横浜を代表する牛鍋の名店から 自宅でも楽しめる味をお届け

2023/04/19

横浜と言えば、日本を代表する港町。江戸時代の開港以来、さまざまな外国文化がこの街を通じ、国内へ届けられました。そのひとつには、牛肉も。今では日本の食に欠かせない牛肉ですが、江戸・明治時代にはまだ珍しく、高嶺の花の存在でした。そんな中、これをもっと幅広い方に楽しんで頂こうと考えたのが、牛鍋専門店『荒井屋』の初代店主・荒井庄兵衛氏です。それから120余年。今も横浜で愛される牛鍋の老舗店から、美味しいお取り寄せをご紹介。代表取締役社長の荒井順子氏にお話を伺いました。

株式会社荒井屋 女将兼代表取締役の荒井順子氏

―御社の歴史は明治時代に始まるのですね。

荒井 1895年、明治28年の創業です。もともと牛肉は、幕末から明治初期にかけて、居留地でステーキやシチューといった料理で楽しまれていました。聞いたところによると、居留地で働いていた方々がその食風景を見て、なんとか自分たちの口に合うようにも出来ないだろうかと、味噌や醤油で味付けを試行錯誤し、牛鍋ができたと言われています。

私共が創業したころは、だいぶ庶民の間に牛肉文化が広まり、関内あたりには、100軒以上の牛鍋屋があったとのこと。そんな中、初代は、高級料理店などで使われている牛肉の切り落とし肉を払い下げて仕入れ、牛鍋はもちろん、牛めしや牛そばなど、リーズナブルに味わえる料理と共に提供していました。さらに「開化のお味は路面電車のお値段で」というキャッチフレーズも打ち出し、大ヒットしたと聞いています。

120年を経てもなお愛される、荒井屋の牛鍋。

―初代にはとても商才があったのですね。

荒井 農家の出身でしたが、一旗揚げようと横浜に出てきて、丁稚奉公から始めたと聞いています。商才に加えてハングリー精神もあったのでしょうね。

―今、横浜には何軒ほどの牛鍋屋があるのですか?

荒井 明治から残っている牛鍋屋は、3軒しかありません。

昭和初期の荒井屋本店。左上の看板に大きく「牛鍋」の文字が。

―3軒! そんな中、御社の強みはどんなところだと思われますか?

荒井 昔からよく言われて来たのは、庶民的であること。コースも提供していますが、定食もありますし、牛めし、牛煮込み、メンチカツなど、様々な引き出しを持っています。また、創業の頃からのチャレンジ精神がそれぞれの代に受け継がれているところも強みでしょうか。今でこそ100年続き、老舗と言っていただけるようになりましたが、時代ごとに苦労はあり、それに屈せず乗り越えてきました。

―荒井社長は、代目でいらっしゃいますね。

荒井 代目女将兼社長、ということになっているのですが、127年の歴史で四代目と言うと、「あれっ?」とおっしゃる方もいらっしゃいます。弊社は、夫婦で世代を繋いできたという感じで、初代、二代目夫婦、その子供たち、三代目、そして主人と私で4代目という流れです。私は1986年、創業90周年の頃に荒井家に嫁いできたのですが、初めは「何もしなくていいよ」と言われていたものの、繁忙期が来て、「ちょっと手伝ってもらいましょうか」みたいなところから始まって、今に至ります(笑)。四人の子どもを育てつつ、その時々、できる形でお店には関わって来ました。

―そして2007年に女将兼代表取締役へ。

荒井 112年周年を迎え、当時代表を務めていた主人の傘のもと、スタッフみんなと一緒に店を盛り立てて行こうという気持ちでいたのですが、2007年に主人が他界し、そこから社長を引き継ぎました。

会社を継いで実感したことは、その責任の重さです。万國橋店がオープンして2ヵ月ほどの頃で引き継ぎましたが、まずは店を軌道に乗せること、そして従業員や取引先の銀行様、みなさんに安心していただくことで必死でした。おかげさまで、時代の後押しもあり、そこでは良い数字を見ることもできました。

その後、2011年には東日本大震災も経験しました。私共は仙台から牛を入れており、お取引先の畜産会社の方たちからは、弊社の牛を処理している最中だった、という話も伺いました。またセシウム汚染の問題もありましたので、行政から出てくる個体番号を毎日チェックして、安心安全なものをご提供することに努めました。また被災地を、できる形で支援させていただけたらと、仙台黒毛和牛を仕入れ、お客様に食べ放題で味わっていただくイベントも実施しました。

そしてこのコロナの3年間もまた、非常に大変な思いをしましたね。戦時中のようだ、とおっしゃる方もいらっしゃいました。ただ、その頃に比べたら、期間は3年とちょっと、しかもまだ売るものが手元にあるなど、恵まれていたと思います。それにコロナがあったからこそのチャンスもあり、2021年にはそごう横浜店をオープンすることもできました。

―様々なご苦労も経験されつつ、牛鍋の伝統を守ってこられたのですね。そして今回は、御店の自慢のハンバーグをご紹介いただきました。おすすめのポイントを教えてください。

荒井 ハンバーグは、40年ほど前から当店のメニューにありましたでしょうか。当店では「牛挽きステーキ」と呼んでおりますが、当時から、変わらずの人気のメニューです。当店では、牛を一頭買いし、様々なメニューを生み出すことで、無駄なく使いきることにこだわっているのですが、このハンバーグもその信念から生まれたひとつ。「どの部位を使っているの?」と尋ねられることもあるのですが、厳選した国産黒毛和牛の様々な部位をミンチにしています、とお答しています。あとはタマネギ、パン粉、卵……と、材料はごくシンプルです。ポイントは空気抜きを、昔と変わらず手で行っているところでしょうか。

こだわりの味をご家庭でも。旨みが口の中いっぱいに広がります。

―とても旨味を感じるハンバーグでした。160gですが、食べ応えがありますよね。またハンバーグ自体に美味しい脂が蓄えてあるので、「焼く時、油を引かなくて良い」というのにも納得でした。タレもとても美味しかったです。

荒井 生姜醤油のタレですね。こちらもずっと変わらないのですが、このタレがあってこそ、国産牛肉100%の味を、しっかりお伝えできているのではないかと思っています。

―アレンジ方法などがありましたら教えてください。

荒井 まとめて召し上がる際におすすめしているのが、この生姜醤油のタレを、日本酒でフランベすること。フランベと言えばワインと思われがちですが、私はこのタレに関しては日本酒の方が合うかな、と思っています。シンプルに大根おろしを添えていただいても美味しいですね。またお客様からは、タレを取っておいて、他のお肉で生姜焼きを作っても美味しかった、と伺ったこともあります。

―贈答品としてお求めになる方が多いのでしょうか?

荒井 そうですね。贈答品の季節は、出荷が重なります。それからありがたいことに、リピーターも多くいらっしゃいます。手作りで大量生産がなかなかできないのですが、頑張って対応していきたいと思っています。

―そして牛肉佃煮の特徴についても教えてください。

荒井 国産黒毛和牛のすねを、水あめ、割り下、お砂糖で3時間ほど炊いた佃煮です。昔はもっと水分を飛ばしていたらしいのですが、今は昔ほど飛ばさず、しっとりした味わいを楽しんでいただいています。現在、お店には出していないメニューなのですが、かつてお店で出していた頃は、口にしたお客様が、「おいしかったから帰りに買って帰りたい」にお求めいただいており、それを商品化しました。

こちらは白ごはんに乗せていただくのはもちろん、お出汁や緑茶でお茶漬けにしても美味しくいただけます。お子さまには、佃煮とキュウリの海苔巻きはいかがでしょうか。私も子育て中、よく作っていたメニューです。

真空パックのまま熱湯で3,4分温めると、よりしっとり。
「すきやき風味」のほか、「生姜風味」「山椒風味」も。

―今夜はまず、お茶漬けでいただいてみます。それでは、今後の展望についても聞かせてください。

荒井 2017年の3月に、120周年の記念事業として本店の建て替えを行ったのですが、実は、私のお役目はそこまでだと思っていたのです。ところが、その後もこうして、代表を務めさせていただいておりますので、今後も引き続き店を守りつつ、牛肉のこだわりを生かした商品開発などを進めて行きたいと考えています。実は今、若いスタッフが中心となって新商品の開発を行っておりまして、まずはそれを形にできたら嬉しいですね。

あとは牛鍋を、横浜=牛鍋と言われるような存在にもしていけたら。すき焼きの原点である牛鍋を、まずは日本人の方、そして世界の方々にも、ここ横浜で味わい、楽しんでいただきたく思います。

―「あまり物事を深く考えない、悩まないのが私なんです」と、謙遜しながらおっしゃった荒井社長。様々なエピソードを伺えば、時にしなやかで、大胆で、荒井社長だからこそ、数々の苦難を乗り越えてこられたのだと感じました。お話をありがとうございました!

「【贈答用】ハンバーグ・ステーキ(化粧箱入)」(5個)
価格:¥4,860(税込)
店名:荒井屋オンラインショップ
電話:045-251-5064(9:00〜17:00 土日祝日除く)
定休日:火曜、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.araiya.co.jp/shopdetail/000000000010/hamburger/page1/order/
オンラインショップ:https://shop.araiya.co.jp

「牛肉佃煮 単品」(90g)
価格:¥1,080(税込)
店名:荒井屋オンラインショップ
電話:045-251-5064(9:00〜17:00 土日祝日除く)
定休日:土曜、日曜、祝日、インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.araiya.co.jp/shopdetail/000000000027/tsukudani/page1/order/
オンラインショップ:https://shop.araiya.co.jp

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>
荒井順子(株式会社荒井屋 四代目女将兼代表取締役)
1960年神奈川県生まれ。1986年、荒井屋四代目と結婚し女将に。2007年、四代目の他界後社長に就任。横浜の地域活性化や横浜料理「牛鍋」を世に広げようと努力している。

<文・撮影/鹿田吏子 MC/隅倉さくら 画像協力/株式会社荒井屋>

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