ミネラルを豊富に含んだ肥沃な大地がおいしいお米を育む佐賀県。古くから日本酒造りも盛んで、とりわけ鹿島市は県内屈指の酒どころ。市内に6つある酒蔵をめぐり、その土地の食や文化、歴史に触れる“酒蔵ツーリズム”も人気を集めています。
今回編集長アッキーが注目したのは、1934年創業の「幸姫酒造」。いち早く“酒蔵見学”をはじめるなど、日本酒の魅力の発信にも積極的に取り組んできた4代目・峰松幸弘氏にお話を伺いました。
2022/12/29
ミネラルを豊富に含んだ肥沃な大地がおいしいお米を育む佐賀県。古くから日本酒造りも盛んで、とりわけ鹿島市は県内屈指の酒どころ。市内に6つある酒蔵をめぐり、その土地の食や文化、歴史に触れる“酒蔵ツーリズム”も人気を集めています。
今回編集長アッキーが注目したのは、1934年創業の「幸姫酒造」。いち早く“酒蔵見学”をはじめるなど、日本酒の魅力の発信にも積極的に取り組んできた4代目・峰松幸弘氏にお話を伺いました。
―創業の歴史をお聞かせください。
峰松 造り酒屋のなかでは比較的若い方で、創業は1934年。蔵は日本三大稲荷の1つに数えられる祐徳稲荷神社のすぐ近くにありまして、父の代からは御神酒も納めております。
もともと峰松家は有明海の赤貝の養殖を生業としていたのですが、自然を相手にする仕事ですから台風が来たり不作が続いたりと、どうしても不安定になりがちで。やっぱり陸に上がったほうがいいだろう、ということで曾祖父が酒造りをはじめました。
当時、酒造免許を新規で取ることはなかなか難しかったようですが、造り酒屋をしていた親戚の助力を得て、なんとか免許をいただき「幸姫酒造」を創業するに至りました。
―現在は長男・宏文さんが杜氏を務めているそうですね。
峰松 昔は杜氏制でやっていましたが、今は長男が杜氏を務めています。杜氏制というのは、農閑期である冬の間、仕事のない農家さんが全国各地の酒蔵へ出稼ぎに出て酒造りに携わるというもので、江戸時代にはじまったと言われています。
でも現代は、地方でも産業が発達していますので、外に出なくても冬場の仕事があるんです。となると、だんだんと制度も崩れてくるわけで、そういった状況下では、私たちのような小さな蔵は自分たち自身が酒造りのプロフェッショナルにならねばならない。
そこで、長男が東京の農業大学へ進学して醸造を学び、修行期間を経て幸姫酒造の杜氏となりました。
―幸姫酒造さんならではの味わいを出すために工夫されていることはありますか?
峰松 麹づくりの最後の工程では、麹を室から出したあと麹菌の活性を抑えるために、熱を冷まして水分を飛ばす「枯らし」という作業を行います。温度の低い部屋で自然に冷ましていくのが最もオーソドックスな方法です。
でも、うちでは麹を室から出してすぐに乾燥機で風を当てます。一気に乾燥させることで、キレの良い酒質になるんです。東北だとわりと一般的なのですが、九州では珍しくて。県内でも数軒しかやっていないと思います。
味わいに関しては、日本酒が嗜好品である以上、トレンドも大事にしないといけないと思っていて。よその酒蔵さんのお酒を飲んだり、お客様の声を聞いたり、常にアンテナを張るようにしています。
20年くらい前は日本酒といえば辛口というムードがありましたが、今はまろやかで口当たりのいい甘めのお酒も好まれていますよね。最近は海外の品評会への出品や輸出にも力を入れていて、とくに海外ではフルーティで華やかな甘口のお酒が不動の人気。そういったことも意識しながら酒造りを行っています。
―やや甘口でキレのある「純米大吟醸 幸姫」は、食事中にもぴったりですね。おすすめのペアリングは?
峰松 佐賀県は甘めのお酒が多くて、うちも華やかでフルーティなお酒や甘口でキレの良いタイプが売れ筋です。なかでも人気のある「純米大吟醸 幸姫」は、チーズや肉料理にも合わせられるように醸したお酒ですので、和洋を問わずペアリングを楽しんでいただけます。
おすすめの温度は10℃から15℃くらい。口の広い酒器だと香りが逃げてしまいがちなので、ぜひワイングラスのように先のすぼまった酒器で召し上がってみてください。華やかでフルーティな吟醸香をダイレクトに感じていただけると思います。
―酒蔵見学も人気だそうですね。
峰松 酒蔵見学をはじめたのは、35年ほど前ですね。今はどこの酒蔵さんもやっていますが、当時はまだ全国的にも珍しかったと思います。きっかけは日本酒需要の低迷です。皆さんに酒蔵を見ていただいて、日本酒ってこうやって造られているんですよと紹介することで、少しでも日本酒を身近に感じていただきたいという思いではじめました。
うちはすぐ近くに、年間300万人の参拝客が訪れる祐徳稲荷神社がありますし、車で20~30分の場所に嬉野温泉や武雄温泉がある。交通の便が良く、観光で来られる方の多いエリアだということもあって、多くの方にお越しいただいています。
―最後に、今後の展望をお聞かせください。
峰松 実はここ数年、九州産の酒米の生育が思わしくないんです。最近の九州は亜熱帯化してきていますので、これだけ気候が変わってしまうとお米も全然違うものになってしまうんです。
ですのでこれからは、食米を使った質の高いお酒造りにもチャレンジしてみたいと思っています。品質を第一に、枠にとらわれない日本酒造りを行っていきたいです。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「純米大吟醸 幸姫」(720ml)
価格:¥3,300(税込)
店名:幸姫酒造
電話:0954-63-3708(8:00~17:00 土・日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://www.sachihime.co.jp/item/index.html
公式ホームページ:http://www.sachihime.co.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
峰松幸弘(幸姫酒造株式会社 代表取締役社長)
1948年佐賀県生まれ。慶応卒。大学卒業後に幸姫酒造に入社。営業活動に注力。1978年に同社代表取締役社長に就任。1987年、当時業界ではあまり見られなかった酒蔵見学を開始。また地元ロータリークラブの活動にも参加している。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/和田英利 画像提供/幸姫酒造>