特別な瞬間にふさわしい日本酒はないかと探し求めていた編集長・アッキー。このたび出合ったのは、江戸時代から続く水戸の老舗酒造メーカー・明利酒類株式会社が造る「雨下-uka-」。上質な原料と手間ひまかけた製法でつくられたプレミアムな日本酒です。一切雑味のないクリアな味わいと凝縮された旨味、繊細でシルキーな飲み口が楽しめるこの商品の誕生秘話や事業にかける想いを常務取締役である加藤喬大氏に伺いました。
年間販売本数わずか1,000本!“本物であること”にこだわったプレミアムな日本酒「雨下-uka-」
2023/08/29
明利酒類株式会社 常務取締役の加藤喬大氏
―御社の歴史を教えてください。
加藤 江戸時代末期の安政年間に、私の曾祖父にあたる初代・加藤高藏が加藤酒造店を創業したのがはじまりです。かつて新潟にいた高藏は、最高の酒造りをしたいと思い立ち全国を放浪。その末に辿り着いたのが水戸でした。「水」という字が入っていることからもわかるように水戸は豊富な水を有する土地です。水質も酒造りに適しているため、この地を選んだのだと思います。
その後、明利酒類株式会社を創立したのは1950年。当時、全国各地の酒蔵では腐造をしてしまうこともあったと聞きます。腐造とは仕込み中のお酒に火落菌が繁殖し、酒質に変調をきたしてしまうことで、そうなってしまうとせっかく造ったお酒も廃棄せざるを得ません。そこで考えたのが、質の高い酵母やアルコールを提供することで全国の酒蔵や酒造会社のお役に立てるのではないかということ。お酒を造ってお客さまにお届けするBtoCのビジネスだけではなく、酒造文化を下支えするBtoBの事業もしていこうというのが創立の原点です。
150年以上の歴史を誇る老舗酒造メーカー「明利酒類株式会社」。
日本酒のほか梅酒や焼酎、ジン、ウォッカなど、さまざまな酒類を手がけている。
―加藤常務はご入社以来、どんな事業を手がけてこられたのでしょうか?
加藤 もともと東京の広告代理店で働いていたのですが、2020年のコロナ禍に水戸へ戻り、家業に入りました。2020年4月時点で、我々の本業であるお酒の売り上げは半減。非常に大きなダメージを受けている中で、経営の舵切りをすることになりました。
当時、消毒液の需要が爆発的に高まり供給が追いつかない事態となっていましたが、我々のもとには酒造会社に販売するアルコールがある。それを転用して、指定医薬部外品として消毒液を作れる工場を立ち上げました。明利酒類という名は「明るい利益を追求する」という意味が込められています。新たな事業で危機的な状況を乗り越えるとともに、人々の生活に貢献することは、社名の由来に通じる部分があるのではないかと思っています。
2022年には、60年ぶりにウイスキー事業を再開。
焼酎やジンで培った蒸留の技術をいかした
オリジナリティあふれるウイスキー造りを予定している。
―史上最高峰の日本酒としてリリースされた「雨下-uka-」。誕生までの経緯は?
加藤 消毒液の製造・販売でコロナ禍を乗り切り、ようやく本業に力を入れる体力と時間ができてきた頃、最初に取り組みはじめたのがプレミアム日本酒「雨下-uka-」でした。日本酒は主に原料——つまりお米の種類や精米歩合によってある程度価格が決まってくるような風習があります。でも我々は、職人の仕事が付加価値として認めてもらえる日本酒をつくりたい。日本酒の価値を高め、ワインやシャンパンのように世界に通じるものにしたい。そんな想いから、このプロジェクトを立ち上げました。
2023年4月の販売開始から1週間でファーストロットは完売!
洋梨とリンゴのアロマが香り立つ「雨下-uka-」。
―プロジェクトの発足から完成まで、どれくらいの年月がかかったのでしょうか?
加藤 職人たちとコミュニケーションを重ね、3年かけて完成させました。大胆な価格設定ですけれど、「絶対に価値があると思う」という職人の言葉も後押しとなったことと、原料から製法までとことん突き詰めたという自負もあって、販売に踏み切ることができました。手間と効率を度外視した製法ゆえに生産量に限りがあり、国内での一般販売本数は年間1,000本。世界でも2,000本とさせていただいています。
目指したのは「雑味が一切ない、最高峰の日本酒」。
効率よりも“本物であること”にこだわった逸品は、
自分へのご褒美や大切な人へのギフトにも最適。
―どのような製法で造られているのですか?
加藤 酒造りでは上槽という工程で醪(もろみ)に圧力をかけて搾り、短時間で酒粕と清酒にわけるのが一般的です。効率的な方法ではあるのですが、負荷がかかってしまうため、どうしてもお酒の中に雑味が含まれてしまうこともあります。そこで考案したのが、布から一滴一滴、自然の重力で雫を落としていく「雫落とし製法」。2ヵ月かけて蔵人と真剣に仕込みますが、醪から落ちる雫は基本的には半分以下になります。さらにそれをテイスティングし、クリアで凝縮された旨味を感じるお酒だけを瓶詰めしています。
雑味のない雫を落とせる濾布を6種のサンプルから厳選。
できるだけ空気に触れさせずに雫を集められるよう、タンクも独自に開発した。
―原料へのこだわりをお聞かせください。
加藤 酵母は自社で開発した「M310酵母」を使用しています。当社では酵母を時代にあわせてより良いものにしていくため毎年選別試験を実施しているんです。20個ほどの試験管で小さく酒造りをして、優れた酵母だけをピックアップするというのを毎年繰り返しています。そうして受け継いできた酵母を全国の酒蔵にも提供しているのですが、なかでも自信のあるものがM310酵母。この酵母を使った日本酒がコンテストで金賞を取ることも多く、別名「金賞酵母」と呼んでいただいています。
酒米は酵母との相性を考えて選定した兵庫県産山田錦の特等米だけを使用。精米歩合は非公開ですが、明利酒類史上最も磨き込み、中心部のみを使って米の旨味を最大限に引き出しています。
雫を表現したボトルは一つひとつ、職人が丁寧に作り上げたもの。
木のぬくもりを大切に手作りされた木箱に入れて届けてくれる。
―おすすめの飲み方はありますか?
加藤 冷やして飲んでいただくのが一番ですね。フレッシュな味わいをそのままお届けするため、我々も温度にはかなり気をつかっています。落ちてきた雫は即座に瓶詰めし、特別に整備したマイナス5℃の冷凍庫で保管。お客様のお手元へもクール便で発送いたします。ですので到着後は、できるだけ早めに木箱から取り出し、冷蔵庫の奥の方で保管していただきたいのです。冷蔵庫から出してすぐ、10℃前後で味わっていただくのがベストかと思います。
酒器は香りを最大限に感じられるワイングラスがおすすめ。
温度が上昇するにつれ移り変わる味や香りも楽しんで。
―最後に、今後の展望についてお聞かせください。
加藤 やっぱり職人の手間と苦労が詰まった日本酒ですので、それを国内のみならず、世界の人々に語っていきたいですね。ディストリビューターや流通会社に向けて「雨下-uka-」の価値を伝える機会をどんどん設け、日本酒の価値や奥深さも発信していければと思っています。
―本日は素晴らしいお話をありがとうございました!
最高級日本酒「雨下-uka-」(600ml)
価格:¥33,000(税込)
店名:明利酒類株式会社
電話:029-247-6111
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://uka-premium.meirishurui.com/items/72441882
オンラインショップ:https://uka-premium.meirishurui.com/p/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
加藤喬大(明利酒類株式会社 常務取締役)
2014年、慶応義塾大学卒業後、株式会社博報堂に入社。消費財メーカーのマーケティング戦略立案と実施を担い、その後スマートシティなどの新規事業の責任者を経験。2020年、コロナ禍をきっかけに江戸時代から続く家業に戻り、売上7割減の危機的状況の中、酒のアルコールを活用した医薬部外品事業を着想。工場設立、補助金獲得、免許申請、新商品開発、販路開拓、すべての工程を一から立ち上げた。現在はプレミアム日本酒、クラフトウイスキー等、酒造りにおける新規事業に挑戦している。
<文/野村枝里奈 MC/吉田茉代 画像協力/明利酒類>