福岡県大川市に、酢づくり300年の老舗があると聞きつけたアッキーこと坂口明子編集長。昔ながらの製法を守りながらも、今の生活様式に合った商品の開発や、レストランでの食べ方の提案など、独自の取り組みをしているとのことで、株式会社庄分酢 代表取締役の高橋氏に詳しくお話を聞いてきました。
酢造り300年の味はそのままに、おしゃれさと手軽さを兼ね備えた、今を生きる人のためのお酢「庄分酢」
2023/01/13
株式会社庄分酢 代表取締役 高橋一精氏
― 創業300年の老舗ですね。
高橋 起源はもっと古くて、江戸時代、1624年頃になります。福岡県大川市というのは、筑紫平野のど真ん中にあり、筑後川が流れ、水どころ米どころですから、昔から酒蔵が多いんですね。うちも元々は造り酒屋だったのですが、1711年、4代目の清右衛門から酢造商いを始めました。それ以来300年以上、酢を造り続けています。
―店構えも趣があります。
高橋 この辺りは古い町並みで、江戸時代からある道が残っています。ここも1759年に建てられたもので、古い民家の「町家」という商売をするための作りになっており、大川市の文化財に指定されています。今も現役で、自宅でもあり、事務所としても工場としても店舗としても使っています。
庄分酢の社屋。大川市は昔から木工職人が多く住んでいる地区で、
古い町並みが保存されている。
―秘伝の巻物があるとか?
高橋 一子相伝で製造方法を伝えられていた高橋家ですが、大正年間に書き写された巻物が残されています。これが原点なんですね。
そのころは科学的な理論などわかりませんから、彼岸のこの頃に仕込みなさいとか、何日目にこういう手入れをしなさいとかといった、仕込みの時期や割合、手入れの方法など、先祖が何度も失敗しながら見つけた玄米くろ酢の製法が記されています。
前文には、「相続人以外にはいかなる場合も見せてはいけない」と書かれているのですが、それだけ酢造りの艱難辛苦があったのだと思います。子孫には自分たちが味わった苦労を少しでも軽減させてやりたいという「親心」が隠されているようで、私たちの心の支えになっています。
― 玄米くろ酢の製法を少し教えてください。
高橋 有機玄米くろ酢の原料は玄米、水、麹米の3つと、いたってシンプルです。
仕込みはそれぞれ春と秋のお彼岸前後の年2回。有機玄米を蒸し、麹米を加え混ぜます。仕込水を入れた甕に麹米と蒸し米を混ぜ、麹米を振りかけて液面に浮かせて仕込みます。土中に半分埋まった仕込み甕は昔から使ってきた大甕。この陶器甕が太陽熱を吸収し、発酵を促すのです。
発酵中の玄米くろ酢 甕の手入れ風景。
時代を経た蔵の中には「蔵付き菌」と呼ばれる菌が住み着いていて、
その菌が酢を育て、まろやかな味を醸す。
― 3〜4ヶ月もの間、熟成させるのですね。
高橋 一般的にスーパーで市販されている安価な酢は、約24時間で発酵が終了しますが、庄分酢は発酵に3〜4ヶ月かかるのです。
昔ながらの静置発酵法で、築80年余りの土蔵造りの蔵の中などの甕に入れ、ゆっくりと丁寧に時間をかけて醸します。酢職人たちが大切に菌を見守り、味、色合い、香りを確かめ、厳格な品質管理のもと、ろ過・殺菌の過程を経て商品となります。
酢が苦手とおっしゃる方はツンとするから嫌だと思われているかもしれませんが、昔からの酢を1度食べてみてください。みなさん、いつもの酢とは違ってまろやかだと口を揃えておっしゃいます。くろ酢の場合は、アミノ酸が豊富なので、もっとまろやかですね。
― 伝統を守りながら、新商品も開発されています。
高橋 変えてはいけないことと変えることは分けています。蔵、甕、木桶、そして作り方はこれからも守っていきますが、商品やデザインは見直しています。
ネット通販などのお客様は35〜44歳の女性が中心です。その方達に合ったパッケージのデザインにしたり、商品を開発したりしています。
おしゃれで洗練されたPOPUPストア。
福岡の最先端ショップが並ぶけやき通りに出店している。
特に、くろ酢は庄分酢のシンボル的な商品ですが、味に独特の風味があって、どう使うのかが伝わっていませんでした。美味しく食べていただくためにどうしたらいいかと考えて作ったのが「万能くろ酢たれ」です。これなら手軽に、その良さ、美味しさを知っていただけると思います。
―「万能くろ酢たれ」の使い方は?
高橋 まさに万能なので、野菜炒めや生姜焼き、煮魚などなんでもできます。チャーシューや冷やし中華のタレなど、中華料理にもよく合います。
私としては、きんぴらレンコンがオススメです。レンコンを油で炒めてから「万能くろ酢たれ」をかけて炒めるだけで、誰でも簡単にコクのあるきんぴらができるんです。
かけて炒めるだけで、深いコクを感じるきんぴらが完成。
甘・辛・すっぱいがいい塩梅で料理の格がアップ。
―「蔵付酢酸菌 かすみくろ酢」も気になります。
高橋 こちらは古来製法を復刻したものになります。濁っているのが特徴ですが、これが昔ながらのお酢なんですね。透明な酢というのは、酢酸菌や微生物もろ過してしまっています。これを残すことで、酢本来の美味しさ、栄養価が保たれます。
また近年では、酢酸菌体を身体に取り入れることの機能性も多く見つかっています。香ばしくマイルドなお味ですから、そのまま希釈して飲んでいただいたり、ヨーグルトにかけたり、牛乳や豆乳に混ぜて飲んでいただいても美味しいですよ。
私は毎朝ヨーグルトにかけて乳酸菌と一緒にとることにしています。酢酸菌は免疫力をあげるということがわかっています。そのおかげかはわかりませんが、感染症にもあまりかからないようです。
「かすみくろ酢」と豆乳を混ぜて。
とろりとして飲むヨーグルトのような口当たりです。
甘みを感じるまろやかな酸味。
― 酢が体にいいとはよく言われます。
高橋 酢には防腐効果があることがまず発見され、ピクルスなど野菜の保存に使われていました。疲れた時にとると疲労回復効果があったり、唾液の分泌を促す食欲増進効果、酢醤油などにすることでの減塩効果など、期待される効果が多い食品です。
特にくろ酢の場合は、他に比べて、有機酸、アミノ酸が豊富なので体の循環をよくしてくれるとされています。大さじ1杯を60日続けて飲んだ時に、血圧が下がったり、メタボに効果があると言われています。ただ、飲むときには刺激があるので、水などで5倍以上に希釈して食後に飲むことをおすすめします。
― レストランも運営されています。
高橋 お店にお酢が置いてあるだけでは味はわからないですよね。味を知ってもらいたいということからランチをはじめました。お酢の使い方やお酢メニューの提案をしています。
大川市の「酢リストランテショウブン」、
朝倉市のビネガーレストラン「時季のくら」にて酢を使ったランチをいただくことができる。
写真は一例。
そのほかにも、ワークショップも開いていて、らっきょう漬け教室を開催したり、手巻き寿司体験、マイドレッシングを作ったりと、酢を中心とした食文化を体験して欲しいと考えています。日本の古い発酵食品を発信して広げていきたい。それが私の企業理念です。ぜひ蔵にきて、酢造りを体験してみてください。
―はい、もっとお酢のことを知りたくなりました! 貴重なお話をありがとうございました。
「ショウブン万能くろ酢たれ300ml」
価格:¥518(税込)
店名: 酢づくり300年庄分酢オンラインショップ
電話: 0944-88-1535 (平日 9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.tokinokura.jp/SHOP/70552.html
オンラインショップ:https://www.tokinokura.jp/
「蔵付酢酸菌 かすみくろ酢200ml」
価格:¥1,728(税込)
店名: 酢づくり300年庄分酢オンラインショップ
電話: 0944-88-1535 (平日 9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.tokinokura.jp/SHOP/40108.html
オンラインショップ:https://www.tokinokura.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
高橋一精(株式会社庄分酢 代表取締役)
1954年福岡県生まれ。東京農業大学醸造学科卒業後、株式会社 庄分酢へ入社。1997年に代表取締役に就任。現在(一社)大川観光協会会長の職に就いており、大川市のみならず福岡県、佐賀県の有明海沿岸の観光協会と連携し、広域観光に注力している。
<文・撮影/尾崎真佐子 MC/柴田阿実 画像協力/庄分酢>