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奇跡とご縁が掘り当てた超軟水「ブナのめぐみ」が生んだ日本酒

2022/09/26

広島県の南東部に位置する三原市は、古くから良質の酒造りが行われてきた場所。江戸時代初期には、長崎・平戸に駐在していたイギリスの商館長が、好みの酒を手に入れるため、わざわざ三原まで船を出したという逸話もあるとか。そんな三原で、現在も酒造りを行う「株式会社醉心山根本店」は、日本画の巨匠・横山大観先生が愛した酒蔵としても知られています。長きにわたり、多くの人に愛され続ける理由とは?6代目社長の山根雄一氏に伺いました。

株式会社醉心山根本店 取締役社長の山根雄一氏
株式会社醉心山根本店 取締役社長の山根雄一氏

―御社は創業が万延元年(1860年)。162年の歴史をお持ちなんですね。

山根 実は、私ども山根家が経営を引き継いだのが1860年。蔵はその前からありました。三原の歴史はとても古く、三原城が築城されて450年を超えますので、もしかしたら、この蔵にもそれくらいの歴史があるのかもしれません。山根家は尾道で商家を営んでいたのですが、本家の当主・山根源四郎が、出羽屋と呼ばれていたこの蔵を買い、一族を送り込んで酒蔵の経営を始めたんです。源四郎は尾道におりましたが、その後、四男の英三をここに養子に出して2代目に。私はそこから数えて6代目となります。

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歴史を感じさせる「醉心山根本店」。

―社長は、広島大学、大学院にて発酵工学を学ばれたとか。やはり幼い頃から酒造りに興味があったのでしょうか?

山根 どうでしょうか(笑)。かつて酒税が国の重要な財源だった時代、酒造りに携わる人材を育成するために、現在の広島大学、大阪大学、山梨大学には醸造科というものが設置されていたのですが、私が入学した頃はバイオテクノロジーが盛んな時期でもあったので、発酵工学とはいえそちらの方がメインでした。日本酒については大学4年生となり研究室に配属されてから学ばせていただく機会を頂きました。

―そうだったのですね。今は6代目として、どんな思いを大切にしながら酒造りをされているのですか?

山根 「長く続けること」です。三原は広島の中でも酒造りの歴史が古く、江戸時代には、全国五指の銘醸地に数えられ、三原酒は広島藩から将軍家へも献上されていました。ところが、昭和30年代頃には10軒の蔵があった三原で、現在、酒造りを行なっているのは弊社のみなんです。そうした状況からも、私たちは三原の酒造りの歴史と文化を後世に伝えていかねばならない。そんな使命を感じながら酒造りを続けていきたいと思っています。

―そんな御社の大ニュースと言えば、平成になって、超軟水「ブナのめぐみ」を掘り当てたことでしょうか。

山根 そうですね。それまでもずっと、三原の軟水で酒造りを行なっていたんですが、時代と共に、三原も少しずつ都市化が進み、山も手入れが行き届かなくなって、水が変わり始めてきたんです。これは、軟水を酒造りの肝としてきた弊社にとっては一大事で、父と私で、新たな水源を探し始めました。まずは三原市内、その後は近隣の町にも範囲を広げて探したのですが、なかなか思う水が出ません。出たとしても量が足りない、良さそうな場所があってもすでに先客がいらっしゃる、ということが続いて数年が経ちました。ところがある時、弊社から車で1時間ほどの距離にある福富町(現・東広島市)の、標高922mの鷹ノ巣山の山裾で井戸を掘削したところ、稀に見る良質の軟水を得ることができたんです。

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ようやく出会えた、「ブナのめぐみ」の源。

―軟水にはどのような魅力があるのですか?

山根 例えば軟水で出汁を取ったりお米を炊いたりすると、素材の味が非常に引き立ちます。当時、父と私は井戸を掘って水が出るたびにコーヒーを沸かして飲んでいたのですが、福富町の水で沸かしたコーヒーは、コーヒー素人の私でもわかるくらい、格別な味でした。水源と思われる鷹ノ巣山の山頂付近にブナの原生林があることから、この水を「ブナのめぐみ」と名づけたのですが、この超軟水で酒を造ったら、どんなに最高だろうと思いましたね。

―奇跡のようなお話ですね。

山根 しかも、福富町は私の曽祖父の生まれ故郷でもありましたので、これはご先祖のお導きだと。今では、蔵の全てのお酒を、この「ブナのめぐみ」で仕込んでいます。

―そんな「ブナのめぐみ」を使った純米吟醸「醉心稲穂」。御社のHPの「味わい分布図」では、ど真ん中に位置するお酒ですね。

山根 「醉心稲穂」は、私の父が入社後しばらくして造り、少しずつ改良しながら今日まで造り続けてきたお酒です。父は、外洋航路の航海士だったのですが、祖父が倒れたことで38歳の時に蔵に帰って来たんですね。そして当時の日本は、徐々に欧風化していって、食生活や家族の形態も変わっていった時代。そこで日本酒をどんな風に楽しんでいただくかを考え抜き、生み出したのが純米吟醸というスタイルでした。ちなみに「純米吟醸」と謳ったお酒を販売したのは、弊社が初めてだったようです。「ブナのめぐみ」を掘り当てて以降は、超軟水を使ったお酒の典型的な性質、特徴もしっかり表れるようになって、「醉心のお酒を知ってみたい」「飲んでみたい」という方にはまずこちらをおすすめしています。自身の存在感も発揮しながら食事の邪魔もしないので、どんな料理にもマッチするのも魅力です。あえて挙げるなら、三原名物のタコ、そしてエビ、カニといった甲殻類でしょうか。変化球ですが、あんぱんとも非常に良く合います(笑)。

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ひやでも、常温〜ぬる燗でも美味しくいただける。

―一方、「鳳凰醉心『究極の醉心』大吟醸」は、佇まいからスペシャル感が漂っていますね!

山根 代表的な酒米である山田錦の産地と言えば兵庫県ですが、弊社は県内でもいち早く、兵庫県三田市産の山田錦を使った酒造りに取り組みました。その三田市産の山田錦を、精米業者さんも唸るギリギリの30%まで磨き、当時の極限を目指してみようと挑戦したのが、この「究極の醉心」です。華やかな香り、きめ細やかな味わい、もちろんお米の旨味も楽しめる。先ほど水源のお話をさせていただきましたが、こちらは「ブナのめぐみ」の井戸周り、清々しい緑の光景を思わせてくれる1本です。お祝いの時などに、ゆっくり楽しんでいただけたら嬉しいですね。「醉心稲穂」と共に、「ワイングラスで美味しい日本酒アワード」で金賞をいただいたこともあるんですよ。

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冷蔵庫で冷やし、グラスに注いでひと呼吸。
素晴らしい香りを楽しんで。

―こだわりが詰まった御社のお酒は、日本画の巨匠、横山大観先生にも愛されたそうですね。

山根 昭和初期、当時、東京の神田にあった醉心の東京支店に頻繁に来店されるご婦人がいらして、スタッフがお声がけしたところ、なんと大観先生の奥様だったそうです。その話を伝え聞いた曽祖父が、上京時に上野の先生のご自宅を訪ねて酒造りなどについてお話しさせていただくと、先生は非常に感激され、先代も感極まって、「先生がこれからお飲みになる酒は私どもが全てお送りします」と申し出たそうです。先生には、満89歳でお亡くなりになるまで醉心の酒をご愛飲いただきました。

―素敵なお話ですね。今後の展望についても聞かせてください。

山根 弊社には、祖父が書き残した、「一合の酒に酔い、一升の酒に酔うべからず」という一文が残っています。文面をそのまま解釈すると、「大酒を飲むな、少ない酒で満足しろ」ということですが、その裏には、「無理せず、長く続けるように」というメッセージが込められているように思います。今や海外でも日本のSAKEは愛されており、ありがたいことに弊社のお酒も10数カ国で販売していただいていますが、まずは地元で愛され、リピートされるような酒を造ることが第一。地域にしっかりと根付き、文化を廃れさせないのも酒蔵のお役目。そんな思いを胸に、これからも酒造りを続けていきたいと思っています。

―時代ごとの彩り豊かなエピソードを伺え、さらに美味しくお酒がいただけそうです。ありがとうございました!

純米吟醸『醉心稲穂』(720ml)_商品1

「純米吟醸『醉心稲穂』」(720ml)
価格:¥1,469(税込)
店名:株式会社醉心山根本店
電話:0848-62-3251(平日 9:00〜17:00)
定休日:土日曜・祝祭日。インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://suishinyamane.com/item-detail/1179996
オンラインショップ:https://suishinyamane.com/

鳳凰醉心『究極の醉心』大吟醸 木箱1本入(720ml)

「鳳凰醉心『究極の醉心』大吟醸 木箱1本入」(720ml)
価格:¥5,500(税込、送料込)
店名:株式会社醉心山根本店
電話:0848-62-3251(平日 9:00〜17:00)
定休日:土日曜・祝祭日。インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://suishinyamane.com/item-detail/1179993
オンラインショップ:https://suishinyamane.com/

お問い合わせについては、下記のE-mailアドレスまでご連絡ください。
E-mail:yamanehonten@suishinsake.co.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
山根雄一(株式会社醉心山根本店 取締役社長)

広島大学工学部・大学院で発酵工学を学び、修了後に醉心山根本店に入社。同時に東広島市にある国税庁醸造研究所(現独立行政法人 酒類総合研究所)の共同研究員に。その後、平成21年(2009年)に社長に就任。趣味は読書。特に歴史ものを好む。

<文・撮影/鹿田吏子 MC/隅倉さくら 画像協力/株式会社醉心山根本店>

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