今回、編集長アッキーが気になったのは、「おたべ」で知られる「美十」。新たな看板商品である「京ばあむ」が人気です。株式会社美十 代表取締役社長 CEOの酒井宏彰氏に、商品の魅力を取材陣がうかがいました。
宇治抹茶と豆乳生地がベストマッチ 新しい京都土産の代表格「京ばあむ」
2023/03/09
株式会社美十 代表取締役社長 CEOの酒井宏彰氏
―創業の経緯を教えてください。
酒井 創業者は京都で最初に喫茶店を始め、繁盛しましたが、戦前で砂糖をはじめいろんなものが入ってこなくなり、一旦廃業しました。戦後、お菓子を仕入れて売る小売からスタートしました。八ッ橋もそのひとつで、当時は焼いた硬い八ッ橋が主流でした。その後、八ッ橋も自社で製造することになり、製造メーカーになりました。それが今から60数年前です。当時、京都には30軒以上の八ッ橋屋さんがあり、なかなか良い場所に置いてもらえませんでした。
そこで、新商品で市場を開拓していこうと考え、できた商品が生八つ橋の「おたべ」です。1966年の誕生で、私がちょうど生まれた年になります。昭和40~50年代は高度成長時代で、たくさんのお客様が京都に来られ、「おたべ」も非常によく売れました。
―小さい頃から家業を継がれるという思いはございましたか。
酒井 母方の実家が料理屋さんをしており、料理にも興味がありました。高校を卒業してからアメリカの料理学校に行き、楽しい日々を過ごしていましたが、卒業式に両親が来て、日本に帰ってくるように言われ……。最初は食品機械のメーカーにお世話になりました。お饅頭を作る機械、パンを成型する機械をつくる会社で、2年間おりました。
日本全国のお菓子屋さんに、機械を納品に行って、使い方の指導をしていました。その後、当社に入社し、2年間、東京工場に勤務後、福井県に転勤し、新しい工場の立ち上げに関わりました。京都に戻ってからは、マーケティングを担当し、副社長を経て、社長に就任しました。
―社長になられてご苦労されたことはございますか。
酒井 2020年は本来、楽しみな年でした。「おたべ」を個包装化したり、沖縄進出で工場を建てたりと、新しいことにチャレンジする計画がありました。しかし、新型コロナウイルスの影響を受けて、2020年の4月に緊急事態宣言が出て、4月の売上は前年対比95%減に。その後、良くなったり、悪くなったりをずっと繰り返していた3年間です。
昨年10月から少し潮目が変わって、全国旅行支援の後押しもあり、10月、11月、12月と2019年比で100%を超えるぐらいの売上がようやく達成できました。やっとコロナを乗り越えつつあるのかなということを感じています。コロナ禍の一昨年には、東京の洋菓子店「ラ・テール」を子会社化しました。百貨店に強いブランドで、我々はお土産に強いブランドなので、両者の強みを活かせると考えました。
―海外のお客様からもお問い合わせはあるのでしょうか。
酒井 お問い合わせはありますが、賞味期限が短い商品はお送りするのが難しいのが現状です。今、試験的に冷凍化する実験もしております。
―創業当時から大切にされている企業理念を教えてください。
酒井 新しいことにチャレンジし続けるということです。「おたべ」を発売した当時、同業者からは「八ツ橋とは違う」と批判も受けたこともあります。ただ、我々は老舗ではないので、できることは何でもやろうという精神は創業時から変わっていません。
―今回ご紹介する「京ばあむ」の開発の経緯を教えてください。
酒井 いつも新商品は企画しており、おたべの季節限定商品も大ヒットしました。定番化しましたが、同業他社も生八つ橋の限定商品を出してきます。そのため、初年度は爆発的に売れても2年目は売上が落ちるんです。そこで「第2の京都土産」を作ろうと考えて生まれたのが「京ばあむ」です。クラブハリエさん、ねんりん家さんがバームクーヘンをお土産として売っておられ、バームクーヘンが時流に乗ってることを感じていました。バームでやることは決まり、京都のイメージである抹茶で作ることに決定したのです。
特色を出すために豆乳を使った生地にして、ソフトタイプのものになりました。試作を含めると半年以上、開発期間がかかっています。
抹茶のフォンダン、豆乳生地、抹茶生地のバームクーヘン。
―商品のこだわりを教えてください。
酒井 抹茶の味をどう活かすかに苦労し、煎茶もブレンドして、ちょうどいい香味にたどり着きました。抹茶は2社からの仕入れで、顔がみえる方の材料で作っています。昨年からは原料の国産化をすすめました。
今年11月に「Aterier京ばあむ」という施設ができますので、そのタイミングで、卵も指定養鶏場から仕入れることにしました。豆乳も京都の地下水で作った豆乳です。
―お客様からの反応はいかがでしょうか。
酒井 発売後、すぐに大ヒットしたわけではなく、2年目ぐらいから売上が伸びました。京都駅前で試食イベントをしたり、いろんな仕掛けをしながら認知度を高めていきました。「京ばあむ」は焼いたスタッフの名前が記載されているので、お客様からスタッフ宛に「おいしかったです」と連絡が来るようになり、スタッフのモチベーションアップにもつながっています。
厚みは3.5cm。
―「ばあむマイスター」という制度があるのですね。
酒井 「京ばあむ」は1人のスタッフがつきっきりで焼きます。技術レベルのばらつきが出てくるため、いつ食べても美味しい「京ばあむ」を焼ける人をマイスターとして認定しました。マイスターになれば1年間で100個の「京ばあむ」を家族や友人にプレゼントできます。マイスターたちは毎日、それぞれの「京ばあむ」の食べ比べをしています。
白箱に墨文字、赤いゴム紐をあしらったパッケージデザイン。
包装には焼いたスタッフの名前が入っています。
―おいしい食べ方を教えてください。
酒井 冷やして食べる方、温めて食べる方、どちらもいらっしゃいます。私はそのまま食べるのが好きで、生クリームをトッピングするのもおすすめです。アイスクリームを添えてもおいしいですね。ちょうどいい甘さなので、緑茶、ほうじ茶、コーヒーなど、どんな飲み物も合います。
しっとり、ほわほわの食感で、どんなお茶とも合います。
―今後の展望をお聞かせください。
酒井 11月にオープンする「Aterier京ばあむ」は、世界一美味しいバームクーヘンを作るために作ったアトリエというのがコンセプトです。1階が店舗、2階が見学工場で、3階はカフェレストランです。京都でバームクーヘンの世界を体感できる施設になりますので、多くの方にお越しいただければと思います。
―貴重なお話をありがとうございました。
「京ばあむ 3.5cm厚」
価格:¥1,296(税込)
店名:おたべオンラインショップ
電話:0120-81-8284(9:00~17:00 日曜を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://kyobaum.shop/
オンラインショップ:https://www.otabe.jp/shopdetail/000000000479/017/O/page1/recommend/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
酒井宏彰(株式会社美十 代表取締役社長 CEO)
アメリカの料理製菓専門学校 CIAを卒業後、食品機械メーカーでの営業経験を経て1992年に株式会社おたべに入社。2001年に3代目社長に就任。同社はつぶあん入り生八つ橋「おたべ」で知られるが、抹茶と豆乳を使用したバームクーヘン「京ばあむ」は京都の新しい定番土産菓子に成長。2015年には社名を株式会社美十に変更。現在では京都銘菓おたべ・京ばあむの他に多岐にわたるブランドを京都・千葉・福井・沖縄の製造4拠点から展開している。
<文・MC/垣内栄 撮影/坂口明子>