一度食べ出すと、止まらなくなってしまうお菓子。「食べ過ぎた!」と反省することもありそうですが、豆を使ったお菓子であれば、罪悪感は少なくなるのでは?今回ご紹介するのは、新潟県で親しまれている「カレー豆」。カレーのシーズニングをそら豆にまぶした、スパイシーなお菓子です。おやつにはもちろん、ビールのお供などにもピッタリ。ロングセラーとなった人気商品の製造秘話について、浅草屋産業株式会社 代表取締役の磯野仁氏にお話を伺いました。
揚げたそら豆にカレー味がマッチ!止まらなくなる新潟の豆菓子
2023/04/26
浅草屋産業株式会社 代表取締役の磯野仁氏
―御社の沿革について教えてください。
磯野 弊社は、1947年に問屋業、製造業として創業しました。当初はお菓子に加え、飲料なども手がけていたと聞いています。その後、同じ長岡市内で同業だった豆菓子屋さんが商売をお辞めになるということで、そちらが作っていた、落花生に黒糖を絡めたお菓子を製造するようになりました。「南洋豆」と言うのですが、今では、弊社を代表する定番のお菓子となっています。そして現在では、今回ご紹介する「カレー豆」ほか、人気の「ミルクレーズン」をなど、様々なお菓子を作っております。
―今回ご紹介いただいたカレー豆は、どのように誕生したのですか?
磯野 ある日、地元の菓子問屋の方が訪ねてこられて、「カレー豆」を作って欲しいと。もともとカレー豆は、新潟県の彌彦神社の参道にある商店で人気を博していたものなのですが、それに惚れ込んだ地元スーパーの方が、ぜひ市場でも販売したいと訪ねていったところ、オーナーがご高齢なため、お断りされてしまったとのこと。しかし、こうした豆菓子をどうしても一般の方にも味わっていただきたいと諦めきれず、問屋さんを通して弊社に問い合わせてくださったのです。
ひと袋にたっぷり。カレーの風味が漂います。
―ちょっと甘みのあるカレー豆、クセになる味です!ところで、新潟について少し調べてみたところ、意外にもカレーの激戦区なのですね?
磯野 そうなのです。カレーライスもそうですし、新潟五大ラーメンの一つにもカレーラーメンが入っています。三条市を中心としたエリアに見られる様ですが。
―御社の豆菓子は、大阪や名古屋などでも人気だと伺いました。
磯野 昔は、問屋さんが大阪、名古屋からいろんなものを車に乗せて、ところどころで卸しながら北上して来ていたのです。そして最終的に新潟で商談をして、帰っていく。そのときに、南洋豆を持って帰って行っていただいた。それで方々に広がっていき、弊社の商品が知られるようになったのです。
南洋豆が全国的に知られるようになると、工場1つでは間に合わず、ふたつみっつと追加で建設し、それらを24時間、フル稼働させても間に合わなかったと聞いています。
―どんどん広がっていったのですね!
磯野 しかもその頃は全て手作業。当然ながら間に合わないということで、機械化を進めていったと。南洋豆は、北陸の方では未だに根強い人気があります。
そして1996年、弊社は問屋部門を同じ新潟県内の菓子問屋さんへ営業譲渡し、さらに2000年には、越後製菓株式会社のグループ傘下に入りました。実は私は、そのタイミングで越後製菓から異動してきたのです。
―そうだったのですね。それでは、カレー豆についてもう少し詳しく教えてください。
磯野 「カレー豆」の主原料であるそら豆は、現在オーストラリア産のものを使っています。最初は中国産のそら豆の剥き身、フライビーンズと言われているもので試作してみたのですが、ちょっと硬さがありまして。そこで改めて素材を探し、納得できたものがオーストラリア産のそら豆でした。
味付けで使用するシーズニングは、専門メーカーさんにお願いして作っていただいています。そのシーズニングを溶かし、温めたそら豆を加えて撹拌し、乾燥させて仕上げています。
フライしたそら豆は、口に入れるとサクッとした食感。
―製造工程の中に、手作業の部分はありますか?
磯野 オーストラリアのフライビーンズは常温で届きます。そうするとシーズニングのかかりが悪いので、まずは乾燥機に入れて40度くらいまで温めます。それを銅の鍋の中に入れてシーズニングと絡めるのですが、その時、職人が大きなしゃもじでかき混ぜます。ある程度粘性が出てきたらストップして網に乗せ、乾燥させます。
職人の手によって、丁寧に作られている。
乾燥にも人の手が必要です。平台に乗せて粗熱を取り、1時間ほど乾燥させるのですが、そのままだと塊になってしまうので、30分ほど経ったら手を使ってほぐします。そして再び網に乗せて、120度くらいの温度でまたしっかりと乾燥させる。一気に熱を加えて乾燥させるというよりは、じっくりじっくり、というイメージに近いですね。
ちなみに乾燥時間は、季節でも変わりますし、朝と昼でも異なるので、その都度調整しています。
―製造する上で、大切にされていることはありますか?
磯野 ちゃんとしたものを作る、安心して食べられるものを作る、ということですね。その上で、もちろんおいしさも追求しています。
―今後のビジョンについても聞かせてください。
磯野 この3年はコロナに振り回され、ようやく脱却できるかと思っていた矢先に、世界情勢が不安定になって、輪をかけてモノが手に入れにくくなりました。さらに円安もあり、我々のような輸入業者は大変です。早く落ち着いてくれたらいいなと思っています。
けれどその中でも、皆様のお役に立てたらと考えますね。「これじゃなきゃダメ」と、指名買いをされるお菓子にまではならなくとも、「つい食べてしまう」という、飽きられないものをしっかりと作っていけたら。
常々思っているのは、ボクシングのボディブローのように、じわじわ効いてくるお菓子作りですね。経営者としては、「それで良いのか?」と言われるかもしれませんが(笑)。
―「カレー豆」の他にも、HPには美味しそうな豆菓子がたくさんありました。
磯野 私が出向で浅草屋産業へ来た頃は、甘い系統のお菓子しかありませんでしたが、その後、わさびマヨネーズ味のお菓子が誕生しました。現在は、「ブラックペッパーピー」や、「イタリアントマトピー」「コーンポタージュピー」といった商品もあるのですよ。
さらに最近は、「ミルクレーズン」の売れ行きも好評です。大変な世の中なので、みなさん甘いものを欲していらっしゃるのではないでしょうか(笑)。
―子どもからお年を召した方にまで愛されている御社のお菓子。親しみのある味わいの商品が多いのも人気の秘密なのでしょうね。お話をありがとうございました!
「新潟銘菓 カレー豆」
価格:¥432(税込)
店名:浅草屋産業株式会社
電話:0258-22-3555(9:00〜17:00 平日)
定休日:土、日曜 インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.asakusaya.biz/item/046/
オンラインショップ:https://www.asakusaya.biz
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
磯野仁(浅草屋産業株式会社 代表取締役)
1964年新潟県生まれ。1984年越後製菓株式会社に入社し、各部署にて勤務。2000年3月より、関連会社の浅草屋産業株式会社へ出向。2007年に浅草屋産業株式会社の代表取締役に就任。
<文・撮影/鹿田吏子 MC/津田菜波 画像協力/浅草屋産業>