日本各地で生産されている日本茶。「次は新たな土地のものを味わってみたい」、と考えているなら、三重県で生産・製造され、伊勢神宮の「神宮司庁御用達」としても認められている日本茶はいかがでしょうか。
そのお茶は、全国の秘書によって審査された「接待の手土産」No.1にも選定。今回は、そうしたお茶を販売する一方、自らのアイデアで、お茶の楽しみ方を柔軟に広げ続ける株式会社芳翠園の次期社長、杉本洋太氏にお話を伺いました。
2023/02/07
日本各地で生産されている日本茶。「次は新たな土地のものを味わってみたい」、と考えているなら、三重県で生産・製造され、伊勢神宮の「神宮司庁御用達」としても認められている日本茶はいかがでしょうか。
そのお茶は、全国の秘書によって審査された「接待の手土産」No.1にも選定。今回は、そうしたお茶を販売する一方、自らのアイデアで、お茶の楽しみ方を柔軟に広げ続ける株式会社芳翠園の次期社長、杉本洋太氏にお話を伺いました。
―御社の沿革について教えていただけますでしょうか。
杉本 弊社は三重県松坂市で江戸時代からお茶を仕入れて販売する商売を行っており、1887年に老松園という会社を立て、自社でもお茶作りを始めました。「芳翠園」はその後、2代目社長を務めた杉本憲太郎が東京にも伊勢茶を広めたいということで、1954年に設立した販売会社です。
―それで杉本様は株式会社芳翠園の常務取締役で次期社長、株式会社老松園の代表取締役社長、ということなのですね。やはり小さい頃からお茶には親しまれていたのでしょうか。
杉本 そうですね。小さい頃は私の母が東京で芳翠園の代表、母の妹が三重で老松園の代表を務めていたこともあり、東京育ちですが三重でも多くの時間を過ごしました。工場では職人さんがお茶を作る姿を見せていただき、祖父の憲太郎からは、「洋太、どちらのお茶が美味しいと思うか」、「この茶葉とこの茶葉を混ぜるとこういう味になる」、「お茶漬けにはほうじ茶が最高」など、今思えば、お茶に関する様々な感覚を植え付けてもらいました。
―大学を卒業後、一度は別の業界に行かれたのですね。
杉本 小さい頃から「いつかは後を継ぐ」と考えていましたが、卒業後はIT系企業に10年ほどお世話になり、多くのことを学ばせていただきました。
その後、弊社に入社するわけですが、とてもいい気付きをいただけたのが、地元商店街での町おこしイベントでした。私は日本茶を淹れるデモンストレーションを行い、お茶に興味のない方にも楽しんで頂こうと思ったのですが、実際はお茶が好きな人にしか興味を持っていただけない。この時、日本ではペットボトルのお茶が急成長している割に、急須で日本茶を淹れる人はものすごく減っているのだ、と危機感を感じたのです。
それから職人さんたちが丹精込めて生産しているお茶の魅力を、どうすれば広められるかを考えるようになり、ウエスティンホテル東京様やホテル雅叙園東京様、叙々苑様などで弊社のお茶を楽しんでいただいたり、赤坂の「521 CAFÉ & GRILL」様のスイーツに弊社のお茶を使っていただいたりするなど、新しいことにチャレンジするようになりました。2016年の伊勢志摩サミットでは、弊社のお茶を使ったデザートが提供されたのですよ。
―そうだったのですね!それでは、今回ご紹介いただく御社のお茶「名人憲太郎」について聞かせてください。
杉本 こちらの商品は、老松園の2代目社長・杉本憲太郎の時代に作られ、弊社の看板商品として愛されてきたお茶です。日本茶と言えば静岡茶であった時代、彼は伊勢茶の魅力をどうしたら伝えられるかを考えました。
もともと伊勢茶は、少し渋みがあり黄色に近い水色(すいしょく)のお茶だったのですが、そこに深蒸しという製法を取り入れて、濃い色味と甘味を纏わせることにしたのです。以前から茶農家様に様々な提案やアドバイスをしながらお茶づくりを進めてきた憲太郎でしたが、この時も茶農家様に深蒸し茶づくりを推奨し、その結果、伊勢茶を一級のお茶に育て上げました。
憲太郎は松阪の町づくりなどにも尽力し、伊勢神宮から「神宮司庁御用達」の栄誉を授かり、黄綬褒章・勲四等瑞宝章も賜ったのち亡くなりますが、お客様から、「憲太郎こそ、真の名人だったのではないか。名人憲太郎のお茶を後世に残してはどうか」というありがたい声を多数いただいたことから、一級のお茶に「憲太郎」の名前を残すことにしたのです。
―「名人 憲太郎」の玉露と煎茶のセットは、どんな特徴がありますでしょうか。
杉本 煎茶は日の光をさんさんと浴びて収穫されるお茶の葉、玉露は収穫前に覆いを被せ、日の光から守ることで独特のアミノ酸、旨味を生成させたお茶の葉です。この「名人憲太郎」は、弊社の畑の中でも特に状態の良いところで誕生した茶葉をさらに独自の配合でブレンドしたもの。一番茶のみで作られているところもこだわりです。
一般的には、煎茶よりも玉露が上物と言われることが多いのですが、この憲太郎に関しては、「煎茶も非常にいい」とお褒めいただくことも多く、珠玉の2茶をセットにし、飲み比べていただけるようにしました。
―素晴らしい甘みや旨味に感動しました、煎茶・ほうじ茶のセットについても教えてください。
杉本 ほうじ茶は一般的に新茶ではなく、2番、3番、4番茶で作られた番茶、または番茶にすらできないものに火を入れて炒り、香りをつけて楽しめるようにしたものです。ところが弊社では、ほうじ茶も一番茶のみで製造しています。温かく淹れるのはもちろん、水出しをしても非常に美味しくなるほうじ茶で、飲んでいただくと、お茶の世界観が変わると思います(笑)。
―「秘書が選んだ至極の逸品」にも選ばれたとか!
杉本 グルメサイトの「ぐるなび」が毎年開催している「接待の手土産-秘書が選んだ至極の逸品」で、2018年から3年連続特選を受賞し、殿堂入りを果たしました。そもそもほうじ茶は、茶葉の特性からかさばるため、煎茶や玉露と同じサイズの缶に収めようとすると、グラム数が減ってしまい、ギフトにはしていなかったのです。ところが「ぐるなび」の企画で秘書の方を対象としたお茶セミナーを開いた際、ほうじ茶を入れてみたところ、「これもぜひギフトにして欲しい」というお声を多数いただき、ギフトに加えることにしました。その結果、殿堂入りを果たしましたので、秘書の方々に感謝ですね。
―木箱入りで、高級感もあります。
杉本 木箱は高級感がある一方、軽くて持ち運びやすいと喜ばれています。ショッパーも、実は秘書の方からご要望をいただいて、ピッタリサイズのものを作りました(笑)。お土産を選ぶ時、甘いものが苦手だったら、とか、すでにご存知だったら、など、さまざまなお悩みがあるかと思うのですが、お茶は賞味期限が長く、希少性、実用性も兼ねているということで、とても喜んでいただいています。今後は、1箱単位でオリジナルのロゴを入れられるサービスをスタートさせる予定ですので、さらにさまざまなお祝いにお役立ていただきたいと考えています。
―美味しいお茶を淹れるポイントはありますか?
杉本 難しく考えないのが1番です(笑)。あえてアドバイスさせていただくなら、茶葉の量、お湯の温度、抽出時間でお茶の味が決まることをぜひ知っていただきたいですね。お茶は、温度や蒸らし時間で味が変化します。「どうしたら美味しくいただけるのだろう?」と、興味を持っていただけたら嬉しいです。それからお茶が、お酒の酔い予防にもなるのをご存知ですか? 翌朝、多めの茶葉に熱々のお湯を注いで濃く出したお茶に、塩やレモン汁を少し加えてみてください。二日酔いを引き起こすアセトアルデヒドの分解に役立ってくれるほか、ホッと、リラックス感も与えてくれるはずです。
―今後の展望について聞かせてください。
杉本 日本茶を飲む機会は減っていると思われがちですが、お茶に触れるチャンスは実はたくさんあることをお伝えしていきたいと思います。そうしたアクションが、日本茶の生産農家の高い技術を次の世代へ伝承していくことに繋がると考えています。さらにその輪を、世界に広げていけたら嬉しいですね。
―「いいお茶を作れる方々の伝統を、一生かけて守り、将来に残したい」と力強く語ってくれた頼もしい次期社長。今回は、お話をありがとうございました!
「名人憲太郎詰め合わせ-TM100」(玉露80g/煎茶90g)
価格:¥10,800(税込)
店名:株式会社芳翠園
電話:03-5719-3477(9:00〜17:00 平日)
定休日:土、日、祝日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.tea.co.jp/fs/hosuien/meiken/tm100
オンラインショップ:https://www.tea.co.jp/top/
「名人憲太郎 煎茶・ほうじ茶詰合せTMH-J」(煎茶80g/ほうじ茶30g)
価格:¥5,400(税込)
店名:株式会社芳翠園
電話:03-5719-3477(9:00〜17:00 平日)
定休日:土、日、祝日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.tea.co.jp/fs/hosuien/meiken/tmhj
オンラインショップ:https://www.tea.co.jp/top/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
杉本洋太(株式会社芳翠園 次期社長)
1978年東京都港区生まれ。成蹊大学卒業後、株式会社大塚商会にて10年の修業期間を経て、2011年に東京都品川区の株式会社芳翠園に入社。2013年に同社常務取締役就任、2019年に三重県松阪市の株式会社老松園の代表取締役社長に就任。日本茶の製造責任者と販売責任者を兼任している。伝統的な味を守りつつ、スイーツや料理と日本茶のコラボレーションや、様々な形式の日本茶のセミナーなど、広い角度で日本茶の普及に積極的に活動をしている。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/柴田阿実 画像協力/芳翠園>