしかないお菓子というものをさらに追及していくつもりです。
―自社ブランドの確立はもとより、洋菓子業界全体の地位向上や地域貢献への取り組みにも精力的。お菓子や食を通して自身や周囲を楽しませる人生を謳歌する柴田社長。すばらしいお話をありがとうございました!
「ヴィジタンティーヌ詰合せ」(6個入/賞味期限: 発送日より約20日間/特定原材料等:卵、乳、小麦、アーモンド)
価格:¥1,566(税込)
店名:シェ・シバタ オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop-shibata.com/item/visitandines/
オンラインショップ:https://shop-shibata.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
柴田武(株式会社オー・デリス・ドゥ・シバタ 代表取締役)
1995年にシェ・シバタ多治見店本店をオープン後、日本に4店舗、中国、タイにシェ・シバタを10店舗以上展開。アジアを中心に日本のクオリティー高いスイーツを発信中。講師、国内外テレビ出演など多様な活動もしている。2010年岐阜県多治見市観光大使に、2015年愛知県西尾市抹茶大使に就任。2016年には、フランス有名チョコレートメーカー「セモア」世界で3人のアンバサダーに就任。
<文・撮影/植松由紀子 MC/升谷遥香 画像協力/オー・デリス・ドゥ・シバタ>