今回、編集長アッキーが気になったのは、岩手県北上市でハムやソーセージづくりを行う「北上まきさわ工房」。契約農場で手塩にかけて育てた銘柄豚・北上四匠豚を使った商品は、お肉のうまみたっぷり!本場ドイツの賞も受賞した本格的な味わいの秘密を探るべく、代表取締役である伊勢学氏にお話をうかがいました。
本場ドイツも認める本格派!岩手・北上山地の契約農場でのびのび育った“北上四匠豚”の「プレーンウインナー」「焼豚」
2022/10/28
株式会社北上まきさわ工房 代表取締役の伊勢学氏
―以前はハム・ソーセージの大手メーカーにも勤めていらっしゃったとか。社長のこれまでの経歴をお聞かせください。
伊勢 大学卒業後、ハムやソーセージの加工を手掛ける大手メーカーに就職しました。その後、転職したのも食肉加工関係の会社で、そこで取引先として出合ったのが北上まきさわ工房です。弊社への入社は2009年。当時は「技術はあるが、販売力がない」という状況で、会社を維持していくのが難しくなってきていたんです。そこで、経営や営業面のサポートをしてほしいというオファーをいただき、入社しました。私が社長に就任したのはその5年後の2014年。今年で8年目になりますね。
―新たな経営体制を構築するためには、ご苦労も多かったのではないでしょうか?
伊勢 1番大変だったのは、やっぱり東日本大震災ですね。入社から2年ほど経って、少しずつ業績が上りはじめた矢先でしたから。弊社は内陸にあるので大きな被害はなかったのですが、売上はがくんと落ちましたし、本当に苦しい時期でした。それでも、被災地の商品を買おう、食品を食べようといった、さまざまな復興支援の取り組みに随分救われました。そこから何とか売上を拡大して、乗り越えてきたところです。
岩手県南西部・北上市にある工房。
ドイツ仕込みの技術でハムやソーセージづくりを行っている。
―業績向上のためにどんなことに力を入れてこられたのでしょうか?
伊勢 手づくりハムやソーセージの会社って、業態的になかなか大きくなれないんです。全国にたくさんありますし、弊社のように地元の銘柄豚をウリにしているところが多いので、地域性が高いんですよ。それゆえに、県外の方に認知されにくい。自社製品の製造・販売だけで食べていくのは至難の業です。そこで、入社後すぐに力を入れたのが委託加工です。牛たん専門店とタイアップした「牛たんハム」や「牛たんソーセージ」など、外食産業を中心に我々の”つくる技術”を活かしてお客様のご要望に沿った商品づくりを行っています。
―自社商品の販売はどのような形でされているのでしょうか?
伊勢 先ほどの地域性の話になりますが、いくら岩手で良い商品をつくっても県外にはなかなか広がっていかないんですよ。ならば、まずは地元の人に味を覚えてもらおうということで、産地直売所に置かせてもらったり、結婚式場とのタイアップで引き出物として取り扱ってもらったりしています。あとは、自社直売所での販売ですね。コロナ前までは毎月第3土曜日に特売日を設けていたんです。定番品はもちろんですけど、少し形の悪いソーセージやハムやベーコンの切れ端のようなアウトレット品、お中元やお歳暮の解体品などをお得な価格でご用意していました。今はコロナ禍で開催できませんので、第3土曜日前後にオンラインショップで特売キャンペーンを行っています。
月1回の特売日は、オープン前から行列ができる大好評のイベント。
―ソーセージやハムをつくるときに大切にしていることは?
伊勢 原料肉にこだわりを持っています。使用しているのは、弊社オリジナルの銘柄豚「北上四匠豚」。交配・飼育が難しいことで知られる四元豚種で、きめ細かい柔らかな肉質と脂身の甘さが特徴です。澄んだ空気と豊かな自然に囲まれた契約農場で、できるだけストレスをかけないようのびのびと育てています。肉本来の味をいかすため、添加物は必要最低限に抑え、ドイツの岩塩と香辛料、国産のきび砂糖で基本的な味付けのみを行っています。
ハムやソーセージのほか、ベーコンや焼豚、生ハンバーグも届けてくれる。
―プレーンウインナーはシンプルな味わいのなかにも、しっかりとお肉の味が感じられますね。
伊勢 シンプルだからこそ、1番難しいのがプレーンウインナーです。日本では粗挽きソーセージが広く親しまれていますが、実は本場ドイツのソーセージにはない製法なんです。主流なのは”絹びき”や”エマルジョン”と言われる、肉を細かく挽いてカッティングして仕上げたもの。このプレーンウインナーもそのタイプで、なめらかでプリッとした食感が特徴です。練りすぎても練り足りなくてもダメで、その見極めが難しい。やはり職人の力量やセンスが問われるところですね。このほか、粗挽きタイプも各種とりそろえています。黒胡椒と一味唐辛子を加えてチョリソーにしたり、バジルハーブをブレンドしたりして、さまざまな味わいのウインナーをつくっています。
ウインナーは、 “加熱しすぎない”ことがおいしく味わう秘訣だとか。
―ドイツのコンテストで何度も金賞を受賞されているそうですね。
伊勢 ドイツの食肉加工協会が主催する世界最高峰の食肉加工品コンテスト「SÜFFA」やDLG(ドイツ農業協会)の賞品競技会で金賞を受賞しました。はじめて受賞したのは1999年です。以来、プレーンウインナーだけでも3回、ほかの賞品を含めると7回受賞しています。実はウインナーのほかに「ベーコン」、「焼豚」もDLGの金賞を受賞しているんですよ。焼豚は、肩ロース肉を特製たれでじっくり時間をかけて煮込んだ人気の高い商品です。
あっさりとしていながらも深みのある特製たれが、お肉のうまみを引き立てる「焼豚」。
―最後に今後の展望をお聞かせください。
伊勢 まずは早くコロナが収束し、以前のように戻ることができればいいなと思いますね。それまでは、今できることを少しずつやっていくほかないと思っています。具体的には、お中元やお歳暮、自家需要のお取り寄せギフトに力を入れていきたいですね。全国的にお中元やお歳暮はピーク時の1/3ほどしか売れなくなってきていますので、もっと買っていただける工夫が必要だと感じています。弊社の技術をいかした委託加工にも、より一層力を入れて色々なお客様とタイアップしていきたいと考えています。
―貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「プレーンウインナー」
価格:¥390(税込)
店名:北上まきさわ工房
電話:0197-72-8029(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://makisawa.shop-pro.jp/?pid=78742798
オンラインショップ:https://makisawa.shop-pro.jp/
「焼豚」
価格:¥1,296(税込)
店名:北上まきさわ工房
電話:0197-72-8029(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://makisawa.shop-pro.jp/?pid=167097464
オンラインショップ:https://makisawa.shop-pro.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
伊勢学(株式会社北上まきさわ工房 代表取締役)
1964年(昭和39年)生まれ。岩手県遠野市出身。1986年、大学卒業後に大手ハムソーセージメーカー入社。その後、食肉加工品製造会社を経て2009年、北上まきさわ工房へ入社。2014年、代表取締役就任。2016年、新社屋・新工場竣工。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/升谷遥香 画像協力/北上まきさわ工房>