ホテルやレストランでしかお目にかかれないというイメージが強いのは、扱いが難しい、料理法が難しそうなどの理由があるかもしれません。高級食材オマール海老に下処理や調理を施し、家庭で気軽に楽しめるごちそうとして商品化した会社があります。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社シーボーン・ジャパン 代表取締役社長の小澤祐司氏に、取材陣が伺いました。
あのパーティー料理を家庭で手間なくおいしく!「オマールブイヤベース」「オマールテルミドール」
2022/10/27
株式会社シーボーン・ジャパン 代表取締役社長の小澤祐司氏
―創業のきっかけからお聞かせください。
小澤 起こりはカナダ・バンクーバーにあるシーボーン社です。練り物メーカーの原料バイヤーだった武田共平が、カナダのシーフードを扱う土産品店として創業しました。1980~90年代はカナダが人気観光地となり、多くの日本人観光客が訪れた時代です。カナダで購入した水産物を日本のご自宅まで宅配すべく日本に拠点をと作られたのが、シーボーン・ジャパン。1986年に、現CEOである古池啓輔が創業しました。古池がワーキングホリデーでカナダに渡った際、武田が力添えをした縁と聞いています。
―カナダの水産物というと具体的には?
小澤 活オマール海老、現地のスモークハウスで自社加工するスモークサーモン、天然紅鮭、オーガニックキングサーモン、数の子、子持ち昆布などです。日本でも活魚用の水槽を設えるなど、鮮度を維持できる環境を整えました。
―小澤社長とシーボーン社との出会いは?
小澤 26歳の時に古池と出会いました。7歳しか違わないのに、立ち振る舞いに勢いがあって、ラフな服装をスタイリッシュに着こなす、エネルギッシュな古池に感銘を受けました。出会って数か月後にはシーボーン・ジャパンに入社。当時はまだ会社としての労働環境も整っていませんでしたが、会社が大きくなることだけを目指して夢中で働きました。
―ご入社後の歩みをお聞かせください。
小澤 95年の入社当時は超円高の時代。輸入の増大が続いた波に乗り、カナダ食材の業務用卸に注力しました。大手ホテルグループでカナダ産オマールフェアも開催されましたし、それはもう「すごく売れた」としか言いようがありません(笑)。一方で、2000年代以降、同時多発テロ事件の発生やSARSの流行などでカナダへの観光客は激減。土産物の出荷拠点としてより、カナダ食材のインポーターとしての業務へと比重が変わっていきました。
取り扱う食材の変化で言うと、当初は天然の紅鮭や自家製スモークサーモンが主流でしたが、世界的に北欧産や南米産のアトランティックサーモンに人気が移ったことで、主力商品をオマール海老へと方向転換しました。気候変動に左右される天然の紅鮭より安定的な養殖のサーモンの人気が高まったようです。
私個人としては、入社3年後に役員となり、2016年から代表を務めています。社員は多い時で50名弱、現在は40名ほどですが、時々のメンバー構成に応じて自分の立ち回りを考えるようにしています。営業現場で指揮をとっていた時期もありますし、調整役に徹することもありました。コロナ禍を経て、さしずめ今は……BtoC商品の開発担当といったところでしょうか(笑)。
―BtoC商品の開発やECサイトの整備を始められたのはコロナ禍がきっかけですか?
小澤 結婚披露宴やパーティーでの需要、レストラン食材として使われることが多いオマール海老ですから、ひどい月は売上前年比マイナス90%の大打撃でした。最初は助成金を申請して休業したりもしましたが、社員のモチベーション低下が目立ち、社内の雰囲気がギスギスしてきたので、ほどなく方針を転換。グルメレビューサイトで全国のオマール海老を使いそうなレストランをリサーチして電話営業をしたり、冷凍コンテナを購入し冷凍オマール海老を仕入れたりと、新しいことを始めました。すぐに回収できなくてもいい、いつか収益につながるときが来ると信じて日々業務にあたっていました。
―そもそもオマール海老が一般向けに流通が少ないのはなぜですか?
小澤 1つには扱いが難しいことがあると思います。カナダでは東海岸でよく獲れますが、冬には漁港が凍ってしまうほど寒い土地で、捕獲後の水温が5℃を上回ると劣化が始まります。水槽内で共喰いをすることもあり、鮮度を保った良い状態で輸送するには手間も設備投資もかかります。日本で輸入業者は10社程度しかないのではないでしょうか。
カナダから鮮度を保って直輸入されるオマール海老。
―一般向けの流通が少ないと必然的に料理への苦手意識が出ますね。
小澤 最近ようやく、クリスマスの時季に大手スーパーに並ぶようになりましたが、まだまだお店で食べるイメージが強いかもしれません。ですが、甘みと旨みがたっぷり、抜群の食べ応えを誇るオマール海老を、ご家庭で気軽に食べていただこうと、下処理や調理を施した商品を開発しました。
―オマールブイヤベースについて教えてください。
小澤 取引先であるグランピング施設のフードコーディネーターさんと一緒に、パエリアセットを開発したことが発端です。そのスープがすばらしくおいしかったので、弊社の商品にもレシピを使わせていただくことにしました。スープのおいしさを生かしたトマトベースのブイヤベースで行こう、と。
たっぷりのシーフードとスープを楽しむブイヤベース。
―スープのおいしさの秘密は?
小澤 オマール海老1尾、ホタテ、ハマグリ、ムール貝、アサリ、赤海老と、高級食材をふんだんに使っていますから、おいしくないはずがないのです(笑)。ベースとなるスープも、野菜や香辛料、そしてオマール海老の頭からだしを取っています。たっぷりのシーフードを煮込むうちに旨みがどんどんスープに出て、それは滋味深い味わいになります。
豪華なディナーが手間なし30分で完成。
―冷凍で届き、そのまま30分煮込むだけと手間なしですね。
小澤 妻に試食をしてもらったときに、「鍋もなんとかならないの?」と指摘を受け、ハッとしました。より手間なくわずらわしさを感じなくするために、簡易なべ焼きうどんに使われるようなアルミの鍋を探しました。もちろん、冷凍のまま丸ごと取り出せるので、鍋に移し替えて温めていただくと見栄えは良いですね。
1度使う分には耐久性は十分。
届いたらそのまま火にかけて洗い物いらず。
―おすすめの食べ方はありますか?
小澤 オマール海老をはじめとするシーフードの旨みを存分に味わってください。具材を追加するなら、私はキノコ類がおすすめです。スープがたっぷりありますから、締めにはリゾット風雑炊はいかがでしょう。本当は生米から炒めてアルデンテのリゾットにしていただく方がおすすめですが……。
一旦スープを取り出し、オリーブオイルで生米を炒め、
スープを少しずつ足して煮ると本格リゾットに。
白米で雑炊やパスタソースにしても。
魚介の旨みが凝縮したとろみのあるスープなので、
粉チーズなどを加えずとも大満足。
―もう1品ご紹介ください。
小澤 テルミドールという、殻付きの甲殻類にベシャメルソースをかけて焼くグラタンのような料理です。結婚披露宴などでよく見るあれですね。家庭では、解凍後160℃くらいの低温で15~20分、表面に焦げ目がつくまで焼くだけという気軽なものにしました。
冷蔵庫解凍後オーブンまたはオーブントースターで
15~20分焼くだけ。
レストランの味がとても気軽に完成。
こだわったのは2つ。まずはソースが濃厚であることです。冷凍しても分離しない配合や素材選びに苦労しましたが、焼き上げたときにこぼれてくるほどたっぷりなので、パンなどにつけてもおいしいと思います。
2つめは、プリプリとしたオマール海老がたっぷり入っていること。練り物のような身では残念ですからね。半割にしたオマール海老から身を取り出し、ベシャメルソースと合わせて殻に戻すのですが、ほかからオマールの身を追加していますから、フォークを刺せば身に当たるほど入っていますよ。
オマール海老の大きな身はプリプリ食感。
濃厚なベシャメルソースと絡まって食べ応え抜群。
―本当に手軽にレストランの味が楽しめますね!ほかにもありますか?
小澤 「オマールドリア」もおすすめですし、ブイヤベースは1人鍋やゴージャスバージョンもありますよ。実は、開発途中のものや、社内で却下されてしまったアイデアは山ほどあるのです。どうにか商品化にこぎつけるようにブラッシュアップしていきたいですね。オマール海老自体の料理はもちろん、それを引き立てるソースも商品化したいと思っています。
大切にしたいのは、すべての作業を社内でできること。ベシャメルソースもブイヤベースのスープも、加工業者に依頼する方法があるかもしれませんが、それをすると価格を上げなければならない。できるだけリーズナブルに、そして手軽にオマール海老を楽しんでいただきたいですからね。
―今後の展望をもう少しお聞かせください。
小澤 コロナ禍で大変な時期がありましたが、地道に取り組んできたことが日の目を見始めています。頼もしい社員も育ってきました。いつか戻ってくる、マスクを外してにぎやかに会食できる日まで、食材と真摯に向き合い、価値を下げないよう、サプライヤーとしてできる限りのことを続けたいと思っています。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「オマールブイヤベース」
価格:¥4,380(税込)
店名:オマール!オマール!
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://seaborn.shop/products/detail/83
オンラインショップ:https://seaborn.shop/
「オマールテルミドール」
価格:¥1,720(税込)
店名:オマール!オマール!
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://seaborn.shop/products/detail/90
オンラインショップ:https://seaborn.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小澤祐司(株式会社シーボーン・ジャパン 代表取締役社長)
1969年3月28日奈良県生まれ。1995年に創業者である古池啓輔(現代表取締役会長・CEO)と出会い、同年3月1日入社。主に業務用卸販売の新規開拓に従事する。3年後常務取締役に。その後、業務用卸販売の販路拡大に伴い、直接貿易の比率が増える。2016年4月1日より現職。2019年11月アイルランド直接貿易が始まる。2021年よりECサイトのアイテム充実を模索し、B to C商品の自社開発をスタート。
<取材・文・撮影/植松由紀子 画像協力/シーボーン・ジャパン>