ミシュラン星付きのプロ御用達「丸山海苔店」の海苔とお茶

2023/04/17

東京・築地の老舗「丸山海苔店」は、ミシュラン常連店にも採用されている名店中の名店です。また、お茶事業の専門店「寿月堂」の日本茶も国内外の食のプロに認められ、現在はパリにも出店しています。その味をお取り寄せできるということで、編集長アッキーも大注目。取材班が、おいしさの秘密やおすすめ商品まで、詳しくお伺いしてきました。

株式会社丸山海苔店 代表取締役社長の丸山慶太氏

―安政元年(1854年)創業とのことで、歴史を教えてください。

丸山 分かっている範囲での話になりますが、元々は海苔の産地だった大森にいて、日本橋に移ってきたのが安政元年です。

当時の屋号は「川口屋」と言いまして、初代 津島彦兵衛は私の母方の家系です。
初代 彦兵衛は、海苔のおいしさを追求し、運搬や保管に便利なブリキ缶を考案するなど、開発力に優れた挑戦者でした。明治頃の写真を見ると、バックヤードに海苔箱がぎっしり積み上がっている様子が分かり、当時から多くのお客様に海苔を卸していた証といえます。

日本橋に橋がかかった際には、町の名士の一人として記念写真に写ったりもしています。
関東大震災で被災した後、築地に移りました。私で6代目です。

日本橋にあった店舗と二代目・津島儀助氏。初代の名前を冠した商品もある。

現在は問屋ではなく、海苔の製造も?

丸山 今は製造から小売までを行う、製造小売業です。海苔業界は問屋業が主体ですが、弊社は、仕入れ、製造はもちろんのこと企画、販売までをすべて自社でおこなっています。直営店、通販およびEC事業を通して、お客様に商品を直接販売しており、寿司店やホテルなどの業務用にも卸しています。

―ミシュラン常連店でも多数採用されています。その理由は?

丸山 弊社は、高品質の商品の取り扱いに特化しており、職人技のようなアナログ的な要素とシステム管理のようなデジタル的な要素を同時に取り込むことで、商品の付加価値を最大化しています。“最高鮮度”の商品を、お客様の要望に合わせてご提供できることが弊社の強みであり、お客様に評価いただいている理由であると思います。

3000店ほどのプロのお客様に海苔をご使用いただいていますが、一店一店の特徴を可能な限り把握するようにしています。

プロの味の好みは多種多様。厚いものを好む人もいれば、薄いものが好きな人も。海苔に粘りがあり割れにくいものが良い、などプロの細かい要望に応えるため、お客様ごとの商品をつくっています。特定の職人さんのためだけの、その人の名前を付けた商品も存在します。海苔の種類は業務用だけでも150種類に及びます。

それはすごく手間のかかるアナログな作業ですね。

丸山 このアナログなことが、うちでは絶対ですし、これを磨きに磨いてます。それを推進するためにあるのが、システムによるデジタルな要素です。

海苔屋なのにどうしてデジタル?なんて言われてしまうこともありますが、デジタル化することが目的ではなくて、あくまでもアナログを推進するための手段として捉えています。

商品の付加価値の中で最も重要なことは「鮮度」です。システムを駆使することで、鮮度管理を徹底して焼きたての鮮度感をお届けしています。

品質のためのデジタル推進ですね。

丸山 効率的な生産を目指すなら、1度にまとめて焼いてしまえばよいという考え方もあります。例えば3ヶ月に1度などいっきに製造して作りだめするのでなく、数回に細かく分けて焼く。なぜならば、鮮度を優先するからですね。作り置きを全くせず、ほぼ受注生産で製造している商品もあります。

とはいえ、作り置きしないことは簡単なことではありません。毎日、電話やメールなど様々な部署から入ってくる注文をみて販売状況をシミュレーションしなければなりません。システムを活用して、瞬時に棚にある在庫の賞味期限を確認しながら、生産計画を綿密に立てることで“交通整理”が可能になります。

職人の目利き力というアナログとシステムによるデジタルを活用することで、商品の付加価値が生まれると考えています。

アサヒビールさんのようなジャイアント企業だって、「工場3日以内出荷」なんてやっているわけですから、うちがやらないわけにはいきません。

並々ならぬ鮮度へのこだわりですね。おいしさについてはいかがでしょう?

丸山  海苔の焼き工程にもこだわります。機械の温度を細かく設定し、通常の2倍の時間をかけてじっくり1枚ずつ丁寧に焼いています。「おいしさ」は最終的に官能的に判断すべきと思っています。もちろん、「おいしさ」も数値化できる時代ではありますが、人間の舌で確認して実感する部分を大切にしています。週に1度は、つくばの工場からサンプルを取り寄せ、自分の舌で品質確認を欠かさず行っています。

つくば工場の様子。一枚一枚丁寧に焼くのはもちろん、焼きたてを届けることにこだわっている。

お客様とのリアルなコミュニケーションも大事?

丸山 インターネット通販もあります、やはりお客様にはリアルな場に来てもらい、海苔とお茶の世界に触れていただきたい。また、海苔とお茶のプロとして色々な提案をして楽しんでいただけるような専門店にしていきたいという想いがあります。

現在、通販やインターネットで購入されるお客様の登録が約20万件あります。そのようなお店にいらっしゃらない方にも、我々からアウトバンドの電話をしています。これは、商品を購入してもらうことが目的ではなく、店舗でしているような会話を心がけるようにしています。お客様との電話は「1秒でも長く話してください」と言っています。普通なら「1秒でも短くしなさい」って言われると思いますけれど。商品だけの関係ではなく、長くお付き合いいただける関係性を築きたいですね。

―お茶の「寿月堂」も始められてから50年以上になりますね。

丸山 父の代からお茶も扱っています。企業理念として「世界中の人々の食を豊かにしていく」というのがあります。
お茶は、イングリッシュティーもあれば、チャイニーズティーもあり、世界中で各地に根差したお茶やお茶の楽しみ方がありますよね。

そのうちの選択肢が違うだけなので、日本のお茶も世界に広げやすいと思いますし、なによりも、日本茶には日本人特有の精神世界を含んだ文脈があります。商品そのものだけを使用してもらうのではなく、お茶を通してその背景にある“茶禅”の精神や日本文化を、世界の人に見てもらえるのがお茶なのかな、と思います。

ご紹介いただいた「特撰 百年の春」はどんなお茶ですか?

丸山 名前の通り、「春が百年続くといいな」というコンセプトです。春というと、暖かいとか、桜の香りがするとか、柔らかいイメージがありますね。そういう春が長く続くように感じられるお茶を表現しています。

グリーンティーというからにはの色は鮮やかな緑色で爽やかな青葉の香りがするお茶にしたい。  お茶業界的には超深煎りというのが主流ですが、それだと強い甘い香りにはなるのですが、色は黄金色というか、緑の組織は壊れてしまいます      

「寿月堂」の場合は、超深蒸しではなくて、青みというか、日本特有の苦みも重要だと思っていて適度に心地よい苦みを感じられるものにしています。その上で、名前のコンセプトの通り、柔らかさを表現しており、舌の上にずっと余韻が長く残るような甘みが特徴です

お客様にも、「これは寿月堂にしかないお茶だね」と言って頂いています

低めの温度のお湯で淹れると、まったり感を感じられて美味しくいただける。約80℃で1分程蒸らすのが目安。

お海苔の方は、「腕前おかずのり オリーブの木と塩の花」をご紹介いただいています。

丸山 商品開発の背景に、海苔を通して「食生活や食卓が豊かになってほしい」という思いが単純にあります。海苔をただご飯に巻いて食べるだけではなく、様々なシーンや用途で食べてもらいたい。そ考えた時、今までにあまりないような味付け海苔にしたいと考えました。旨味が詰まった有明海の海苔に、エクストラバージンオリーブオイルとフランス ゲランド産の天日塩で味付けています。

オリーブオイルと海苔がこんなに合うなんて!ワインやビールのおつまみにぴったりで、チーズとも相性良し。
食べだしたらとまらないくらいに美味。

食べ方のおすすめはありますか?

丸山 一般的に、同じ味のものはよく合いますので、オリーブを元々使うようなカプレーゼ、オリーブオイルがかかっているような料理とも合いますね。

海苔は海のものですから、もちろん海のものとの相性も良いです釜揚げしらすは、私の家族もよく合わせて食べていますね。バゲットに海苔を敷いて、その上に釜揚げしらすをまぶします。その上からさらにオリーブオイルをかけると良いですよ。

ホームページでも、手軽な海苔のレシピを多数ご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

ホームページのレシピから「オリーブ塩のりとしらすのオープンサンド」。
海苔の上にしらす干し、オリーブオイルをかけて。

アペリティフの時間のように、シャンパンを飲みながら海苔をつまんでも良いと思いますし、もちろん、ビールのお供にも良いですよね。あらゆる場面で、海苔が食卓に登場すると嬉しいです。

今後の展開というか、もう海外進出はされているかと思いますが?

丸山 海外では、お茶をメインに活動しており、フランスには「寿月堂 パリ店」があります。

「プロの味をご家庭に」というビジネスコンセプトの通り、日本においても、まずは一流のプロの方に品質を認めてもらうことが最重要。その上で、食の感度の高い一般の方にも使用してもらいたい。これはフランスでもやり方は同じです。

フランスは料理人が勲章をもらうようなお国柄で、食や文化への関心がとても高い。そのような所で、商品の品質を認めてもらえることは非常に嬉しいことです。2008年のパリ店オープン以降、フランスを起点に、イギリス、スイス、ベルギーなどのヨーロッパ諸国にお茶を卸しており、ミシュラン星付きレストランやファイブスターホテルを始めとした、世界の食のプロにもお茶をご使用いただいています。

パリ6区にある「寿月堂」。竹林をイメージした店舗は、 隈研吾氏の設計。

ちなみに、ヨーロッパでは日本茶はどんな受け止められ方を?

丸山 ここ10年で、日本茶がしっかりと定着したと感じています。現在は、フランスでも煎茶、抹茶といった言葉が広く浸透しており、パリの上質なカフェに行けば、日本茶が必ずメニューに載っているほど。特に抹茶は、“マインドフルネス”に欠かせない、心を整える飲み物としても注目されています。パリ店の常連のお客様の中には、日常的にご自宅でお抹茶を点てて飲まれる方も少なくありません。フランスにはカフェ文化があり、イギリスにもティータイムの習慣があるように、お茶を楽しむ時間が今でもちゃんと取られていますよね。お茶の味わいが好きというだけでなく、お茶を飲む時間や空間を大切にされている方が多いと感じます。

日本茶が今日のように浸透するまでには、様々な苦労がありましたが、ヨーロッパでは長い歴史のある老舗メゾンやファミリービジネスに対する敬意を払ってくれる。期待値が高い分、難しい面もありますが、期待に応えるとしっかりと評価してくれるので、やりがいがあります。

銀座 歌舞伎座店では、そのお茶の時間と空間を楽しめる?

丸山 パリ店での経験を逆輸入したのが、2013年にオープンした「寿月堂 銀座 歌舞伎座店」です。パリ店に続き、隈研吾氏に店舗設計いただき、歌舞伎座の屋上庭園を臨む3000本の竹に覆われた空間になっています。ゆったりとお茶やスイーツ、軽食などをお楽しみいただきながら、五感を研ぎ澄ます心豊かな時間をお過ごしいただけます。

お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

寿月堂 銀座 歌舞伎座店。自家製の抹茶を使用したスイーツや軽食も楽しめる。こちらも隅研吾氏の設計。

ぜひお伺いします。いつかパリ店にも行ってみたいです。貴重なお話をありがとうございました!

「特撰 百年の春」(100g)
価格:¥2,160(税込)
店名:丸山海苔店
電話: 0120-088-417(10:00〜17:00 日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.maruyamanori.com/c/hyakunen_n/820065L107
オンラインショップ:https://www.maruyamanori.com/

「腕前おかずのり オリーブの木と塩の花(卓上)」
価格:¥910(税込)
店名:丸山海苔店
電話: 0120-088-417(10:00〜17:00 日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.maruyamanori.com/c/olive_n/520290-J123
オンラインショップ:https://www.maruyamanori.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
丸山慶太(株式会社丸山海苔店 代表取締役社長)
1972年東京都生まれ。 ボストン大学大学院 経営学修士。
キリンビール株式会社、株式会社電通を経て2007年に家業である株式会社丸山海苔店に入社。2016年に同社社長就任。「老舗は常に新しい」という理念のもと、ユニークな取り組みを行うことを常に心がけている

<文・撮影/尾崎真佐子 MC/橋本小波 画像協力/丸山海苔店>

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