京都に行くたびに「宇治茶 祇園辻利」に立ち寄っていたアッキーこと坂口明子編集長。2階のカフェ「茶寮都路里」も大のお気に入りですが、今回、新開発された手作りパフェが冷凍便で届き自宅で楽しめると聞いて大喜び。常に“ほんまもん”を提供しながらも、先進的な試みを続けてきた株式会社祇園辻利 代表取締役の三好正晃氏に商品の開発秘話を取材スタッフが伺いました。
京都の「宇治茶 祇園辻利・茶寮都路里」がオンラインショップをリニューアル。新開発の絶品パフェがおうちで楽しめるようになりました。
2022/11/18
株式会社祇園辻利 代表取締役の三好正晃氏
3代目・三好徳三郎が開いた台北の茶舗。
―「宇治茶 祇園辻利」の歴史をご紹介ください。
三好 辻利は1860年、宇治(京都府)で初代、辻利右衛門と2代目徳次郎が創業しました。1899年に3代目三好徳三郎が、当時、日本統治下だった台湾に宇治茶を広めたいという志をもって渡り、台北で「辻利茶舗」を立ち上げ広く商いをしていました。第二次世界大戦が終わると同時に4代目である三好正雄と喜久夫婦は日本に引き揚げ、宇治に身を寄せました。戦後の混乱の中、財産をすべて台湾に置き命からがら、着の身着のままで帰国しました。ここで再起を祈念し京都市内で店を立ち上げたのが当社の流れです。
―祇園に店を構えたのはなぜでしょう。
三好 4代目夫婦がどこに土地を買おうかというとき、ちょうど四条河原町と祇園に土地が空いていたそうです。四条河原町は当時も現在も京都で1番の繁華街です。それに対して今でこそ賑やかな祇園ですが、当時は静かな夜の花街でお茶を販売する雰囲気の街ではありませんでした。正雄は河原町にしようとしましたが、喜久が祇園で店を開こうと主張したそうです。「祇園は海外でも名が通っている地名。今後必ず発展する」といって断固として譲らなかったので、正雄も根負けして祇園に開店しました。私でも当時だったら河原町を選ぶと思いますね(笑)。今の祇園の賑わいを見ると喜久には先見の明があったといえます。ここで得意先もないゼロからのスタートを切りました。
辻利という名前は親戚筋などの店がたくさんあるので、私の父である5代目の三好通弘が「宇治茶 祇園辻利」としました。
「茶寮都路里」のパフェは四季ごとの素材を盛り込んだ人気商品。
―和カフェ「茶寮都路里」が大人気になりました。
三好 1970年に大阪で万国博覧会が開催されましたが、そのころ大手ハンバーガーチェーンが上陸するなどで日本人のライフスタイルが変化していきました。消費者の日本茶への関心も希薄になり、なんとかお茶の文化を盛り立てたいと抹茶を使ったアイスクリームとかカステラを作り、1978年にそれを食べていただくカフェ「茶寮都路里」を作りました。抹茶を使ったお菓子は今でこそ常識になっていて多くの商品がありますが、当時は先駆けでした。
わが家は3代目が台湾に渡って茶舗を開くなど、代々、ほかの人がしないことにチャレンジする精神が受け継がれているようですね。常識に風穴を開けていきたいという、関西弁で目立ちたがり屋、お調子者のことを“いちびり”といいますが、当社は代々、この“いちびり精神”が旺盛なようです(笑)。私は今は社訓として“パイオニアであれ”を掲げています。
―人気の理由はどこにありますか。
三好 お茶屋としてのプライドというか意地があったのか抹茶にはこだわって作っていました。抹茶をこれでもかというほど入れたので当時、市販のカップアイスクリームが50円のところ、当社の抹茶アイスは330円だったので誰も買いませんでしたね(笑)。
ただ、手作りの出来立てを食べていただいているのでおいしく、「茶寮都路里」が人気になりました。今も開店は10時半ですが、スタッフは朝6時ごろから出勤して餡を炊いて、白玉を作り・・・と素材の鮮度と品質にはこだわっています。当社は“パイオニアであれ”を大事にしていますがその前に“ほんまもんであれ”も大事にしているからです。
「Petitパフェ 抹茶」。自家製餡のほどよい甘味を味わいながら、
京都産の実生栽培の柚子を使ったゼリーの香りが抹茶の風味を引き立てる味のハーモニーが楽しめる逸品。
「Petit パフェ ほうじ茶」。ほうじ茶ジュレのさっぱりした味わいと、
きなことほうじ茶のコクの調和を感じる心地よい逸品。
―今回、ご紹介いただく「Petit パフェ」はどんな商品ですか。
三好 究極のお取り寄せパフェを作ろうと試作を繰り返した自慢の商品です。材料を吟味して一層ずつ丁寧に手作りし、味のハーモニーを楽しんでいただける当社ならではの“ほんまもん”のパフェです。
ベースラインは「抹茶」と「ほうじ茶」で、「抹茶」は抹茶ホイップクリームに抹茶ジュレ、抹茶ムース、バニラムースが層になっていて、京都の実生栽培の柚子を使ったゼリーの香りが抹茶の風味を引き立て合っています。「ほうじ茶」はほうじ茶のホイップクリームやジュレ、ムース、京碾ききなこの深い味わいと香りが楽しめます。もちろん、これらに使われている餡は厨房でことこと時間をかけて炊いた自家製のものです。
京都の伝統を感じさせながら、新しいパフェの世界を開拓した「Petit パフェ」。
この2品のほか、季節限定品も随時展開される。
―開発のきっかけになったことは何でしょう。
三好 実は以前から大手コンビニエンスストアから商品化のお誘いはあったのです。しかし、「祇園辻利」の名前をつけ我々が胸を張って出せるかどうかが疑問でお断りしていました。その後、コロナ禍の影響もあり、我々が納得できるものを本腰を入れて作ろうと着手しました。材料の選定から、ああでもないこうでもないと試行錯誤して試作を重ね、開発には1年ほどかかりました。私は試作を食べて「おいしい」とか「もうちょっと」と言うだけでしたが、社員が本当によく頑張ってくれました。食べていただくには8時間ゆっくり解凍するのですが、これも、当社から当社宛に冷凍の宅配便を出して、配達されたものを解凍して1番おいしいベストな解凍時間を計って決めました。
緑茶の甘さが舌にじわっと沁み込むような「水出し冷煎茶」。
―その試行錯誤がこのパフェのおいしさの理由ですね。さて、「水出し冷煎茶」はどんな商品でしょう。
三好 お茶は低い温度の方が甘く抽出されるので水出しが1番おいしいのです。この冷煎茶は通常より少し長めに茶葉を蒸しているため茶葉が細かくなり、冷水でも抽出しやすくなっているのが特徴です。
「水出し冷煎茶」はティーバッグなので手軽に淹れることができる。ギフトや京都土産にも最適。
―パッケージもおしゃれですね。
三好 お茶は贈り物として購入される場合が多い商品です。贈られた方が蓋を開けたときに、パッケージがよれたり傾いたりしないできちっと箱詰めされていれば、贈った方のセンスが先様に感じられると思い、キューブ型の紙箱を開発しました。この紙箱は広げると1枚の紙になります。風呂敷のようなパッケージで日本の伝統文化を継承しています。また紙箱の裏にはお茶の淹れ方が印刷されていて、説明書も兼ねています。開発したときは社内外から賛否両論ありましたが、京都は観光客の方がお土産としてお茶を買うことも多く、若い女性層から「買いやすい」「かわいい」と評価していただけてよかったです。
広げると1枚の紙になる。折り紙のような感覚で開ける楽しみがある。
―パッケージもパイオニアなのですね。
三好 当社は“パイオニアであれ”“ほんまもんであれ”の精神でやってきましたが、その前に“お客様第一”の精神があります。お茶をおいしく飲んでいただきたい、そのためにおいしいお菓子を作りたいと思っています。これからも誤魔化さず正直に一歩一歩、お客様のニーズをつかんで革新を続けたいと考えています。
―本日はありがとうございました。
「Petitパフェ」(抹茶、ほうじ茶 各2個入り計4個)
価格:¥4,968(税込)
店名:宇治茶 祇園辻利オンラインショップ
電話:075-525-1122(10:00~16:00 土日祝・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.giontsujiri.co.jp/collections/petit-parfait/products/15001
オンラインショップ:giontsujiri.co.jp
このほかに季節限定のパフェも販売されている。
「冷煎茶ティーバッグ」(5g×15袋入り)
価格:¥1,296(税込)
店名:宇治茶 祇園辻利 オンラインショップ
電話: 075-525-1122(10:00~16:00 土日祝・年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.giontsujiri.co.jp/collections/mizudashi/products/26323
オンラインショップ:giontsujiri.co.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
三好正晃(株式会社祇園辻利 代表取締役)
1961年京都府出身。1997年に株式会社祇園辻利入社。2005年、6代目社長に就任する。代々、引き継がれてきた精神「パイオニアであれ」を信条としている。主役はあくまでもお茶。お茶を使って「祇園辻利だからこそ作れる」商品を創造することを目指している。
<文/今津朋子 MC/隅倉さくら 画像協力/祇園辻利>