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新潟県十日町で親しまれている歴史ある小嶋屋の「へぎそば」。つるつるとした食感と喉ごしのよさがたまらない

2022/11/10

今回、アッキーこと坂口明子編集長がピックアップしたのは新潟県十日市のおいしいおそば「へぎそば」。つなぎにフノリを入れたそばは、コシがありつるつる滑らかな食感が特徴。「へぎ」と呼ばれる木製の四角い容器にお行儀よく並んだ様子にも食欲がそそられます。このおそばの魅力を株式会社小嶋屋 代表取締役社長、小林均氏に取材スタッフがうかがいました。

株式会社小嶋屋 代表取締役社長 小林均氏

―御社の創業の経緯はどのようなものですか。

小林 へぎそばは、大正時代に祖父、小林重太郎が作り出した、つなぎにフノリを使っているのが特徴のそばです。70年の歴史がある新潟県を代表するそばで、当社は1955年に私の父、小林辰雄が十日町に出店し、以来、十日町を中心に地元の皆さまに親しまれてきました。

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フノリ。「へぎそば」がなめらかな食感を持つのは
フノリをつなぎに使っているため。

―なぜつなぎにフノリを使おうと思われたのでしょう。

小林 新潟では江戸時代からそばの栽培が盛んに行われてきました。しかし、新潟ではつなぎに使う小麦が採れません。そこでフノリ(布海苔)という海藻をつなぎに使ってそばを作ることを考えました。十日町は着物作りで400年の歴史があり、糸を紡ぐときなど工程の中で何度かフノリを使うので比較的簡単に手に入ったのです。重太郎は工夫を重ねてフノリそばを完成させました。フノリは青森の下北半島などで採れるものを当時から現在も使っています。

―そのおそばが人気を呼んだのですね。

小林 そうです。高度成長期には十日町は絹織物の街として有名で、京都、大阪、名古屋などから出張で訪れた着物業界の方がへぎそばを食べ、その評判が全国に広まりました。

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へぎそばの原料なるそばの実と、そばの実を挽いてできたそば粉。

―新潟を代表する名産品になったのですね。

小林 私は長年、へぎそばを新潟県の代表的な食品として広めたいと願っていました。十日町は「ゆきと着物とコシヒカリ」をキャッチフレーズにしていたのですが、私は勝手に「ゆきと着物とそばのまち」というキャッチフレーズを作って名詞に刷り込んで配っていました。そうしたら「十日町は着物と米だよ」って怒られちゃって(笑)。でも、最近ようやく十日町の代表的な食品のひとつになったかなと思います。夢が叶いました(笑)。

―今回、紹介いただいた「生へぎそば」、つるつるした食感でおいしいですね。

小林 ありがとうございます。フノリが入ることで喉ごしがよくなります。一般的なそばのつなぎは小麦粉ですが、フノリは増粘多糖類です。小麦粉のグルテンは硬さがありますが、フノリにはぬめりがあり、その差が食感の違いになります。フノリとそば粉の分量比は企業秘密ですが(笑)、何十年もかけて研究した結果、今の分量になっています。ですから、そばが苦手な方で当社のへぎそばを食べてからそばが好きになっちゃった方がたくさんおられます。「これってそば?」っておっしゃってね(笑)。

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小嶋屋の「生へぎそば」。

―どのように製造していますか。

小林 それは企業秘密ですが、普通のそばの製造よりもつなぎに使うフノリを煮る作業が1つ加わります。また、フノリには空洞があり、砂などの異物が入っていることがあるので手作業で除外しているという手間がかかる製造法です。大変ですが手間がかかる分、他の方が参入しにくいという良い面もあります(笑)。

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鹿児島県産の本枯れカツオブシを使って
だしをとってつゆを作っている。

―素材にこだわっていらっしゃるとか。

小林 それも基本、企業秘密ですが、そば粉はすべて国産のものを使っています。そばつゆの材料も世間には売っていないものを使っています。鹿児島県枕崎の最高級品の本枯れカツオぶしを削ってだしを取っています。これに味のいいソウダカツオを加えています。少しですが昆布も入れて、カツオのイノシン酸と昆布のグルタミン酸の相乗効果を狙っています。カツオは中厚に削ってたっぷりと入れています。あ、これも企業秘密でした(笑)。みりんは「三河みりん」、砂糖は三温糖とザラメ糖、醤油は昨年から無添加にしました。それぞれの産地に足を運んで、1番いい材料を使っていることは間違いありません。

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「へぎそば」を綺麗に並べるには熟練の技が必要だ。

―「へぎそば」は整然と並んだ形も食欲をそそりますね。

小林 「へぎ」というのは木を剥いだ板を折敷にしたもののことです。当社の直営店では「へぎ」に一口ずつきれいに盛ってお出ししています。“手振り”や“手びれ”と呼んでいますが織物をするときの糸を撚り紡いだ“かせぐり”の動作に由来するもので、織文化の感性から生まれたと言われています。
手振りはフノリを使った滑らかなそばでなくては盛りつけることができませんから、「へぎそば」はフノリにしても、手振りにしても織物文化とそば文化が融合していると言っていいでしょうね。

―取り寄せた生そばを茹でるのはできますが、なかなかきれいに“手振り”はできません。

小林 私もできません(笑)。手振りは1個40g、手の感触だけで量らずに掴んで並べていきます。熟練のスタッフになると3分で60個できます。きれいさとスピードが勝負です。

―お取り寄せもいいですが、実際に新潟に行ってお店で食べたくなりました。

小林 ぜひ皆さんに来ていただきたいですね。そばは、挽きたて、打ちたて、ゆがきたてがおいしいと言われます。へぎそばは特にゆがきたてを食べていただきたいです。私が店に立っているときにもし4人お客様が来て4人前を注文したとしたら、「最初に2人前を注文して、食べ終わりごろに2人前を追加してはどうでしょうか」とご説明します。

―ますます行きたくなります。今後の展望についてはどうお考えですか。

小林 海外展開をしたいですね。今ヨーロッパはグルテンフリーの需要が拡大していると聞いています。へぎそばは小麦粉を使っていないグルテンフリー食品ですので。またそばはGI値も低く血圧安定効果があるルチンを多く含む安心・安全な食品です。ラーメンの海外進出が盛んですが、そばも海外でラーメンほどの人気になればいいと思います。国内ではまだ、関西方面の方には馴染みがないので関西での認知度を高めたいですね。昨年から自家製粉工場が稼働しています。今後もすべての素材を厳選し、日夜おいしさを追求していきたいと思っています。

―本日は有意義なお話をありがとうございました。

生へぎそば2人前

「生へぎそば2人前」(そば380g・つゆ300g)
写真は3人前
価格:¥1,990(税込)
店名:越後十日町小嶋屋
電話:03-6721-9335(平日10:00~18:00)※ご確認ください
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付中
商品URL:https://shop.hegisoba.co.jp/shopdetail/000000000001/ct6/page1/recommend/
オンラインショップURL:https://shop.hegisoba.co.jp/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
小林均(株式会社小嶋屋 代表取締役社長)

1956年新潟県十日町市生まれ、大学卒業後小嶋屋入社、平成になり社長就任以後、へぎそばを新潟県の名産にすべく努力を続ける。

<文・撮影/今津朋子 MC/升谷遥香 画像協力/小嶋屋>

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