海外でも愛好者が増えている日本酒。宮城県塩釜市で創業した「浦霞」の醸造元 株式会社佐浦は、近年の地酒ブームの火付け役として知られる東北を代表する老舗銘醸蔵です。地元産米にこだわって造られるお酒は、各種鑑評会などで毎年受賞するなど高い評価を獲得。今回編集長アッキーこと坂口明子が気になった13代目である代表取締役社長の佐浦弘一氏に、酒造りの思いや商品へのこだわり、開発エピソードなどを伺いました。
宮城・塩釜で300年続く老舗酒蔵が造る珠玉の味わい 「純米吟醸 浦霞 No.12」&「純米原酒につけた浦霞の梅酒」
2023/03/01
株式会社佐浦 代表取締役社長の佐浦弘一氏
―ご創業は1724年と長い歴史がおありなんですね。
佐浦 当社が創業し、今も酒造りを行っている塩釜は、陸奥国一之宮の鹽竈神社がある御宮町で、昔から仙台藩主・伊達家の鹽竈神社への崇敬が篤く、また物流の要衝だったことから藩から援助や保護が図られ、非常に発展した町でした。その中で当社も酒造業を始め、1800年代からは鹽竈神社にお神酒を納めるお神酒酒屋も務めています。
長い歴史の中で江戸後期の飢饉、明治維新、第二次世界大戦、宮城県沖地震、東日本大震災などの危機や困難を何とか切り抜け、現在まで続けてきました。個人的には、この地域と共に酒造りを続けてきた歴史を自分の代で途切れさせるわけにはいかないというのが、1つの強いモチベーションになっています。
江戸末期~明治初期に建てられたという風格ある本社の蔵。
―ホームページに「品質本位の経営」「丁寧に造って丁寧に売る」と書かれていますが、代々受け継がれているものですか?
佐浦 そうですね。特に戦後、平野佐五郎という傑出した南部杜氏に酒造りを担ってもらい、品質にこだわった酒造りに取り組み続けました。その積み重ねが地酒ブームの折に、当社のお酒を広く知っていただくようになったのです。そうした経験からも、良い品質のお酒をしっかり造って売っていくという意識はずっと根付いていると思います。
名杜氏・平野佐五郎氏のもと、優れた日本酒が生み出されていった。
写真は当時のお酒の成分分析の様子。
吟醸蔵としての歴史を伝える「純米吟醸 浦霞 No.12」。
切れの良い後口で白身魚やレモンを搾った牡蠣とも相性良し。
―ご紹介の商品にも「品質本位」が感じられますが、「純米吟醸 浦霞 No.12」開発のきっかけは?
佐浦 このお酒に使っている「きょうかい12号酵母」は、1965年頃に宮城県酒造協同組合醸造試験所の技師により当社の吟醸醪から分離した酵母で、1985年に優れた酵母として日本醸造協会に登録されました。吟醸蔵として非常に名誉なことです。当社では主に自社培養酵母を使っておりこの酵母を使っていませんでしたが、時代も移り、吟醸造りにおける浦霞の歴史を新しい消費者にも知ってもらおうと、約3年前に12号酵母の特徴を生かしたこのお酒を造りました。今主流の吟醸酒よりも穏やかで爽やかな香り、ややすっきりとした味わいが特徴で、あっさりとした味わいの食べ物と合わせるのがおすすめです。
甘さ控えめで、さっぱりと柔らかい味わいの「純米原酒につけた浦霞の梅酒」。
梅の香りもしっかり感じられる。
宮城県内の梅農家が作った品質の良い梅を用い、毎年7月に仕込みが行われる。
―宮城県産の梅を使用した「純米原酒につけた浦霞の梅酒」はいかがですか?
佐浦 原料米と同様に宮城産原料にこだわりたいということ、そして焼酎を使った梅酒よりも日本酒ベースのほうが柔らかい味わいに仕上がるので、地元の良質な梅で日本酒の楽しみが広がる商品を提供したいと思ったのが開発の発端です。市販の梅酒は甘みが強いものが多いため、ストレートでも楽しめるものを目指しました。あまり甘すぎず、梅の味わいと甘みと酸味がバランスよく調和した梅酒に仕上がっていると思います。
―食事をしながら楽しめる梅酒ですよね。では今後の展望を教えて下さい。
佐浦 看板商品「純米吟醸 浦霞禅」が2023年発売50周年なので、その歴史や当社の歩みなどを発信していきたいですし、2024年は創業から300年ということで節目の機会に何か発信したいと考えています。また日本酒はその地域の食文化の要に位置するもの。日本酒と共に地域の歴史や風土、食文化の発信にも取り組んでいきたいですね。
―本日は貴重なお話をありがとうございました!
「純米吟醸 浦霞 No.12【箱なし】」(720ml)
価格:¥1,848(税込)
店名:浦霞オンラインショップ
商品URL:https://www.e-urakasumi.com/item-detail/555184
オンラインショップ: https://e-urakasumi.com/
「純米原酒につけた浦霞の梅酒」(720ml)
価格:¥2,112(税込)
店名:浦霞オンラインショップ
商品URL:https://www.e-urakasumi.com/item-detail/502681
オンラインショップ: https://e-urakasumi.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
佐浦弘一(株式会社佐浦 代表取締役社長)
1962年生まれ。慶應義塾大学卒業後、外資系清涼飲料会社勤務、米国ニューヨーク大学院修了を経て、株式会社佐浦入社。2001年代表取締役社長就任。
日本酒造青年協議会会長、酒サムライ本部IWC担当などを歴任。現在、日本酒造組合中央会理事 副会長。
<文・撮影/山本真由美 MC/隅倉さくら 画像協力/佐浦>