家で過ごす時間が長くなり、「自分でコーヒーを淹れる」回数が多くなりました。朝食で飲むコーヒーや、仕事の合間に飲むコーヒー、のんびりリラックスしたいときに飲むコーヒー、自分にご褒美をあげたいときのコーヒーなど、いろいろな豆をお取り寄せして楽しむのもいいなと思っている今日この頃です。
そんなアッキーが気になったのは、世界中から厳選したコーヒー豆を販売する東京・銀座のトリバコーヒー。株式会社バードフェザーノブ代表取締役社長の鳥羽伸博氏に、取材陣がお話をお聞きしました。
コーヒーのくれる時間をシンプルに楽しむ。バードフェザーノブの「100%ピュアハワイ・コナ」
2022/09/20
株式会社バードフェザーノブが経営する
コーヒーの豆売り専門店、「TORIBA COFFEE」。
―コーヒーのお店を立ち上げられた経緯を教えてください。
鳥羽 家業といいますか、父がコーヒーの仕事をしていまして(ドトールコーヒー創業者・鳥羽博道氏)。兄が経営するハワイのコーヒー農園に、僕がマネージャーとして赴任する機会があったんですね。そのあたりから、自然にコーヒーの仕事に携わることになりました。
そのあと僕自身も、ハワイにコーヒー農園を所有することになり、8年ほど前にトリバコーヒーを立ち上げました。
―お店のコンセプトは。
鳥羽 お店をつくるとき、自分がコーヒー屋として何をやれるのか、何をやるべきか考えてみました。
僕にとってコーヒーは、仕事だからすごく大事なものだけど、世間一般の人にとってコーヒーは「1番大事なもの」ではないですよね。コーヒーとケーキが並んでいるとしたら、誰でもケーキのほうが好きでしょう。フランス料理のコースを食べたあと、「今日のコーヒーはおいしかったね」とは言わないですよね。
でも、コーヒーを飲むことで、「ケーキおいしいね」「今日の料理おいしかったね」と話す“時間”ができます。
今僕が思っているのは、「たかがコーヒーなんだから、とやかくうんちくを語るのはやめよう」ということです。もちろん真剣につくるけれど、僕たちのコーヒーに対する想いが強ければ強いほど、語れば語るほど、お客様の感覚とはずれていく。距離ができてしまうんじゃないかなと思うんです。
お客様の生活に寄り添っていくコーヒーを考えようというのが、店のコンセプトです。
コーヒー栽培の条件に恵まれたハワイ島コナ地区で、
コーヒー農園を運営している。
―ハワイにコーヒー農園をお持ちだそうですね。
鳥羽 僕が1から作った農園が、ハワイ島の西側のコナ地区というところにあります。いくつかの農園があって管理していますが、実際に所有しているのは30エーカー。コーヒー農園としてはすごく小さいです。ブラジルの農園だと、飛行機で移動しなきゃいけなかったり、教会や学校が何個もあったりするような広いところもあります。
うちの農園は大きくないので、機械ではなく人の手でコーヒーを収穫します。手間がかかるので、どうしても価格は高くなってしまいます。さらにアメリカなので、いわゆる途上国とは違って人件費自体が高いんですね。かつ、島なのでガソリンも高いし、土地も高い。今後はもっと貴重な豆になっていくのではないかと思っています。
―「100%ピュアハワイコナ」は、特徴のあるコーヒーですね。
鳥羽 うちのお店のコーヒーにはブレンドが多いのですが、ブレンドというのはコーヒー屋にとって、いろんな絵の具を使って絵を描いていくようなものだと思っています。いっぽうで、シングルオリジンの場合は、いろんな絵の具が使えないので、コーヒーが持つ元々の味を最大限に出して、それで表現するしかないのです。ですから、トリバコーヒーの味というよりは、「グアテマラの●●農園の味」、というふうな表現になりがちです。自分たちの表現というところから離れてしまう可能性があります。
しかしハワイコナというのは、1銘柄にしてはすごく複雑な味を持っているんです。深く焼いても浅く焼いても、いろんな特徴が出てくる、面白いコーヒーです。「絶対この焼き方でなくてはいけない」というわけではなく、比較的いろんなことができる豆だからこそ、実は難しくて、いろいろ勉強しなくてはいけないのも事実です。豆の個性をよく見極めて、それを最大限に引き出すことを考えて焙煎しています。自分たちが農園で作っているコーヒーなので、それを大事に焙煎して皆さんにお届けしたいという想いもとても強いです。
農園を管理して頑張ってくれている社員のおかげで、年々味がよくなってきています。「お金を出せばどこでも買える」というコーヒーとは違い、自信を持って皆さんにお届けできるコーヒーです。うちのお店の中でも特別だし、ほかにこういうことができるコーヒー屋さんはなかなかないと思います。
パンケーキにもピッタリの「100%ピュアハワイコナ」。
―「ハワイコナコーヒー」に合うのはどんな食べ物ですか?
鳥羽 コクがすごく強いので、繊細な料理にはあまり合わないかもしれません。パンケーキとか、バターが使われている洋菓子なんかにはすごく合うと思います。
値段的に日常的に飲むコーヒーというよりは、特別なときに飲むコーヒーかもしれません。おいしいスイーツを用意して、ゆっくり楽しんでほしいです。自分へのご褒美にもぴったりじゃないでしょうか。
子どもでも飲みやすくて好評な「ミルクコーヒーベース」。
―「ミルクコーヒーベース」を開発されたきっかけは。
鳥羽 もともと「ミルクコーヒーベース」は、牛乳嫌いな子どもが、牛乳を飲みやすくなるようにと開発されたものと言われています。僕たちの世代は、瓶のコーヒー牛乳をよく飲んでいたし、もっと上の世代の方は、家に配達してもらっていた人も多いですよね。誰にとっても、懐かしい味に感じられるコーヒーではないでしょうか。
甘くて幸せな気分になるコーヒーなので、「やってみようか」ということから始まりました。ただし、昔のコーヒー牛乳よりも、コーヒーの味がきちんとしていて、添加物が入っていないものにしようと。
これからすべての商品を、プラスチックを使わない方向に持っていきたいという方針があるので、ボトルは瓶にしました。重いので、運ぶのが大変なのですが。
―お客様の反響はいかがでしたか。
鳥羽 とても喜んでいただいています。甘いコーヒーに牛乳を入れた味っていうのは、誰にも愛されるものなんだなと感じました。昔は喫茶店でラテなんてなかったけれど、今は、「普通のコーヒーよりラテの方が好き」という人も多いですよね。
僕はヴィーガンなので牛乳を飲まないんですけれど、最近はナッツミルクやアーモンドミルク、オーツミルクなどが手軽に買えるようになりましたよね。そういうものも、そのまま飲むよりも、このミルクコーヒーに混ぜてみるとおいしいし、楽しいと思います。
お菓子作りにも使えますし、お酒を割って飲むという方もいます。焼酎とかウォッカに混ぜて飲むとおいしいそうですよ。
―コーヒー以外に、魅力的なグッズもいろいろと揃っていますね。
鳥羽 コーヒーのグッズって昔からいっぱいありますが、特に最近はデザインも使い勝手もいいものが増えました。そのなかで、僕たちが本当にいいなと思っているもの、使ってみたいなと思っているものを扱っています。
いつも、コーヒー豆については、「飲む直前に挽いてください」とか、「何度で淹れてください」とか、結構面倒くさいことをお願いしなくてはいけないので、その代わりといってはなんですが、少しでも楽しんでもらえるような商品を提案したいと思っています。たとえばコーヒーカップは、コーヒーとの1番の接点になるものなので、ひとつでなくいろんなものがあると楽しいですよね。
環境に負担の少ない、リサイクルされたダンボールでの配送や、
ラベル・クリップがつかないパッケージを選ぶこともできる。
―環境問題にも、会社全体で自然に取り組んでいらっしゃいますね。
鳥羽 今回のコロナの流行で、お客様に来てもらうビジネスをしているところは、どこもかなりの打撃を受けました。うちも例外ではなく、暇になりました。SNSの時代とはいえ、お客様が来ないとコミュニケーションがなかなかとりにくい。それで、「僕たちは何をしなきゃいけないんだろう、何をするべきなんだろう」ということを、会社全体で考えて、やり直すべきだなと思ったんです。
僕たちは、「エシカルプロジェクト」と言っていますけど、エシカルって日本語に直訳すると、「倫理的な」という意味です。もちろん知識や情報は必要だけれど、それ以前に自分たちで考えなきゃいけない。僕は、「考える」って大事なことだと思っているんです。考えないでやることって、本当に世の中に多い。「やらされてやっている」パターンがすごく多い。だから「SDGs」のカラフルなバッヂを胸に貼るなんてことをしてしまうんだと思います。
今はせっかく時間もあることだし、社員やスタッフみんなで考えてほしいと投げかけました。その結果、社員主導でいろいろ考えたり、取り組んだりできるようになった。これは唯一、コロナになってよかったと思えることです。
―身近な、自分のできることから行動するということですね。
鳥羽 余談ですが、おととい槇原敬之さんのコンサートに行ったんです。以前人間関係で悩んだ時期に、彼の歌に救われたことがあって。それから槇原さんを敬愛しています。
彼がコンサートで言っていたのが、今ロシアとウクライナで戦争をやっているけれど、自分たちも同じだと。すごく小さいところで、争いごとをやりまくっているじゃないか。人に優しくできなかったり、人を攻撃したり。世の中、それが当たり前になっている。だったらまずは自分たちの周りの争いごとをなくすために、行動していくことが大事なんじゃないか、と。
僕たちも、環境問題を訴えてデモに行ったりしますよね。もちろん正しいことなんだけど、それ以前に身近でやるべきことってあるはずだなと。
「環境問題がだめ」「政治がだめ」と声高にSNSで発信していく以前に、じゃあ自分たちが生活のなかでできることは何なのか、意識することから始めるべきだと思っています。
今、うちのスタッフたちは、やらされてるんじゃなくて、自分で考えてやっています。それが彼らの優秀なところです。仮に会社が続かなくなっても、この思いはつながっていくだろうと思います。
コーヒーは、リセットする時間をくれる。
―いいお話ですね。現代の私たちにとって、コーヒーはどういう存在だと思われますか。
鳥羽 コーヒーには、自分のなかで何かをリセットする時間をくれたり、自分の考え方を盛り上げてくれるものだと思います。
アメリカでは、1日10回くらい近くのコーヒー屋さんに行く人がいるそうです。家で仕事していても、オフィスにいても、ちょっと煮詰まるとカフェに行こうか、という。アメリカって景気がいいので、1杯の値段も高いのですが、彼らにとってそれは、コーヒーの味に対して払っているというより、コーヒーという存在と、コーヒーを飲む時間に対して払っているんだと思うんです。
コーヒーを飲むという行為に対しての意味は、人それぞれ違うし、意味があれば1日10杯飲むような人も出てくるのでしょう。
―今後は、どんなお店を目指していかれますか。
鳥羽 今回のコロナの流行は、会社としては非常につらい試練でしたが、そのおかげで新しい提案の仕方とか、今まで想像しなかった皆さんの飲み方のシチュエーションを想像できるようになりました。
コロナ以前はこういうお話も、オンラインでやるなんてあまり想像していなかったことです。直接会うことで生まれることももちろんあるけれど、こういうふうに自由に移動ができて、どこでもお会いできるというのは、新しいスタイルですよね。
コーヒーには、背景にいろんなストーリーがあります。農園がどうだとか、豆の味がどうだとか、焙煎がどうだとか。でも僕たちはそういううんちくをお客さまに押しつけるつもりはありません。店主がいつも難しい顔をして、「スープに命かけてます」っていうラーメン屋さんに行くと、疲れてしまうじゃないですか(笑)。それよりも、飲み方や楽しみ方を追求するために、僕たちがどこまでお手伝いできるかが大切だと思っています。お客様が、どんな場所で、誰と楽しむコーヒーなんだろう。このコーヒーを飲みながら、どんな楽しい話をするんだろうと想像しながら、その助けになるようなことをやっていきたいと思っています。
―本日は、素敵なお話をありがとうございました!
「100%ピュアハワイコナ」
価格:¥2,700/100g ¥5,400/250g(税込)
店名:TORIBA COFFEE boutique coffee roaster
電話:03-6274-6611(12:00~19:00 月曜除く)
定休日:月曜(インターネットでのご注文は24時間365日受付)
商品URL:https://www.toribacoffee-online.com/shopdetail/000000000747/ct2/page1/order/
オンラインショップ:https://www.toribacoffee-online.com/
「ミルクコーヒーベース」
価格:¥1,500(税込)
店名:TORIBA COFFEE boutique coffee roaster
電話:03-6274-6611(12:00~19:00 月曜除く)
定休日:月曜(インターネットでのご注文は24時間365日受付)
商品URL:https://www.toribacoffee-online.com/shopdetail/000000000760/ct2/page1/order/
オンラインショップ:https://www.toribacoffee-online.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
鳥羽伸博(株式会社バードフェザーノブ 代表取締役社長)
1977年東京都生まれ。2014年TORIBA COFFEE開店。40年続く喫茶店「はまの屋パーラー」、スイーツカフェ「明天好好」、ヴィーガンバーガー「Superiority Burger」、ヴィーガン居酒屋「真さか」、ヴィーガンカフェ「Whitely by TORIBA COFFEE」をはじめ、「Ginza Music Bar」、「The Nuts Exchange」なども手掛ける。
<文・撮影/臼井美伸(ペンギン企画室) MC/橋本小波 画像協力/バードフェザーノブ、橋本小波>