今回編集長・アッキーが注目したのは、岩手・釜石から全国へ地元の美味を届けてくれる「中村家」さん。世界三大漁場と称される三陸の海の幸がたっぷり詰まった“海宝漬”は、炊き立てのご飯にのせて食べてもよし、酒の肴にするもよし。その魅力をもっと知りたいと、代表取締役社長の島村隆氏にお話を伺いました。
炊き立てご飯にのせて食べたい!三陸の海の幸、アワビやイクラ、ウニなどを贅沢に使った「三彩海宝漬」
2023/02/17
有限会社中村家 代表取締役社長の島村隆氏
―創業の歴史をお聞かせください。
島村 戦後、祖母が始めた食堂からスタートしました。釜石は“鉄のまち”として発展してきましたので、当時何千人という人が製鉄所で働いていたんです。昼夜3交代制で、朝方に仕事を終える人もいれば、夜中に帰ってくる人もいる。そういった方たちが、仕事帰りに一杯飲んで刺身を食べたりできるような店として始まったのが「中村家」です。
中村家の「海宝漬」は、贈答品や自分へのご褒美にもぴったり!
シャキシャキ食感と強い粘りが特徴のめかぶ、濃厚なコクと風味を持つイクラなど、
地場の素材にこだわっている。
―もともとは料理店を営まれていたのですね。
島村 兄とともに店を継いでからは「海鮮料理 中村家」として、創作料理を出していました。兄はフレンチ、私は日本料理を学んでいたので、それを活かして様々な工夫を凝らしていたのですが、意見がぶつかることも多く、当時はしょっちゅう喧嘩していましたね。でもお互い、そこから吸収してきたものも多くて。そういったベースがあったからこそ、現在の中村家があると思っているんです。いま主軸としている「海宝漬」もその中から生まれたわけなので。
三陸の海の景色をイメージして盛り付けた「三陸海宝漬」。
めがぶを海、アワビを小舟、イクラをキラキラ輝く朝の光に見立てている。
―その後設立された有限会社中村家さんでは、「海宝漬」の販売を中心とされているんですよね。
島村 そうです。海宝漬は中村家のメニューの1つでした。わかめの養殖が盛んな三陸では、めかぶもよく食べられていて。そのめかぶを醤油ダレに漬け込んで、質・量ともに日本一を誇る岩手のアワビ、濃厚なイクラとともに盛り付けてお出ししていました。すると次第に、お客様から家族にも食べさせたい、大切な方へ贈りたいという声をいただくようになったので商品化することに。三陸の3つの宝という意味を込めて、「三陸海宝漬」と命名しました。
食卓に並べたときにも気持ちが伝わるよう、焼き印を入れた「三彩海宝漬」。
「御礼」のほか「御祝」や「内祝」も選べる。
―3種を盛り合わせた「三彩海宝漬」など、種類も豊富ですね。
島村 どれも最高の素材を使って、素材本来の持ち味を大切に作っています。めかぶ、アワビ、イクラを使った「三陸海宝漬」を軸に、お客さまのニーズにあわせてウニやフカヒレなど、さまざまな素材をトッピングした商品もご用意しています。「三彩海宝漬」は、あわび海宝漬、あわびうに海宝漬、ほたて数の子松前漬の3種類を120gずつ詰め合わせたもの。贈答用として、ほたてへの焼き印サービスも行っています。
ほとんどが中国に輸出されてしまう貴重な岩手県産「エゾアワビ」を使用。
市場に出回る前に浜から直接買い付けるので新鮮そのもの。
―アワビの柔らかさ、濃厚なうまみに驚きました。製法に何か工夫があるのでしょうか?
島村 「だまし煮」という独自の製法で、この食感と味わいに仕上げています。アワビは塩をふってゴシゴシ洗って、ぬめりや汚れを取り除き、大根と一緒に長時間煮るのが一般的ですよね。そうすると確かに柔らかくなるのですが、繊維が壊れてしまってアワビの味が抜けてしまうんです。
だまし煮では、まず鍋の中に水と塩、酒で海に近い環境を作って、弱火から始めて徐々に温度を上げていき、じわーっと熱を加えていきます。アワビにストレスをかけずに煮ることができるので、身も固くならないし、うまみも逃げない。実はこれは、幼少期の体験がヒントになっていて。当時は、干潮になると潮溜まりにアワビがいたのですが、そこに日光が当たると水温が上がって、アワビが活発に動きだす。そういう生態を目にした経験から編み出した技法なんです。
三陸産のキタムラサキウニを「海水焼き」に。
しっとりとした食感と甘みが存分に感じられる。
―ウニも独自の技法で仕上げているとか。
島村 「海水焼き」と言って、新鮮なウニを滅菌海水で蒸し焼きにしています。加熱すると乳白色のエキスが出てくるのですが、それがウニのうまみ成分。冷めるとまた戻っていくので、うまみを閉じ込めることができるんです。浜から上がってきたばかりのウニはむき身の状態で滅菌海水に入っていて、それを見て入札するのですが、剥いたばかりのウニが入った海水って、乳白色なんですよ。要はウニのうまみが溶け出しているんです。そのまま時間が経つと、どんどんうまみが抜けてしまうので、この味が出せるのは産地ならではですね。
冷製パスタとして味わうのも◎!
エキストラバージンオリーブオイルをかけて、軽くホワイトペッパーをふり、海宝漬をのせて。
「納豆餅みたいな感じで、焼餅にのせて食べてもおいしいですよ」と島村社長。
―最後に今後の展望をお聞かせください。
島村 ご存じの通り、近年海産物はなかなか厳しい状況にあります。三陸でも鮭が獲れなくなってきていて。でもいま、全国でサーモンの養殖が盛んに行われているんです。とくに東北・北海道では昨年あたりから力を入れ始めているので、天然・養殖を問わず、色々な海産物を使って新しいものを作っていきたいと考えています。
3.11の震災で三陸のものが何もなくなって、ほかから仕入れた素材でなんとか乗り切ってきた経験が私たちにはありますから。原料の品質、鮮度さえよければ、自分たちの味、三陸の味になる。そうして作った味を、あとの時代にも繋げていきたいと思っています。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「三彩海宝漬(御礼)」
価格:¥4,860(税込)
店名:海宝漬 中村家
電話:0120-56-7070(9:00~18:00 土・日曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.kaihouduke.jp/shopdetail/000000000137/
オンラインショップ:https://www.kaihouduke.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
島村隆(有限会社中村家 代表取締役社長)
1950年岩手県生まれ。料理屋を営んでいた母や祖母の影響を受け、高校卒業後 赤坂の料亭で日本料理を学ぶ。1975年地元に戻り、フレンチを学んだ兄とともに海鮮料理中村家を開店。1993年有限会社中村家を設立。2014年同社代表取締役社長に就任。テレビ出演やおせちの監修の他、地元食材を使った商品開発を通して、三陸の魅力を積極的に発信している。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/鯨井綾乃 画像協力/中村家>