金沢発、ユニークなネーミングのスイーツがあると聞きつけました。早速取り寄せてみれば、フルーツそのものを贅沢に味わうことのできるゴージャスなデザートでした。今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になった株式会社サカイダフルーツ 常務取締役の小池田一孟氏に、取材陣が伺いました。
八百屋ならでの贅沢な果物使い「ずるいゼリー」「能登柿之助 バターの乱」
2023/08/28
株式会社サカイダフルーツ 常務取締役の小池田一孟氏
―御社の成り立ちを教えてください。
小池田 1946年に、石川県金沢市・近江町市場のそばで、みかん箱やりんご箱を並べて果物を売るところからのスタートだったと聞いています。創業者の境田さんが始めた果物屋は、1953年に金沢の旧丸越百貨店に出店。デパ地下の百貨店として商売を大きくしました。その後、1989年には高齢の境田さんの後を引き継ぐ形で、父である小池田均が代表となり、経営を引き継ぎました。
父は、青果販売経験のない状態でのスタートでしたが、早々に野菜ソムリエの資格を取ったりメディアへの露出を増やしたりと、営業手腕や先見の明があったようで、着実に会社を大きくしました。現在は、青果の卸売業と、デパ地下の八百屋として一般向けにフルーツや加工品の販売業を中心に行っています。
青果の仲卸とデパ地下での小売りが主な業務。
―小池田常務のご入社は?
小池田 大学院を卒業後、PR会社に就職しましたが、27歳でサカイダフルーツに入社しました。入社して驚いたのは、難しい商売であるという事実です。生鮮品なので在庫の日数は限られますし、学校給食や病院食用に大量な野菜を運び込む、割と重労働なのに利幅が薄い。業界全体がそうなのかもしれませんが、なんとかならないかと考え始めました。
―どのような策を?
小池田 いろいろトライアルをした中に、ECサイトの立ち上げがあります。地元のおいしい野菜や果物の販売に加え、自社製造デザートの通販を思い立ちました。初めはフルーツサンドに力を入れましたが、自分たちにしかできない、半生のお菓子ができないかと、もう一歩踏み込んで企画することにしたのです。
―生まれたのが「ずるいゼリー」?
小池田 果物とゼリーの組み合わせはお中元の定番商品ですよね。しかし、その多くは加熱したフルーツをゼリー液と合わせたコンポートゼリーみたいなもの。そこで、フレッシュなフルーツを楽しむためのゼリーを作ろうということになりました。
しかし、実際はとても難しかった……。酵素でゼリー液が固まらないフルーツがある、時間がたつと離水(水分が出ること)しやすい、カットフルーツは劣化が激しいなど、課題は山積みでした。
まずは離水しないゼリー液を完成。次は容器です。フルーツのしずる感をたっぷり感じられるもので、「映え」も少し意識して。あとは、旬のおいしい果物を贅沢に入れて、ゼリー液はつなぎ程度に入れて固めて完成です。ゼリー液のおかげで表面が空気に触れないので、フルーツの変色も防げます。
ゼリーは、主役のフルーツのおいしさを引き立てつつ、フルーツの変色も防ぐ役割も。
―「ずるい」のネーミングは?
小池田 例えばお菓子屋さんがフルーツゼリーを作るとなると、原価率が最も高いのが果物。うちは八百屋ですから、より新鮮な果物を安く仕入れることができる上に、選択肢の幅も広いあたり、ずるいかな、と……。
毎月フルーツが替わり、数量限定、受注販売、賞味期限は2日と、皆さんの想像されるフルーツゼリーとは全く違うものだと思います。
例えば8月の一例、「ハウスミカン」なら小ぶりが3個、
「シャインマスカット」は大粒がゴロゴロ、
「輝々桃」は丸ごと1個とふんだんに使われている。
蓋を開けると、ゼリー液の中からフレッシュフルーツがあふれんばかりに顔を出す。
型抜きも可能ではあるが、ゼリー液がつなぎ程度なので崩れやすい。
主役であるフルーツのおいしさがそのまま味わえる上、
とぅるっと感が絶妙なゼリーのおかげで
カットフルーツとは一線を画し、デザートとして完成。
―フルーツのセレクト方法は?
小池田 ゼリーにしたときにおいしいかどうかはもちろん、自分が好きでおすすめしたいもの、トレンドも多少意識はしますが、なによりも、八百屋として、今、本当においしい果物を届けたいという気持ちで選んでいます。
3個で3,240円(税込)と、決して安くはありませんが、スーパーなどに並ぶ果物の価格を考えていただくと、入っているもののクオリティや量に納得していただけるのではないでしょうか。
―「能登柿之介 バターの乱」についてもお聞かせください。
小池田 金沢駅構内に、土産物店「石川百右衛門(いしかわひゃくえもん)」を出すことになり、青果店らしい商品を作っていこうという流れで誕生しました。
地元で「ころ柿」と呼ぶ干し柿は、硬すぎず柔らかすぎず、糖度が高くてとてもおいしいのです。以前、関西で「加賀能登展」に出店した際、隣のブースでころ柿が飛ぶように売れていて、その人気ぶりに驚いたことを思い出し、商品化を検討しました。
能登宝達山系でのみ栽培されている「最勝柿」を手間暇かけて仕上げられたころ柿を、八百屋ならではの目利きでセレクト。ころ柿は、通常であれば冬季期間中の限定品ですが、冷凍加工することにより、夏季期間も販売できる商品へと作りかえました。柿だけの糖分とは思えないほど濃厚な甘みですよ。塩気のあるバターをはさむことで、コクとまろやかさが加わり、より味わい深いものになりました。
表面の白い粉は、柿からにじみ出る糖が結晶化したもので、
糖度が高い証。バターは国内外多くを試し、最もマッチする有塩バターに決定。
―楽しみ方を教えてください。
小池田 とても濃厚なので、一口大にカットしてください。余計な加工を施してなく、種があることもあるのでご注意を。濃い目に入れた緑茶が合うと思います。
なんとも贅沢なお茶請け。
ドライフルーツなので、ナッツを合わせてワインのおともにも。
―石川百右衛門シリーズはどのようなラインナップですか?
小池田 五郎島さつまいもや加賀れんこんなど、地元の野菜を使ったチップスが人気ですね。今後も種類を増やしていく予定です。
―今後の展望をもう少し。
小池田 オリジナル商品をどんどん展開していくつもりです。青果店ならではの商品力、本当においしいと思うもの、面白いもの……自分たちにしかできないものにこだわり、売り方にも工夫をしていきたいと思っています。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「ずるいゼリー」
価格:¥3,240(税込)
(3種セット・各1個・冷蔵/6個セットは¥5,940、9個セットは¥8,100)
店名:フルーツギフト・加賀野菜・ブランド野菜の通販 サカイダフルーツ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://sakaidafruits.com/jelly/
オンラインショップ:https://sakaidafruits.com/
「能登柿之助 バターの乱」
価格:¥4,320(税込)
(5個入り・冷凍/3個入りは¥2,592)
店名:フルーツギフト・加賀野菜・ブランド野菜の通販 サカイダフルーツ
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://sakaidafruits.com/hyakuemon/korogaki02/
オンラインショップ:https://sakaidafruits.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
小池田一孟氏(株式会社サカイダフルーツ 常務取締役)
1989年石川県生まれ。早稲田大学を卒業後、PR会社に就職。
その後、中央卸売市場にて青果仲卸会社での修業期間を経て、株式会社サカイダフルーツに入社。
2022年現職就任。
<取材・文・撮影/植松由紀子 画像協力/サカイダフルーツ>