兵庫県のたつの市などを流れる揖保川。その上流〜中流は、そうめん「揖保乃糸」の産地としても知られています。「揖保乃糸」は、兵庫県手延素麺協同組合傘下の約400社の組合員によって製造されており、「はりま製麺株式会社」はそのうちの1社として、「揖保乃糸」の製造に加え、地元特約店として販売も行う企業。また近年は、オリジナルの無塩麺の製造にも力を入れています。今回は、ヒット中の「無塩そうめん・うどん」、そして「揖保乃糸龍の夢神戸牛醤油ラーメン」の製造秘話について、代表取締役社長の官野元彦氏に伺いました。
あの「揖保乃糸(そうめん)」が作るラーメンとオリジナルうどんに注目!
2022/09/14
はりま製麺株式会社 代表取締役社長の官野元彦氏
―御社の沿革について教えてください。
官野 揖保川沿いは、明治時代から水車を使った製粉が盛んに行われた土地です。弊社も製粉会社からスタートしました。昭和26年(1951年)に「新宮製粉株式会社」を、平成6年(1994年)に麺部門を担う子会社として「はりま製麺株式会社」を設立し、現在は、「兵庫県手延素麺協同組合」の組合員として手延そうめん「揖保乃糸」の製造や特約店としての販売、機械製法によるオリジナル商品の開発・製造・販売をおこなっています。
―そんな御社の注目商品といえば、まず「無塩そうめん・うどん」。「無塩」と聞いて、驚きました!
官野 「無塩そうめん・うどん」は、平成17年(2005年)に発売を開始した商品なのですが、開発のきっかけとなったのは、そのころに「Pasco」(敷島製パン株式会社)さんがリリースした「超熟」というパンが大ヒットしていたことです。それまでパンは、生地の温度を上げずに製造をするのが一般的だったところ、熱湯で生地をこねる「湯種製法」を取り入れたということで、先代の社長が大きな衝撃を受けました。そして、「この製法を乾麺にも取り入れられないだろうか」と考えたのです。
「そうめん」のみ、「うどん」のみのセットもあり。
―開発にはどれくらいの期間を要したのですか?
官野 2年くらいでしょうか。ポイントは、お湯を何度に設定するかという点で、具体的な温度は企業秘密なのですが(笑)、かなり高温のお湯で生地をこねます。当時は、熱湯でこねることで、これまでにない食感を生み出すことを目的にしていたのですが、試作を重ねるうちに、「塩は必要ないのでは」という意見が出てきまして。一般的に麺は、小麦粉と塩水を使って製造するのですが、試してみると、塩抜きのお湯で捏ねてみてもおいしい麺ができた。それで「無塩」を前面に打ち出すことにしたのです。
―通常、塩は麺作りにどう役立っているのですか?
官野 塩は、小麦粉に含まれるタンパク質であるグルテンに働きかけて、麺のコシを出す役割を担っています。ですが熱湯でこねると、タンパク質の代わりにでんぷんがノリのように粘りを出して、生地をつなげてくれるのです。表面もツルッとした仕上がりになり、これはいけると思いました。
―とても画期的な発明ですよね。すぐにヒットに結びついたのでは?
官野 それが、発売当時はなかなか苦戦しました。やはり、麺は小麦粉と塩で作るもの、というイメージが根付いていましたし、問い合わせのお電話で、「無塩と書いてあるけど、本当においしいの?」というお声をいただくこともありました(笑)。それでも、特許を取得し、高温の湯をつくる装置も新しく導入して製造を続けたところ、後のヘルシーブームにも後押しされ、多くの問い合わせをいただくようになったのです。
―おすすめのいただき方など、ありますでしょうか?
官野 シンプルに、つゆやゴマだれなどで味わっていただくのが1番でしょうか。無塩で茹で汁が塩辛くならないので、麺を茹でた鍋に、そのままめんつゆやフリーズドライのスープなどを放り込んでいただいても、おいしい麺料理が作れます。「無塩そうめん・うどん」のほか、今では「無塩野菜そうめん」「食塩不使用中華めん」も開発して販売しておりますので、こちらもぜひ、弊社ショッピングサイトにてお求めいただけたらと思います。
そうめんもうどんも、プリッとした食感が楽しめる(写真はうどん)。
―片や、「揖保乃糸龍の夢神戸牛醤油ラーメン」は、どのような経緯で生まれたのですか?
官野 県外のお土産店で、地元の牛を使ったラーメンを見つけまして、弊社でも兵庫らしい、神戸牛を使ったラーメンを作ってみたいと開発しました。麺は、兵庫県手延素麺協同組合より、揖保乃糸の中華麺「龍の夢」を仕入れて使用しています。揖保乃糸そうめんと同じ手延べ製法で作られていて、ツルみとコシを持ちあわせた中華麺です。
揖保乃糸の中華麺「龍の夢」とスープがセット。
―トントン拍子に「完成」へと至ったのでしょうか。
官野 麺とパッケージはすぐに決まったのですが、スープ作りに苦労しました。スープの専門業社に製造を依頼したのですが、試作を繰り返して2年はかかったでしょうか。最終的には、神戸牛のミンチも入った、インパクトのあるスープが完成して満足しています。
香りも味もガツンと来るタイプなので、玉子やネギのほか、カイワレや湯通ししたホウレン草など、あっさりした具との相性も良いですね。また、3分茹でて冷水で締めた麺と、250ccのお湯で溶かしたスープを別の器に用意して、「つけ麺スタイル」で味わうのもおすすめです。
―今後の展望についても聞かせてください。
官野 「無塩そうめん・うどん」は、引き続き、お子さまから高齢者の方まで幅広く楽しんでいただきたいですね。「揖保乃糸龍の夢神戸牛醤油ラーメン」は、兵庫県の新しいお土産にと開発したもので、令和2年度の「五つ星ひょうご」にも選定されたのですが、発売開始が2020年の夏と、ちょうどコロナ禍と重なってしまいました。それでも着実に数を伸ばしてきましたが、観光産業の復活の兆しが見えた今、大きな期待を寄せています。神戸牛は、海外の方にも大変人気ですし、パッケージには「600年の歴史を誇る揖保乃糸と、神戸牛を使ったラーメン」という紹介文を英語でしっかり入れておりますので、見つけていただけたら嬉しいです。
神戸牛を、スープ原液中の約12%に使用。
―アイデア光る、商品のご紹介をありがとうございました!
「無塩そうめん・うどん」(200g×各2袋セット)
価格:¥1,000(税込)
店名:はりま製麺株式会社
電話:0120-75-0623(9:00~17:00)
定休日:土曜・日曜・祝日。インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://harima-seimen.co.jp/items/70
オンラインショップ:https://harima-seimen.co.jp
「揖保乃糸龍の夢神戸牛醤油ラーメン」(2食入)
価格:¥972(税込)
店名:はりま製麺株式会社
電話:0120-75-0623(9:00~17:00)
定休日:土曜・日曜・祝日。インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://harima-seimen.co.jp/items/106
オンラインショップ:https://harima-seimen.co.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
官野元彦(はりま製麺株式会社 代表取締役社長)
1970年兵庫県生まれ。名古屋大学大学院を修了後、日本製粉株式会社(現株式会社ニップン)に入社し、2000年に新宮製粉精麦株式会社(はりま製麺株式会社)へ。2013年に代表取締役社長に就任。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/橋本小波 画像協力/はりま製麺>