宮城県の特産品といえば、ふっくらとした食感と上品な味わいで知られる「笹かま」。宮城を旅したらお土産に必ず買って帰りたくなる一品です。なかでもアッキーこと坂口明子編集長が気になっているのが、サイズもおいしさもワンランク上と評判の「カネコの笹かま」。塩竈市にある製造元、株式会社カネコ橋沼商店の橋沼幸平専務取締役に、作り手の思いやおいしい食べ方をうかがいました。
そのままでも温めても美味!肉厚でひとまわり大きい塩竈名物「カネコの笹かま」
2022/11/08
株式会社カネコ橋沼商店 専務取締役の橋沼幸平氏
―お父様である橋沼幸造社長とともに会社を引っ張っておられます。創業はいつですか?
橋沼 1929年に曽祖父の幸七が創業しました。農家に生まれ、当時水産の町として栄えていた塩竈のかまぼこ店で修行をし独立したんです。最初はリヤカーで売り歩いていたと聞いています。祖父の代に今の場所に移り、1955年に株式会社となりました。創業当初の塩竈では魚が大量に水揚げされていたので、揚げかまやちくわなど種類豊富に作っていました。その後、笹かまがお土産でよく売れるようになり、主力を絞ったほうがいいということで、平成になってから、笹かま一本にしました。
上品なパッケージに入った「松島笹」。
袋のまま電子レンジで温められる。
―橋沼専務は大学卒業後すぐに家業に?
橋沼 いえ、水産とは関係のない一般企業に勤めた後、2007年、25の年に祖父の強い要望があり入社しました。父は職人肌で表立って言葉にしないタイプですから、息子が入社することにあまり何も言いませんでした。2011年、入社して4年経った時に東日本大震災が発生し、4メートルの波が押し寄せ、工場が一気に壊されました。塩竈には10メートルを超える波はきていなかったのですが、運の悪いことに、その年防潮堤の工事を行うための区画整理があって、うちの工場はその端っこ、海沿いに位置していたので、波を遮るものが何もなく、工場は全部壊れてしまいました。1年間の休業をせざるを得ませんでした。
―再建に向けて役員に就任されたのですね。
橋沼 はい、専務取締役として社長を補助することになりました。休業を余儀なくされましたが、翌年のゴールデンウイークの繁忙期にお土産向けの商品を出せればと、私たちは再建計画を立てて金融機関を回りました。
―大変なご苦労でしたね。就任されてから専務ご自身の変化は?
橋沼 以前は一営業担当でしたが、もっと幅広く対外的なところにも顔を出すようになりました。コロナ禍では業界自体が大変でしたから、仲間とも協力して、いろいろな企画を考えて乗り切っていこうと頑張っています。
―ECサイトの取り組みも?
橋沼 ネットで販売すればそれでいいということではなくて、お客様のことを考えながら販売したいと思っています。ポイントを集めている方は会員制モールを利用されるでしょうし、直接ショップにつながって購入したい方もおられます。特にうちは60歳以上のお客様も多いので、ターゲット層の方が買いやすいようにすることが大事なんです。自社サイトをもっと充実させたいと思っています。
塩竈からも近い、日本三景の1つ、
松島の雄大で壮麗なイメージを形にした「松島笹」。
パッケージにも松島が描かれている。
―お客様の立場で考えておられますね。企業として大切にされているところかと…。
橋沼 宣伝やサイトにお金をかけていないし、他に有名な会社もあるのに、その中でうちを選んでくださったのなら、リピートしていただけるように努力したいですね。お客様が満足してくだされば、口コミも有効な手段になると思うんです。社長は常々「従業員が食べたくない商品は作りたくない」と言っています。作っているところを見ている従業員が、自信を持って人に勧められる、お使い物にしたい、自分が買いたいと思える商品を私たちは作り続けたいんです。
―看板商品「松島笹」について教えてください。1つ約100g、肉厚で大きいですね。
橋沼 お客様のご要望から生まれた大きさなんですよ。もともと笹かまはお土産やギフト、ご家庭用として販売するほか、飲食店でもご利用いただいていました。ある時飲食店から「笹かまで単価の取れるものはないか?」と尋ねられて、カットしてお店のメニューとしても出せるようなものを企画したんです。それが「松島笹」で、社長が考案しました。社長こだわりの品です。笹かまはすり身を串に刺して焼くものですが、これだけの厚さがあると身が垂れてきてしまう。笹の形をキープしようとすると固くなってしまう。形もよくて食感もよくてという微妙な配合を社長はずいぶん研究したようです。主原料も厳選した上質なものを使用しています。
肉厚の笹かまは食べごたえ十分。夕食やお酒のおともに。
―袋のまま電子レンジで温められるというのも画期的。知らなかったおいしさです。
橋沼 ほとんどの方が冷たいまま召し上がっていると思いますが、できたてのような温かさで食べるとさらにおいしいんです。コットンのようなものを重ねたパッケージに入れたまま加熱すると、笹かまから出た水分を吸収し、加熱時には蒸すような状態になって、水分が抜けずおいしさが保てるんです。
―全国蒲鉾品評会では水産庁長官賞を受賞。
橋沼 社長は賞には無頓着だったのですが、震災後、皆様に手に取っていただくきっかけになるかなということで出品しました。
―おすすめの食べ方は?
橋沼 そのままでもおいしいですし、フライパンで焼き目を入れても一品になります。薄く切ってきゅうりやわかめと合わせて酢の物にしても…。わさびと醤油で食べると、日本酒にも合います。欧米で魚食は増えているのに、日本では減っています。かまぼこは骨のない魚ですから、日頃から召し上がっていただきたいですね。サラダチキンを食べるなら、かまぼこを食べてほしい(笑)
わさびや醤油を添えて。
日本酒とともに味わえば、しみじみとおいしさが。
―今後の展望をおきかせください。
橋沼 笹かまは要冷蔵なので、旅行者の方も「帰りに買うから」とおっしゃることが多いんです。レトルト商品などいろいろな温度帯の商品を用意して、チャンスロスを減らしていきたいですね。また、工場見学に来ていただいたり、私は組合青年部の部長として、学校訪問・体験学習などの活動を行ったりしており、笹かまを広く知っていただくことを目指しています。社員一同、お客様に喜んでいただけるものをこだわりを持って作っていますので、多くの方に笹かまを知り味わっていただきたいと思っています。
―熱意が伝わってきます。本日はありがとうございました。
「松島笹【和紙包装】」(12枚入り)
価格:¥3,888(税込)
店名:カネコ橋沼商店
電話:022-361-1533(9時~17時)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.sasakama.info/products/detail/11
オンラインショップ:https://www.sasakama.info
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
橋沼幸平(株式会社カネコ橋沼商店 専務取締役)
1982年、宮城県生まれ。大学卒業後、一般企業を経て2007年に入社。2011年の東日本大震災の津波被害により1年間の休業を余儀なくされた。再建時に同社専務取締役に就任。
<文・撮影/大喜多明子 MC/鯨井綾乃 撮影/日本全国お取り寄せ手帖事務局 画像協力/カネコ橋沼商店>