今回、編集長アッキーが気になったのは「ホンビノス貝」。スーパーで、ハマグリのようなアサリのようなその貝を見て興味を惹かれながらも、初めて目にしたので手を伸ばす勇気が出なかったとのこと。そこで取材チームが、千葉県船橋産のホンビノス貝を扱っている、かねはち水産代表取締役社長の内海金太郎氏にホンビノス貝について伺いました。
貝好きならぜひお試しを!肉厚、濃厚、砂抜き不要の「船橋産ホンビノス貝食べ比べセット」
2022/12/15
かねはち水産株式会社 代表取締役社長の内海金太郎氏
―ホンビノス貝という名前、初めて聞きました。
内海 ホンビノス貝は水揚げされる場所がごく限られていることもあって、全国的にはまだまだ知られていません。1度名前を聞いても、ふだんあまり目にすることがないので「ホンノビス」とか「ホンノスビ」とか、間違って覚えている人も少なくありませんからわざと漢字で「本美之主貝」と記載することもあります(笑)。
―どんな貝なのですか?
内海 原産地は北米大陸の東側、カナダからメキシコ湾にかけて広く生息している2枚貝です。大きめのアサリのような、ちょっと白っぽいハマグリのような見かけをしていますが、アサリでもハマグリでもありません。味も食感もまったく違います。アメリカ東海岸の名物に「クラムチャウダー」がありますよね。「クラム」は2枚貝の総称ですが、クラムチャウダーにはホンビノス貝が使われることが多いようです。
ホンビノス貝の漢字表記は何通りかありますが、
船橋では「本美之主貝」。
―北米原産の貝が、なぜ日本で水揚げされるのでしょう?
内海 ホンビノス貝は、もともとは日本に生息していませんでした。日本に入ってきた経緯については諸説ありますが、北米大陸からのタンカーの船体にくっついてきた、あるいはバラスト水といって、貨物船が空荷で出向するときに船のバランスをとるために積み込んだ港の海水に混ざって運ばれてきた、という説が有力です。1998年頃、東京湾北部で発見され、現在はおもに弊社のある千葉県船橋市、市川市で水揚げされています。弊社で扱っているのは船橋漁港で水揚げされた「船橋産ホンビノス貝」です。
―「船橋産」にこだわっている理由をお聞かせください。
内海 弊社は1976年の創業以来、船橋漁港で水揚げされるアサリやアオヤギなどの2枚貝を中心に荷扱いしておりました。で、ある時ホンビノス貝が漁獲されるようになって従来通りの手法を用いてホンビノス貝の荷扱いをしておりますから、船橋漁港で水揚げされる「船橋産の2枚貝」にこだわりを持つのは創業当時から変わらずやってきたことなのです。ホンビノス貝を漁獲して、初めて流通に乗せたのが船橋漁港水揚げのものでした。言ってみれば、船橋産ホンビノス貝は「日本におけるホンビノス貝の元祖」ですね。そして何より、船橋産ホンビノス貝の漁港近くは栄養分がとても豊富なのです。その理由としてはまず、漁場近くに「三番瀬(さんばんぜ)」と呼ばれる干潟があること。三番瀬は遠浅の浅瀬なのですが、そういう場所には微生物が棲みつきやすいんですね。すると、その微生物を餌とする鳥などの動物が集まり、そのフンが栄養源になる……という具合に循環が生まれます。さらに、江戸川と荒川という2つの大きな川から栄養分の豊富な水が流れ込んでくる。それらの相乗効果で栄養たっぷりのところに生息しているホンビノス貝は当然、おいしい。ですから弊社では、船橋漁港で水揚げされたホンビノス貝にこだわっているのです。
「船橋ホンビノス貝食べ比べセット(大3玉、中5玉、ミニ10玉)」。
オゾン殺菌済み冷海水と一緒に活きたまま届きます。
―船橋では、ホンビノス貝では当たり前の存在なのですか?
内海 船橋でホンビノス貝が獲れ始めたのは2006年ですから、まだ20年も経っていません。父親が創業したかねはち水産に私が入社したのも2006年で、ホンビノス貝も取り扱い始めたのですが、私自身、そのときは「ホンビノス?そんな貝があるの?」という認識でした。市場に持っていっても「これは何?」と言われてしまう。そういう存在の2枚貝でした。そんな調子ですから、船橋近辺にお住まいの一般消費者の方たちもホンビノス貝のことをほとんどご存知なかったと思います。それでもホンビノス貝は日々、水揚げされます。生き物ですから長期の保管が効かないのでなるべく早く食卓へお届けしなくてはいけません。このおいしい貝を、ひとりでも多くの方に知っていただきたい、食べていただきたいと、船橋市などと協働して、私自身も自分にできることは何でもやってホンビノス貝のPRに努めてきました。
ホンビノス貝と同様、
船橋名物の小松菜を生産している「ひらの農園」の平野代一さんと
内海社長がタッグを組んで考案した船橋新名物「THE船橋ウエポン」。
こちらはその1つ、「船橋バクダンクリームコロッケ」。
「船橋ロケットウインナー」。
チキンウインナーで、やさしい味。
―一般消費者向けに通信販売を始められたのも、その一環でしょうか。
内海 はい。弊社は、私の父が1976年に創業して以来、貝類の仲買・卸売を行ってきました。卸売市場や飲食店など、いわゆる業務筋に卸してきたのですが、自分たちが扱っている貝類を、どんな方が、どのように召し上がっているのかわかりません。できれば、実際に召し上がっている人の顔が見たい、声を聞きたい……ということで、2016年からインターネット販売を始めたのです。少しずつですが、船橋以外、関東地方以外にお住まいの方にもホンビノス貝のことを知っていただけるようになりました。
―ホンビノス貝の特徴と魅力を教えてください。
内海 アサリなどほかの貝類にくらべると保管できる期間が長いことと、身の中に砂を抱いていないので砂抜きの必要がほとんどないこと。この2つが大きな特徴であり、消費者にとっては大きな魅力だと思います。味についていえば、濃厚な味わい。ハマグリが「淡く、上品な味わい」なのに対して、ホンビノスは風味が強いんです。私は「ホンビノス貝は主張がある」という言い方をしていますが、ミネラルたっぷりでガッツリ、食べごたえがありますよ。
砂抜きは不要ですが、
貝の身の中に海水をため込んでいるので「潮抜き」がおすすめ。
バットやボウルなどに貝とひたひたの量の水を入れ、
1〜2時間放置(水が冷たいと海水を吐き出さないので常温で)。
その後、貝の表面をよく洗い流してから調理します。
左から、大・中・ミニ。
ミニといっても大きくて、食べごたえがあります。
―今回、ご紹介させていただく「食べ比べセット」は、大きさ違いの食べ比べ。貝の大きさによって、味わいが異なるのでしょうか。
内海 貝の味自体には変わりはありませんが、ホンビノス貝は身の中に海水をため込んでいるので、大きいものほど塩味は強いかもしれません。なので、大きいサイズのものは網焼きなどにして、そのまま召し上がっていただくのがおすすめです。中サイズは、お鍋がいいですね。貝自体の味が強いので、和風の寄せ鍋よりもキムチ鍋やスンドゥブ、カレー鍋などしっかりした味付けの鍋に合います。小さいサイズの調理法としてイチオシなのは、白ワイン蒸しです。日本酒で蒸してももちろんおいしいのですが、白ワイン特有の成分がホンビノス貝のおいしさを引き出してくれるのだそうです。私としてはガーリックバターをトッピングして食べるのが好きです。残ったスープに茹で上げたパスタを加えたらもう、絶品ですよ!
ミニを白ワイン蒸しに。
貝の身はぷっくりして、甘みたっぷりです。
貝の塩分があるので味付けは不要。
残ったスープにはもちろん、パスタを入れていただきました。
スーパーなボンゴレといった感じで、絶品!
「ガーリックバター」をトッピングしなかったのが悔やまれます……。
中サイズをスープに。
旨み&甘みたっぷり、コクも十分。
次はきっとスンドゥブに!
大は網の上で焼きました。
口が十分開いて、貝殻から貝柱がはがれるまで焼くのがコツ。
貝柱が太くてなかなか開きませんが、がまんがまん。
焼き上がったら、醤油をかけずにレモン汁を絞るのが内海社長のオススメ。
たしかに、レモンの酸味がホンビノス貝の濃厚な味を引き立ててくれます。
―おなかがすいてきました……。最後に今後のビジョンをお聞かせください。
内海 とにかく、このおいしいホンビノス貝をひとりでも多くの方に味わっていただきたい。そのためにはまず、ホンビノス貝のPRを続けることです。弊社としては、発送の体制を整えることをはじめとして、みなさんにホンビノス貝を知っていただく努力を惜しまないこと。それにつきます。というのも、仲買・卸しを行う弊社ではホンビノス貝を養殖しているわけではなく、漁師さんが獲ってきてくれたものあってこその商売です。その漁師さんが「もう、ホンビノス貝は獲れない」となったら、弊社はお手上げです。気候変動などによって海の環境も変わっていくでしょうから、その影響はホンビノス貝にも及ぶでしょう。私としても、ホンビノス貝がある限りはその魅力を伝え続けたいですし、漁師さんたちと一緒になって船橋のホンビノス貝を守っていきたいと考えています。
―海の恵み、ホンビノス貝をいつまでも食べられることを願っています!本日は貴重な、そしておいしいお話をありがとうございました。
「船橋産ホンビノス貝食べ比べセット 大3玉 中5玉 ミニ10玉(2~3人分)」
価格:¥6,423(税込)
店名:船橋かねはち水産
電話:047-433-2501(11:00~17:00)
定休日:火・土・祝前日/インターネットでの注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kanehachi-suisan.com/?pid=97903776
オンラインショップURL:https://www.kanehachi-suisan.com
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
内海金太郎(かねはち水産株式会社 代表取締役社長)
1979年千葉県船橋市生まれ。芝浦工業大学大学院時代に建築と人工知能の応用研究を行う。システムエンジニア勤務を経て2006年入社。祖父の代から続く会社で千葉県船橋漁港で水揚げされるアサリやホンビノス貝(本美之主貝)等の2枚貝の仲買を行う3代目。入社とほぼ同時期から水揚げされるようになった「ホンビノス貝」を「もっと皆さんに知ってもらいたい」の一心で、全国各地卸売市場や飲食店への出荷や、通販サイト、全国でも珍しい「貝の自動販売機」など、船橋の美味しい2枚貝の普及活動に従事。自社だけでなく船橋の海のこと・水産業に目を向けてもらうため「船橋漁港の朝市」の言い出しっぺでもある。
<文・撮影/鈴木裕子 MC/石井みなみ 画像協力/かねはち水産>