今回、編集長アッキーこと坂口明子が気になったのは、「タンザニア チンパンジー ピーベリー」というコーヒー豆。コーヒーなのにチンパンジー?それって、どういうこと?
アッキーの頭の中の「?」を解消すべく取材陣が、このコーヒー豆を取り扱っている大阪の老舗焙煎コーヒー販売会社、岡本珈琲株式会社の岡本一芳代表取締役社長に、お話を伺いました。
美味しく飲んで、野生チンパンジー保護に貢献!岡本珈琲の「タンザニア チンパンジー ピーベリー 200」
2023/05/30
岡本珈琲株式会社 代表取締役社長 岡本一芳氏
-コーヒー豆の名前に「チンパンジー」とありますが、チンパンジーに関係があるのですか?
岡本 この豆の産地は、インド洋に面したアフリカ東部の国、昔から「キリマンジャロ」というコーヒーでも有名なタンザニアのキゴマという場所。ここ数年、高品質のコーヒー豆が穫れる地域として注目されていますが、チンパンジーが生息する地域でもあるんです。
チンパンジーは人間に最も近い動物と言われますが、森林伐採や土地開発によって住む場所を失ったり、密猟などによって絶滅の危機に瀕しています。そこで、霊長類学者で野生動物保護活動家のジェーン・グドール博士は研究所(ジェーン・グドール・インスティテュート=JGI)を設立。キゴマが誇るコーヒーを通してチンパンジーの保護活動を行うプロジェクトを立ち上げました。ですから、このコーヒーの売り上げの一部はJGIを通じて、チンパンジーほか動物保護活動の活動費に充てられます。
キゴマの森林に棲む、チンパンジー。
チンパンジーと対話している(?)ジェーン・グドール博士。
両者の間に信頼関係が築かれていることが見て取れます。
「タンザニア チンパンジー ピーベリー 200」。豆が200g入っています。
-コーヒーを購入し、飲むことでチンパンジーを始め野生動物保護に貢献できるなんて、素晴らしいですね。
岡本 キゴマ産のコーヒー豆は、コクがありつつも、グレープフルーツやりんごの紅玉を思わせる爽やかな酸味もあるので、飲み飽きることがありません。
この味を豆から最大限引き出す決め手は、たっぷりのきれいな水で豆を洗うこと。キゴマでは、チンパンジーが生息している深い森が水分をしっかり蓄えてくれ、それがタンガニーカ湖に貯められます。つまり、キゴマ周辺はきれいな水が豊富で、それがコーヒー豆のおいしさにつながっているのです。
-こちらのコーヒー豆に出会ったきっかけは?
岡本 先代である私の父は動物、とくにアフリカの野生動物が好きで、私が小学生の時に数か月間、アフリカに滞在していたんです。そこでゴリラの保護活動が行われていることを知り、活動をわずかながら支援していたようです。その影響もあって私たち家族はみな動物好きで、私も以前から動物保護や環境保護に関心がありました。そうしたなか、仕入先が扱っているコーヒー豆の中にこの「タンザニア チンパンジー ピーベリー」を見つけ、チンパンジーの保護活動につながると知って、すぐに取り扱うことにしたのです。
通常、豆を仕入れる際には、まず味や香りを確かめるのですが、この豆に関しては話を聞いて即決でした(笑)。実際に味わって確かめてみると、とてもいい味。お客様に自信を持っておすすめしています。
「タンザニア チンパンジー ピーベリー」。本来、コーヒー豆は1つの実の中に2粒入っていますが、
まれに1粒しか入っていないことがあります。
それがえんどう豆のような形をしていることから「ピーベリー」と呼ばれています。
「ピーベリー」は稀少な上に、1粒ずつ目視で選別する必要が。
現地の農家さんの丁寧な作業のおかげで、おいしいコーヒー豆ができるのです。
袋の封を開けた途端、すっきりとした、それでいて甘やかな香りが鼻を抜けていきます。
酸味、甘み、苦みのバランスがとてもいい、焙煎具合。
しっかりしたコクと甘みながら、スッキリした味わい。和菓子のあんことの相性もよさそうです。
-こちらのコーヒーは、どのような時、どのようなシーンで飲むのがおすすめですか?
岡本 コーヒーは嗜好品ですので、お好きな時にお好きなように楽しんでいただくのが一番だと思っていますが、その時にちょっと、動物保護や環境保護のことや保護が必要となった原因などについて考えてみていただけたらうれしいです。
弊社ではほかにも、売り上げの一部をグアテマラの野生ピューマの保護活動をしている「パンテラ・グアテマラ」に寄付する「グアテマラ カフェ ピューマ」という豆や、地球にも人にもやさしいオーガニックの豆も扱っています。
-野生動物保護や環境保護は、SDGsの目標15の「陸の豊かさを守ろう」につながります。SDGsは2015年に国連総会で採択された国際目標ですが、御社ではずっと以前からその意識をお持ちなのですね。
岡本 単に、代々動物好きなだけです(笑)。SDGsには、当社もですが、コーヒー組合全体でも前向きに取り組んでいます。私はSDGsと意識するより、普段からの行動がこのような動物保護、環境保全につながればいいのでは? と思っているんです。なので、まず先に「動物が好き! だから守りたい」になるのかな? そして、お客様にコーヒーをおいしく、気持ちよく味わっていただくためにも、少しでも体によい物をお届けしたい。そのためにも地球や動物たちにやさしい物を扱うように心がけています。
弊社は、私の祖父である岡本芳助が1946年に「岡本商店」として創業しました。以来、会社としてずっと大切にし続けているのが「親切で正直」ということです。コーヒーは”生き物”ですし、お客様の口に入るものですから、かっこよさや効率よりも「誠実さこそが何より大切」と考えているからです。
1946年の創業当時。右から4番目が創業者、岡本芳助。
当時の配達車両。岡本珈琲はいち早く自動車を導入し、配達していました。
-商品づくりに際して心がけていらっしゃることは?
岡本 弊社では、中南米、アフリカ、東南アジアなどから生豆を安定した品質の商品をお客様に提供できるよう、長年信頼のある業者様数社から仕入れたり、最近では特殊な豆、貴重な豆は直接仕入れたり、仕入も時代に合わせて工夫してます。
厳選したコーヒー豆のおいしさを引き出す、一番の決め手は焙煎です。コーヒー豆は生鮮商品と同じで、煎り上がった時から劣化が始まります。したがって、時間が経つほどに品質が落ちてしまうのです。でも、自社焙煎なら、焙煎後の鮮度の高い状態でコーヒー豆をお客様のもとにお届けできます。それが弊社の強みであり、誇りでもあると思っています。
焙煎方法としては、昔から変わらず「アフターミックス」。コーヒー豆単品をそれぞれ何種類かの焙煎度合いで煎り、それらをブレンドします。手間も時間もかかりますが、だからこそ良質なコーヒー豆ができると信じているのです。
-今後については、どのようにお考えですか?
岡本 弊社は派手なことができず、今日まで地道にコツコツ実績を重ねてきました。合理化も図らず、いまの時代に合っていないのかもしれませんが、「親切で正直」というテーマのもと、省いてはいけないこと、変えてはいけないことは頑固なまでに貫き通したいと思っています。
ただ、変えないといけないこともあります。人の嗜好は時代とともに変わるものですし、季節によっても舌の感覚が微妙に変わったりします。コーヒー豆の状態もその年、その年で違います。そうした中、「岡本の味」を守るためには、たとえば焙煎の具合やブレンド具合を変えていく必要があります。そこは臨機応変に対応していかなければなりません。
近年人気の、「タンザニア チンパンジー ピーベリー」のようなスペシャルティコーヒーは、絶えず新しい豆が出てくるので、そのつど吟味して、自分が飲んで本当においしいと思う物を取り扱い、お客様にお届けしたいと思っています。
そして、少しでも体にいい物を積極的に取り入れていくつもりです。商品としてはすでにいくつかあり、たとえば、昨年から製造・販売を始めた物にカフェオレベースがあります。牛乳で割って飲むタイプのものですが、甘みとして、血糖上昇のゆるやかなアガベシロップを使っています。テキーラの原料でもあるブルーアガベという植物から作られている物で、日本ではまだあまり知られていないようですが、欧米では健康や自然、環境保護に関心の高い人たちの間では人気です。
また、知人が丹波で黒豆(丹波黒)を栽培している関係で、丹波黒をていねいに焙煎し、コーヒー豆とバランスよくブレンドした「黒豆珈琲」という商品も作りました。黒豆はタンパク質が豊富、さらに女性ホルモンと同じような働きをする大豆イソフラボンがたっぷり含まれています。黒豆の香ばしい香りとコーヒーの深い味わいの両方を楽しめる、ヘルシーな商品です。
というように、少しでもお客様の健康に貢献できるような商品を開発して、岡本珈琲としてできることを最大限、やっていきたいと考えています。
-こちらのコーヒーにとの出会いは、あらためて野生動物や環境の問題に思いを寄せるきっかけとなりました。素敵なお話を、どうもありがとうございました!
「タンザニア チンパンジー ピーベリー 200」200g
価格:¥1,144 (税込)
店名:岡本珈琲
電話:06-6312-9355(9:00~17:00 )
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://okc.jp/myshop/products/detail.php?product_id=154
オンラインショップ:http://okc.jp
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
岡本一芳(岡本珈琲株式会社 代表取締役社長)
1967年、大阪生まれ。大学卒業後は東京の食品関連の商社に就職が決まっていたが、父親である先代の急逝により急遽、大阪へ戻り、母親とともに岡本珈琲株式会社に入社。二人三脚で会社を運営し、2006年同社代表取締役社長に就任。いまだに会社にいるよりはお客様の所や営業に行くのが好きで、そこで出た問題や相談事を改善したり、お客様の声に応えられるようなコーヒーの味を作ったり、企画を考えたりすることが好き。
<文・撮影/鈴木裕子 MC/鯨井綾乃 画像協力/岡本珈琲>