昔ながらのプリンはツルンとした食感の固めのプリンが主流でしたが、2000年代にはとろっとしたなめらかタイプのプリンが浸透しました。この“とろけるプリン”の火付け役と言われているのが西鎌倉の洋菓子店レ・シュー。こちらの人気スイーツの一つが『メープルプリン』です。『メープルプリン』の生みの親であるオーナーシェフの倉内正巳さんに、そのおいしさの秘密と商品誕生までのお話をうかがいました。
累計販売数350万個を誇る! お取り寄せできる、とろっとなめらかな『メープルプリン』
こだわりの卵とメープルから生まれる優しい甘みとコク
お取り寄せで“とろけるプリン”が楽しめると評判の『メープルプリン』。口に入れた瞬間にとろっと口の中でとろけ、ふわりと自然な甘みとメープルの香りが漂う逸品。甘さとコクのバランスが絶妙で食べやすく、ひとつ食べ終わったらまたひとつ…と思わず手を伸ばしてしまいます。
毎日300本以上を売り上げるこのプリンには、もちろん素材への強いこだわりが。新鮮な生乳に加えるのは、漢方処方の飼料で育った「那須御養卵」。甘味とコクをあわせ持ち、栄養価が高く、ビタミン・ミネラルが豊富、さらに一般的な卵と比べコレステロールが5~10%少ないと言われる、からだに嬉しい卵です。
『メープルプリン』のもうひとつの特徴はその自然な甘みです。プリンといえば強い甘みと香ばしい苦味のあるキャラメルソースにからめて食べるのが一般的。『メープルプリン』はソースをなくし、プリン全体にほんのりメープルの甘みを加えることで、卵や生乳の風味も残しています。
使用しているのはカナダのケベック地方に生えるカエデの樹液40Lからたった1Lだけ採れる貴重なメープル。このメープルもメープルシュガーとメープルシロップの2種類を使っています。
「粉末と液体、水分量が違う2種類のメープルは、微妙な風味やコクなどを調整するためにはどちらか一つではできず、微妙なバランスで配合することで、優しく自然な甘みを実現できるんです」(倉内さん)
フランス料理人ならではの発想から生まれる極上スイーツ
鎌倉で生まれ育った倉内さんは、もともとフランス料理店で修行を積んでいました。フランス各地のレストランの食べ歩きをした際、デザートの質の高さと存在感の違いに驚きを感じ、デザートの魅力に取り憑かれます。その後、西鎌倉にてレ・シューをオープン。
「フランス料理人としての経験とアイディアは、ケーキのデザインや味の組み立て活きていると感じます」と、パティシエではなくフランス料理人として経験を積んだ倉内さんは言います。
レ・シューを一躍有名にしたなめらかタイプのプリン『にしかまプリン』も、プリンのおいしさを最後まで口の中で堪能できればという発想から生まれました。“口に入れた瞬間においしさが広がるスープと、とろけだす半熟感が独特の温泉玉子をイメージ”したというのもフランス料理人ならではの観点です。
このプリンは大ヒットし各種メディアから取材を受け、大人気商品となります。ただ、なめらかタイプのプリンはどうしても配送時に中身が崩れてしまい配送には不向きであったため、お取り寄せができませんでした。
そこで配送できる商品として開発されたのが『メープルプリン』。驚きなのはその味だけではなく、手元に届いた時には崩れていないのにスプーンを入れれば驚くほどなめらかなことです。
「配送中に崩れないような必要最低限の固さにし、シロップが混ざらないようにプリン自体に味を付け、ソースを排除しました。メープルの風味や味を最大限に出し、口当たりの舐めからさとミルキー感を出す事に苦労しました。理想的なものができるまで2年半かかりました」(倉内さん)
ひとりひとりのお客様に合ったサービスと商品の提供を心がけているレ・シュー。実店舗へ立ち寄ることが難しいお客様にも楽しんでいただけるよう開発されたメープルプリンにもその思いが現れています。看板もないこの洋菓子店には今日も全国からファンが集まります。