うりやきゅうりなどの野菜を酒粕に漬けて独特の風味に仕上げた奈良の名産、奈良漬。お酒が香る個性的な味わいは、“食べず嫌い”という人もあるそうですが、今回編集長アッキーが気になったのは、奈良漬好きの人はもちろん、苦手だったという人も、そしてお子さんまで1度食べたら必ずリピートしてしまうという、株式会社山崎屋の逸品。
おいしさの秘密やおすすめの食べ方を、井上寧代表取締役社長の長男で、次代を担うべく奮闘中の井上真伍氏に伺いました。
2022/12/22
うりやきゅうりなどの野菜を酒粕に漬けて独特の風味に仕上げた奈良の名産、奈良漬。お酒が香る個性的な味わいは、“食べず嫌い”という人もあるそうですが、今回編集長アッキーが気になったのは、奈良漬好きの人はもちろん、苦手だったという人も、そしてお子さんまで1度食べたら必ずリピートしてしまうという、株式会社山崎屋の逸品。
おいしさの秘密やおすすめの食べ方を、井上寧代表取締役社長の長男で、次代を担うべく奮闘中の井上真伍氏に伺いました。
―入社前は百貨店にお勤めだったとか。
井上 食品販売や食の催事に興味があったので百貨店に入ったのですが、配属されたのは外商部。3年間、個人のお客様宅を訪問して、宝石や時計、美術品のご紹介や販売をし、その後2020年に山崎屋に入社しました。
―いずれは家業を継ごうと?
井上 大学時代はまだ決めていませんでしたが、一人っ子ですし、父も若くないので、社会人になってからは、ゆくゆくはという気になりました。3年というのは思ったより早かったですけれどね。社会人として、父と仕事の話をするようになるなかで、それまであまり将来のことを話さなかった父が、「一緒に仕事をしよう」と初めて声をかけてくれ、それが嬉しくてやる気が出ました。
しかも、うちの仕事は名産やおみやげですから、地方に根付いた取り組みですよね。それも好きだったんです。奈良漬や奈良の名産に携わる会社がみんなで奈良を盛り上げようという、そういうことがしたいと考えていました。
―入社後の印象は?
井上 百貨店時代は数字というものが目の前にありましたが、今は数字の目標はあるものの、数字を追うのではなく、どういうお客様とお付き合い、お取り引きをしていくかを考える、そういう時間が増えました。
そのせいか、けっこうゆったりしているようには思います。年配のお客様が多いのですが、どうしたら若い世代の方にも買っていただけるのか。いくら売るというよりも、数字以外のことを考えることが多いんです。
―毎日どんなお仕事を?
井上 メインは工場での製造加工から袋詰めまで。全部です。取引先への納品や、百貨店、量販店への納品も行っていますし、店頭での接客、お電話やインターネットでのご注文への対応、ダンボールに詰める配送作業も行なっています。
―お客様と接することも多いんですね。
井上 インターネット販売もしているのですが、わざわざ店まで買いに来てくださる方が多いんです。大阪や滋賀からも来られますし、奈良観光のときには必ず立ち寄ってくださる方や、奈良から帰省する時は毎回買って帰って喜ばれると話してくださる方もいて、そんなお話を直接伺えるのは本当に嬉しいことです。
―そもそもなぜ奈良漬を?
井上 正確な記録は残っていないのですが、山崎屋としては300年余の歴史があり、最初は京都の伏見で両替商を営んでいたようです。100年ほど前に伏見で大火事があって店は焼失し、奈良に移って食料品と土産物の店を始めたそうです。
伏見は今も酒蔵が多い酒どころです。かつての交遊から酒粕が手に入り、それで奈良漬製造を始めたと聞いています。以来100年、1952年に株式会社化してからは70年。現社長の父は5代目にあたります。
―会社として代々伝えられていること、受け継いでおられることは?
井上 味を変えないということですね。「味だけは変えるな」と祖父からも言われてきました。お客様によっては「辛い」とか「固すぎる」というご意見もありますが、少数のお声に耳を傾けていると、長年続けてきた味が変わってしまい、それが怖いんです。会社として、変えたほうがいいのかと考えた時期もありましたが、続いてきた味をお好きなお客様がおられるのだからと、伝統の味を貫いています。
―甘くてコクがあって、シャキッとした歯ごたえ。奈良漬のイメージが変わりました。
井上 一般に奈良漬はけっこう塩辛くて、アルコール分が強いものですが、うちの奈良漬は甘めの味付けで、クセやアルコール感が少なく食べやすいとお客様にはよく言われます。製造を始めた当時、奈良漬はお肉と同レベルの高級品で、庶民の方には買いづらいものだったのですが、うちの会社が作り始める時に、もっと地元の方に食べてもらえるようにできるだけ安く提供したそうで、そこから広がっていったようです。
―初めての方もお子さんも食べやすいお味ですね。
井上 お客様のお子さんやお孫さんもパクパク食べてくださっているようですし、若い方も1度食べると気に入ってくださる方は多いんです。ただ、ではどうやってその一口目を食べていただくか、そこが課題ですね。
―素材について教えてください。サイトには生産者のお顔もありますね。
井上 うりやきゅうり、なす、かぶらなどメインの野菜は、土の肥えた徳島の自社農園や契約農家で生産したものです。収穫してすぐ、同じく徳島にある工場で塩漬けします。
―まず塩漬けなんですね。
井上 収穫から塩漬けの工程が速いので、鮮度が保たれ、食感の良さに繋がっているのだと思います。そして塩漬けの後、酒粕に漬けますが、工程がたくさんあって、中漬け、上中漬け、上漬け、本漬けと、塩漬けを含めて5回は漬け替えます。
漬け替えるごとにみりんや砂糖を増やして、酒粕の成分は段階的に変えています。野菜にもよりますが、短いものでも1年以上、だいたい1年半から3年くらいかけて繰り返し漬けるんですよ。
―そんなに長く?だから味に深みがあるんですね。
井上 同じ漬物でもぬか漬けや浅漬けは短いので、奈良漬の工程を話すと驚かれますね。どんなに大変であっても、お客様には関係ないことなのですが、やはり知って味わっていただけると嬉しいですね。
―人気の商品を教えてください。
井上 うりを1年半ほど漬けた「奈良漬 袋詰うり小」と、うり、きゅうり、すいか、なすなど素材を細かく刻んだ「ミックスきざみ 小袋」ですね。すいかは3年、その他は1年半から2年漬けています。
―おすすめの食べ方、アレンジは?
井上 奈良漬はどれもクリームチーズとあえるとめちゃくちゃおいしいですよ。奈良の居酒屋ではけっこう出しています(笑)クラッカーにクリームチーズと「きざみ」をのせてパクッと一口で……。
焼酎やビール、日本酒にも合うので、当店ではお酒とセットした商品がよく出ています。また個人的には、福神漬の代わりにカレーライスにきざみを添えるのも好きです。
―カレー、試しました。納得のおいしさです!
井上 袋詰うりは、カリカリの食感が売りのひとつなので、細かく刻んでポテトサラダに入れると、アクセントになっておいしいです。
袋詰うりもきざみも漬ける工程は同じですが、酒粕の配合が少しだけ違うので、きざみは酒粕もそのまま召し上がっていただき、袋詰のほうは酒粕をぱぱっと手で取り除いていただけたらと思います。味を保つため塩分の残っている酒粕を塗っているためです。
―アレンジ商品もあるんですか?
井上 うちの奈良漬は1番甘口で食べやすさに特化しているので、クリームチーズのほかサブレやアイスとの相性もよく、コラボ商品に取り組んでいます。特に、三原食品さんに製造していただいている「奈良漬クリームチーズ」は発注するたびにどんどん売れてゆきます。
―今後の展望は?
井上 私は社長ではないので、具体的な展望は父が考えていますが、今私にできることは、年配のお客様を大切にしながら、SNSなど若い世代にも広めてゆく方法を考え実践していくことです。
若い人にウケる味にするのではなく、味はそのままに、いかにお客様に食べていただくか。召し上がっていただきさえすれば、代々受け継いできたおいしさには自信と信念があります。「食べず嫌い」を減らせるように、努力していきたいと思います。
―奈良漬をもっと食卓に取り入れたくなりました。ありがとうございました。
「奈良漬 袋詰うり小」
価格:¥1,080(税込)
店名:山崎屋
電話:0120-070-705(10:00~17:00 日曜・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.yamazakiya.jp/i/f01
オンラインショップ:https://www.yamazakiya.jp
「ミックスきざみ 小袋」
価格:¥350(税込)
店名:山崎屋
電話:0120-070-705(10:00~17:00 日曜・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.yamazakiya.jp/i/903
オンラインショップ:https://www.yamazakiya.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
井上真伍(株式会社山崎屋 次期社長)
1995年奈良県生まれ。同志社大学を卒業後、近鉄百貨店に入社し、3年間外商を経験。2020年、家業であり、父・井上寧氏が5代目社長を務める山崎屋に入社。現在、主に工場に勤務している。
<文・撮影/大喜多明子 MC・撮影/根井理紗子 画像協力/山崎屋>