今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、北海道・函館の「マルヒラ川村水産」。ミシュランの星を冠する、あるいはゴ・エ・ミヨで高い評価を獲得しているレストランのシェフたちから絶大な信頼を得ているといいます。さらに最近、一般消費者向けにも通信販売をスタートしたといううれしいお知らせが。アッキーに代わって取材陣が、「卓越した目利き」と評判の株式会社マルヒラ川村水産 代表取締役・川村淳也氏に、仕事への思いと商品のこだわりについて伺いました。
星付きレストランのシェフをもうならせた 函館・鮮魚の目利きが選ぶ マルヒラ川村水産「”厳選”3点セット」
2023/06/15
株式会社マルヒラ川村水産 代表取締役の川村淳也氏
-トップシェフたちから引っ張りだこだと伺っています。現在に至るまでの経緯についてお聞かせください。
川村 もともとは、街の小さな魚屋だったんです。半世紀以上前に私の父が創業し、夫婦で商いをしていました。法人化して「マルヒラ川村水産」になったのは、平成5年(1995年)のこと。そのタイミングで、私も店に入ったんです。
以来、親子3人で、鮮魚はもちろん店の向かいのお父さんが晩酌の時に食べるお刺身1人前とか、隣の家のお母さんが晩御飯に焼きサンマ1本とか、お客さまひとりひとりのご注文に応じて加工し、お売りするということを続けていました。
そうするとお客さまから「昨日の刺身は、あまりよくなかったね」「この間のサンマ、脂が乗っていて美味しかった!」というようなお声を直接いただくわけです。そんななかで、反省したりよろこんだりという経験を積むうちに、市場で魚をパッと見ただけで脂の乗り具合や身の締まり具合、味わいまで、だいたい把握できるようになったんです。そうこうするうち、地元函館の料理屋さんとお付き合いさせていただけるようになって。すると、やっぱりプロの料理人の品質に対する要求は高いんです。時には「今日の魚はまったく使い物にならなかった」と叱られながら、いろいろなことを教えてもらって目利きの目や技を磨いていきました。
-なるほど、「卓越した目利き」は経験の賜物ですね。地元の方たちは、マルヒラ川村水産のおかげで毎日、美味しい魚がたべられてさぞ幸せだったことでしょう。
川村 ところが、時代の流れで、大きなスーパーマーケットができ始めるとお客さまの足は、街の小さな魚屋よりもそちらに向くようになり、次第に商売が立ち行かなくなって、一旦、店を閉めることになったんです。そこで、小売ではなく飲食店さんへの卸売へと方向転換しました。するとありがたいことに、「あそこの魚は美味しい」と口コミで当店の評判が広がり、メディアでも紹介されて。それによって、東京だけでなく全国のレストランや居酒屋さんともお付き合いが始まり、ついには一流ホテルからも声をかけていただけるようになりました。
それまでは、目利きをした魚や貝類などをそのままお店に納めていたのですが、ホテルはとくに衛生管理が厳しいので、魚をきちんと下ろし、血もしっかり抜いた状態で真空にして届ける必要があります。
手はかかるのですが、確かにその方が清潔ですし、何よりも魚を最高の状態でお届けすることができるんですね。そこでさらに、お付き合いが広がっていきました。
-ミシュランの星付きレストランのシェフたちとのお付き合いは、どのようにして始まったのですか?
川村 たまたまなのですが、平成25年(2015年)にフランス大使館から「鮮魚の匠」として招待されたんです。そこには、ミシュランの星付きレストランのシェフを始め錚々たるメンバーが揃っていて、びっくり。そこから、星付きレストランの様々なシェフとのお付き合いが始まりました。うれしかったですねえ。函館の、いや、日本の魚は本当に美味しいのだということを実感していただけたんですから。この時から当店の、そして私の人生がガラリと変わりました。
星付きシェフに「トレビアン!」と言わしめた「真鱈の昆布〆」。
-社長の、商品に対するこだわりとは? それはすなわち、シェフたちから信頼を得ている理由だと思うのですが。
川村 弊社の最大の強みは、函館の朝獲れの魚を仕入れてすぐに処理をし、航空便を使ってその日の都内でのディナータイムに召し上がっていただけることです。
2021年4月からは、北海道初となる新幹線を活用した定期輸送を導入しました。飛行機に比べ新幹線は天候に影響されにくく、発送からお届けまでの時間を短縮できるんです。航空便と併用することで、鮮度の高い魚をより安全・確実にお客様のもとにお届けできるようになりました。
-それでこそ「産直」ですね。
川村 はい。しかし、「産直」と言っても内容は色々です。港に揚がった魚をそのまま配送しても「産直」には違いないかもしれませんが、はたしてそれでお客様にご満足いただけるかどうかは疑問です。
当店の場合は私が、函館の市場に来られないシェフの目となり腕となって魚を吟味します。シェフによって求める魚は違いますから、それぞれのご要望にお応えするのは当たり前で、常にその一歩半くらい上をご提案するよう心がけています。
-付加価値を付けるのですね。
川村 シェフの元には、日本国内にとどまらず海外からも、いろいろな魚介類が届きます。そうした中から弊社の魚を選んでいただくためには、特別な理由が必要なんです。
それは鮮度であり、その魚を最も良い状態、お望みの状態でシェフたちの元へお届けすること。ですから、シェフひとりひとりオーダーメイドの納品となり、正直、手間はかかります。
でも、美味しいものは手間がかかるんです。私は、ただ単に函館直送の魚を食べていただきたいわけではありません。お客さまに「美味しい!」と言っていただける魚をお届けしたい。ほとんど自己満足の世界ですけど(笑)、その一言のためにこの仕事をやっているようなものです。
-その、社長の思いが込められた絶品を今回、ご紹介させていただくのですが、一般消費者向けのインターネット販売を始めたきっかけを教えてください。
川村 コロナ禍です。名だたるレストランも軒並み休業となって、魚の流通が止まってしまった。美味しい魚を召し上がっていただけないなんて、悔しいじゃないですか。
レストランが閉まっていても、1人でも多くの方に函館の魚を味わっていただきたいと、インターネットでの通信販売を始めたんです。最初は、かなり躊躇しました。魚の扱いにあまり慣れていない一般の方たちにも、満足していただける状態で商品をお届けできるだろうかと。でも、あれこれ試し、この状態だったらイケる! というものができました。自分たちが普段食べていて美味しいと思うもの、みなさんにもぜひ、食べていただきたいと思うものだけを選んでいるので、アイテム数は多くはないのですが、どれも自信作です。
函館の海の美味しいが詰まった「マルヒラ川村水産”厳選”3点セット」。
冷凍の状態で届きます。
-では、今回ご紹介させていただく「マルヒラ川村水産”厳選”3点セット」について、特長やこだわり、おすすめの食べ方を教えていただけますか?
川村 真鱈の昆布〆、根ホッケ一夜干し、そして塩たらこという、地元函館の人たちが愛してやまない3品をセットにしました。まずは真鱈の昆布〆。そう、フランスの三ツ星レストランのシェフにお褒めいただいたものです。
多くの人は、真鱈を生の状態で食べることは少ないんじゃないでしょうか。生で食べられるのは新鮮だからこそです。
これは、函館の朝獲れの真鱈をすぐに身おろしして、真昆布で〆ています。昆布にも色々種類がありますが、真昆布と名乗れるのは函館で採れる昆布だけなんです。函館で獲れた真鱈と、同じく函館の海で育った真昆布を組み合わせ、言ってみればテロワールの良さがギュッと詰まった逸品です。
醤油もいいですが、少しだけ塩をつけて召し上がってみてください。真鱈の甘みと昆布の旨みがグーッと押し寄せてきますよ。
「真鱈の昆布〆」。朝獲れの真鱈をキレイに処理し、真昆布できっちり〆ています。
真鱈はスライスされているので、そのままお皿に盛り付ければOK。
残った昆布で出汁を引けば、旨みたっぷり、何ともいい味。
-根ホッケというのは、普通のホッケと違うのですか?
川村 ホッケというのはもともと回遊魚なのですが、その中でも、ホッケの餌となるプランクトンが豊富な海の岩礁などに住みついて栄養を蓄えたホッケを、根ホッケというんです。函館の海で水揚げされた、丸々とした根ホッケを選んで一夜干しにしました。さらっとしてしつこくない脂が自慢です。
そして、ぜひ召し上がっていただきたいのが皮目。
皮目と身の間がとくに美味しいんです。一般に市販されているホッケの干物は、皮が固く、鱗がついたままで舌触りが悪いのであまり好まれないのですが、当店では、鱗を丁寧に取っているのでぜひ、皮目から召し上がってみてください。きっと、これまでの”ホッケ観”が変わると思います。
「根ホッケ一夜干し」。見よ、この、血や油焼けのない美しい姿を! 生臭さもありません。
カリッと焼き上がった皮目。
川村社長の言葉どおり、鱗がないので舌触りが良くパリッとしています。
そして内側に残る脂の甘いこと!
-「極旨 塩たらこ」については、いかがでしょう?
川村 今の流れとしては、明太子が人気なのでしょうけど、北海道の人たちはたらこが好きなんですよ。もちろん私も、店のスタッフもみんなたらこが好きなので、じゃあみなさんにも食べていただこうということで、セットにしました。たらこはピンキリで、子の質がよいもの、つまり粒が立っていてプチプチした食感が味わえるものが上等とされています。上等品は値段が高いのですが、これは「切れ子」と言って製造途中で薄皮が少し切れてしまい、「真子」として販売できないものなので、お安く提供できるんです。でも、味も食感も上等品と同じ。ご家庭用としては問題なく、お得感たっぷりだと思います。当店オリジナルの味付けが自慢です。炊き立てのご飯に乗せたり、おむすびの具にしたりして、存分に召し上がってください。
「極旨 塩たらこ」。「切れ子」と言っても、想像よりずっと大きいです。
卵ひとつひとつが粒立っているのが、わかるでしょうか。
お徳用だから、たっぷり使えるのがうれしい。
たらこに太白ごま油と生姜のおろし汁、レモン果汁を加えて和えたパスタ。
生クリームを使わなかったので、たらこそのものの味を堪能。
最後までプチプチ食感が楽しめて、美味しかった!
-今後は、事業をどのように展開されていこうとお考えですか?
川村 ずっと「お客様によろこんでいただきたい」という一心でやってきましたが、その姿勢は今後も変わらず、よりよいものをご提供できるように努力と工夫を続けていこうと思います。魚を「生臭い」といって敬遠される方もいらっしゃいますが、それはとても残念なこと。魚は鮮度だけでなく、きちんと処理を施されていてこそ美味しいんです。その、本当の魚の美味しさをみなさんにお伝えしていきたいと考えています。
また、弊社では「サステナブル・シーフードの調達」を経営理念として掲げています。気候変動による海水温の変化だけでなく、乱獲などによって水産資源は世界的に危機的な状況にあります。そうしたなか、弊社では函館の水産資源を後世まで残していきたい、そのために鮮度や品質の良い魚を適正な価格で購入し、高品質を評価してくれる人に販売することで、漁師さんたちの生活を守っていきたい。それが日本の魚食文化を守り、みなさんに、本当に美味しい魚を食べていただくことに繋がるからです。現在、SDGs目標達成を目指し、持続可能な魚の取引の仕組みを作っているところです。
-期待しています! 貴重なお話をありがとうございました。
「マルヒラ川村水産”厳選”3点セット」(真鱈の昆布〆、根ホッケ一夜干し、塩たらこ)
価格:¥3,980(税込)
店名:マルヒラ川村水産
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://maruhira-kawamura.net/?p=1590
オンラインショップ: https://maruhira-kawamura.net/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
川村淳也(株式会社マルヒラ川村水産 代表取締役)
1967年、北海道生まれ。1989年から6年間の修業を経て、1995年に有限会社マルヒラ川村水産入社。2005年、先代である父親を継ぎ、株式会社マルヒラ川村水産代表取締役に就任。趣味は水泳、ジョギング。酒(ワインや日本酒)をこよなく愛している。
<文・撮影/鈴木裕子 MC/橋本小波 画像協力/マルヒラ川村水産>