今回、編集長アッキーが気になったのは、仙台で人気洋食レストランなど全8店舗を展開する傍ら、全国に自慢の味を届けてくれる株式会社オールスパイス。「あたりまえのことをまじめにコツコツ…」というポリシーのもと、実直に食の魅力を追求している会社です。なかでも注目したのは日本一の称号を得た“ナポリタン”と、洋食レストラン生まれの“中華そば”。2代目である代表取締役社長・角田秀晴氏にそのおいしさの秘密を伺いました。
3万人のナポリタン好きが選んだ「日本一のナポリタン」その味を求めて女性客が行列する「ハチ花乃 鶏塩中華そば」
2023/05/22
株式会社オールスパイス 代表取締役社長の角田秀晴氏
―創業は1979年だそうですね。お店を継ぐことは、若い頃から意識されていたのでしょうか?
角田 実はそうではないんです。弊社の原点は、父が開いた小さな洋食レストラン(現・レストランHACHI名取本店)。20代前半までは私も厨房に入っていましたが、料理人としての才能も根性もまったくありませんでした。情けないことに、当時は嫌で嫌で、逃げ出したくて仕方がなかった。それで一度外へ出たのですが、あるとき店を切り盛りしていた弟が体調を崩してしまって。何の準備をする間もなく、2007年に急遽家業へ戻ることになったんです。
―戻られてからは、ご苦労も多かったのでは?
角田 当時は経営もうまくいっておらず、組織をつくり直すところ、いわばゼロからやり直さなければいけない状況でした。ただ私は、外に出て社会の空気を吸って戻ってきたので、多少マーケティングやマネジメントの知見を身につけていました。それをいかして、体制の立て直しから着手しました。
―2011年には経営理念も一新されたとか。
角田 “私たちは幸せを創るもう一つの家族”を経営理念として掲げています。その大きなきっかけとなったのは、東日本大震災です。またしても事業の立て直しが必要だった震災直後、潰れない組織って何だろう、と考えたときに出てきたキーワードが「家族」でした。社員だけでなく、協力業者の方々やお客さまなど、私たちがつながるすべての方々とともに幸せをつくっていきたいと熱く思いましたので、その旗印としてこの新たな理念を掲げました。
HACHIではナポリタンとハンバーグが大人気。この味を求めて県外からも多くの人が訪れる。
―HACHIのナポリタンが“日本一”になるに至った経緯は?
角田 ナポリタンはもともと店にあったメニューで、若い方には目新しく、年配の方には懐かしい、というのが面白いなと思っていたんです。とくにご年配の方には「これが本当のナポリタンだよね」って、よくお褒めの言葉をいただいていました。それを広く認知していただけるようになったきっかけも、実は震災なんです。
当時5軒あった店のうち2軒は、スタッフはいるけど店がないという状況で、営業できなくなってしまいました。そんなとき仙台駅前の百貨店では、テナントがすっかり抜けてしまっていて。空いた場所で何かしないかとお声がけいただいて、ナポリタン専門店をオープンすることになったんです。それ以来、“HACHIのナポリタン”の知名度が一気に上がっていきました。さらに、2013年にはナポリタンの日本一を決める大会「ナポリタンスタジアム」にも運良く出場でき、ブランディングができあがっていきました。
2.2mmの太麺のもちもち食感が◎!具材もたくさん入っているので、食後の満足感も高い。
―大会では優勝されたんですよね!どんな大会だったのですか?
角田 横浜赤レンガ倉庫の広場で3日間にわたって開催された大会で、のべ3万人が17店舗のナポリタンを食べ歩いて投票し、日本一を決めるという形で行われました。その大会に出るまで、よそのナポリタンとの違いを意識したことはなかったんです。優勝への期待が高まったのは、リピーターが現れた2日目のこと。一度食べた方がまた来て召し上がったり、買って帰ったりしてくださるようになったんです。講評では、審査員の先生からも「ケチャップに頼らない爽やかな酸味のソースが繰り返し食べたくなる、独特な味わい」だと言っていただけて、大きな自信に繋がりました。
―その味を自宅にいながら楽しめるのが「日本一のナポリタン」なんですね。
角田 そうです。発売当初から4、5回手直ししていますが、ベースは父の残してくれたレシピです。特徴は、ホールトマトを煮込んでつくる自家製のナポリタン専用ソースを使用していること。ケチャップに頼った味つけだと、コクは出るのですがどうしても甘ったるくなってしまうんです。でもうちはケチャップではなく、爽やかな酸味のある自家製ソースで仕上げているので、最後まで飽きずに召し上がっていただけます。
「日本一のナポリタン」は、冷凍便で到着。お店で食べる“味”と“満足感”の再現性を高めることを大切にしている。
―2019年には中華そば専門店「ハチ花乃」もオープンされたとか。洋食屋さん発の中華そばとは、意外な組み合わせです。
角田 結果としては無謀な挑戦だったのですが、中小企業の生き残り方として第2、第3の柱づくりは必要だと思っているんです。それに、従業員の働き方は勤続年数や年齢によって変わってきますので、それぞれが働くステージづくりもしていかなければいけない。そういった課題があったので、チャンスがあれば洋食に限らず色々なブランドを増やしていきたいと兼ね兼ね考えていました。
「ハチ花乃」は和食に長けたスタッフとの出会いから生まれたブランドで、もともとは水炊き専門店だったんです。それがコロナ禍で夜の営業ができなくなったので潔く諦めて、〆として提供していた“中華そば”の専門店に切り替えたというわけです。
「鶏塩中華そば」には、低加水で仕上げた極細乾麺を使用。あっさり系の〈淡麗〉とも、白濁スープの〈濃厚〉とも相性抜群!
―「ハチ花乃 鶏塩中華そば」では〈淡麗〉と〈濃厚〉の2種類が楽しめるのですね。
角田 どちらも、もともと水炊きで使っていた国産骨付鶏を煮込んでつくるスープがベースになっています。はじめにつくったのが透き通った黄金色のスープで味わう〈淡麗〉です。水炊きでは、煮込んだ骨付鶏の手羽先やモモ肉なども具材として味わっていただいていたのですが、淡麗にはその使い道がなくて。そこで生まれたのが、2度炊きでうまみとコラーゲンを抽出した〈濃厚〉。お肉をミキサーにかけて裏漉しし、濃厚な味わいに仕上げています。私どもはその味を“こってりではない、やさしい濃厚さ”と表現しています。
女性客が6割という「ハチ花乃」。あっさりと味わえるのは水炊きから生まれた中華そばならでは。
―麺へのこだわりをお聞かせください。
角田 麺は、100年以上の歴史を持つ宮城県登米市の乾麺屋「二階堂製麺所」さんのものを使用しています。近隣農家さんの副収入づくりを助けることを目的に製麺業を始められたところで、お得意なのはうどんなんですよ。初めて挑戦された中華麺がこの極細麺で、北海道産小麦100%とモンゴルの天然かんすい、つなぎには全卵が使用されています。
試食させてもらったらすごくおいしくて、何も生麺にこだわる必要はないな、と思いました。ラーメン屋と違って水炊き屋は毎日何十食分もの麺が必要というわけではないので、保存の効く乾麺のほうが使いやすいですしね。中華そば専門店に切り替えてからも変わらず乾麺を使用しているので、店舗でもお取り寄せでも、ほぼ同じ味を楽しんでいただけます。
「〈濃厚〉はおろしにんにくとラー油を加えてもおいしいですよ。
〈淡麗〉はおろし生姜を加えたり、梅干しをのせたりするのもおすすめです」と角田氏。
―今後、新たな商品の発売は予定されていますか?
角田 面白い商品の準備をどんどん進めています。直近ではご家庭で焼いて召し上がっていただく生タイプのハンバーグを発売する予定です。うちは父の代からのハンバーグが自慢で、これまで通販では電子レンジまたはお湯で温めて食べるタイプの商品を販売していました。それを今回、お客さまご自身で焼いていただくスタイルにリニューアルしたんですよ。ナイフを入れると肉汁が“溢れる“ではなく“飛び出す”くらいジューシー。さらに再現性を増した、完成度の高い商品となっています。
―発売が楽しみです! 本日はありがとうございました。
「日本一のナポリタン」(冷凍商品、4個入り)
価格:¥4,000(税込、送料込)
店名:レストランHACHI
問合せ先:shop@maido-8.com(10:00~17:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.ouchi-8.com/?pid=171594134
オンラインショップ:https://www.ouchi-8.com/
「ハチ花乃 鶏塩中華そば<淡麗><濃厚>」(常温商品、各2人前)
価格:¥3,000(税込、送料込)
店名:レストランHACHI
問合せ先:shop@maido-8.com(10:00~17:00 土日祝日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.ouchi-8.com/?pid=165813949
オンラインショップ:https://www.ouchi-8.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
角田秀晴(株式会社オールスパイス 代表取締役社長)
1963年宮城県生まれ。サラリーマン生活を経て2007年家業であるレストランHACHIに戻り現職に就く。東日本大震災を契機に経営理念を「私たちは幸せを創るもう一つの家族」へ一新。独自の社風を築き始める。地元のソウルフードを目指し、社内の合言葉は「目指せケンミンショー」。飲食店運営に加えてコロナ禍以降に通販事業に注力、陣頭に立ち商品開発に取り組んできている。
<文・撮影/野村枝里奈 MC/鯨井綾乃 画像協力/オールスパイス>