どんどん高騰する食材の中でも、お肉、特に焼き肉に使うような牛肉は価格がうなぎ登りです。そんな中で、独自の流通を確立し、フードロスをなくしながら、生産者と消費者をつなぐ食肉メーカーがあることを、編集長アッキーが発見。名古屋の「徳川ホルモンセンター」を運営する、株式会社フードエイド 代表取締役・俵幸嗣氏に取材しました。
価格高騰の中、美味しいお肉を安価に!「徳川ホルモンセンター」のワケありハンバーグとレモンたん
2023/10/02
株式会社フードエイド代表取締役 俵幸嗣氏
―リーズナブルなお肉販売が話題ですが、創業のきっかけを教えてください。
俵 もともと食肉メーカーに勤めていたのですが、食肉のことは知っているけど、世の中のことは知らないな、と感じていました。それで外食産業に興味を持つようになったのですが、焼肉屋さんでも意外とお肉のことを知らないんだな、ということがわかったんです。それならば、ただ発注を受けるというより、色々なお肉を紹介していくような仕事ができないか、と考え始めました。
スーパーさんというのはPOSデータで商品管理をしているのですが、それによると売れるものしか仕入れないことになります。だから、扱う部位にかたよりが出てしまうんです。お肉って、実は足りない部位と余っている部位があるんです。余っていて困っている生産者さんがいることも知っていたので、それを売れたらいいよね、ということになりました。
スーパーでは売れないけれど、外食に提案すれば売れるものも多いので、そこをつなぐ会社を始めることにしました。
―ワケあり商品を、売れる場所に提案していくことにしたのですね?
俵 ワケありの事情がはっきりしてますから、単に安いものではなく、安心な商品です。例えば、コンビニエンスストアなんかだと、期間限定商品というのがあって、その時期が終わると、お肉の在庫があっても販売終了してしまいます。そこで出た余りだったり、形を整えた後の切れ端だったりといったものですね。そういったものを見つけて、それを私たちが選んで、外食産業のお店にご提案するという形です。
食品ロスを出したくない生産者さん、安価に良いお肉をいただける生活者さん、そして我々の会社も利益が出るなら、三方よしの取り組みになります。ベンチャーで始めて10年になりますが、商品力で売れていること、生産者さんからも信頼をいただけるようになり、「これ売れないかな?」といったご相談もいただけるようになったことが嬉しいです。
―外食のお店は、ご自身でも経営されています。
俵 自分でもやってみないとわからないだろうということで、焼肉屋「徳川ホルモンセンター」をオープンしました。名古屋に45店舗あります。名古屋らしいブランド名でやっています。自分でやってみると、使いやすいお肉がどんなものかとか、困り事もわかるようになり、商品開発の役に立っています。
卸問屋直営の焼肉屋として人気。愛知県内に5店舗がある。
―その「徳川ホルモンセンター」ブランドで、ネット通販も開始されました。
俵 ECはコロナ禍にはじめました。あの時、最高級の和牛を扱うお店が軒並み閉店に追いやられ、最高のA5ランク、およびその上を行く和牛が産地にも流通業者にも余ってしまったのです。中には海外へ輸出する和牛もありました。普段は100g3,000円とかで売られている和牛です。すぐに相場は大暴落、これはまずいと思い、あるったけ買い付けて急遽4枚約1kgあたり5,000円税込みで売り始めました。はじめは友達に、そしてSNSに。和牛を食べて産地を救おう。だんだんとうわさが広まり、今までは手売りしていた応援需要もあって、多くの方に買っていただいて嬉しかったですね。
―今回は、その通販から「なごやか生ハンバーグ」をご紹介いただいています。どんな商品でしょうか?
俵 いわゆるてごねのハンバーグとは違って、ステーキハンバーグに近いものになります。つなぎは一切入っていなくて、特殊な機械でお肉を真空にすることで、球体にしてガッチリ固めてあります。そのため、焼いても崩れることがありません。業務用で販売しているのですが、非常に人気があり、ファンの多い商品です。主にオーストラリア産の牛肉を使用し、お肉に合う24種類のオリジナルスパイスで味付けしています。
「なごやか生ハンバーグ」は、筒状のお肉が冷凍で届く。
ボリュームがあり食べ応えがありそう。フライパンののせると、この迫力!
―ご家庭で調理する際のコツなどはありますか?
俵 お召し上がりになる前日に袋のまま冷蔵庫で解凍します。フライパンに油を少しひきそのまま焼いてください。表面に焦げ目がついたらフライパンの上で縦に切ってください。ちょうど良い具合に脂が入っていますから、お好みのソースを入れて絡めてください。煮込みハンバーグにしてもいいですね。くれぐれも、ハンバーグからでた油と肉汁を捨てないで、タレに活かしてください。
あとは、バーベキューでお使いいただいてもいいですよ。網で焼いて召し上がっても美味しいです。
行列のできるハンバーグ屋さんの味に
そっくりだと噂の「なごやか生ハンバーグ」。
おうちでこの味が再現できるのは驚き。
―もう1品ご紹介いただいた「レモンたん」についても教えてください。
俵 こちらは実は、牛たんではなく、豚たんなんです。あまり知られていないですし、食べられていないんですよね。スーパーや焼肉屋でもみないですよね?でも、味はほとんど牛たんと変わりません。こんな風に薄くスライスしてレモンをかけていただくなら、全く遜色ない。牛たんは今どんどん高騰していて、それこそ4切れ千円みたいな感じですが、豚であれば安価ですから、これはチャンスだと思いました。
かき氷の「サ●レレモン」を応用して、レモンを並べました。見た目も面白いし美味しいですから、かなりのヒットになっています。
豚タンではなくて「レモンたん」というネーミングにしたのもウケました。
たんといえば牛だと思いがちだが、豚たんも遜色なく美味しい。
レモンと一緒にいただくと、さっぱりと食がすすむ。
―お肉は味よりも、見た目やブランドで選ばれてしまいがちな面はありますね?
俵 デパ地下なんかで売っているお肉って、脂が白くて、フィルムの入った時にピンと角が照っているようなものが良いとされています。でも、実はそれだと脂が固すぎるんです。和牛が「胃にもたれる」と言われてしまうのも、そういう牛の作り方もあると言われています。本来、美味しいお肉の油は肌色をしていますし、角もフニャッとしたものだったりしますから。見た目で選ばれてしまうマーケットなので、そこは生産者さんたちも頭を悩ませているところでもあります。
―フードエイド社としての今後の展望は?
俵 コロナで頓挫していたバーベキューハウスをオープンします。「アメリカンBBQハウスブルーテーブル」は、名古屋駅から電車で30分ほどの、るりが浜にあります。美しい夕陽が沈む海岸で、手ぶらで楽しめます。
また通信販売に携われたこともあり、今後は商品開発にももっと力を入れていきたいと考えております。先ほど述べたように流通にはどうしても商品の部位ごとの歪が発生するのでそのバランスをとれるような商品の開発、および生産などに携わっていきたいです。コロナ禍で外食産業は大きくかわってしまいました。まだ出店と通信販売も、もっと拡大していきたいですね。
―美味しいものをリーズナブルにいただけるワケあり商品。その秘密も教えていただき、商品選びが楽しくなりそうです。貴重なお話をありがとうございました。
「冷凍 なごやか生ハンバーグ」(10個入り)
価格:¥3,950(税込)
店名:新鮮焼肉・生肉直売 徳川ホルモンセンター
電話: 052-700-6184(平日9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://thebase.page.link/W9pj
オンラインショップ:https://foodaidshop.thebase.in/
「焼肉用レモンたん」【焼肉屋の2.5人前】
価格:¥1,000(税込)
店名:新鮮焼肉・生肉直売 徳川ホルモンセンター
電話: 052-700-6184(平日9:00~17:00)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://thebase.page.link/q1GM
オンラインショップ:https://foodaidshop.thebase.in/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
俵幸嗣(株式会社フードエイド 代表取締役)
1975年静岡県沼津市生まれ。大学を卒業後、米久株式会社へ入社し、食肉の輸入の仕事に携わる。そのとき食肉産業の流通を国内、国外から知ることとなる。その後、外食産業に携わる外食産業ベンチャーへ転職し、食肉・食品の流通を加速するために独立。当時はまだほとんど無かったアメリカンBBQの業態から外食産業へ進出。
<文・撮影/尾崎真佐子 MC/石井みなみ 画像協力/フードエイド>