今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、1976年の創業以来、一貫して「昔ながらの製法」でハムやソーセージ、ベーコン、焼豚を製造し続けている株式会社芳味。全国にファンを持つというこだわりの逸品について、同社代表取締役社長の本田浩一氏に、スタッフがお話を伺いました。
手造り、長期熟成だからこそ肉の自然な旨みと食感が生きる「しっとり肩ロースハム」「お試しセット」
2023/01/20
株式会社芳味 代表取締役社長の本田浩一氏
―創業の経緯を教えてください。
本田 もともとは、1971年に大阪で創業した、牛や豚の枝肉の卸売りとカット肉の小売を行う「大新ミート」という会社です。
1976年に東京・板橋に東京支店を設立、焼豚など食肉加工品の生産を始めました。その翌年、1977年に東京支店の事業の一切を継承して、私の父である本田市夫が株式会社芳味を設立。1987年に本社・工場を練馬区に移転し、手造りハム、焼豚、ベーコンの専門工場として生産販売をスタートさせました。社名の「芳味」は文字通り、「芳しい味」。お客様によい味をお届けしたいとの思いからです。
その後、業務拡張にともない2003年に足立区に移り、同時にソーセージ部門の生産販売を開始し、現在に至ります。
―生産の品目を、段階的に増やしていかれたのですね。
本田 焼豚、ハムとベーコン、ソーセージと、それぞれ工程や使用する機械も異なります。弊社では、例えば焼豚は4日ほど熟成させますが、ハムは10日以上熟成させますので、それらを寝かせておくスペースが必要です。そのスペースが確保できないとハムの製造はできません。
ハムも作りたい、そのためにはより広い工場が必要だ……ということで徐々に、工場も業務も拡大してきたのです。
―今のお話からも、1つ1つの商品を丁寧に、手造りされていると感じます。やはり、手造りにこだわっていらっしゃるのですか?「昔ながらの製法」とはどういうものなのでしょう。
本田 はい。機械を使っておりますが、ほとんど全て手作業で行っています。手造りにこだわっているのはもちろんなのですが、弊社が何よりも大切にしているのは、(1)国内産フレッシュ豚肉のみを使用、(2)食物タンパク剤などの増量剤無添加、(3)「乾塩法」にこだわる、(4)10日間以上の長期熟成、(5)布巻製法という、昔ながらの製法です。この5つのうち、どれか1つが欠けても弊社の味にはなりません。
まず、(1)について。国産豚と輸入豚の大きな違いは脂で、国内豚の脂には甘みがあるのです。そして、チルドでも冷凍肉でもなくフレッシュな豚肉を使うのは、その国産豚の特長がより活きるからです。さらに弊社では肉を長く熟成させますから、その意味でも新鮮であることが大切なのです。毎朝、食肉業者さんから届く生の状態の豚肉を、その日のうちに下処理をして加工します。
(2)は、大切な豚肉の自然の味と香りをお客様に味わっていただきたいからです。合理化製法・大量生産が主流の現代にあって時代に逆行したやり方かもしれませんが、ここは譲れません。
「国内産豚肉 昔ながらの乾塩仕込み」と表に堂々と表記!
―「乾塩法」とは?
本田 簡単に言いますと、肉に、手で塩をすり込み、熟成させた後に乾燥スモークするという製法です。たとえばベーコンですと、豚のバラ肉に弊社オリジナルミックスの塩を手でていねいにすり込んでバットに入れ、肉にまんべんなく味が染み込むよう、毎日ひっくり返しながら10日以上、冷蔵庫で寝かせます。
豚肉に、手でていねいに芳味オリジナルミックス塩をすり込んでいきます。
この作業は機械には任せられません。
塩をすり込んだ肉をバットに入れ、10日間寝かせます。
―「10日以上」が長期熟成、ということですか?
本田 そうです。一般的には、肉を寝かせる期間は3、4日間といったところでしょうか。たとえばハムの場合、真空タンブラーに肉を入れ、ピックル液に漬け込んで24時間、機械が肉を24時間マッサージするような要領で味をつけるのが一般的です。
この方法ですと熟成期間は3日ほどで済みます。ただ、肉のしっとり感や本来の旨み、甘みはやはり、じっくり熟成させてこそ引き出されるものなのです。乾塩法も長期熟成も手間と時間がかかります。多くのメーカーさんが、これらの方法を採用しなくなったのはそのためでしょう。
しかし、弊社は「高品質少量生産」を経営理念として掲げています。一般的な合理化製法ではないので一度にたくさんの量を作ることはできませんが、かけた手間や時間はそのまま味に表れると信じ、量よりも質、こだわりの詰まった商品をお客様にお届けしたいという一心でやっています。
―まさに「手塩にかけた」品々ですね。その中から、今回ご紹介させていただくのは「肩ロースハム」と「お試しセット」です。まずは、「肩ロースハム」の特長とこだわりをお聞かせください。
本田 弊社のハムは大きく分けて、「ロース」「肩ロース」「ボンレス」があります。それぞれ肉の部位ですね。ロースは肉の周りに適度に脂がありつつ、中は赤身でしっとりしています。
ボンレスは豚のもも肉が原料、低脂肪でさっぱりした味が特徴です。肩ロースは、中に脂が霜降り状に入っていてほどよく甘みがあります。とくに弊社の製法で仕上げると素材、つまり肉本来が持つ味と食感が引き出され、肉業界の方たちの間では「”通”のハム」と言われ、一般的なハムとの違いを感じていただけます。
お買い求めのお客様の中には「“お肉のハム”を下さい」と言われる方もたくさんいらっしゃいます。みなさんにぜひ味わっていただきたく、今回はこの肩ロースハムを選びました。
「肩ロースハム」780g【木箱入り】。こちらは、箱から出した状態。
―おすすめの食べ方はありますか?
本田 薄くスライスしてそのまま、あるいはステーキにしても美味しいのですが、ぜひ1度、お刺身のように短冊状に切って、わさび醤油で召し上がってみてください。お刺身のようにしっとりした食感と旨みを味わっていただけるはずです。
このしっとり感は、布巻製法ならでは。一般的には、肉をラップで包んで成形し、乾燥スモークします。布巻製法は、1本ずつ手作業で布巻して成形します。それによって肉に直接スモークが当たらないため肉が硬くならず、しっとりやわらかく仕上がるのです。
布巻きしたハムを、直火のスモークハウスで乾燥、スモークさせているところ。
肩ロースハムの断面。しっとりしていてお肉のような感じ、わかりますか?
ソテーして、アップルジンジャーソースと一緒に。
ロースの切身のような食感です。
短冊状に切った肩ロースハムと、ロースハムのスライス。
わさび醤油をつけても美味しいですが、わさびだけつけていただいたところ、
ハムの甘みが一層引き立ちました。まさに「芳味」です。
―では、「お試しセット」はいかがでしょう?
本田 お肉の好きな方は肩ロース、お肉はあまり得意ではないという方はボンレスハムというように、それぞれお好みがあると思います。弊社のハムを初めて召し上がっていただく方には、まずはいろいろ試していただき、そこからお好みを見つけていただければと。
個人的には、ぜひ弊社のベーコンを味わっていただきたいと思います。強制的にスモークをかけるのではなく、桜のチップを敷き、肉の下から直火を当てて7時間かけてじわじわと燻すことで、薫りよく、しっとりと仕上がります。ベーコンは苦手、という方にこそ召し上がっていただきたいです。
このベーコンは、カリカリに焼いていただいてももちろん美味しいですが、個人的にはそのまま召し上がっていただきたいですね。私のおすすめは、炊きたてのほかほかのごはんに刻んだベーコンを乗せ、海苔を散らすという食べ方。ベーコンのよい香りがふわんと立ちますし、ベーコンの塩分と脂がごはんの甘みを引き立ててくれます。
ベーコン、そしてハムもソーセージも、これまでとは違った食べ方を楽しんでみてください。弊社は、肉の食感や味わいを引き出すように作っていますので、メイン料理としても活躍してくれるはずです。
「お試しセット」。6つの味が楽しめます。
10日間以上熟成させたバラ肉に下から直火を当てて7時間、
ゆっくりじっくり時間をかけてスモークします。
炊きたてのごはんの上に、刻んだベーコンと海苔を乗せて。
ごはんの熱でベーコンの脂が溶け、甘みと塩がごはんにまとわりついて……
なんとも美味!
ソーセージスライスと大根スライスを重ねてカルパッチョ風に。
焼豚の食べ比べができるのがうれしい。
左が、さっぱり味のつるし焼豚、
右は脂多めでこってりした味わいのベリー(三枚肉)チャーシュー。
―今後は、どのような展開を考えていらっしゃいますか?
本田 ひとりでも多くの方に、本当においしい、ハム本来の味を知っていただきたいと思います。
まだまだ勉強中ですが、SNSも活用して、弊社から情報を発信するだけでなくお客様と情報交換できたらと。「こんな食べ方をしたら美味しかった」「こんな料理と相性がよかった」などお客様からのご提案も、我々にとっては大きな励みになります。
さらに、ぜひレストランやベーカリー関係をはじめ、プロの方に弊社の商品を手に取っていただいて、メインの食材を引き立てる脇役として使っていただけたらうれしいです。
先日、こんなことがありました。日本で初めてパスタを製造したというお店の方が、弊社のベーコンを手に取ってくださいました。とても気に入ってくださり、老舗のレストランでベーコン、そしてハムやソーセージなども全面的に使ってくださるようになったのです。パスタはもちろん、新たにどのようなお料理が生まれるのか、とても楽しみです。
―ハムをお刺身のように食べたり、ごはんにベーコンと海苔を乗せたり。お話を伺って、ハムやベーコンの新しい世界が広がりました。ありがとうございました!
「肩ロースハム【木箱入り】」(780g)
価格:¥7,300(税込)
店名:芳味
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.homi.co.jp/product/46
オンラインショップ:https://www.homi.co.jp
「お試しセット」(ロースハム80g、肩ロースハム80g、ベーコンスライス80g、ベリーチャーシュー80g、つるし焼豚90g、ソーセージスライス100g)
価格:¥3,500(税込)
店名:芳味
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.homi.co.jp/product-list/2
オンラインショップ:https://www.homi.co.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
本田浩一(株式会社芳味 代表取締役社長)
1966年東京都生まれ、1986年、富士食品商事株式会社で栄養士として5年間勤務。1991年に株式会社芳味に入社し、製造から、営業まですべての部署を経験する。1995年より8年間弊社の飲食部門の串揚げ居酒屋を店長を経験。2003年業務拡張の為、本社工場を東京足立区に移転しソーセージ部門の生産販売を開始と同時に、本社勤務に戻り取締役統括部長に就任。2022年9月、代表取締役社長に就任。
<文・撮影/鈴木裕子 MC/隅倉さくら 画像協力/芳味>