今回、編集長アッキーが気になったのは、フルーツをはじめ山梨の特産物を販売する「甲斐国物語」。同店を運営する株式会社ヴァインヤード 代表取締役社長の織田久美子氏に商品の人気に秘密を材陣がうかがいました。
山梨の美味しいぶどうでサスティナブルに貢献、贅沢アイス「Kai Cream」
2023/11/21
株式会社ヴァインヤード 代表取締役社長の織田久美子氏
―会社設立の経緯を教えてください。
織田 店舗名は甲斐国物語という名前でやっております。甲斐は山梨を表す言葉で、甲斐の生産者さんたち1人1人の物語を商品に乗せて伝わるようにという思いから名付けました。
創業は2006年。今年で18期目になります。2002年に夫の仕事の都合で山梨の勝沼に移住しましたが、村の人たちはみんなぶどうを作って生計を立てていらっしゃいました。巨峰やピオーネなど高級ぶどうを作っていらして、地域の方にもぎたてをいただいて食べると本当においしくて、衝撃的でした。このおいしさを多くの人に広めたいと思い、夫とインターネットで通販サイトを立ち上げることにしました。もともとインターネットで小物を販売する通販会社を経営していたのでノウハウはあったんです。
一番の完熟期にシャインマスカットを収穫。
―起業されてから大変だったことはございますか。
織田 楽天市場からスタートしましたが、当時はぶどうを通販する会社がほとんどなく、先駆けとして人気がでました。皇室に献上したぶどうを作っていらっしゃる農家さんもあったので、「皇室献上ぶどう」というキャッチコピーをつけて販売をしたところ、とても売れて、幸先の良いスタートを切ることができました。「うちのぶどうも取り扱ってほしい」という農家さんも増え、ぶどうだけではなく、桃、すもも、さくらんぼ、柿など、フルーツも徐々に増えていきました。
しかし、起業から4年目に夫が交通事故で亡くなってしまいました。上の子が3歳、下の子がまだ赤ちゃんで、そこからが大変でした。亡くなったのが8月でぶどうの最盛期を迎える時期だったので、お葬式が終わってすぐに出荷作業に追われました。営業もホームページの更新も1人でやらなければならず、子どもも小さくて、うまく仕事を回すことができなくなり、そこから3年間で売り上げがどんどん下がってしまいました。
どん底の状態が続きましたが、地元の生産者さんとのつながりを大切にしていて、家族ぐるみでお付き合いをしていく中で、生産者さんたちの輪がどんどん広がっていきました。生産者さんが生産者を紹介してくれるというサイクルに入って、良い商品が集まるようになりました。落ち込んでいた売り上げも回復していきました。
フルーツは6月から11月ぐらいまでが旬で、あとの半年は何も売るものがない状態になります。そこで、ご当地サーモンや甲州地鶏、ワイン、日本酒など地元の名産品も扱うようになりました。
日本一、日照時間が長い山梨県はフルーツ作りに恵まれた風土。
―会社として大切にされてきたモットーはございますか。
織田 私がよそ者であるからこそ、地元の特産物を当たり前でなく、素晴らしい商品としてご紹介することができると思っています。商品の魅力をきちんと日本全国の方たちに伝え、一生懸命作った作り手さんと消費者を繋いでいくことを大事にしています。
販路を広げたことで作り手さんには感謝されます。消費者の方には本当にフレッシュで、作り手さんの顔が見える商品を食べていただけます。私が山梨に移住して、フルーツ特産品と出会えたのは運命だったと思っており、そういった思いを忘れないようにしています。
―お客様は全国の方ですか。
織田 はい。8年ぐらい前からアジアへの輸出もスタートしています。海外の方がどういったものが好まれるかニーズを聞きながら、商品を販売しています。酸っぱいものが苦手な方も多く、糖度の高いシャインマスカットはすごく好んで食べていただいています。山梨の方が県外の方に地元の名産品として贈られるケースも多いですね。
―今回ご紹介させていただく「KaiCream」はどういった経緯で開発されることになったのでしょうか?
織田 当店は年間でぶどうを100tぐらい出荷しますが、ちょっとした傷だったり形が不揃いだったりして、規格外としてはねられてしまうものが約1%あります。100tの1%というと約1tのロスになってしまいます。みんなで食べたり、配ったりしてもさばききれなくて、おいしいのにもったいないと思っていました。規格外の商品を無駄にしたくないという思いから、アップサイクルしてアイスクリームとして加工することを思いつき、誕生しました。
じつは子どもたちがすごくアイスクリームが好きで、ご近所さんにいただくフルーツでアイスクリームをよく作っていました。シャーベットではなく、こっくりとしたアイスクリームにしたいというイメージがあって、近くのアイスクリームメーカーに相談して作り始めました。
丹精込めて作られたぶどうをフレッシュなうちに低温で丁寧に加工。
―シャインマスカット、ラムレーズン、バニラという種類は最初から決めていたのでしょうか。
織田 シャインマスカットの取扱量が一番多く、規格外もたくさん出てしまうことから、シャインマスカットアイスを作りたいというのが大前提でありました。まだぶどうといえばラムレーズンが定番なのでこちらも作ることにしました。アイスクリーム会社の社長さんが「ギフトセットはバニラが入っていなければ売れない」とアドバイスしてくださったので、八ヶ岳の牧場からミルクを仕入れて、バニラアイスも一緒にセットすることになりました。
―こだわった点を教えてください。
織田 当店の客層は30代から50代が中心なので、幅広い年代の方にも試食いただいて、レシピを完成させました。
シャーベットではなく、しっかりしたアイスクリームを作ろうと思ったときにシャインマスカットはすごく苦戦しました。酸味がないので乳成分に負けてしまい、どうしてもシャインマスカットの香りや味が出てこないんです。結局、完熟期に収穫した100%シャインマスカットのピューレを加えることで完成し、すごく贅沢な商品になっています。ラムレーズンのぶどうは大粒のものを選んでおり、食べて満足感が得られると思います。
―どういったお客様が購入されていますか。
織田 この商品は、フードロス削減、アップサイクルという点も発信しているので、アイスが好きな人はもちろん、サスティナブルな商品に興味がある方にもご購入いただいています。山梨の方は冬にフルーツを贈れないので、アイスをお歳暮に使われる方も多く、思った以上に冬によく売れています。ふるさと納税で購入される方も増えています。シャインマスカットのアイスは珍しいといってお求めになる方もいらっしゃいます。
―パッケージも素敵ですね。
織田 水彩とクレヨンで描いた手書きのイラストをパッケージにしています。創業当時からお付き合いのあるデザイナーさんにお願いしました。ぶどう農家さんで育った方で、畑のイメージなどを話し合って、それが伝わるような形で描いていただきました。
―今後の展望をお聞かせください。
織田 山梨は本当に美味しいものが多くて私は誇りに思っています。人の繋がりがすごく濃いのも山梨の魅力であり、資源だと感じているので、作り手さんの思いも乗せて美味しい商品を全国に発信していくことを続けていきたいです。
また、環境に配慮して、フードロスを減らし、資材をエコなものに切り替える取り組みを行っていっています。今年の6月に自社の加工場「now kitchen」もオープンしたので、規格外商品の加工にも力を入れていきます。
天候による不作、豊作は毎年繰り返されていますが、気候変動が激しくなり、ぶどうの収穫量は減っています。当店はそのたくさんの生産者さんと付き合っており、地域の試験場とのお付き合いもあるので、情報提供することも役割だと思っています。気候に合った作りやすいフルーツ、売れやすいもの、高価格で売れるものなどを生産者さんにお伝えし、畑の企画段階から一緒に入り込んで作っていくことをやっています。ご購入いただくお客様にも天候による状況を伝えておりますし、これからも中立な立場で情報を発信していきたいと考えています。
輸出も行っていますが、国内の需要もまだ伸ばせるところがあると思っています。若い人たちにもっとフルーツを食べてほしいですし、国内のファンもまだまだ増やしていきたいです。
―貴重なお話をありがとうございました。
「Kai Cream」6個入り
価格:¥2,592(税込)送料別途
店名:甲斐国物語
電話:0553-20-1655(10:00~17:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://item.rakuten.co.jp/kaikoku/kaicream-6/
オンラインショップ:https://www.rakuten.ne.jp/gold/kaikoku/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
織田久美子(株式会社ヴァインヤード 代表取締役社長)
1974年、神奈川県生まれ。2006年株式会社ヴァインヤード創業。結婚を期に山梨に移住し、果樹を中心に地域資源を生かした産直ショップを運営。畑で生まれる食品ロス対策として、菓子などの開発製造にあたり、年間3トンのロス果削減を達成する。配送箱のエコ化を進め、エシカルな買い物を楽しめるショッピングサイトを目指している。
<文・MC/垣内栄 画像協力/ヴァインヤード>