奈良の郷土料理、柿の葉ずしをいち早く商品化した、すし製造販売の老舗。160余年の歴史に則ったリブランドを果たした2021年を、創業元年-原点に立ち返る年-として、温故知新の決意を新たにしたそうです。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社柿の葉ずし 代表取締役社長の平井孝典氏に、取材陣が伺いました。
総本家のプライドとこだわりの詰まった逸品「柿の葉ずし 5種詰め合わせ」「焼鯖ずし『 匠 』」「ローストビーフ棒ずし」
2022/10/20
株式会社柿の葉ずし 代表取締役社長の平井孝典氏
―ロゴには「大和上市 総本家 平宗 文久元年創業」とあります。込められた想いをお聞かせください。
平井 文久元年1861年に、平井宗八が、大和国上市村(現奈良県吉野郡吉野町上市)に、すし・川魚・乾物等の製造販売「平宗」を創業しました。明治後半に入って「料理旅館平宗」を創業。奈良は吉野の郷土料理である柿の葉ずしを、料理旅館で提供するようになりました。さらに近鉄六田駅(当時の吉野駅) の「平宗便利店」という店で小売りもスタート。家庭料理だった柿の葉ずしが、吉野名物として商品化したきっかけを作った者としての責任を「総本家」の言葉で表しています。
―柿の葉ずしについて詳しく教えてください。
平井 山深い吉野では、生の魚はとても貴重で、海からの長い道のりを塩漬けにした運んだサバが珍重されていました。それを薄く切ってごはんに乗せ、身近にあった柿の葉で包んだのでしょうね。夏祭りなど特別な日のごちそうでもあったようです。柿の葉ずしといえば鯖と鮭がよく知られていますが、実は鮭を考案したのはうちの先々代なんですよ。
―平宗さんならではのこだわりをお聞かせください。
平井 まずはお米ですね。奈良の郷土料理ですから、奈良県産ヒノヒカリだけを使っています。合わせるすし酢は、濃すぎず薄すぎずちょうど良い加減になるように。時代とともに好まれる味が変わりますので、常にブラッシュアップを続けています。防腐剤など余計なものは一切無添加。賞味期限が多少短くなるという縛りはありますが、料理屋として、添加物に頼らず技術で勝負したいという思いです。ネタの仕入れにもこだわり、丁寧に処理をして、1つひとつ柿の葉に包んでいるんですよ。
左から鯖、鮭、金目鯛、穴子、海老の5種。
―平井社長はご自身が料理人であられるのですね。
平井 代々、経営者が料理の現場を知らなければダメだという教えを引き継いでいます。私は専門学校を出た後、大阪で料理人として10年間修業をしながら、いろいろな資格も取得してきました。そこで、料理の技術はもちろんのこと、伝承文化や食文化を守ることの大切さも学びました。弊社は2021年に創業160年を迎えました。改めて我々がすべきことを見直し、どのように料理と向き合っていくか、どのように商品を送り出すかを、社員全員で共有するようにしました。
―具体的にお聞かせください。
平井 企業としてもちろん商いの視点は大事ですが、老舗として、伝統的な食文化を継承していく使命も背負っていると思うのです。守るべきたいせつな文化を、現代に即した形に変えて送り出さなくては……。それにはやはり、既存のものに追従したり、流行に乗ったりするのではなく、独自の目線や価値観で、確実な商品づくりをすべきだと考えています。モノではなくコトをプロデュースできるよう、幅を広げていきたいですね。
代表としての私の考え方やコンセプトは、常に口に出し発信し、社員が思いを1つにできるようにと心がけています。
―そんな思いで生まれたのが新しい棒ずしですか?
平井 祖母の「続けることが肝要だ」という言葉が印象深く、大切にしています。どんなに高尚な思いを持っていても、事業運営が続かなければ目的も果たせない。時代の変化やニーズに合わせた新商品にも挑戦していきます。
素材選びからシャリ、薬味の組み合わせなど
細部まで妥協なし。
―大和牛 ローストビーフ棒ずしについて教えてください。
平井 奈良は、特産品が割と少ないんですね。あっても、大和ポーク、大和肉鶏、大和牛と、畜産品が多い。ならばと、3種で挑戦してみました。肉を焼いたりもしましたが、私は和食が専門ですがローストビーフにも多少の自信があったので試したところ、大和牛の柔らかさと、奈良県産米ヒノヒカリの酢飯がピッタリ合った。そこから試作を重ねて商品化しました。その後も5回ほどブラッシュアップをして、ようやく今の形になりました。
大和牛のローストビーフとヒノヒカリが抜群の一体感。
―味わいのポイントは?
平井 ローストビーフは、10時間以上かけてじっくり丁寧に仕込んでジューシーに。しゃりにはゴマを混ぜ、ローストビーフとの間に大葉を挟みからしを塗って、風味豊かに仕上げています。そのままでもおいしいですが、旨みの効いた和風のタレをかけていただくと、奥行きのある味わいになります。
ほんのり甘いタレが
肉の旨みとシャリの甘酸っぱさを引き立てる。
―焼鯖ずしはいかがですか?
平井 焼鯖の棒ずしというと、福井県名物として知られていますよね。あれは塩焼きですが、柚庵焼きにしたらどうだろう? という、料理人としての発想から生まれた商品です。柚子を効かせた柚庵だれに漬け込み、丁寧に焼いています。特に「匠」は国産の真鯖のみを使用しており、その肉厚な身が特徴です。こちらも和からしが程よいアクセントになっていると思います。
肉厚な鯖の身はしっとりジューシー。
―今後も新商品を期待してよろしいですか?
平井 柿の葉ずしや棒ずしを、味を落とすことなく冷凍する独自技術の開発に成功しました。紅葉した柿の葉を季節限定で使ってみたり、ご家庭で柿の葉づくりを体験できるセットを作ってみたりなど、さまざまに取り組んでいます。その根底には、食文化継承の責任と、料理人としてのプライドがあります。細部にまでこだわりぬいた商品を送り出していきます。
―御社としての展望もお聞かせください。
平井 「自然から人へ、人から人へ。」をブランドメッセージにしました。海のめぐみである鯖、山のめぐみである柿、地の恵みである米に感謝をして、思いを込めて握り包む柿の葉ずしは、受け継ぐ食文化の本質を象徴しているように思います。今は土産物や贈答品としてのニーズが多いですが、もっと日常的に全国的に楽しんでいただくものにしたいので、ラインナップや価格帯など、もっと努力を続けたいと思います。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「柿の葉ずし 5種詰め合わせ」(8・12・15・20・30・48個入り/冷蔵配送/賞味期限は製造日より3日(20時まで))
価格: ¥1,560 ~ ¥9,017 (税込)(税込)
店名:柿の葉ずし 総本家 平宗 オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kakinoha.co.jp/SHOP/2020_9_8.html
オンラインショップ:https://kakinoha.co.jp/
「平宗謹製 大和牛ローストビーフ棒ずし」(冷蔵配送/賞味期限は製造日より2日(23時まで))
価格:¥2,700(税込)
店名:柿の葉ずし 総本家 平宗 オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kakinoha.co.jp/SHOP/2020_9_11.html
オンラインショップ:https://kakinoha.co.jp/
「平宗謹製 棒ずし 焼鯖ずし『 匠 』」(冷蔵配送/賞味期限は製造日より3日(20時まで))
価格:¥1,814(税込)
店名:柿の葉ずし 総本家 平宗 オンラインショップ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kakinoha.co.jp/SHOP/2020_9_12.html
オンラインショップ:https://kakinoha.co.jp/
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変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
平井孝典(株式会社柿の葉ずし 代表取締役社長)
専門学校を卒業後、大阪で10年間、奈良に戻り12年、伝承文化や料理文化を学び習得後、株式会社柿の葉ずしに入社、2016年より現職。専門調理師・調理技能士、公益財団法人日本調理師連合会 師範、全国日本調理技能士会連合会 師範など食にまつわる多くの資格を保持し、第15回奈良県調理技能向上展示コンクール 奈良県知事賞、H28年奈良県卓越技能者表彰「奈良の名工」受賞など受賞歴も多数。
<文・撮影/植松由紀子 MC/隅倉さくら 画像協力/柿の葉ずし 平宗>