お取り寄せの楽しみのひとつが、その土地の家庭でも作られ、家々の味がある郷土料理。今回編集長アッキーが気になったのは、会津の山から届く山椒の若葉を使い、身欠にしんを秘伝の味付けで漬け込んだ鰊山椒漬。製造販売する株式会社会津二丸屋 代表取締役社長の長尾剛吏氏に、どのような商品なのか、お店の特色とともに語っていただきました。
会津の山椒の若葉をふんだんに。厳選された身欠にしんを漬け込んだ郷土食。
2023/05/10
株式会社会津二丸屋 代表取締役社長の長尾剛吏氏
―1908年にご創業、社長は何代目ですか?
長尾 3代目です。味噌、醤油の製造業「長尾商会」として始まり、その後1971年に手打ちそばと会津郷土料理店「二丸屋武蔵亭」を開業して現在に至ります。
―会津二丸屋という屋号の意味は?
長尾 うちは上杉謙信の家系の流れで、上杉謙信の家紋は「竹に二羽飛び雀」です。二重丸の家紋は珍しく、その二重丸の「二丸」をとっているのと、もともと「みやまの味をみやこの人に」という会社の思いがありまして、買う人、作る人がどちらも丸であるようにという意味も込めています。
―入社前に東京で修行されたとか。
長尾 専門学校を卒業した後「中央を知らないと井の中の蛙になる」という父の言葉もあり、日本橋の料亭で3年修行しました。最初の2年はほぼ休みなく働きましたね。そこで勉強をしてから1995年に会津二丸屋に入社しました。
―入社後はすぐに新しいことを?
長尾 最初は手伝いながら様子を見て、徐々に変えるところは変えていこうと考えていました。まず取り組んだのは店の天丼のたれ。浅草においしい店があったので、うちのそばつゆを使いながらその味に近づけたらと工夫しました。
あれからもう24、25年もそのたれを継ぎ足して使っています。その後、他の商品も時代に合わせて変えるべきところは変えるということで、少しずつ自分の味にしていきました。
会津二丸屋の名物、鰊山椒漬は上品でさっぱりとした味わい。
―2012年、代表取締役社長にご就任後、会社の転機になったことやご苦労は?
長尾 2010年頃まで食品卸の事業をしており、取引先の売り上げが落ちたり倒産が増えたりで影響があったので、いま転換しなくてはと考え、卸の仕事は親族の別会社に譲渡し、私たちはそば、にしん、山椒の加工に絞ろうと決断しました。転機というのか、一番気合いが入った頃ですね。またコロナ禍では、飲食店のあり方が変わり、販売のしかたを変えていかなければと感じましたね。
―ネット販売もされている「鰊山椒漬」が人気ですね。さわやかでジューシーです。
長尾 鰊山椒漬は、盆地で冬は陸の孤島のようになる会津で、昔から各家庭で作られてきた保存食、現代まで伝わる会津独特の郷土食です。それを先代がきちんと商品にして広めようと、数社に声をかけながら製造を始めたと聞いています。昔からの味を守りつつ、品質やパッケージ方法などはよりよいものを求めて現在まで試行錯誤しています。
身の間に脂ののった、上質なにしんを使用。
―材料のにしんはどのようなものですか?
長尾 昔は本乾と言ってカチカチのにしんが使われていましたが、うちでは現代に合わせて程よく柔らかく、脂ののった上質な七分乾を使っています。それを山椒の若葉とともに秘伝のたれで漬け込むのです。
―山椒は地元で採れるのですか?
長尾 地元会津のもので、1年分数十キロから100キロくらいを1度に採って真空冷凍の鮮度のよい状態で保存します。また、たれにはこだわりの酢や地元の老舗の醤油を使っています。地元のものを使っていて、手前味噌ですがどこよりもおいしいと思いますよ。
1年に1度、地元会津の山椒の若葉を取り
真空冷凍で保存する。
―完成までは何日くらい?
長尾 約 1週間、夏は少し短いですね。うろこを取る下処理には手間がかかりますし、うちは一本漬けではなく一口大に切って漬けますから、臭みが出ないように洗うのにも時間がかかります。この切ってあるところもうちの大きな特徴で、すぐ食べられておいしいと言っていただいています。
―作り続けて50年とのことですが、創業時から製法は変わっていないのでしょうか?
長尾 夏は味をややすっぱくしています。先代の味とも違っていると思います。地元ではご家庭で漬ける方も多いのですが、家庭の味とも違う。原料も常に吟味しているので進化していると思います。ずっと同じままでは味が落ちたと感じられますから、微調整しながらよりおいしくなるよう努めて、そうしてはじめて変わらずおいしいと感じてもらえると思っています。
一口大で漬け込まれ、袋から出してすぐに食べられるのも
うれしいところ。冷凍保存も可能。
―おすすめの食べ方、アレンジは?
長尾 冬はそのままでもいいし、軽くあぶって日本酒のあてにされてもいいですね。会津は名酒が多いので、お酒が進みます。夏はみょうがを刻んだものとにしんの薄切りをあえてもおいしいですし、にしんは意外なことにクリームチーズとも合うんです。
―どのような方におすすめしたいですか?
長尾 会津ではメジャーな保存食ですから、他の地域の方にもぜひ味わっていただきたいですね。クセがないのでお子様にも食べやすいと思います。会津は水がよくて、店で出しているそばもだしも味が違います。そういう環境のよさも多くの方に知っていただきたいですね。
日本酒のアテにぴったり。会津の銘酒とともに味わいたい。
―今後取り組んでいきたいこと、会社としてのビジョン等お聞かせください。
長尾 会社の指針である「みやまの味をみやこの人に」を常に念頭に置いて、鰊山椒漬をはじめ会津のおいしいものを、どんどん全国に発信できたらと思いますね。コロナ禍をはじめ厳しいことはありますが、時代に負けずにがんばっていきたいですね。
―会津の味とお酒に心惹かれます。本日はありがとうございました。
「鰊山椒漬」(100g)
価格:¥648(税込)
電話:0242-28-1208(9:00~18:00 土曜・日曜10:00~17:00 水曜除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/auc-nimaruya/nisin-001/
オンラインショップ:https://www.rakuten.co.jp/auc-nimaruya/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
長尾剛吏(株式会社会津二丸屋 代表取締役社長)
1970年福島県会津若松市生まれ。調理師専門学校、栄養士専門学校卒業後、日本橋の料亭での3年の修行を経て1995年に株式会社会津二丸屋へ入社。2012年に同社代表取締役社長に就任。会津の食文化を守りつつ、郷土料理を全国に広めることに尽力している。
<文・撮影/大喜多明子 MC/鯨井綾乃 画像協力/会津二丸屋>