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三重県四日市の萬古焼(ばんこやき)を今の暮らしに合わせて。「羽釜ごはん鍋」「ドリップ急須」「櫛目のないすり鉢」

2022/09/13

毎日食べるご飯がおいしいと、元気が出るもの。高機能の炊飯器も人気ですが、やっぱり注目なのはふっくらご飯が炊ける土鍋です。今回、編集長のアッキーが気になったのは、国産土鍋のシェア8割を占める、三重県四日市の萬古焼。創業昭和20年(1945年)の産地問屋・株式会社スズ木の代表取締役社長の鈴木靖治氏に取材陣が伺いました。

株式会社スズ木 代表取締役社長の鈴木靖治氏
株式会社スズ木 代表取締役社長の鈴木靖治氏

―萬古焼の特徴を教えてください

鈴木 萬古焼は三重県四日市の隣、桑名で、江戸時代の中期に、豪商・沼波弄山(ぬなみろうざん)によって創始されました。徳川の将軍に献上されたこともあるほど繁栄していましたが、弄山の没後、一時期途絶えたことがありました。明治時代後半〜大正時代には四日市に窯が開かれ、農業が盛んだったこともあり、庶民の道具として広がっていきました。
現在、萬古焼の代表的なものは土鍋です。昭和30年代、家庭の熱源が薪からガスに移行した頃、高火力でも割れにくい土鍋が求められるようになりました。私たち萬古焼の産地では、ペタライトという鉱物を土に混ぜることにより、耐熱性が強く割れにくい土鍋の開発に成功。その後、萬古焼の土鍋が全国に広まり、現在は国内生産量第1位、全国シェアは8割になりました。残念ながら知名度が低いのですが、みなさんのご家庭の土鍋は萬古焼であることが多いと思います。

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萬古焼を代表する土鍋。
写真は「日常茶飯器」シリーズの「羽釜ごはん鍋」。

―「株式会社スズ木」はどのような会社ですか?

鈴木 弊社の創業は昭和20年(1945年)で、私で3代目になります。三重県四日市にある、萬古焼の産地問屋です。産地問屋とは、メーカーさん、販売店さん、お客さまの橋渡しをするような役割。四日市には萬古焼にメーカーが、50〜60社ありますが、萬古焼の魅力を、お客さまに伝えたいと思っています。
大切にしていることは、展示会などに来てくださるお客さまの声をよく聞ことです。特に、器や道具を使ってくれるのは女性ですので、女性の意見を大切にしています。弊社の社員も65%は女性です。新商品を出すときは、必ず女性社員に試してもらいます。ご飯用の土鍋を発売したとき、商品に15分で炊けると機能を打ち出したシールを貼ったらいいと女性社員からアイデアが出ました。それを実行したら、そのご飯用土鍋がとてもよく売れました。

―今回、ご紹介する「日常茶飯器」のシリーズを作った思いは?

鈴木 ライフタイルの変化に伴い、“食器は受難の時代”と言われています。忙しい方が多く、お惣菜を買ってきて、容器のまま食卓に出すことも。でも、おかずを作る時間はなくても、ごはんを食べるときはホッと一息つきたいものです。買ってきたお惣菜でも、切っただけの簡単なおかずでも、気に入った器に盛り付けるとおいしそうに見えます。そんな暮らしが実現できるように、毎日自然に手に取りたくなる、使い勝手が良く、見かけが素敵な器や道具を作りました。弊社の目指す「食で暮らしが心豊かなものになりますよう」につながります。

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「日常茶飯器」のシリーズのドリップ急須(写真左)と煎じポット。
お気に入りの道具で、暮らしを楽しく!

―「日常茶飯器」のシリーズの「羽釜ごはん鍋」の特徴を教えてください。

鈴木 おいしいご飯を炊くために、職人がこだわって作った土鍋です。土鍋は、肉厚で熱がゆっくり伝わり、下がりにくいのが特徴です。ご飯を美味しくするのは80〜90度の温度だと言われていますが、土鍋ならその温度を保つことができます。また、熱が全体に広がり、お米が対流しやすいように、本体を丸く仕上げてあります。
実は、土鍋は炊飯器にくらべて時短調理なのをご存知でしたか? 米と水を土鍋に入れて火にかけると12〜13分で沸騰をするので、火を切ります。その後、10〜15分ほど蒸らすだけで完成。火にかけてから、30分ほどで炊き立てのご飯が食べられます。土鍋は時間がかかると思っている方もいますが、忙しい現代にぴったりの時短調理ができます。

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実際に「羽釜ごはん鍋」で炊いてみたら、本当に30分ほどで完成。
短時間でおいしく炊ける土鍋です。

―30分で炊き立てのご飯が食べられるのは、知りませんでした!それなら毎日使えますね。

鈴木 はい。毎日使っていただけるように、重量も軽くしました。通常の土鍋は重いのですが、それでは、使い勝手が悪いですよね。お客さまからも、「軽くて使いやすい」と好評です。それから、木のふたにもこだわりました。サワラを使っていますが、炊いているとほんのり木の香りがして、気持ちもなごみます。ご飯には、香りがうつることがありません。見かけもやわらかくなり、そのまま食卓に出してもいいと思います。人が集まるホームパーティでも、土鍋からご飯をよそったら、注目が集まりそうです。

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炊き立ての白いご飯は、やっぱりおいしい!
スッキリしたデザインなので、食卓に出しても浮きません。

―「ドリップ急須」はどのような商品ですか?

鈴木 萬古焼といえば土鍋なのですが、もう1つ、急須も主力商品なのです。三重県は、静岡、鹿児島に次ぐ、全国3位の生産量のお茶の産地。紫泥(しでい)急須と呼ばれて、お茶所の急須として発展してきました。鉄分を多く含んだ粘土を高温で焼くため、紫がかった茶色(紫褐色)になるので、その名がつきました。使うほどの艶と光沢が増して、味わい深い急須になります。そんな紫泥の急須を現代風のデザインで作ったのが「ドリップ急須」です。鉄分が多いので、お茶の成分であるタンニンと化学反応して、味がまろやかになります。また、日本茶はもちろん、コーヒーを淹れるときにも使えるので、「ドリップ急須」と名づけました。沸騰した湯をこの急須にうつすと、コーヒーを淹れるのにちょうどいい温度に下がります。その後、ドリッパーに注ぎます。湯を細くゆっくり注げるので、雑味の少ないおいしいコーヒーが完成。土鍋と同様に、毎日使うことを考え、軽くて、持ちやすい取っ手にしました。

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「ドリップ急須」を使って、ハンドドリップでコーヒーを淹れます。
ゆったりした時間が流れます。

―「櫛目のないすり鉢」についても教えてください。

鈴木 櫛目があると、洗うのが面倒で、使わなくなるのがすり鉢です。そこで、あえて櫛目をなくし、洗いやすくしました。さらに、具材が櫛目に詰まることがないので、早く簡単にすれます。よく使うのは、ごまだと思います。“すりごま”として商品も売られていますが、食べる直前にすったものを比べると、風味が全く違います。さらに、このすり鉢でごまをすり、ほうれん草などの野菜を入れて混ぜれば、そのまま食卓に出せます。紫がかった茶色(紫褐色)の器として、野菜をおいしそうに見せてくれます。

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櫛目がないので、するときに素材が櫛目に入らず手早くできます。
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「櫛目のないすり鉢」に野菜を入れてあえ、そのまま食卓に。

―機能的であり、見かけにもこだわっているのが「日常茶飯器」シリーズなんですね。御社の今後のビジョンともつながっていきそうです。

鈴木 先ほど、今は“食器は受難の時代”だと言いました。料理に手間をかけなくなるなど食生活の変化もありますが、100円ショップなどで食器が安く買えるようにもなりました。特に若い方は、きちんと作った国産のものではなく、手軽に買える輸入品を使うことも多いようです。そのことを悲観せず、先ずは食器に触れて、親しんで頂く事が大切だと考えています。また、産地では、後継者がいないなどの作り手不足の問題もあります。
ですから、「日常茶飯器」シリーズのような現代の暮らしに合う商品開発は、今後も手がけていきたいです。今まで萬古焼を知らなかった方々にも、この商品によって、手にとっていただき、次に選んでいただけるようになってくれればと、思っています。
それから、SNSやホームページなどを利用して、萬古焼を作っているところ、どのように使うといいのかなど、もっと商品の魅力を深く知ってもらうアプローチを、どんどんしていきたいと思っています。

―本日は、貴重なお話をありがとうございました。

羽釜 3合ごはん鍋(内蓋付)

「羽釜 3合ごはん鍋(内蓋付)」
価格:¥14,300(税込)
店名:株式会社スズ木
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kksuzuki.shop-pro.jp/?pid=155193472
オンラインショップ:https://kksuzuki.shop-pro.jp

ドリップ急須

「ドリップ急須」
価格:¥7,150(税込)
店名:株式会社スズ木
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kksuzuki.shop-pro.jp/?pid=155721630
オンラインショップ:https://kksuzuki.shop-pro.jp

櫛目のないすり鉢

「櫛目のないすり鉢」
価格:SS ¥2,200 S ¥3,300 L ¥5,500(全て税込)
店名:株式会社スズ木
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kksuzuki.shop-pro.jp/?pid=155194800
オンラインショップ:https://kksuzuki.shop-pro.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
鈴木靖治(株式会社スズ木 代表取締役)

1962年愛知県生まれ。駒澤大学卒業後、岩城硝子株式会社(現AGCテクノグラス株式会社)に入社。1991年に株式会社スズ木に入社。2003年同社3代目の代表取締役に就任。2022年5月まで業界の萬古陶磁器卸商業協同組合理事長として業界の発展に従事。

<文・撮影/大橋史子(ペンギン企画室) MC/津田菜波 画像協力/スズ木>

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