今回、編集長アッキーこと坂口明子のアンテナに架かったのは、首都圏を中心に展開する椿屋珈琲。高級感漂う雰囲気の中、ロイヤルコペンハーゲンのカップでスペシャルティコーヒーとケーキがいただけるお店として、舌も目も肥えた人たちに人気のカフェです。今、その椿屋珈琲のオンラインショップが話題だとの噂を聞きつけ、同店を運営する東和フードサービス株式会社 代表取締役社長CEOの岸野誠人氏に、お話を伺いました。

東和フードサービス株式会社 代表取締役社長CEOの岸野誠人氏

―椿屋珈琲のドリップバッグがあるとは、知りませんでした。

岸野　お客様から「家でも椿屋珈琲のコーヒーが飲めたら」というお声を頂戴して、以前からドリップバッグを作ってはいたのです。ただ、やはりお店で飲食をしていただくという売り上げが99％以上でしたから、ドリップバッグや焼菓子などはレジ横にあって、売り上げとしてはさほど多くありませんでした。

椿屋珈琲のドリップバッグはドリップに最適な中挽き豆を1袋にたっぷり12g使用。
雑味やえぐみがなく、旨み成分がきちんと抽出され、豊かな香りと深いコクを堪能できます。

―お取り寄せできるようになったのは、いつからでしょう？

岸野　コロナ禍以降です。弊社は椿屋珈琲を含め、カフェやレストランを合計111店舗運営していますが、ご承知のとおりコロナ禍のあおりをもろに受けました。店舗の8割以上が百貨店や駅ビルといった商業施設に入っているので、それらの施設への休業要請期間中は何もできなくなってしまって。飲食店は日銭商売で、毎朝、前日の売り上げをチェックするのですが、その数字が「0」の日が続くという初めての経験をしました。

そうした中、飲食店としてできるのはテイクアウトやデリバリー、通信販売でした。
弊社は自社工場を持っていて、そこでコーヒー豆の焙煎から生ケーキや生パスタ、カレーなどの製造をしています。椿屋珈琲のほか「イタリアンダイニングDONA」など店舗における調理負担を減らすために、料理の1次加工をそこで行って「焼くだけ」だったり「温めるだけ」の状態にするのです。もともと、それらはすべて店舗向けのものだったのですが、ご家庭でも気軽に召し上がっていただける容量とパッケージに変えたら、通信販売にも対応できるのではないかと。そこで、従来の商品を見直したり新しい商品を作ったりして、オンラインショップも充実させていきました。すると、思っていた以上にご好評いただいて、今では売り上げ比率が15％を超えているんですよ。

―1％未満から15％以上にも！　消費者のニーズにばっちり合ったのですね。その中から、今回ご紹介させていただくのは「選べる椿屋珈琲ドリップバッグ30個入」と「おうちでレストランセット」です。まずは前者から、おすすめの理由を教えてください。

岸野　コロナ禍の影響で店舗が軒並み赤字にあえいでいる中、唯一、黒字を出した店舗がありました。そこは東京・荻窪にあるコーヒー豆の挽き売り専門店です。4坪の店舗の一角に6席あって、買い物帰りの方が立ち寄ってコーヒーを1杯飲んでお帰りになるような。正直なところ、弊社としては赤字部門だったのですが、昔から長くお付き合いさせていただいているお客様もいらっしゃるので、営業を続けていました。その物販専門の店がコロナ禍でありながらたった1店舗、黒字を出したことは、物販を見直すきっかけになりましたし、何より弊社の原点に立ち返らせてくれたのです。

椿屋珈琲の原点は1974年、銀座に開いた4坪ほどの小さな「コーヒーハウス」。銀座にはすでに「パウリスタ」という有名な喫茶店があって、そこではイートインのほかコーヒー豆の販売をしていました。それにならって、コーヒーハウスでもコーヒーをお出しするだけでなく、豆を挽いて販売していたのです。喫茶店とも言えないほどの本当に小さな店から始めたということがDNAとして残っているのであれば、やはり椿屋珈琲もこれまで以上にコーヒー豆にこだわって、よりおいしいコーヒーをお客様に召し上がっていただこう。その思いから、一昨年、椿屋珈琲が開業25周年を迎えたのを機に、弊社が取り扱っているコーヒー豆のすべてをスペシャルティコーヒーにしました。
スペシャルティコーヒーは、流通している全コーヒーの5％ほどしか流通していません。というのも、スペシャルティと名乗れるのは、日本スペシャルティコーヒー協会が設けている、酸味や甘み、後味や口当たりなど8項目を点数化したカッピングスコアで80点以上の評価を得たコーヒー豆のみ、だからです。椿屋珈琲ではもともと良質なコーヒー豆を使っていましたが、さらに質にこだわろうと。

昼夜の寒暖差が大きい高地産であるほど良質で美味といわれるコーヒー豆。
椿屋珈琲の「コロンビア」は、有数の生産地であるコロンビア・アンティオキアの農園から直接買い付けています。

熟練の焙煎士が吟味した、スペシャルティ以上の高品質なコーヒー豆のみを利用。
季節によって異なる豆の状態に合わせて焙煎を調整。
スペシャルティ協会の国際的な資格「Qアラビカグレーダー」を持った焙煎責任者が、
豊富な知識と確かな舌、鼻、目でコーヒーの評価を行います。

―ドリップバッグにもスペシャルティコーヒーが使われているのですか？

岸野　もちろんです。オンラインショップでは、自慢のコーヒー豆を販売していますが、みなさんに、まずは手軽においしいコーヒーを味わっていただけたらと、今回はあえてドリップバッグをおすすめしたいと思います。
「選べる椿屋珈琲ドリップバッグ30個入」は以前からあった商品で、10種類からお好きなものを1つ選んでいただくというものですが、豆の質がぐんと上がっているので、どれを選んでいただいてもご満足いただけるはずです。

忙しい時でも手間なく、おいしいコーヒーをいただけるのが、コーヒーバッグのよいところ。
しかも、本格的な味を楽しめるなんて、幸せ！

―では、「おうちでレストランセット」のおすすめの理由は？

岸野　オンラインショップには、コーヒー豆やドリップバッグのほかに、お店でご好評いただいている「特製ビーフカレー」ほかピッツァやパスタ、シチューなどをご用意しています。今回は、2〜3名様でテーブルを囲みながら、椿屋自慢の味を召し上がっていただけたらと。ピッツァは4種類の中から2枚、パスタは3種類の中から1つ、ライトミールは5種類の中から1つ、お好きなものを選んでいただけます。さらに、牛タンシチュー1つに椿屋ブレンドドリップが2つというセットです。

「おうちでレストランセット」2〜3名分。
ピッツァはマルゲリータ、釜揚げしらすのジェノベーゼ、クアトロフォルマッジ、サルシッチャの4種類から2種類選べます。
パスタは、ミートソース、ジェノベーゼ、クリームソースの3種から1つ、ライトミールは海老マカロニグラタン、ラザニア、
マッシュルームリゾット、チキンドリア、シーフードドリアから1つ、チョイスできます。
それに、牛タンシチュー1つとコーヒーバッグ（椿屋ブレンド）2つ。すべて冷凍の状態で届きます。賞味期限は発送から3か月。

―フルコースですね！

岸野　はい。ご自分で一度にたくさんのメニューを作るのは大変でしょうし、料理を作る人が途中でキッチンに立つことなく、みんなで一緒に会話を楽しみながら食事をしていただけたらと。冷凍の状態でのお届けですから、たとえば今日はピッツァだけ、パスタだけというふうに単品でもお召し上がりいただけます。在宅勤務で毎日のランチに悩んでいる、小さな子どもがいて料理になかなか手間や時間をかけられない、というお声をよく耳にします。そうしたみなさんのお役に立てたら、何よりです。

料理に関するこだわりについては、まずはやはり安全、安心であること。商品を企画する際には、私自身が家族に安心して食べさせられるか、友人や知人に自信を持って勧められるか、食材にしても手間にしてもコストばかり優先していないか、ということを基準にしています。もちろん利益を出さなければいけないので、その判断は容易にはできないのですが。

製法に関しては、基本的に手作りです。材料は厳選し、よけいな物は極力入れていません。冷凍なので保存料なども使う必要がないのです。
ピッツァは北海道産小麦粉を100％使用、パスタはデュラムセモリナ粉100％で塩や卵白は入れていません。自慢は、ピッツァに使うバジルソース。バジルは鮮やかな緑色が身上ですが、変色しやすいのです。そこで弊社では変色防止剤などを使わずにバジルの色を保つ製法を開発し、国際特許を取得しました。

使用している小麦粉は北海道産100％。小麦本来の風味と香りが感じられます。
ピッツァ生地は、ふっくら歯切れのよいナポリ風。1枚1枚、手で丁寧に伸ばしています。

釜揚げしらすのジェノベーゼ  ピッツァ。塩気のあるしらすと、香り豊か＆緑鮮やかなバジルソースが食欲をそそります。
冷凍のままオーブンレンジで約8分、オーブントースターで約10分で、この焼き上がり。
チーズはとろとろ、生地はサクッ、もちもちっ。

こしがあってもちもちのパスタも、もちろん自社製。

とろけるチーズのコク旨ミートソース。冷凍のまま、電子レンジ500wで約6分、600wで約5分10秒。
名前のとおりコクたっぷりのミートソースに、ナチュラルチーズの旨みとまろやかさが加わって、贅沢な味わいです。

―安全、安心で味もいい。オンラインショップが好調だというのにも、うなずけます。

岸野　コロナ禍の影響もあって、いま冷凍食品がブームです。昨年8月にイオンさんが千葉県浦安市に「＠FROZEN（アットフローズン）」をオープンされました。約1,500品目の冷凍食品が並ぶ日本最大級の冷凍商品売り場で、弊社にもお声がけいただいて商品を販売しているのですが、全品目対象の人気ランキングで、ピッツァのマルゲリータが14位とけっこう健闘していて、大きな自信となりました。

たっぷりモッツァレラチーズのマルゲリータ。
完熟トマトのソースは生トマトのよう、バジルソースも生そのもの、たっぷりのモッツァレラチーズはとろとろっ！
さすが、1,500品目中14位に輝いただけあります。

―コロナ禍もようやく落ち着いてきたような気がします。店舗の売り上げは、いかがですか？

岸野　おかげさまで、コロナ禍前までの売り上げに戻すことができました。実は、昨年4月、東京・新宿の店舗「椿屋珈琲 新宿茶寮」の上の階が空いたこともあり、増床したんです。席数はほぼ2倍の224席になりました。アルコールを出さず喫茶1本に絞った店としては、日本最大級の規模だと思います。まだまだコロナ禍の真っ最中でしたから、本当にお客様に来ていただけるのか、不安もなくはなかったのですが、ここは攻めていこうと。そこで、これまで以上に椿屋珈琲のコンセプトを正確に表現することにしました。

椿屋珈琲のコンセプトは「ゆとりとくつろぎの60分」です。コーヒーの味がよいのは当然のことで、器にもお店の雰囲気にもこだわってきました。コロナ禍で在宅勤務の方が増え、休日の外出もまだまだ控えている方もいらっしゃるでしょう。そんな中、わざわざ椿屋珈琲に足を運んでくださる。そうしたお客様に、心からホッとしていただくために我々には何が必要か、何をすればよいのか。
「椿屋珈琲 新宿茶寮」は店舗が広くなり、多くのお客様にいらしていただけるようになったので、トイレやレジも増やしました。お客様をトイレやレジでお待たせするなんて、全然「くつろぎ」じゃないですから。

―こまやかな配慮、すばらしいですね。では最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

岸野　2018年、私は、先代である父が急逝したことで社長に就任し、社長業にも何とか慣れてきたかなと思っているところでコロナ禍に見舞われました。先にお話ししたとおり、弊社の売り上げの99％を占めるイートインが営業休止になったことも大きなダメージでしたが、精神的にも厳しい状況に置かれました。
緊急事態宣言下では、外食産業を「不要不急な物」ととらえられ、外食に出かけるのは娯楽だ、けしからん、といような風潮があったように思います。でも、今は共働きの家庭も多いですよね。外食産業は、不急ではないかもしれませんが不要ではないのではないかと思いつつも、感染状況を考えれば、やはり不要なのかもしれない……と弊社の存在意義について、悩みました。
だからこそ、営業を再開できてお客様に足を運んでいただけるようなったことが、とてもありがたく、コーヒーの味にしてもお店という空間にしても、もっともっとお客様によろこんでいただけるように努力を続けなければいけない、と思っています。
実際のところ、椿屋珈琲のコーヒーは１杯1,000円以上で、決して安くはありません。オンライショップの食事メニューにしても、もっとリーズナブルな冷凍食品はたくさんあります。そうした中、椿屋珈琲に納得していただき、満足していただくにはどうすればいいか。日々、悩みますが、それが私の仕事であり、この仕事のおもしろさでもあると思っています。

―未だ厳しい状況にある外食産業にあって、とても頼もしく、心強いお話を伺うことができました。ありがとうございました！

「選べる椿屋珈琲ドリップバッグ30個入」
価格：¥4,000（税込）～　※コーヒーの種類により価格は異なります
店名：椿屋珈琲
電話：03-5755-3533（平日10:00〜17:00）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://www.tsubakiya-online.shop/shopdetail/000000000070/ct97/page1/recommend/
オンラインショップ：https://www.tsubakiya-online.shop

「おうちでレストランセット」（2～3名様分）
価格：¥4,000（税込）
店名：椿屋珈琲
電話：03-5755-3533（平日10:00〜17:00）
定休日：インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL：https://www.tsubakiya-online.shop/shopdetail/000000000277/ct75/page1/recommend/
オンラインショップ：https://www.tsubakiya-online.shop

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＜Guest’s profile＞
岸野誠人（東和フードサービス株式会社 代表取締役社長CEO）

1977年東京都生まれ。2001年に米国留学、MBAを取得。電通アメリカ、サミー株式会社を経て、2014年にグループ会社 東和産業株式会社の社長に就任。2018年より東和フードサービス株式会社の社長も務める。

＜文・撮影／鈴木裕子　MC／鯨井綾乃　画像協力／東和フードサービス＞