岡山県はその温暖な気候から、魚介や果物といった高級食材の産地として定評があります。今回は、そんな豊かな食材を贈答品として製造販売する老舗があると聞き、編集長アッキーと取材班が向かいました。
商品デザインやPR活動に従事されている、専務取締役 中塚英子氏と製造や百貨店対応に従事されている大橋典子氏にお話をお伺いします。
「贈る人の気持ちを具現化する」をモットーに110年。岡山の海と山の幸を伝え続ける、信頼の老舗「志ほや」のみそ漬け
2023/06/02
株式会社志ほや 専務取締役 中塚英子氏
―岡山の贈答品といえば「志ほや」というほどの老舗です。大正から続く歴史を教えてください。
中塚 大正よりも実は長い話になるのですが、家業として明治時代には製塩業を営んでおりました。1913年(大正2年)に、倉敷市にて、私の曽祖父にあたる中塚晋平が、塩むし桜鯛の製造販売を始め、「志ほや」を個人創業いたしました。屋号は、晋平の実兄である俳人中塚一碧楼が家業製塩業(=塩屋)にちなんだのと、「志を保つ」の意味をかけてつけたと聞いております。
ところが第二次世界大戦が勃発しまして、1939年(昭和14年)には経済統制令により、営業を一部断念することになりました。1949年(昭和24年)に復業することができ、1950年(昭和25年)には岡山市幸町に「志ほや」岡山支店を開設し、晋平の長男中塚洸太郎が2代目として25歳で支店長となりました。
この洸太郎が事業の発展に力を注いでくれまして、今の「志ほや」があるのは、洸太郎のおかげだろうと思っております。当時から、さわらのみそ漬けを扱っていたのですが、これは販売シーズンが夏に限られてしまうということで、他の季節にも販売できる高級果物の販売に着手したり、積極的に多品種の製造販売を行ったりしました。
―お魚と果物のラインナップになったのですね?
中塚 はい。もともとの魚介に加え、洸太郎が農家に足を運びまして、品質を見定めて契約を取り付け、第2の柱となる白桃やブドウを取り扱い始めました。その後、戦後の混乱から軌道に乗り始め、1973年(昭和48年)の11月に本社ビルを新築いたしました。
また、インターネット販売も開始したり、取り扱いの商品のみそ漬けの種類も増やしたりして、今の高級食品製造販売会社としての地盤を作ったということになります。
2大看板商品の「白桃」(上)と「塩むし桜鯛」(下)。
白桃は岡山県の名産品。
―創業以来のモットーがあると伺っています。
中塚 これは4代目社長・中塚俊司の言葉なのですけれども、「贈答というのは、贈る人と受け取る人の仲を取り持つために、贈る人の気持ちを具現化したものだ」という風に思っております。
弊社は、そうした贈る人と贈られる人の仲立ちをする立場ですから、気持ちをそのまま送るために、よくご相談に応じて、責任を持って先方へお届けしなければならない。それが、ずっと変わらない思いです。
―最初から「贈答」に特化していらっしゃったのですね?
中塚 その通りでして、岡山県というのが贈答に通じているのかな、と思います。温暖な土地柄、美味しい果物が採れる県で、丁寧な生産方法をとる農家も多いところです。
桃にしても、一つ一つ袋がけをして白いものを作っています。見た目の美しさが自慢です。よく「食べ頃はいつですか?」と聞かれてしまうのですが、白いまま、そのままで熟しているんです。それが珍しいということで、皆様に喜んでいただいております。
また、7〜9月まで桃を扱うのですが、時期ごとに品種が変わっていくので、色々と贈るという方もいらっしゃいます。
今では、夏にいただくご注文の8割がフルーツとなっています。
写真は、「清水白桃」。岡山でも最高級と言われる品種で、この白い見た目と甘さ、なめらかな食感が人気。
このほかに、水蜜桃、岡山白桃、川中島白桃、白皇、黄金桃など、品種も豊富にある。
―岡山県のお土産品として数々の賞を受賞されています。その理由は?
中塚・大橋 受賞できたのは、岡山では古くからやっていて、当時はライバルが少なかったというのはあると思いますし、お魚とフルーツの両方を扱っているのが珍しい、ともおっしゃっていただきます。両方のノウハウがあるというのもメリットかと思います。
店頭で一番よく言われるのは、「志ほやさんだから大丈夫よね」「みそ漬は、いい切り身入れてくれるわよね」ということ。「いいものを選んで入れますね」と言うと、安心して帰っていかれます。再来店いただいて、「先方にすごく喜んでいただいた」何か贈るとなると、「志ほやしかないよね」とお伝えていただくこともしばしばです。
お客様のお話をお伺いして、希望に叶うようにご提案する姿勢がご評価いただけているのだと思います。
岡山の美味しいもの2つ、お魚とフルーツを、お土産としてどう認知を広げるか。そういうところから商品作りを始めたので、何かしら岡山に縁のある方が故郷のものを送りたいということで、選んでいただけております。
―今回は人気商品「桜鯛・さわらのみそ漬け」をご紹介いただきました。特長を教えてください。
中塚・大橋 「桜鯛とさわらのみそ漬」は、人気商品2種の詰め合わせです。なんといっても、一番人気はさわらです。身が柔らかく、みそに合います。桜鯛は、春の今と秋が旬。色がよく、きれいな身だけを選んで入れています。
とにかく状態が最高なものを樽に入れてお届けする。それが私たちのこだわりどころです。ただただ喜んでいただけたら、という思いです。
上がさわら、下が鯛のみそ漬け。
厚みのある立派な切り身はインパクト大。
―樽に入っているのも趣があります。
中塚・大橋 昔は木の樽でしたが、今はプラスチックになりました。丸い形が、魚の切り身の形に沿うので並べやすく、見た目よく入れることができます。
昔から、グラムの設定がきちっとありまして、万全の状態のものを入れるのが伝統です。全体にみそが滞りなくいくように気をつけています。
みそは、白味噌で地元の味噌蔵から長年仕入れております。このみその味わいがみそ漬の決め手になっており、「志ほやの味」になります。
浸かり具合は、薄味がお好みでしたら2日くらいで召し上がってください。おみそにしっかり浸かった濃い味がお好きなら、5日くらい経ってからいただいても美味しいかと思います。
蓋を開けると、丸い樽の中にみそがたっぷりと詰まっていて、見た目にも贅沢。
―さわらと鯛、それぞれの特徴を教えてください。
大橋 さわらは本当にみそとよく合いますし、ふっくらと柔らかくて大変人気があります。鯛は、みそに漬けるとどうしても身がしまってしまいます。なので、少し固くはなるのですが、みそとの相性は抜群です。淡白なお魚にみその味が入り込んでいい感じになり、より一層美味しくなります。どちらも味わえるセットはおすすめです。
―切り身が一つ一つガーゼに包んであって、調理も手軽ですね?
中塚・大橋 みそがついていると焦げやすくなります。志ほやでは切り身をガーゼに包むことで、切り身にみそがつきません。みそを拭き取る手間もなく、手もあまり汚さずにすむという利点もあります。
お客様のお声で、以前は「表面が焦げてしまって中まで上手く焼けない」というご意見をうかがっておりました。焦げずに綺麗に焼ける方法 を検討し、お届け先様が安心しておいしくいただけるように、お召し上がり方のしおりも、その都度改良しております。 魚焼きグリルだと火が強くて焦げやすいため、アルミホイルの上にのせてオーブントースターで焼くことをお召し上がり方で PRしたところ、焦げるというお声はなくなりました。
お魚はガーゼに包まれているので、みそを拭き取る手間がなく、すぐに焼くことができる。
―オーブントースターで焼けるのは手軽で嬉しいです。
中塚・大橋 魚焼きグリルだと片付けも大変ですよね?アルミホイルの上でオーブントースターで焼く方法だと、焦げすぎたりせずに中までふっくらと焼きあげることができる上、片付けも楽です。
オーブントースターのほか、オーブンレンジのスチーム焼き機能などを使っていただいても簡単に美味しく焼けるかと思います。
アルミホイルに包んでオーブントースターへ。
アルミホイルをくしゃくしゃにするのがポイント。
オーブントースターで約20分ほど焼く。
焦げそうなら、上にアルミホイルをかぶせると◎。
―焼くだけでご馳走になるとは思いますが、おすすめの食べ方はありますか?
大橋 とにかく白いご飯に合います。夕飯の一品にしていただくのはもちろん、お弁当に入れるとご飯がすすみますよ。
どうしてもお肉の献立が多くなるとは思うのですが、時にはお魚を入れていただけたらと思います。本当にご飯が美味しくいただけますから。
みそ漬けの切り身は、骨も極力少なくするように処理しています。お子さんでも食べやすいかと思います。
トースターでふんわりと焼き上がったみそ漬け。
ここに青菜1品と味噌汁をつけるだけでも、しみじみ美味しい献立に。
みその健康効果も期待できる。
―ほかにもおすすめ商品があれば教えてください。
中塚 みそ漬けについては、焼いて冷凍にしたものを電子レンジで温めていただく商品を開発しました。お魚を焼くのがどうしても苦手という方、お料理が苦手な方にも手軽にお使いいただけるかと思います。こちらは冷めても固くならないのが特長です。
「おさかなのみそ漬 焼」は、冷凍真空パックの新商品。
レンチンするだけでふっくら美味しいお魚が楽しめる。
看板商品は、やはり「塩むし桜鯛」です。これは鯛を藁の菰に包んで塩をのせ100℃くらいの沸騰した塩水をかけながら釡で蒸し上げます。藁の菰に包むのは、塩水の熱湯で身がバラバラにならないようにする先人の知恵ですね。こちらは、独特の鯛の皮の赤色が美しく残るので、お祝いや年末に必ずご注文いただくという方も多い商品です。
農家から集めた藁を編んでつくった菰(こも)に桜鯛を包み込む。
「ままかりの酢漬け」も郷土の味です。ままかり(サッパ)は年々獲れなくなっている魚なので、守っていきたい味と思っています。生姜と共に酢漬けにするのが岡山らしい名産品です。
「ままかりの酢漬け」。
ごはん(まま)を借りたくなるほど美味しいと言われる郷土食。
―最後に、これからの展望をお聞かせいただけますか?
中塚 時代が変わっていく中、贈り物の大切さを伝えていくのが我々の使命だと感じています。そのためのPRは、インスタグラムなどSNSも含めて、しっかり取り組んでいきたいです。
「志ほや」のお客様は、岡山の方が一番多いというわけではないんです。岡山ゆかりの人から贈られて、気に入っていただいた方がまた別の方に贈って、ということがつながって、今では全国に広がっていっています。こういった贈り物の良い循環を、大切に守っていきたいですね。
―郷土の名品に触れることもできる贈り物文化。改めて見直したいと感じました。本日はありがとうございました。
「桜鯛・さわらのみそ漬 [樽詰] 」
(4切【鯛2切、さわら2切】)
価格:¥6,912(税込)
店名:志ほやオンラインショップ
電話:086-803-3411(平日9:00〜17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.shihoya.shop/shopdetail/000000000239/ct41/page1/recommend/
オンラインショップ:https://www.shihoya.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
中塚英子(株式会社志ほや 専務取締役)
岡山県生まれ。神戸松蔭女子学院大学卒業後、曾祖父の代から続く魚介のみそ漬や果物を贈答用に製造・販売する高級進物店に、2005年に父が代表取締役になった際に入社と同時に取締役に就任。2009年専務取締役に就任。年3回発送するカタログデザインやパッケージデザイン等広報活動に従事。
大橋典子(株式会社志ほや 主任)
製造と百貨店対応に従事。
<撮影・文/尾崎真佐子 MC/和田英利 画像協力/志ほや>