今回編集長アッキーが注目したのは、大阪・羽曳野市にあるチョーヤフーズ。「さらりとした梅酒」などで知られるチョーヤ梅酒のグループ会社として、梅を使った食品やドリンクなどを手掛けています。聞くところによると、昨年2022年に新たな商品を発売したのだとか。その誕生秘話を、代表取締役の金銅利則氏に伺いました。
あの梅酒メーカーが和菓子に挑戦!? 爽やかな梅の酸味を効かせた「CHOYA 梅結」と健康ドリンク「特撰蝶矢人蔘液」
2023/04/07
チョーヤフーズ株式会社 代表取締役 金銅利則氏
―会社設立当初はどんな商品を販売されていたのですか?
金銅 梅酒を漬けたあとの“梅の実”です。弊社の設立は、チョーヤ梅酒が伸び盛りとなっていた1992年。梅の実を大量に使用しますので、漬けたあとの実の処理に苦慮していました。チョーヤの梅酒は砂糖の浸透圧で梅のエキスを抽出する昔ながらの手法で造っていて、抽出後の梅の実には梅酒も含まれています。それを活用しないのは勿体ないということで、会社を設立し“梅の実だけ”の販売を始めました。
―御社の梅酒造りの歴史は?
金銅 もともとチョーヤ梅酒は、ワインメーカーだったんです。本社のある羽曳野市をはじめとする南河内エリアはブドウ栽培に適した気候で、昭和初期までは一大産地となっていました。一時は山梨県を抜いて生産量全国1位になるほどだったので、ワインメーカーも多くて。1970年代に輸入が自由化された際、海外産のワインには勝てないだろうと考え、試行錯誤するなかで着目したのが梅酒でした。
日本が世界に誇れるお酒として清酒・焼酎がありますが、それをいくら私たちが追求しても老舗には敵いません。それなら、どこのメーカーさんもされておらず、なおかつ古くから日本で行われてきた梅酒造りを企業ベースでできないかということで始めたと聞いています。当時梅酒は家庭で漬けるものでしたから、最初は鳴かず飛ばずだったようですけれど。テレビCMの効果もあって1980年代から90年代にかけてグンと売上が伸び、広く認知していただけるようになってきました。
梅の最高級ブランド「南高梅」を、
いち早く梅酒造りに取り入れたのがチョーヤ梅酒だったとか。
果肉がやわらかく肉厚な南高梅は抽出率も高く、
深みのある梅酒に仕上がる。
―原料となる梅は、農家さんと一緒に栽培から取り組んでいるそうですね。
金銅 梅酒造りを始めて以来、和歌山の生産農家さんと密にコミュニケーションを取りながら梅の品質向上に努めてきました。減農薬や、そこから一歩先に進んだ有機栽培の取り組みを行っています。私どもの商売は農家さんあってのものですので、農家さんたちに「やっててよかった」と思っていただけるような環境づくりをこれからも行っていきたいと考えています。企業ポリシーとして、お客様の健康のために安全安心な商品を提供したいという想いもあって。梅以外の原料も、なるべくご家庭の台所にあるような自然な素材を使うよう心がけています。
―御社初の和菓子「CHOYA 梅結」を開発したきかっけは?
金銅 梅の楽しみ方には梅酒や梅干し、梅シロップなど色々ありますが、もっとバリエーションを広げていきたいということで、構想に3年、開発に2年かけて作りました。私自身、チョーヤフーズの代表取締役に就任することになった当初から新商品の開発をしていきたいという気持ちがあったんです。いくつかあったアイデアの中で最もプライオリティが高かったのがこの梅結。まったく個人的な好みなんですけど、私は甘いもの、とくに白餡の焼き饅頭が大好きなんです。それに梅ジャムをあわせたら面白いものができるのではないかという発想から生まれました。
素朴な焼き饅頭に梅の酸味を効かせたモダンな和菓子「CHOYA 梅結」。
白餡には風味豊かでしっとりとした北海道産の手亡豆を使用している。
―やさしい甘さの白餡と甘酸っぱい梅ジャムの組み合わせが新鮮です。
金銅 生地で包まれた白餡の中に梅ジャムが入っている3層仕立ての焼き饅頭なのですが、梅ジャムだけでなく、白餡のなかにも華やかに香る梅果汁を練り込んでいます。梅はすべて紀州産の完熟南高梅。ジャムはもち米などでゼリー状にしているため、どうしても日が経つにつれ白餡と混ざってきてしまうんですよね。でも、添加物のゲル化剤は使用したくないので。いかに素材そのものの風味、おいしさを出していくかというところにこだわりました。
―開発にはご苦労もあったのでは?
金銅 添加物に頼らずにどうやって“梅感”を出すか、というところに苦労しました。梅は加工してから食べるものなので、本来の香りを知らないという方も多いですよね。桃のようにフルーティないい香りがするのですが、加工してしまうと香りが出にくいですから。そんな中でも、召し上がったときに「これ梅やね」って感じていただけるように、梅をふんだんに使って仕上げています。
梅結びの水引には、魔除けや厄除けといった意味も。
モダンなパッケージデザインで大切な人への贈り物にもぴったり。
―「CHOYA 梅結」という名には、どんな想いが込められているのですか?
金銅 “梅結び”というのは、水引の結び方の名前なんです。簡単にはほどけないことから「固く結ばれた絆」という意味が込められていて、おめでたいことの印や慶事の祝儀袋、贈答品の飾りとして使われています。なぜその名前にしたのかというと、開発初期段階で新型コロナのパンデミックが起きたことが大きいですね。リアルに人と触れ合うこと、五感で感じること、それを大切にしていきたいという想いを込めて名づけました。梅結というお菓子を通して人とのご縁、繋がりを密にしていただければな、と思っています。
―「特撰蝶矢人蔘液」は、長年のハーブ研究から誕生した健康ドリンクだとか。
金銅 ベースとなったのは、弊社運営のオンラインショップ「蝶矢庵」で販売している「特撰蝶矢人蔘酒」。高麗人参と12種類の草根木皮を酒精に漬け込んで、梅酒とブランデーで風味づけした健康酒です。1968年発売のロングセラー商品で、チョーヤ梅酒の単体ブランドとしては一番の古株。前々からお客さまより「ノンアルコールはないの?」という声もいただいていて。なんとか商品化できないか、ということで生まれたのが「特撰蝶矢人蔘液」です。
梅果汁入りで飲みやすい「特撰蝶矢人蔘液」。
高麗人参のチカラで、毎日に活力を!
―「特撰蝶矢人蔘液」にも、高麗人参と12種類の草根木皮を使用されているのでしょうか?
金銅 高麗人参と12種類の草根木皮エキスを人蔘酒の5倍、ギュッと濃縮しています。50mlの小瓶3本で、人蔘酒1本分(700ml)の成分が摂取できる設計です。人蔘酒の場合は12種類の草根木皮を全部一緒にお酒の中に漬け込むだけですが、人蔘液は素材ごとに最適化した方法で抽出しているので、その手法を確立するまで非常に苦労しました。
体ポカポカ!
高麗人参に含まれるジンセノサイド(サポニン成分)が“巡り”を整えてくれる。
―最後に今後の展望をお聞かせください。
金銅 チョーヤグループの取り組みとして、鎌倉や京都で「梅体験専門店 蝶矢」というのをやっていて。そこでは梅や砂糖の種類を変えて、色々な組み合わせの梅酒や梅シロップ造りが楽しめるんです。“完熟南高梅とウォッカと氷砂糖”とか“白加賀梅とてんさい糖”とか。そういうふうに、梅の楽しみ方を幅広く提案していきたいですね。梅は古来、実だけじゃなくて種や木皮も活用されてきましたので、そういった文化を発掘していきながら、それを土台とした取り組みを提案して、梅にまつわる啓発をしていくのが理想ですね。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
「CHOYA 梅結」(6個入り)
価格:¥1,620(税込)
店名:チョーヤフーズ
電話:072-950-2000(9:00~17:00 土日祝日・お盆・年末年始を除く)
公式サイト:https://choya.jp/foods/
※店舗販売限定商品(伊丹空港・関西国際空港の売店、新大阪駅のキヨスクなどで購入可)
「特撰蝶矢人蔘液」(50ml×10本)
価格:¥6,480(税込)
店名:蝶矢庵
電話:0120-919-553(9:00~20:00お盆・年末年始を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.choya-an.jp/page/87
オンラインショップ:https://www.choya-an.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
金銅利則(チョーヤフーズ株式会社 代表取締役)
1968年大阪府生まれ。1996年チョーヤ梅酒株式会社に入社し、半年研修後中国上海へ赴任。中国現地法人の立ち上げや運営を経て、2008年に帰国。2009年よりチョーヤ梅酒株式会社の国内営業に従事した後、2017年チョーヤフーズ株式会社へ代表取締役として転籍。現在に至る。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/和田英利 画像協力/チョーヤフーズ>